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病院が医療費債務を売却、金融機関が厳しく取り立て


2007年12月3日 月曜日
米国  債権  医療・バイオ
Brian Grow (BusinessWeek誌、アトランタ支局記者)
Robert Berner (BusinessWeek誌、シカゴ支局記者)
協力:Jessica Silver-Greenberg

2007年12月3日発行号カバーストーリー「Fresh Pain for the Uninsured」

 これは新手の“錬金術”の話だ。公的医療保険制度のない米国においては、医療保険に加入していないか、加入していても十分な給付金を受け取れない患者が多い。そんな患者からカネを搾り取るため、様々な金融業者と手を結ぶ病院が増えている。

 エイプリル・ダイヤルさんとホットスプリング郡医療センター(アーカンソー州マルバーン)との間で起こった出来事を見てみよう。“未払いの医療費”を“消費者の借金”に切り替えることで、病院がいかに手早くカネを手にし、経済的余裕のない多くの患者が一層の苦境に陥っていることがよく分かる。


年収1万7000ドル、医療費請求が1万4000ドル


 ダイヤルさん(23歳)はドライブインでウエートレスとして働き、年1万7000ドルの給料とチップで暮らしている。彼女は1型糖尿病にかかっている。血糖値レベルの急激な低下で、ここ3年の間に4度も緊急治療室の世話になった。9月にホットスプリング郡医療センターに3日間入院し、うち2日は集中治療を受けた。糖尿病の合併症治療のためだ。請求書の金額は1万4000ドルを超えた。勤務先は医療保険に加入していなかった。

 ダイヤルさんの母キャロリンさんも、同じドライブインで働くウエートレスだ。非営利病院であるホットスプリング郡医療センターにはずっと前からゼロ金利の支払いプランがあり、これを利用して最近まで毎月100ドルを送金していた。

 しかし、ダイヤルさんは自分では支払いができないと言う。合併症の治療費とインシュリン代に毎月150ドル以上かかるからだ。

 10月になってダイヤルさんは、ホットスプリング郡医療センターが医療債務をコンプリートケア(本社アーカンソー州ノースリトルロック)という会社に売却したことを知った。


売買される医療債務、GEなど大手も参入


 世間ではまだほとんど知られていないが、数多くの小規模な企業が医療債務について大きな変化を起こしつつある。コンプリートケアはその1つだ。そうした企業は、無保険者や保障の薄い保険にしか入っていない患者を巨大な潜在市場と見ているのだ。ゼネラル・エレクトリック(GE)やUSバンコープ(USB)、キャピタル・ワン(COF)、シティグループ(C)などの米大手金融企業も、医療債務分野での急拡大や新規参入に打って出ている。

 コンプリートケアからダイヤルさんに届いた通知によると、新たな債権者となった同社の複雑極まる条件によって、彼女の毎月の最低支払い額はこれまでの4倍以上、455ドルになるという。ダイヤルさんは、家賃や食費、通院費を差し引くと、そんな金額はとても払えないと訴える。「必要最低限以外のお金はすべて医療費の支払いになってしまうわ」。

 医療費を自己負担するダイヤルさんのような患者からの回収は、医療事務担当者の頭を長年悩ませてきた問題だ。即時支払いがされない場合、病院の平均的回収額は、専門の集金係を雇った場合でさえ、請求額1ドル当たりせいぜい10セント前後である。

 そこで病院側はもっと効率的な回収手段を取るようになった。患者に対する債権をまとめて第三者――金融専門業者、銀行、クレジットカード会社、さらにはプライベートエクイティ(非公開株)投資会社まで――に売却してしまうのだ。

 新たな債権者の多くは債務額の評価にクレジットスコア(消費者個人に与えられる信用力評価点)やリスク分析用ソフトウエアを駆使し、延滞債務に対しては27%もの高利息を課す。


「病院は無利息のカネ貸しではない」


 金融会社と手を組むというやり方は、営利目的の病院よりも、ホットスプリング郡医療センターのような非営利病院によく見られる。内部にきちんとした集金担当部門を抱えていない場合が多く、非営利病院であるが故に無保険患者の割合が高いのである。

