~紅輝の英王~(SR)
基本情報
名前 ~紅輝の英王~
真名 ニド
種族 降魔
ジョブ アタッカー
初期カルマ 1
カルマ上昇速度 NORMAL
<タイプ> 紅皇
タイプ 紅蓮
HP 700
ATK 190
DEF 230
ハイアーツ
CV 西田 雅一
備考 神族〔紅蓮皇帝〕との同時登録不可

カルマアビリティ
カルマ1個 ATK SPDアップ
攻撃力と移動速度が上がる。
カルマ2個 ATK SPDアップ
攻撃力と移動速度が上がる。
カルマ3個 英雄の紅剣
ダッシュアタックに必要な移動距離と移動速度が下がる。
さらに、ダッシュアタックの距離と速度が上がる。
ハイアーツ 紅き連刃
自身がダッシュアタックを当てたとき、敵ユニットに与えるダメージが70ダメージ上がる。
効果時間 90秒

ステータス
  • 魔神状態中
カルマ所持数 融合体数 HP ATK/DEF
カルマ1個 0体 700 190/230〔通常時〕
210/230〔アビリティ発動時〕
7体 1000 250/290〔通常時〕
270/290〔アビリティ発動時〕
  • 魔神状態解除後
カルマ所持数 HP ATK/DEF
カルマ1個 700 210/230〔アビリティ発動時〕
カルマ2個 700 230/230〔アビリティ発動時〕
カルマ3個 700 230/230〔アビリティ発動時〕

DATA・イラスト・フレーバーテキスト
+ VerRe:3.0※LoV3ストーリーのネタバレ注意
VerRe:3.0
画像
そこに宿すもの 滅びを招く黒
新たなる力 滅びを破る白
アルド二世
兄弟 死別した妹が一人
目的 混沌を破る
真名 ニド
イラストレーター 輪くすさが
フレーバーテキスト
『この世の果ての神殿』に開かれた次元を超える扉。その向こうに伸びる、黒き塔。紅蓮の王は、混沌種との戦いに決着をつけるべく、その頂を目指した。

「…行け! ニド…!!」

片腕を失い、体のいたるところが破損した機甲人は、全身に絡みつく無数の混沌種を抑え込み叫んだ。

「ドゥクス…!!」

「立ち止まるな…この先だ… この先にすべての終わりがある…。 お前をここまで導けて私は満足だ。それが、私を『友』と呼んでくれたお前の父との約束だった…進め!」

アルド、あなたの息子は、立派な王となったよ――紅蓮の王の師であり、父でもあった機甲人は、自らの胸に手を突き刺し、体内の人工アルカナを暴走させた。漆黒の塔に、眩く広がる紅い光の爆発。

光が納まると、全ての混沌は消え去っていた。紅蓮の王は、床にわずかに残った師のマントの切れ端を拾うと、そっと胸に忍ばせ、決意の表情で頂の扉をくぐった。

見渡す限りの白――扉の向こう側は、全てが白い世界だった。

その中心に何かがいた。

…あれは――紅蓮の王は剣を構える。それは一人の女だった。

「リシ…ア…」

彼の心は知っていた。それが、既にこの世にいるはずのない、妹の姿であることを。彼は悟った。『この世の果ての神殿』の向こう側、次元の狭間に存在する、黒淵と白焔の双塔、その存在が示す答えが今、目の前にあることを。

紅蓮の王は、剣を下ろし、幼いころ自分を生かすための生贄となった、決して出会うはずのなかった妹へと手を伸ばした。

「兄さん…なの…?」

兄は妹の手を取り、妹はその手を――兄の胸へと突き刺した。

女は、奇妙にゆがんだ表情で、崩れ落ちる兄を見つめていた。その手に、紅く濡れたアルカナを握りながら。

≪…どう…やら この次…元も『ハズレ』のよ…うだ≫

そう言って笑う女の姿が次第に崩れ、混沌へと変わっていく。

「お前は…なぜ…その姿を…!」

≪我ら…に時間や空…間の概念はない 全て…が個であ…り ひとつで…ある 故…に お前の妹が生…き、お前…が死した世界も…知っている≫

「……!」

≪今 こ…の瞬間 お前のア…ルカナは次元主性を失…った 可能…性のな…いお前も この石もすべて…廃滅の次元線と…定…義された この次…元に『お前の子ら』の…干…渉はない 我ら…はそれに会いた…いのだがな…≫

「オレの…子ら…?」

≪滅び…よ 弱き可能…性…敗れ…し紅蓮の王よ… クク…お前の師も…下ら…ぬ死であった…な さ…て 我…らは次の次元線…へと向かおう… 次は…お前の妹…に会えるかもしれ…ぬな…≫

