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治則

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kuteikai

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治則(ちそく)とは疾病に対して、どのような考え方のもとで治療を行うか、という治療の原理原則である。この原則を念頭に置きながら、症例によって個々の治療方針である治法(後述)を決定していく。治則は大きく4つに分類される。

目次

標治と本治

治病求本

「本」とは、病気のそもそもの原因を指す。つまり、疾病の本源、大元に対して治療を行わなければならない、という原則である。この「本」に対する言葉が「標」である。これは疾病の具体的な症状や明らかになっている不具合点を指す。すなわち、治病求本とは、見た目の「標」にとらわれすぎていては、病気を根本から絶つことは出来ない、したがって最終的には「本」を改善しなければならない、という法則である。これを大原則とし、臨床の場では患者の容態に応じて根本原因である「本」と具体的症状である「標」への対応がとられる。

急標緩本

中国の医学書『黄帝内経』に記された言葉。病状が急を要するものであれば「標」を優先し、比較的緩慢なものであれば「本」を優先すべきである、ということを指している。例えば、大量出血を呈した患者がいた場合、まずは「標」である出血を止血や補血などで改善しなければならない。その後、「本」である出血の原因を探っていく、というものである。これが「急なれば標を治す」すなわち「急標」である。一方、病因の「本」を取り除くことで、必然的に「標」が解決する場合もある。例えば肝気鬱結(肝の生理作用が低下して、気がうまく巡らなくなること)によって疼痛が生じていた場合、肝気の失調が「本」、疼痛が「標」である。この病状では肝機能を回復することで「本」を攻略し、さらに疼痛も治まると考えられる。これが「緩なれは本を治す」すなわち「緩本」である。

標本同治

「標」と「本」が相互に作用しあっており、どちらかを優先的に攻略しにくい場合は平行して対処する「標本同治」が行われる。これば、標本双方の病状が急であったり、逆に緩やかであったりする場合や、「標」、「本」の一方の対処がもう一方の対処を助ける場合にとられる方法である。


補虚瀉実

補虚とは不足している正気を補い、瀉実とは邪気を取り除く、という意味。的確に、人体に足りない要素を補充し、余分な要素や不要な要素を除去しなければならない、という法則。例えば、正気が不足している状態といっても、気血津液や臓腑など、失調している部位も程度も症例によって異なっている。邪気がある、という状態でも、風寒の邪などのような外的要因=外因なのか、瘀血のような内的要因=内因なのか、という違いがある。このように、何が、どのような状況で不足or過剰しているのかを見極めることが治療の決め手となる。


陰陽調整

陰陽は中医の重要な根幹部分を担っている。陰陽のバランスの取れた状態が健康であり、バランスの崩れた状態が疾病だと捉えている。したがって、陰陽調整とは、陰陽をバランスのとれた状態に回復or維持することを指している。
陰陽のバランスが崩れた状態には、大きく5パターンが考えられる。
  1. 陰が減少し、相対的に陽が大きくなってしまった場合
  2. 陽が減少し、相対的に陰が小さくなってしまった場合
  3. 陰が増大し、相対的に陽が小さくなってしまった場合
  4. 陽が増大し、相対的に陰が小さくなってしまった場合
  5. 陰陽双方が減少してしまった場合
  • その対策としては、盛んになっているものを押さえ、減少しているものを補うことが必要になる。盛んになっているものを抑えることを「その有余を瀉す」という。また、陰を補うことを「滋陰」、陽を補うことを「助陽」という。
  • 滋陰では「水の主を壮んにし、以って陽光を制す」(滋陰降火)、助陽では「火の源を益し以って陰翳を消す」(温陽散寒)という治療原則がある。
  • 陰陽双方が減少してしまった場合には、双方を補う治療を行う必要がある。


随機制宜

随機制宜とは臨機応変に対応するということである。病状は一定ではなく、常に変化している。また病人を取り巻く状況も変化し続けている。その都度、最適の選択を検討しなければならない。変化している要因として、中医学では季節や気候、地理環境、人的要因を想定している。

因時制宜

人の体は、常に季節や気候の影響を受けている。この点を考慮に入れ、季節に応じた治療を行うこと
春/夏:陽気が上昇しており、腠理が緩んでいる。脈は浮いて躍動している⇒宣散させないように注意する
秋/冬:陰が勝り、陽が衰える。腠理は密となり、脈は深く沈んでいる⇒陽気を損なわないように注意する

因地制宜

地域や土地に応じた治療を行うこと。その土地の生活習慣や地域特有の疾患などの地域性に注意しなければならない。

因人制宜

中医学では個体差を重要視している。年齢、性別、職業、体質、生活習慣、精神状態などを考慮して治療を行う必要がある。



(編集者:宮崎大学)
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