 「病院は無利息のカネ貸しではない」と言うのは、非営利病院トライヘルスの会計部門責任者トッド・コール氏。オハイオ州シンシナティで運営する2施設は合わせて20億ドル規模だ。「病院に5ドルを送金しさえすれば、取り立て業者が来ることもなく、裁判で訴えられることもないなんて時代は終わったのだ」。

 トライヘルスは患者に対する債権を大幅に割り引いた上で、一般消費者の延滞債務の回収を専門とする会社に売却している。「病院には現金が必要だ。それは医師や看護師を支える“血液”なのだ」(コール氏)。

 その現金を病院や外部の会社が手にするには、誰かがカネを出さなければならない。一番痛手が大きいのは、民間の保険には未加入だが、慈善医療(無償または低料金での診療や政府の給付プランを受けられるほど貧しいわけでもない患者たちだ。


保険未加入者4700万はおいしい市場?


 自費診療患者の数は膨大だ。まず全米には4700万人もの保険未加入者がいる。保障が薄かったり、「1万ドルまでは自己負担」としたりする保険を選択している人は1600万人。最近実施された複数の調査で、医療負債が自己破産申告の理由の上位に上がっている。

 前述のコンプリートケアのような抜け目ない企業各社がこの分野を開拓し始めたのは、数年前のことだ。最近は大手の参入も相次いでいる。ただし市場はまだ断片的で、シェアに関して信頼できる情報はまだない。

 USバンコープ傘下のUSバンクは、医療給付会社を通じて1カ月約200万ドルの患者債務を扱っている。大部分の患者に対し年利13.5%、延滞の場合は24%もの高利息を請求する。

 GE傘下の有力金融会社GEマネーは、歯科医や形成外科医、病院などに「CareCredit(ケアクレジット)」カードを売り込んでいる。今年の貸出高は前年比40%増の50億ドルに達する見込みだ。シティグループやキャピタル・ワンも同様のカードを発行している。

 「融資であれクレジットカードであれ、(医療金融サービスが)次の開拓分野だと皆口を揃えて言っている」と語るのは、米ワコビア銀行(WB)の上級副社長ジューン・セント・ジョン氏。同行もこの分野への参入を検討中だ。

 各社の意欲をそそるのは、一般消費者の医療費の自己負担額2500億ドル(保険料は含まない)という市場の大きさだ。この金額は米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーによる2005年の推定額であり、2015年までに4200億ドルに達する可能性もある。


患者は何も知らないうちに債務が売却


 しかしBusinessWeek誌が行った調査の結果、急速な拡大を示している医療金融サービス分野には大変な問題があることが明らかになった。多くの患者が何も知らないうちに、ケアクレジットカードの発行元であるGEマネーなどの利息を要求する中間業者に自分の債務が売却されているのである。

 アリス・ディルツさんはそのいい例だ。ニューヨーク市クイーンズ区にあるヒルサイド・デンタル・ケアを訪れたのは2005年10月のことだった。仕事はパートで病院の看護助手をしている。68歳になるディルツ氏には、虫歯2つと抜けた3つの歯にインプラントが必要だった。

 ヒルサイドのスタッフは7450ドルの費用がかかると告げた。しかし、既に引退している夫の保険で提供される歯科保険でまかなえるのは抜歯の200ドルだけだった。やむなく自分の財布から250ドルを支払ったうえで、1つの契約書にサインした。ディルツさんは、「ヒルサイドと直接交わす分割払いプランだと思った」と言う。

 だが、彼女が署名したのはGEマネーのケアクレジットカードの申込書だった。その旨は小さな文字で書面に記載されていた。ヒルサイドの歯科医ベン・モフタル氏もスタッフたちも「それがクレジットカードの契約だなんて教えてくれなかったわ」と、ディルツさんは主張する。

 ディルツさんは抜歯中にひどく出血した。怖くなり、抜歯後にすぐ家に帰った。4日後にインプラントをキャンセルし、もうヒルサイドとは縁が切れたと思った。ところが数週間後に、ケアクレジットから7000ドルの請求書が届いたのである。ヒルサイドが債権をGEマネーに売却していたのだ。

