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特集 やってきたお笑いX世代

<高校編>
―――結成されてから、ほぼ7年になるんですよね?
井本「はい」
藤原「そうですね、7年目ですね」
―――おふたりは同じ高校出身で。で、たとえば井本さんはサッカーで
有名選手だったりしたわけですよね。
井本「そうですね、まあ、その県では」
―――藤原さんのほうも、空手で大学から声がかかるような存在
だったという。
藤原「はい」
―――普通それほどの選手ってことだったら、その道に進むものじゃ
ないんですか?それまでの努力もあったでしょうし。
井本「いや、やりすぎたんですよ。幼稚園ぐらいのときからずっとサッカー
やって、もういだろうと。しんどくなってたんですね。もっと何か、ほか
のことをしたくなったんです。バイトもしたいし、遊びたいしっていうの
がいっぱい出てきて。正直言うと、ちょっと後悔してるんですけど」
―――あ、そうなんですか?
井本「実はうっすら狙ってたりするんですよ(笑)まだ年齢的にもいけるん
じゃないかって。作って欲しいですよね、Jリーグにお笑い枠とか。あいつ
出すと、試合で笑い取るよって」
―――藤原さんはどうだったんですか?
藤原「こいつの考え方ですか?」
―――いえ(笑)、その当時の藤原さんです。
藤原「僕は、高校の頃から大学の練習にも参加させてもらってたんです。
そこには女子の先輩もいるんですね。全員前歯が無いんですよ。それで、
ちょっとこれはきついだろうと。それに、実際行ってしまったら空手
ばっかりだろうし。じゃあ就職するのか、専門学校行くのかってなった
ら、もう机に向かうのがうんざりで。とりあえず遊びたいっていう、そう
いう感じでした」
―――おふたりとも周りから認められてる選手だったにもかかわらず、
本人的にはもう限界だったと。
井本「そうですね。で、もっと上の世界も見てしまったんですよね。
全国大会に行って、僕の世代でいうと中田とか城とかがいるわけですよ。
あ、こういうのがプロになるやつなんだって。そうしたらもう、自分が
プロになるなんて全然無理だし、じゃあ楽して金儲けみたいな考えで
芸人になって、いざ入ったらなんてしんどいねんっていう」
藤原「もう悪ノリで入ってますからね、僕ら。ほんと、一生懸命夢を
抱えて入ってきたほかの方には申し訳ないんですけど、もう、近所の
兄ちゃんのノリでしたから」
―――じゃあ、そこでの選択がお笑いであることの必然はどこにあったん
ですか?
井本「学生の自分から文化祭とかでふたりでやったりして、過信してたん
ですね。多分いけるだろうと」
藤原「ほんと、僕らは悪い奴らだと思います。不純でしたから」
―――でもう、そうはいっても、いわゆる関西圏のお笑いの風土の中で
それなりに自身が持てていたっていうのは、やっぱり笑いの偏差値が
高かったってことですよね?
井本「いや、単純にほかにそういうことやってる奴がうちの学校にいな
かったという、それだけです」
藤原「ちらっとはいたんですけどね。でも『おもろないわ、ボケ!』
とかいってましたから、僕ら(笑)。ほんとタチ悪い」



<大阪編>
―――(笑)。じゃあほんとに、そういうノリの延長みたいな感じで、
NSCに入るわけなんですか。
井本「僕ら、NSCに行かずにすぐ劇場に行ったんです。オーディション
を受けに」
藤原「実際行ったことは行ったんですけど、17期生だって言われたんです
よね。で、17って何やねん!ゴロ悪い!って行かなくなったんです」
―――(笑)。劇場は2丁目劇場ですか?
