「臓象学説」(2008/05/09 (金) 01:47:40) の最新版変更点
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東洋医学における「五臓六腑」という概念は、人体の生理的機能単位の分類法として用いられている。本来は解剖学的な内臓の認識から発展したものかもしれないが、それは単なる解剖学的な概念を超え、さまざまな生理的・病理的、また精神活動までをも含めたそれぞれの臓腑の機能による働きとしてとらえて説明がなされている。そのため、東洋医学で述べられる五臓六腑の機能は、西洋医学における解剖学的な内蔵の概念や内臓の生理機能とは著しく異なったものとなっている。
目次
#contents()
*五臓
五臓とは、肝・心・脾・肺・腎の五つの臓である。「臓」は胸腔内・腹腔内に存在し、充実・緻密な性質を有し、また貯蔵・分泌あるいは精気を製造する機能を持つ器官である。古典では「所謂五臓は、精気を蔵して瀉さざるなり。ゆえに満たして実することあたわず」また、それぞれの臓器の説明として「肝は血を蔵す」「心は脈を蔵す」「脾は営を蔵す」「肺は気を蔵す」「腎は精を蔵す」と述べられている。ここで述べられている「血」「脈」「営」「気」「精」等は五臓に貯蔵される精気であり、「気・血・津液」に相当する。これらは生体に栄養を与え、生命活動を維持する基本的な構成要素で、常に貯蔵を必要とし、軽々と消費排泄できない。したがって、「五臓は蔵して瀉せず」となる。
**肝の主な機能
-排泄を主る
--全身の気・血・津液の流通を調節し、臓腑・経絡等の気機(気の運動)の活動を調節する。
-血を蔵す
--血の貯蔵と血流量の調節を行う。また感情、思惟活動を密接に関係している。
-筋を生ず
--筋の緊張や運動の制御を行う。
-目を開孔す
--目の異常は肝と関係がある。
-爪との関係
--肝血の不足は爪に現れる(淡白、つやなし)。
-「女子は肝を以って先天と為す」
--女性の生殖機能と関係している。
**心の主な機能
-心を主る
--すべての生命活動は心によって統率されている。
-血脈を主る
--心血を拍出し、血を循環させ全身を滋養する。
--心気は心躍動と心律を主る。(心気虚→心躍動不足と心律不足を呈する)
--心陽は心拍動を主る。(心陽虚→脈が遅となる。心陰虚→虚熱→数脈となる)
-舌に開孔す
--心と舌は密接に関係しており、心に病変があれば、舌は赤くなり、もつれて言語不能の状態に陥る。また心気の不足は味覚の異常となって現れる。
**脾の主な機能
-運化を主る
--水穀の消化、吸収、運搬を主る。
--水液の吸収及び輸布。「脾は後天の本」
--脾の局所機能としては、消化管の蠕動作用がある。脾気が虚し、消化管の運化作用の局所的な傷害が起こると、消化管の蠕動が低下し、便秘となる。全身的な運化(消化)機能の障害が起こると、胃腸から水穀が消化・吸収されず、大便溏(水様軟便)となる。
-統血する
--脈外に血が出るのを防ぐ。
-肉を生ず
--脾の異常で精気が全身にまわらなくなり、肌肉の栄養は欠乏し、全身がやせ、四肢に力が無くなる。
-口に開孔す
--脾の健康状態は口唇にあらわれやすい。
**肺の主な機能
-宣散粛降を主る
--水穀の精微と空気が結合した「宗気」を腎に粛降する。
--「宣散」:体内の濁気を排出する機能。
--「粛降」:自然界の清気を吸入する機能。気道内の異物(喀痰)を降す機能。
-気を主る
--呼吸を主る。
-水道を通調する
--水液の輸布と排泄の経路の調節。
-皮毛を主り、鼻に開竅する
--汗腺の調節、体温調節、免疫能、嗅覚。
**腎の主な機能
-蔵精を主る
--腎は「先天の気(生まれ持っているもの」を蔵し、人体は「後天の気(生きていく上で得たもの)」によってこれを補う。
--腎の局所的機能は泌尿器系と生殖器系とに区別される。
---泌尿器:尿、精液、帯下が簡単に漏れないように固泄する。
---生殖器:男性は勃起が可能であるように精力を保つ。女性は妊娠が可能であるように月経を保つ。
-水を主る
--水液の貯留、分布、排泄を調節する。
-納気を主る
--気を吸い入れる。
-骨髄を生ず
--腎は精を蔵し、精は髄を生じ、髄は骨を養っている。また、脊髄は頭に集まって脳になる。脳と腎は関係がある。
*六腑