 GEマネーは既に債権の価格として約6300ドルをヒルサイドに支払っていた。ケアクレジットに電話して請求に異議を唱えたが、請求書の送付は止まらなかった。数週間後に再度電話し、書面でも異議を申し立てた。ところがGEマネーの言い分は「既に60日の異議申し立て期間を過ぎており、債務を逃れることはできない」というものだった。

 ケアクレジットカードには、初めのうちは利息ゼロの特別利率が設定されて。しかし、ディルツさんが初回の支払いを怠ったということで、いきなり年率26.99%にまで跳ね上がった。

 2006年8月、GEマネーはディルツさんをクイーンズ区の州裁判所に訴えた。ディルツさんはセント・ジョーンズ大学法科大学院の非営利組織「高齢者法律クリニック」に相談し、問題の債務に異議を申し立てた。その時点で債務額は1万175ドルに達していた。

 「GEから郵便物が届くたびに身が縮む思いだったのよ」とディルツさんは振り返る。夫妻はディルツさんのパートと社会保障給付による年間1万8000ドルの収入で生計を立てている。「毎日毎日が神経にこたえたわ」。


BusinessWeek誌の取材で態度を転換


 GEの広報担当者クリスティー・F・ウイリアムズ氏は電子メールで、「ケアクレジットカードは、600万人の利用者の大半からご満足いただいています」と述べている。ディルツさんの件に関しては、「異議申し立て書を送付し、異議申し立て手続きについて何度も話し合いましたが、ディルツ氏からは数カ月間ご連絡いただけませんでした」と主張している。

 だが、BusinessWeek誌が問い合わせた後の11月12日、GEは姿勢の見直しを表明した。ウイリアムズ氏によると、同社はディルツさんの債務を帳消しにすると共にクレジットリポート(信用報告書)の当該債務の記録も抹消する意向だという。自発的にディルツさんの債務を見直したのだとウイリアムズ氏は説明する。「ディルツ氏の事情にもっと配慮すべきでした」。

 ディルツさんの弁護人ジーナ・カラブレーゼ氏は、記者からの問い合わせがなかったらGEが姿勢を転換したかどうかは疑わしいと言う。「GEはほぼ1年前からこれらの事実をすべて認識していた。正当な根拠がありながら法律家の後ろ盾を持たない人がどうなっているか考えてみてほしい」(カラブレーゼ氏)。

 ヒルサイドの歯科医モフタル氏とスタッフはコメントを拒否した。


クレジットカードへの加入を強制する病院


 BusinessWeek誌の取材によってGEが事実を認めたのは、この例だけではない。無保険の患者らにケアクレジットカードを利用するようクリニック側が強く促していたケースがあった。

 ドーン・シェリーさん(33歳)は2003年末、鼻炎治療のためにクリスティー・クリニック(イリノイ州アーバナ)を訪れた。治療費は90ドルだった。だが、現金で支払う余裕がないとクリニックのスタッフに打ち明けた。スクールバスの添乗員をパートで勤めて手にする時給7ドル50セントの稼ぎしか収入がなく、保険に入っていなかった。

 クリニックからは、ケアクレジットに申し込むしか選択肢はないと言われた。シェリーさんは、保険と似たようなプランで自己負担は少なくて済むのだろうと思ったという。「本当はクレジットカードだと分かっていたら、絶対に署名しなかったのに」とシェリーさんは悔しがる。

 シェリーさんの負債残高はその後膨れ上がった。同クリニックに何度か通ったほか、緊急治療室で別のクリニックの医師から手当てを受けたからだ。現在は失業中で支払いをきちんとできない。10月24日付けの督促状によると、ケアクレジットへの負債総額は3485ドルに達している。そのうちのかなりの部分は延滞料と26.99%の利子によるものだ。

 クリスティー・クリニックは最近まで、全額一括払いの困難な患者は「ケアクレジットへの加入が必要」との文言をウェブサイトに掲載していた。この件についてBusinessWeek誌がGEに問い合わせると、事態の改善に努めるとの回答があった。

 「同クリニックに対しては、その記述を削除し、ケアクレジットへの加入を勧める方針を改めるよう促している。シェリー氏への請求書からすべての手数料と利息をカットし、ケアクレジットの利用を求められた患者の懸念の解消に努めていく」(ウィリアムズ氏)