井本「はい。でまた、悪いことにそのオーディションに受かってしまうん
です。もう余計に増長しますよね。行ける!っていうのが。で、あれよ
あれよという間に仕事をいただくようになって」
―――もうほとんど無敵状態ですね、そのとき。
井本・藤原「はい」
―――ウケてるし!っていう。
井本「それでまた、実際にはオーディションしかないじゃないですか、
仕事なんて。あとはだから、バイトをしてるんですよ。バイトがすごく
楽しい」
藤原「やればやるだけ金が入ってくる」
井本「結構もらってましたね。だから、吉本のいわゆる給料少ないっていう
のも、そんな気にならなかったですね。いや、バイトでこれだけ稼いでる
しって」
藤原「どっちが本業やねんっていう話ですよ」
井本「でも、どんどん具合が悪くなっていきますよ。こっちの仕事が増えだしてくるじゃないですか。そうするとバイトに行けなくなる。そこから地獄がはじまっていくんですよ。ああ、こういうことか!って」
―――(笑)。経済面はそうでしょうけど、お笑いとしてはどうだったん
ですか。まだまだガンガン行ける!っていう?
井本「いや、やっぱり2丁目劇場っていうことで、めちゃめちゃ緊張してるんですよ」
藤原「最初のステージなんて覚えてないですから」
―――でも、勝っていったと。
井本「なんかね」
―――でもだんだん「あれ、これはどうも様子が違うぞ?」と思われたん
ですよね?
藤原「多分ね、何かで思いっきりすべったんじゃないですかね。もうびっく
りするくらい。そのときに、『ひょっとして難しいの?』と」
―――(笑)。これまでの発言だけだと、相当敵作りそうですけど(笑)
藤原「いやいや、もう最初のほうでしょ。そういうこと思ってたのは」
―――まあ、今までみたいな気分ではやっていけないなと、そう感じた
んですね。
井本「やっぱり、まわりの先輩方が気づかせてくれるというか。そんな
簡単なもんじゃないっていう」
藤原「オーディションを抜けて、先輩方と一緒の舞台に立たせてもらう
ようになって思ったんじゃないですかね。これじゃいかんと」
井本「基本的にまったく太刀打ちできなかったですから」
―――そこで挫折したんですね。
井本・藤原「はい」



<リセット編>
――そうなるともう、ふたりの関係性も、高校のときの親友だったのが・・。
井本「いったんなくなりますよね。仕事のパートナーに変わっていくんです。どんどんと」
―――ああ、なるほど。これは大きいですね。
藤原「いちど同窓会があって。僕のほうが裂きに着いてて、遅れて相方が
ほかのクラスメートたちと入ってきたんですよね。そのときに、同級生が
来たって感じじゃないんですよ。相方に僕の同窓会を見られてるような
気分だったんです。ああ、もう同級生じゃないんだって」
―――それはすごい感覚ですよね。だって元はここから始まってるのに。
で、そうなっていくと、やっぱり取り組み方とか違ってくるわけですよね。
藤原「シリアスになってきます」
―――でも、そういう作業を、いわばもう最前線に立っていながら、もう
一回、銃の持ち方ってこれでよかったかな?ってやってるというか。
井本「いやもう、そうです」
―――これは結構きついですね。
井本「怖さを知らないで戦場に行ってたんですよ。で、それに気づいた
ときが、一番怖い」
―――どうなんですか、そうやっていわばノリで入って、で、その現実に
ブチ当たって。下手すれば辞めててもおかしくないわけじゃないですか。
藤原「だから、お笑いというものに愛情があったんですよね」
―――そういうことですよね。
井本「愛情はあったんですよ」
藤原「好きだったんですね。ただ、何もそれについて考えてなかっただけで」
―――なるほど。とりあえずリセットされたと。
井本「でもよくパニックになってましたけど。どうしたらいい?どうした
らいい?の繰り返しで」


<上京編>
―――2年前にライセンスは東京に出られるわけですが、これはどういう
決断だったんですか。そのリセット後にある程度展望をつかんだからとか?