「待て…!」

そう言って混沌は消えた。

ここまでなのか。友を失い、父を手にかけ、師を失った。多くの悲しみを背負い、ここまで来た。しかしその結果がこれなのか。紅蓮の王は、虚空を見上げ、大きく吠えた。そして、紅き光を失った瞳は黒く染まり、その体は黒い焔を発した。

「リシアよ…お前は、別の世界で生きているのか… ならば…オレの残された命を…黒き慟哭の焔をお前に託す… この焔はお前を護る…必ずや生きて、混沌を…!」

叫び、黒き焔を異空へと解き放った王は目を閉じた。アルカナを失った体が、ゆっくりと砂のように崩れ去っていく。そして、消滅を迎え入れようとしたその時、彼の体を温かい光が包み込んだ。

それは、白き焔。薄れゆく意識の中で、彼は声を聞いた。

――私の残された命を…兄さんに託します… どうか生きて…世界を…救って…。

その体が、徐々に白く輝く鎧へと変化していく。

「そうか…リシア、ドゥクス…オレはまだ…戦えるのか」

こうして、彼は――転醒を果たした。
+ Ver3.5DS
Ver3.5DS
その力 悪しき者を討つために
その意志 剛毅なる鋼の如く
出身 アヴァリシア王国
殲滅対象 混沌種
趣味 心身を鍛えること
真名 ニド
イラストレーター タイキ
フレーバーテキスト
「なんだ…これ…」
制止する妹の手を少し強引に引いて、僕はその部屋へと入り込んだ。

父から立ち入りを禁じられていた、王城地下のとある一室。いつも
気になって仕方なかったその部屋――そこで僕と妹が目にしたもの
は、何に使うのかさっぱりわからない、複雑な機械の山。

そこは何かの“研究室”のようだった。

その中でも一際目を引いたのが、たくさんの線に繋がれた状態で座
り込んでいる――“人の形をした機械”だった。

すごい――僕は興奮気味に、その“機械”に近づいて観察した。
機械そのものは見たことがあっても、こんな風に――人を模したよ
うな機械なんてはじめて見た。

すっかり怯えてしまったのか「帰ろう」と妹が言い出したのにも構
わずに、その機械人形を覗き込む。そして、妹が背後で慌てて止め
ようとしているのも気付かなかったふりをして、その“頭”の部分
に手を触れた。

瞬間――何かの駆動音と共に、その機械はガチャリと音を立て、ま
るで人がそうするかのようにその首をもたげた。

「――ッ!」

咄嗟にその場から飛びのいて様子をうかがう。

やっぱり、まずかったかな――浮かれすぎたと唇を軽く噛む。

もしもこの機械人形が立ち上がり襲い掛かってきたら、妹を守って
戦わなければならない…でも、勝てるだろうか。稽古でも、父上か
ら一本もとれたことないのに――手に汗をかき、緊張しながらその
機械人形の動きを警戒する。

【………お…】

そのとき、機械人形が何かしらの音を発した。

今だ――そう判断し、背後で震える妹に声をかけ、その背中を軽く
押す。

「走って…!」

言葉通り、妹は一目散に走って逃げてくれた。機械人形がそれを追
う様子は無い。
これでひとまずは安心――あとは僕自身がなんとか…

さらに警戒を強め、機械人形を睨みつけていると、機械人形は先程
の続きのように、さらに音を発した。

【…お…おは…おはよう… ニド… リシア…】

そう言って、ギギギとぎこちなく腕を上げる機械人形。
それは攻撃ではなく、明らかに――

「あい…さつ…?」

僕は呆けたように、その世にも珍しい“人型のしゃべる機械”を見
つめた。

―――
――


それからしばらく“会話”らしきものを続けていくうちに、その機
械人形にはこちらを害する気が全くないということがわかった。

「…すごいなお前!」

しゃべる機械、それも人型の――敵意が無いことがわかると、残っ
たのは純粋な好奇心だけだった。

逃げ出してしまった妹のことが気がかりではあったが、今は目の前
の機械人形に対する興味が勝っていた。

自分と妹――リシアのことをなぜか知っているらしいその機械人形
との会話は楽しく、いつしか僕はそれに夢中になっていた。

【言い付け…を… 破って…こ…ここ…に…きたのか… それ…は
…いかん… 早く…戻らね…ば…】

言葉を発生させる機能がまだ完成していないのか、その機械人形が
話す言葉は常にたどたどしかった。

【王族…たるもの… 強さと…教養を…両立…す…るべし…】

【今日は…いい…天気…だ…】

すごく的確な返事をすることもあれば、何も言っていないのにふと
脈絡のないことを勝手にしゃべったりもする。

だから時々会話が成り立たないこともあったけれど、たまに妙に説
教臭いことを言うところなどが、忙しくてなかなか話す時間の取れ
ない父の姿を思い出させて――僕はだんだんその機械人形のことが、好き
になっていった。