 11月初め、クリスティー・クリニックはウェブサイトから支払い方針の記述をすべて削除した。同クリニックの金融サービス責任者アンニ・マクレラン氏は、方針を見直し、多様な支払い方法について患者と話し合っていると言う。「経済状況を巡る事情は人によって全く違うんです」(マクレラン氏)。


医療費は出し渋るが、クレジットカードなら払う患者


 自費診療を対象にした金融サービスという新たな試みが始まったのは1980年代のことだ。消費者金融の幹部らは、負債レベルの急騰と病院側の請求・回収業務の非効率性にビジネスチャンスを見出したのだ。

 「医者にはまた診てもらえるだろう。診察代を払わないからといって、病院が患者を追い返すことはあるまい――。大抵の患者はそう考える」。米業界団体ヘルスケアファイナンシャルマネジメント協会の最高責任者リチャード・L・クラーク氏は言う。「ところが、クレジットカードや銀行からの借り入れの場合、きちんと返済するように気をつける。債務不履行を起こせば、ほぼ確実に借り入れ手段が閉ざされるからだ」。

 そこが、アーカンソー州の小企業コンプリートケアの狙いなのである。現在、全米で40の病院、400を超す診療所と提携している。ウェブサイトでは、「病院から一歩外に出た瞬間に、“患者”は“消費者”になるのです」と、潜在的顧客に呼びかけている。

 さて、最初に紹介した糖尿病を患っているウエートレス、エイプリル・ダイヤルさんの話に戻ろう。彼女が自分の債務が移転されているのを知ったのは、9月にホットスプリング郡医療センターを後にしてから何週間も経ってからだった。

 10月、ダイヤルさんの母親に、ホットスプリング郡医療センターの支払い相談担当者から電話がかかってきたのだ。未払い債務はコンプリートケアに売却され、その額は6月に同社と交わした契約に従って約50%割引の7300ドルになったという。ダイヤルさんにとっては寝耳に水だったが、実は同医療センターで署名した入院承諾書には、小さな文字で債権の譲渡を認める条文が記載されていたのである。

 コンプリートケアの返済プランは、無利息だった病院のプランとは大違いだった。最初の2500ドルに5.75%の利息を加算し、毎月の最低支払い額を債務残高の10%と設定。当初コンプリートケアは、請求総額のうち4545ドルだけに10%ルールを適用し、月455ドルを支払うよう求めた。

 ところが11月初旬のBusinessWeek誌の取材、ダイヤルさんからの返済計画の見直し要求を受けて、同社は姿勢を変えた。最低支払い額を125ドルに引き下げると共に、無利息にしたのだ。コンプリートケアのスティーブン・C・オーウェン社長は、ダイヤルさんの返済条件を変更した理由として、「債務残高を考えると支払いはかなり困難だ。わが社の理念は返済をしやすくすることにある」と述べた。

 ホットスプリング郡医療センターのCFO(最高財務責任者)シーラ・ウィリアムズ氏は、コンプリートケアへの債権売却についてこう説明する。「利息を請求すれば、クレジットカード同様、患者の支払いが早まるだろうと考えた」。

 この夏、コンプリートケアは地方紙に広告を掲載し、利息の変更について発表した。だがダイヤルさん以外の患者からも苦情が寄せられたことから、同医療センターはこの数週間でコンプリートケアとの取り決めの見直しに着手。11月9日付けで、コンプリートケアを利用している患者に対し、今後は利息を請求しないことを決めた。「再検討した結果、患者の最善の利益とはならないという結論に達した」と同医療センター幹部は語った。


議会や内国歳入庁も問題視


 医療金融サービスに登場した怪しげな手法には、政府も注目し始めている。非営利病院は年間500億ドルを超える減税措置を受けており、議会と米内国歳入庁(IRS)は、それに見合うだけの無料医療サービスが無保険者に提供されているどうか、調査を拡大している。