藤原「普通のセオリーでいったら、大阪でブレイクして東京ってことになる
と思うんですけど。僕らはそうじゃなかったですね。何ていったら言いか・・・。このまま大阪でやって、ある程度キャリアを積んでってことをやっていって、もし大阪でダメだったときのことを考えたんですね。もし、このまましばらくやり続けて、大阪でダメだったとき、僕ら勝負してなかったってことになるんじゃないかと。全国区、発信地の東京で勝負しないままっていうのが、納得できなかったんですね。同じキャリアを重ねるんでも、だったら東京でやろうと。東京で失敗したら諦めもつくんじゃないかと」
―――つまり、東京に行くことで退路を断つぐらいの感じだったんですね。
井本「ダメだったら辞める」
藤原「帰られない状況でいいんじゃないかと。でもそのときはさすがに、初めてケンカしましたけどね」
―――初めてだったんですか。
井本「思いっきり言い合いしましたね。東京行こうっていうのは、僕が切り出したんですよ。でも、いや、待てと。あと2、3年は大阪でやろうと。いや、東京で勝負したほうがいいと」
―――どっちも現実を見てたわけですけどね。
藤原「はい」
井本「そのうちデカい声になりだして」
藤原「『大きい声だすなや!』って、大きい声で言ってました(笑)」
井本「『大きい声だすなや!』『出してへんやん!』『だから大きい声だすなて!』って3時間(笑)でも、こいつのほうが先に東京の家、決めてきたんですよ」
藤原「あんなに嫌がってたのに(笑)」
―――(笑)。でも、ここでの覚悟はNSCに入る覚悟とは訳が違いましたよね。
井本「そうですね」
藤原「もう悪ノリじゃなかったですし」
井本「今ものすっごい真面目です」
藤原「さんざん反省してますもん」
―――ものすごいいい人になってます(笑)。
井本「いや、ものすごいいい人になれるんです」
藤原「多分、昔のままの僕らが東京で仕事してたら数十発は殴られてますよ、周りに。普通にグーで殴られてると思いますもん(笑)」


<東京での戦略編>
―――(笑)で、東京に来たわけですが、そのときにライセンスなりの戦略みたいなものはあったんですか。
井本「一番大きいところでいったら、ボケとツッコミを替えたってことですよね。それが一番デカい戦略でしたね」
―――そうですよね。でもそれって、今まで右手で書いてたのを左手にするぐらい大変なことじゃないですか。
井本「でもまぁそこまで極端なことでもなかったんですよ。僕ら、もともとが両方ともボケだったりしましたから」
―――大阪時代の役割っていうのは、逆に自然に出てきたものだったんですか。
藤原「最初、大阪でやってたネタっていうのは、ツッコミがいなかったん
ですよ。ボケとボケではなかったんですけど、いわゆるツッコミがいないという。でも、やっぱりわかりづらくなってくるんですよ、お客さんに。で、なんとなく僕がやっていたとうか」
―――で、それを替えたのは?