それから僕は、事あるごとにその機械人形の元を訪ねた。妹には何
度か声をかけたが、来ることはなかった。きっと怖がっているのだ
ろう。無理強いはよくないと思い、いつも一人でこの機械人形と話
をしていた。

妹と喧嘩をしたとき、父に叱られたとき、良いことがあったとき、
嫌なことがあったとき…色々なことを話しては、その機械人形に褒
められたり、たしなめられたり、慰められたりする。それが、日々
の小さな楽しみとなっていった。

――でも、やっぱりそんな生活は長く続かなかった。


* * * *


「これで最後だってさ…」

無念さを隠せずに、それでも僕はいつものように機械人形に話しかけた。

“研究室”に出入りをしていることが、父にバレてしまったのだ。
こっぴどく叱られて、次に見つかった場合は罰を与えるとまで言わ
れてしまった。

そう言われてしまえば、所詮子供である自分にはどうしようもない。

「せめて最後にもう一度話をさせて欲しい」と、わがままを言ってど
うにか作ってもらった時間が今だった。

背後には珍しく――本当に珍しく、妹のリシアの姿もあった。

それからは、別れを惜しむようにその機械人形とたくさんの話をした。

剣術をならうのは好きだけど、勉強の時間はあまり好きではないこと。
妹のリシアはその逆で、運動はあまり得意ではないけど、勉強が得意
でかなわないと思っていること。
他にも、くだらない世間話や日頃の悩みを、時間の許す限り話し続けた。

妹も最初は警戒していたが、途中からはすっかり気を許したようで楽
しそうにしていた。

「もっと話したいこともあったんだけどな…」

【ニド…お前の…その…何物にも…臆せず…向き…合う…心を…大切
に…し…ろ…】

なんだって? 不意に告げられた言葉に、思わず聞き返す。

【お前…は…兄として…何があっ…ても…しっかり…リシア…を…】

ああ、ダメだ。話が噛み合わなくなってきた――僕はため息をついて
うつむいた。これは、会話終わりの合図だ。一度ずれ始めるとだんだ
んと話が噛み合わなくなり、最後には会話が成立しなくなる、お決ま
りのパターンだった。

「…じゃあ、そろそろいかないと」

残念に思う気持ちを胸の奥にしまい、重い腰を上げた。今この部屋を
出てしまえば、この機械人形とはもう会うことができないだろう――それに、

「父上が、戻ったらこれまで黙ってここに来てたお仕置きだってさ…
でも、お前は僕たちの味方だよな?」

特に返事は期待していない、冗談めかした軽口――だったのだが、そ
の機械人形はゆっくりと頷いた。

【安心し…ろ…私は…い…つでも…2人の味方だ… この…命に…代
えても…必ず…守…る…】

命って、そんな大げさな――僕は笑って、そのどこまでも優しい機械
人形に、今度こそ別れを告げた。


* * * *


これは追憶――まだ、そこに笑顔と優しさがあり、白く悲しみに染まっ
た彼の髪が、父や妹と同じ、美しい黒に輝いていた頃の――剣を振るう
手を止めると、青年はひとつ息をつき、背後に立つ影へと振り返る。

そこには、同じように剣を取り、戦う一人の女性――一度は永遠に失っ
てしまったと思った、妹の姿があった。

「…ここには俺がいて、リシアがいる。お前が守ってくれたおかげ
だよ――ドゥクス」

青年は空を仰ぎ見て、今は亡きもう一人の父のことを想った。
考察
以下の考察はVer3.407以降に対応していません
速度重視の自己強化型のアタッカー降魔。
同じく自己完結型の~嘆きの竜皇~に比べてカルマ速度がNOMALなので扱いやすい。
成長するとダッシュアタックを決め続ける事ができるようになり、特にアタッカー相手でも追撃がしやすい。
カルマ3まで行くと強化版STリヴァイの用に扱えるがあちらとの大きな違いはアーツを使わなければ固定値付加はない事。