六腑とは、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の六つの腑である。六腑はいずれも、水穀の出納・伝輸・伝化(飲食物の消化・吸収・残滓の排泄)などの機能を有している。「六腑は通をもって用となす」と言われ、精気を貯蔵せず伝導変化を主とするのが機能上の特徴であるとされている。飲食によって口から摂取された水穀(栄養物質)は胃に入り(受納)、胃の消化作用(腐熟)を経て小腸に下注される。小腸では、胃より送られてきた水穀を受け取り、変化・化生させる。すなわち、水穀を消化するとともに、「清濁を泌別」し、水穀の清微から摂取される栄養分は、大部分が小腸から吸収されるということである。残りは小腸からさらに大腸へと移動する。大腸において栄養残渣中の水分がさらに吸収され、大便が形成され、体外へ排泄される。このように、六腑の主な生理作用は栄養分及び不要分の消化・吸収・弁別・排泄にあるとされている。
**胆の主な機能
-胆汁の貯蔵及び分泌
-決断を主る。
-「肝は胆に合す」
--肝と胆は表裏の関係であり、「謀慮を主る肝」と「決断を主る胆」は人間の心の基底を形成し、すべての行動力の源となっている。
**小腸の主な機能
-清濁泌別を主る
--消化物中の清濁を泌別する
-「心は小腸に合す」
--心と小腸は経脈を通じて表裏関係にある。
**胃の主な機能
-水穀の受納、腐熟を主る
-通降を主る。
-「脾は胃に合す」
--胃と脾は表裏の関係にあり、胃は飲食物の消化を主り、脾は消化された飲食物より精気を抽出し、それを全身に輸布する。
**大腸の主な機能
-伝化を主る
--糟粕を伝導・変化させて糞便を形成、排泄させる。
-「肺は大腸に合す」
--肺と大腸は表裏の関係にある。
**膀胱の主な機能
-貯尿と排尿を主る
-「腎は膀胱に合す」
--膀胱と腎は互いに表裏の関係にある。
**三焦の主な機能
-水液運行の通路
-「三焦」を「上焦」「中焦」「下焦」の「三つの部分(焦=部分)」という人体の区分という意味で用いていることもあるが(『霊枢』営衛生会篇)、六腑における三焦とは異なるとされる。
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(編集者:鹿児島大学)
東洋医学における「五臓六腑」という概念は、人体の生理的機能単位の分類法として用いられている。本来は解剖学的な内臓の認識から発展したものかもしれないが、それは単なる解剖学的な概念を超え、さまざまな生理的・病理的、また精神活動までをも含めたそれぞれの臓腑の機能による働きとしてとらえて説明がなされている。そのため、東洋医学で述べられる五臓六腑の機能は、西洋医学における解剖学的な内蔵の概念や内臓の生理機能とは著しく異なったものとなっている。
目次
#contents()
*五臓
五臓とは、肝・心・脾・肺・腎の五つの臓である。「臓」は胸腔内・腹腔内に存在し、充実・緻密な性質を有し、また貯蔵・分泌あるいは精気を製造する機能を持つ器官である。古典では「所謂五臓は、精気を蔵して瀉さざるなり。ゆえに満たして実することあたわず」また、それぞれの臓器の説明として「肝は血を蔵す」「心は脈を蔵す」「脾は営を蔵す」「肺は気を蔵す」「腎は精を蔵す」と述べられている。ここで述べられている「血」「脈」「営」「気」「精」等は五臓に貯蔵される精気であり、「気・血・津液」に相当する。これらは生体に栄養を与え、生命活動を維持する基本的な構成要素で、常に貯蔵を必要とし、軽々と消費排泄できない。したがって、「五臓は蔵して瀉せず」となる。
**肝の主な機能
-排泄を主る
--全身の気・血・津液の流通を調節し、臓腑・経絡等の気機(気の運動)の活動を調節する。
-血を蔵す
--血の貯蔵と血流量の調節を行う。また感情、思惟活動を密接に関係している。
-筋を生ず
--筋の緊張や運動の制御を行う。
-目を開孔す
--目の異常は肝と関係がある。
-爪との関係
--肝血の不足は爪に現れる(淡白、つやなし)。
-「女子は肝を以って先天と為す」
--女性の生殖機能と関係している。
**心の主な機能
-心を主る
--すべての生命活動は心によって統率されている。
-血脈を主る
--心血を拍出し、血を循環させ全身を滋養する。
--心気は心躍動と心律を主る。(心気虚→心躍動不足と心律不足を呈する)
--心陽は心拍動を主る。(心陽虚→脈が遅となる。心陰虚→虚熱→数脈となる)
-舌に開孔す