井本「幅を広げたかったというか。トークにしても両方できるほうがいいですし。早いんですよ、笑いの生み方が。で、両方が両方できるようになると、一番早いだろうと」
藤原「ツッコミやる人も、その人自体面白いわけじゃないですか。じゃあ、そういうことももっと出していいんじゃないかと。無いか、ひとり死んでるような状態がもったいなかったんですね」
―――なるほどね。でも、馴染ませるまでは大変でしたよね。
井本「いや、それはやっぱり大変でした。で、東京来てまだ、僕らはそういう状態だったのに、すぐにルミネtheよしもとが出来るんです。まだネタ
ないんですよ(笑)」
藤原「こけら落としの初日に出番が入って。どうすんねん!?って」
―――それ、周りはわかってたんですか。
藤原「気づかれないようにしてました」
井本「大丈夫、大丈夫って言ってましたから」
藤原「言ってましたけど、ふたりの中ではもう『に、逃げる?』ぐらいの(笑)」
井本「でも、そこに勝手に追い込んだのって、僕らなんですよね」
藤原「前の形でネタやってしまおうかって、そんまで考えたりして。
でも、それをやってしまったらダメだろうと」
―――パニくってるにもかかわらず、あいかわらず退路は断とうとしてますね(笑)
井本「はい。あの、追い詰めるのはすごく早いんですよ。追い詰めてから何かを始めるのが遅いんです(笑)」
―――これ、マゾだったらすごい気持ちいいだろうなっていう(笑)
藤原「そのころ一日中変な汗かいてましたよ」
井本「完全にノイローゼみたいでした」
藤原「僕はずーっと家でパズル作ってましたしね。一歩も外に出ないで」
井本「僕は夜中3時に気がついたら横浜でしたね。全然記憶がない」
―――それでも続けるという。
井本「もうね、自分らで課した意地みたいなものですよ。最後までやったらあ!っていう」
―――でもそこに無闇な確信があるわけですよね。
藤原「やっぱり、ウケるということを知ってるじゃないですか。で、そうやってまたやり直してウケたときはもう、そりゃあ嬉しかったですし。ウケて
初めて、これはありなんだ、これはすべったて、また勉強して」
―――あえて言わせていただくと、入り口は不純だったけれど、今はめちゃくちゃ純ですね。
井本・藤原「(笑)」
―――それはある種美しいですよね。
藤原「見た目もすごい真面目になりましたね。もう、デビューの頃なんてロン毛でドレッドで(笑)おまえらほんまに芸人か!?っていうような。今でもいないでしょう、そんな奴」


<現在編>
―――お笑いをやられる方にとって、ダウンタウンという存在は大きいと思うんですよね。ダウンタウンとどういう距離を持つのかっていうのは、やっぱりやっていくうえであると思うんです。で、今、世代によってその距離というのがいろいろ出てるとも思うんですね。ライセンスの場合『ガキの使いやあらへんで!!』の前説という形で、いわばもっとも肉薄した形で接してる若手のコンビだと思うんですけど、そのあたり、どうなんですか」
藤原「いやもう、緊張しますよ」
井本「緊張の度合いがまるで違いますよね」
藤原「あんな舞台はないですからね。みんな立ちたいと思ってるだろうし、そこに立たせてもらえてるありがたさっていうのは、これはもうラッキーだったなと」
井本「ダウンタウンさんみたいになりたいのか、ダウンタウンさんを追い越すのかってはなしになるとわからないんですけどね。浜田さんがおっしゃるのは、浜田さんからみたら僕らはもうひ孫世代やってことなんですね。だから、追い越すために頑張るより何より、まず覚えなきゃならないことのほうが多いんですよ。僕らが仮に頑張って、距離が近くなってきたと思った頃には、もっと行ってるんだろし。だから、その距離っていうのは、変わらないと思うんで。なるべく自分らのスタイルというか、そういうものを見つける作業をしたほうがいいのかなとは思いますね」
―――なるほどね。でもその作業はずっと続くんでしょうね。
井本「それはずっと続くんです」
藤原「売れてる人たちでも続くものだと思います」
井本「ずっと引っ張っていく悩みだとは思いますしね」
―――別に、これができたから、後はOKだってことは全然ないですからね。
藤原「ないです」
―――だから、ほんとに思うんですけど、よくこの職業を選ばれるなあと。
井本「自分に子供が出来て、そいつが『お父さん、芸人になる』って言ったら、ビンタ何回でもしてやめさせますよ」
―――ははははは!
藤原「『あかん!悪ノリやろ、お前!』って(笑)」
井本「もうどつきますね。『あかん!サラリーマンになれ!』って。絶対言いますね」
―――でも、それでもおふたりはやっぱりこの場所にいるんですよね。
井本「それでもいるんですよね」
―――でもいるっていう。これって何なんでしょうね?
井本「何なんでしょう」
藤原「意地と、好きっていう」