 米上院財政委員会の有力者であるチャールズ・グラスリー議員(共和党、アイオワ州選出)は、新たな金融サービス契約の一部には、全米5700の病院の半数以上が受けている減税資格の正当性を損なうものがあると見ている。BusinessWeek誌からの問い合わせに対しては、「一部の非営利病院が、銀行や債権買取業者、クレジットカード会社などと結託して患者を食い物にしているのは問題だ」との回答文を寄せてきた。

 業界団体の米国病院協会は、問題となっている手法は「未調査」としながらも、「非営利病院は減税措置に見合う十分な地域サービスを提供している」と繰り返した。

 この新分野を開拓してきたHELPファイナンシャルは、単に医療事業が円滑に進むようにしているだけだと主張する。ミシガン州プリマスに本社を構えるHELPは株式非公開企業であり、社名のHELPは“入院費用貸付制度(Hospital Expense Loan Program)”の略だという。

 全米100の病院を顧客とし、これまで3億ドル近くを取り扱った。割引価格で債権を買い取った後、患者には1~5年の返済期間で10~18%の利息を請求する。「病院は医療事業に集中したいのであって、金融業をやりたいわけではないのだ」と、HELP副社長スティーブ・ポサ氏は言う。


突きつけられる支払いの選択肢


 レディックという夫妻が仕方なくHELPと契約したのは、今年初めのことだ。後になって、負債額6293ドルに14.5%もの利息が上乗せされていることを知ることになった…。

 今年1月、妻のミア・レディックさん(36歳)は軽い発作を起こしてサティラ地域医療センター(ジョージア州ウェイクロス)に運び込まれた。検査の結果、先天的な心臓疾患で心臓に小さい穴が開いており、いずれは外科手術が必要と分かった。

 ミアさんは薬局勤務、夫のジェイスさんはジョージア州の職業訓練指導員で、年収は合わせて9万ドル。幼い子供が2人いる。2005年にジェイスさんが独立して業務を請け負うようになったため、夫妻は州の保険を外れた。以来、高額な民間保険に加入する代わりに貯蓄に回してきた。

 そんな状況で、ミアさんの発作が起きた。救急医療費と検査費の6293ドルは、無利息の分割払いができると思っていた。地元出身のミアさん一家は、ずっとサティラ医療センターによる無利息分割払いを利用してきたからだ。「いつもそうしてきたのよ」とミアさんは言う。

 ところが、ミアさんが緊急治療室に運び込まれた朝、医療事務担当者から従来の支払いプランはなくなったと知らされた。気が動転していた夫のジェイスさんは、その日は支払いの話はしたくないと告げた。

 翌週の話し合いの席で、夫妻は2つの支払い方法を提示された。90日以内に医療費を支払って15%の割引を受けるか、HELPから資金を都合するかだ。十分な蓄えがなかった夫妻はHELPの利用を選択した。

 ミアさんの病気のことが気になっていた夫妻は、利息がかかるのかどうか聞き忘れていた。3月に届いた請求書には14.5%の利息が加算されていた。つまり月々の支払い額は148ドルになる。ミアさんが2月に別の病院で受けた外科手術の2万4000ドルと合わせ、「借金が多すぎて首が回らない」とジェイスは嘆く。


医療保険料をケチった患者側が悪い?


 ジョージア州南部の農村地帯には無保険者が多い。2002年にHELPと提携したのは、その不良債権を減らすためだったとサティラ医療センターの幹部は言う。10月中にHELPに売却した医療債権は71万8000ドルに上る。売却価格は1ドルにつき92セント。もっと割り引いて売却すれば、HELPの利息(14.5%に設定された)を引き下げることもできたが、そうはしなかった。サティラ医療センターで未収金管理を担当するブレンダ・ウィリアムソン氏は言う。

 サティラ医療センターの患者向け金融サービスマネジャーを務めるバーバラ・G・アルバート氏は、「割引が適用される90日以内の支払いプランを提案したのに、レディック夫妻がそれを拒否したのだ」と強調する。

 無保険者による医療費滞納の増加に伴い、サティラ医療センターはHELPに頼らざるを得ないという。サティラのCFO、カトリーナ・ウィーラー氏は、「歯医者や獣医ではお金を支払うのに、どうして普通の病院にかかった時には払わなくていいのか」と言う。HELPのポサ氏は、「適切な利息を設定するのはサティラ医療センターをはじめとする各病院だ。どの程度を適切と見るかはそれぞれだ」と説明した。