ハイアーツを使うと90cの間、ダッシュアタックによる与ダメージが70ダメージ増える。
固定ダメを追加するアビリティ・アーツの中でも最大クラスの数値で、どんな相手でも7~9回のダッシュアタックで瀕死にさせる事ができる。
カルマ3でハイアーツを使用するとダッシュアタックだけで大凡180前後の固定ダメージを出せるためガーディアンで守るディフェンダーに対して下手なマジシャンよりも突破できるようになる。
もしスロウで噛みつかれても一度弾くだけでアビリティの効果により逃亡は安定しやすい。
またマジシャンは勿論のことアタッカー同士でも固定値のおかげで殴り負けることはまずなくディフェンダーがいなければ少数戦では無類の強さを誇る。

シンプルなダッシュアタック特化降魔であるが、部隊に加えると操作がかなり忙しくなるという欠点はある。
忙しい操作をためらうならば、集団行動が得意な~背徳の騎士~や~終角の暴獣~の方が決定力は高い。
○2体の連続突撃で組むのであればSR風魔小太郎、C服部半蔵、SR高坂甚内の忍組が召喚、覚醒でスピードアップを所持しているので同じ速度で併走できる。特に2015/12/24で大幅強化されたSR風魔小太郎は攻撃を当てると固定ダメージの毒を周囲に与えるため非常に相性が良い。逆にSRオーディン、SRバハムートは超覚醒にキル系を所持しているため相性はあまり良くない。C服部半蔵は超覚醒にスピードアップを所持しているため相手の方が速度が若干速い。
五影剣のダーインスレイヴのスピードチェインは1.3倍なのでパーシヴァルを使わない限り置いていかれてしまう。
□がいなければかなりの強さを発揮するので△と組むのも手。

キャラクター説明
真名はニド。LoV1、LoV2、LoVRe:2の主人公の一人。
前作の舞台、アケローン大陸の国家"アヴァリシア王国"の王子である。
同じく主人公のリシアが双子の妹にいるが、幼い頃に死別している。
何故彼がレムギア大陸にいるのか、Re:2から何があったのか、それ自体がLoV3のストーリーモードのネタバレなので、ここでは伏せる。

セリフ付きで喋るのはLoV3からが初めてで、前作では「…………」や「………!」といったセリフしか無かった。
ハイアーツを使用した後ダッシュアタックすると、当時の主人公の必殺技のひとつ「レイジングスラッシュ」を掛け声にして攻撃する。

余談だが、前作の【妖艶】サキュバス(現ミリア)のフレーバーを読むと、ニドにとって理想の女性は自分の母親であることが分かる。実はマザコン
ちなみにスリーサイズはリシアがB:86、W:58、H:83であるのに対し、ニドはB:87、W:73、H:91。ニドのほうが大きい

関連カード


コメント *編集が苦手な方はこちらへ情報提供お願いします
  • ガーディアン状態のラーにカルマ3アーツありのスマッシュで135減りました -- (名無しさん) 2015-11-27 00:37:12
  • 紅蓮童貞と一緒にデッキ登録できないのでご注意を -- (名無しさん) 2015-12-18 01:14:26
  • ハイアーツ継続時間は90秒の様です -- (名無しさん) 2015-12-18 23:40:29
  • 今のダーインスレイヴのスピードチェインは1.3倍かと -- (名無しさん) 2016-01-07 10:26:30
  • ?ニドのスリーサイズがバストになってるけど、ニドって女なの? -- (名無しさん) 2016-01-17 18:43:22
  • 胸筋という言葉を知っているか -- (名無しさん) 2016-01-17 20:31:04
  • まあ男の場合は胸はBじゃなくCだよね -- (名無しさん) 2016-01-18 10:41:38
  • 元々LoV2のOtLでクイズとして登場した情報なんだけどね
    そのときはBWHとは書いていなかったから、本当は胸囲と書くのかも -- (名無しさん) 2016-01-18 12:04:20
  • 初代のキャラ選択画面が初出
    >>ニドのスリーサイズ -- (名無しさん) 2016-02-18 04:09:03
  • アーツ使うと、尻尾のように垂れ下がっている4本の剣が赤く光る -- (名無しさん) 2016-03-20 15:38:39
  • 何で降魔の記事なのにスリーサイズの話になってんすかねぇ…(wktk) -- (名無しさん) 2016-03-27 23:24:07
  • 5-004のフレーバーです。*ネタバレ含む


    「なんだ…これ…」

    制止する妹の手を少し強引に引いて、僕はその部屋へと入り込んだ。

    父から立ち入りを禁じられていた、王城地下のとある一室。いつも気になって仕方なかったその部屋――そこで僕と妹が目にしたものは、何に使うのかさっぱりわからない、複雑な機械の山。