--心と舌は密接に関係しており、心に病変があれば、舌は赤くなり、もつれて言語不能の状態に陥る。また心気の不足は味覚の異常となって現れる。
**脾の主な機能
-運化を主る
--水穀の消化、吸収、運搬を主る。
--水液の吸収及び輸布。「脾は後天の本」
--脾の局所機能としては、消化管の蠕動作用がある。脾気が虚し、消化管の運化作用の局所的な傷害が起こると、消化管の蠕動が低下し、便秘となる。全身的な運化(消化)機能の障害が起こると、胃腸から水穀が消化・吸収されず、大便溏(水様軟便)となる。
-統血する
--脈外に血が出るのを防ぐ。
-肉を生ず
--脾の異常で精気が全身にまわらなくなり、肌肉の栄養は欠乏し、全身がやせ、四肢に力が無くなる。
-口に開孔す
--脾の健康状態は口唇にあらわれやすい。
**肺の主な機能
-宣散粛降を主る
--水穀の精微と空気が結合した「宗気」を腎に粛降する。
--「宣散」:体内の濁気を排出する機能。
--「粛降」:自然界の清気を吸入する機能。気道内の異物(喀痰)を降す機能。
-気を主る
--呼吸を主る。
-水道を通調する
--水液の輸布と排泄の経路の調節。
-皮毛を主り、鼻に開竅する
--汗腺の調節、体温調節、免疫能、嗅覚。
**腎の主な機能
-蔵精を主る
--腎は「先天の気(生まれ持っているもの」を蔵し、人体は「後天の気(生きていく上で得たもの)」によってこれを補う。
--腎の局所的機能は泌尿器系と生殖器系とに区別される。
---泌尿器:尿、精液、帯下が簡単に漏れないように固泄する。
---生殖器:男性は勃起が可能であるように精力を保つ。女性は妊娠が可能であるように月経を保つ。
-水を主る
--水液の貯留、分布、排泄を調節する。
-納気を主る
--気を吸い入れる。
-骨髄を生ず
--腎は精を蔵し、精は髄を生じ、髄は骨を養っている。また、脊髄は頭に集まって脳になる。脳と腎は関係がある。
*六腑
六腑とは、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の六つの腑である。六腑はいずれも、水穀の出納・伝輸・伝化(飲食物の消化・吸収・残滓の排泄)などの機能を有している。「六腑は通をもって用となす」と言われ、精気を貯蔵せず伝導変化を主とするのが機能上の特徴であるとされている。飲食によって口から摂取された水穀(栄養物質)は胃に入り(受納)、胃の消化作用(腐熟)を経て小腸に下注される。小腸では、胃より送られてきた水穀を受け取り、変化・化生させる。すなわち、水穀を消化するとともに、「清濁を泌別」し、水穀の清微から摂取される栄養分は、大部分が小腸から吸収されるということである。残りは小腸からさらに大腸へと移動する。大腸において栄養残渣中の水分がさらに吸収され、大便が形成され、体外へ排泄される。このように、六腑の主な生理作用は栄養分及び不要分の消化・吸収・弁別・排泄にあるとされている。
**胆の主な機能
-胆汁の貯蔵及び分泌
-決断を主る。
-「肝は胆に合す」
--肝と胆は表裏の関係であり、「謀慮を主る肝」と「決断を主る胆」は人間の心の基底を形成し、すべての行動力の源となっている。
**小腸の主な機能
-清濁泌別を主る
--消化物中の清濁を泌別する
-「心は小腸に合す」
--心と小腸は経脈を通じて表裏関係にある。
**胃の主な機能
-水穀の受納、腐熟を主る
-通降を主る。
-「脾は胃に合す」
--胃と脾は表裏の関係にあり、胃は飲食物の消化を主り、脾は消化された飲食物より精気を抽出し、それを全身に輸布する。
**大腸の主な機能
-伝化を主る
--糟粕を伝導・変化させて糞便を形成、排泄させる。
-「肺は大腸に合す」
--肺と大腸は表裏の関係にある。
**膀胱の主な機能
-貯尿と排尿を主る
-「腎は膀胱に合す」
--膀胱と腎は互いに表裏の関係にある。
**三焦の主な機能
-水液運行の通路
-「三焦」を「上焦」「中焦」「下焦」の「三つの部分(焦=部分)」という人体の区分という意味で用いていることもあるが、六腑における三焦とは異なるとされる。
-三焦弁証については[[こちら>三焦弁証]]
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(編集者:鹿児島大学)
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