 同じサティラ医療センターの患者であるメルヴィン・ジョンソンさん(55歳)は保険加入者である。ただし加入しているのは退職者の権利擁護団体AARPの低額保険で、9月に医者から勧められた大腸内視鏡検査は保障対象外だった。癌ではないと分かったものの、検査費として3304ドルの請求を受けた。メルヴィンさんは建設業界で働き、妻のドロレスさん(35歳)は地域保健センターで福祉担当をしている。世帯年収は合計3万5000ドルである。

 サティラ医療センターの慈善医療の所得限度額は、法定貧困ラインの2倍、2人世帯の場合で世帯年収2万7380ドルまでである。現金での支払いが困難だったジョンソン夫妻はHELPの利用を選択した。年利14.5%で月々の支払い額は125ドル。「家計を見直すはめになったわ。ほかの支出を削ったり、貯金に回す分を減らしたりするしかなかったわ」と、ドロレスさんはこぼす。

 サティラ医療センターのアルバート氏はジョンソン夫妻について、「もっと保障の手厚い民間保険に加入することはできたはず。お金をケチったんですよ」と指摘する。ウィリアムソン氏は、HELPの利用はサティラ医療センターにとっても負担となっているとつけ加えた。患者に対する債権を1ドルにつき8セント割り引いて売却しているからだ。


患者にとっては割高な支払いを迫られる


 医療金融サービスの手法の中には、利息を患者に請求せずに利益を出しているものもある。米プライベートエクイティ投資会社アエキタース・キャピタル・マネジメント(オレゴン州ポートランド)は、20余りの病院で治療を受ける患者5万人に「CarePayment(ケアペイメント)」カードによる貸し付けを行っている。無利息で、返済期間は25カ月だ。アエキタースのロバート・イェセニックCEO(最高経営責任者)は、患者に対する債権を1ドル当たり約80セントで買い上げ、全額の回収を目指すことで収益を上げていると言う。

 患者にとっては、必ずしもケアペイメントを利用することが得策とは限らない。現金払いでないと割引が受けられないことがあるからだ。ミシガン州グランドラピッズで7つの病院を運営する米非営利団体スペクトラム・ヘルスでは、自費診療患者で30日以内に支払い可能なら20%の割引が受けられる。6カ月以内なら10%割引。ケアペイメントを利用する場合は割引は適用されない。

 米クリーブランド州立大学法科大学院の准教授キャスリーン・エンゲル氏(専門は消費者保護法)は、「これは値下げではなく、値上げだ」と言い切る。「病院は事実上、ケアペイメント利用者に対して割高な金額を請求している。連邦貸付真実法に則って利息相当分の価格差を開示すべきだ」と言う。

 スペクトラム・ヘルスの財務担当副社長ジョセフ・ファイファー氏は、「法的に十分な情報公開を行っている」と反論する。アエキタースの医療市場担当のシニア・マネージング・ディレクターのスティーブン・M・ライト氏も同意見だ。アエキタースは法律に従い、新規顧客にケアペイメントカードを送付する際に支払い条件を明示しているとしている。


体を治して家計が壊れたら元も子もない


 米メソジスト・ルボヌール・ヘルスケア(メンフィス)は、全体で12億ドル規模の7つの非営利病院を運営している。CFOを務めるクリス・マクリーン氏は、このような医療金融サービスの動きに対して疑念を深めている。運営する病院のうち5つでは、患者の多くがメンフィスの貧困層である。

 メソジストでは医療債権を売却せず、自費診療患者の診察代を50%割り引いている。多くの患者は無利息で5年間の支払い期間が認められる。回収不能として、即座に帳簿から抹消される債権も少なくない。メソジストの施設の1つは富裕層向けであり、また市内で唯一の小児病院も抱えている。この2つが残る5つの施設の運営を支えている。

 「税制面でかなりの優遇を受けている以上、地域に貢献すべきだ。医療を施したことで経済的に破綻させてしまったら、患者に最善を尽くしたとは言えない」と、マクリーン氏は言う。

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