    そこは何かの“研究室”のようだった。

    その中でも一際目を引いたのが、たくさんの線に繋がれた状態で座り込んでいる――“人の形をした機械”だった。

    すごい――僕は興奮気味に、その“機械”に近づいて観察した。
    機械そのものは見たことがあっても、こんな風に――人を模したような機械なんてはじめて見た。

    すっかり怯えてしまったのか「帰ろう」と妹が言い出したのにも構わずに、その機械人形を覗き込む。そして、妹が背後で慌てて止めようとしているのも気付かなかったふりをして、その“頭”の部分に手を触れた。

    瞬間――何かの駆動音と共に、その機械はガチャリと音を立て、まるで人がそうするかのようにその首をもたげた。

    「――ッ!」

    咄嗟にその場から飛びのいて様子をうかがう。

    やっぱり、まずかったかな――浮かれすぎたと唇を軽く噛む。

    もしもこの機械人形が立ち上がり襲い掛かってきたら、妹を守って戦わなければならない…でも、勝てるだろうか。稽古でも、父上から一本もとれたことないのに――手に汗をかき、緊張しながらその機械人形の動きを警戒する。

    【………お…】

    そのとき、機械人形が何かしらの音を発した。

    今だ――そう判断し、背後で震える妹に声をかけ、その背中を軽く押す。

    「走って…!」

    言葉通り、妹は一目散に走って逃げてくれた。機械人形がそれを追う様子は無い。
    これでひとまずは安心――あとは僕自身がなんとか…

    さらに警戒を強め、機械人形を睨みつけていると、機械人形は先程の続きのように、さらに音を発した。

    【…お…おは…おはよう… ニド… リシア…】

    そう言って、ギギギとぎこちなく腕を上げる機械人形。
    それは攻撃ではなく、明らかに――

    「あい…さつ…?」

    僕は呆けたように、その世にも珍しい“人型のしゃべる機械”を見つめた。

    ―――
    ――


    それからしばらく“会話”らしきものを続けていくうちに、その機械人形にはこちらを害する気が全くないということがわかった。

    「…すごいなお前!」

    しゃべる機械、それも人型の――敵意が無いことがわかると、残ったのは純粋な好奇心だけだった。

    逃げ出してしまった妹のことが気がかりではあったが、今は目の前の機械人形に対する興味が勝っていた。

    自分と妹――リシアのことをなぜか知っているらしいその機械人形との会話は楽しく、いつしか僕はそれに
  • 夢中になっていた。

    【言い付け…を… 破って…こ…ここ…に…きたのか… それ…は…いかん… 早く…戻らね…ば…】

    言葉を発生させる機能がまだ完成していないのか、その機械人形が話す言葉は常にたどたどしかった。

    【王族…たるもの… 強さと…教養を…両立…す…るべし…】

    【今日は…いい…天気…だ…】

    すごく的確な返事をすることもあれば、何も言っていないのにふと脈絡のないことを勝手にしゃべったりもする。

    だから時々会話が成り立たないこともあったけれど、たまに妙に説教臭いことを言うところなどが、忙しくてなかなか話す時間の取れない父の姿を思い出させて――僕はだんだんその機械人形のことが、好きになっていった。


    それから僕は、事あるごとにその機械人形の元を訪ねた。妹には何度か声をかけたが、来ることはなかった。きっと怖がっているのだろう。無理強いはよくないと思い、いつも一人でこの機械人形と話をしていた。

    妹と喧嘩をしたとき、父に叱られたとき、良いことがあったとき、嫌なことがあったとき…色々なことを話しては、その機械人形に褒められたり、たしなめられたり、慰められたりする。それが、日々の小さな楽しみとなっていった。

    ――でも、やっぱりそんな生活は長く続かなかった。


    * * * *


    「これで最後だってさ…」

    無念さを隠せずに、それでも僕はいつものように機械人形に話しかけた。

    “研究室”に出入りをしていることが、父にバレてしまったのだ。こっぴどく叱られて、次に見つかった場合は罰を与えるとまで言われてしまった。

    そう言われてしまえば、所詮子供である自分にはどうしようもない。

    「せめて最後にもう一度話をさせて欲しい」と、わがままを言ってどうにか作ってもらった時間が今だった。

    背後には珍しく――本当に珍しく、妹のリシアの姿もあった。

    それからは、別れを惜しむようにその機械人形とたくさんの話をした。

    剣術をならうのは好きだけど、勉強の時間はあまり好きではないこと。妹のリシアはその逆で、運動はあまり得意ではないけど、勉強が得意でかなわないと思っていること。
    他にも、くだらない世間話や日頃の悩みを、時間の許す限り話し続けた。

    妹も最初は警戒していたが、途中からはすっかり気を許したようで楽しそうにしていた。

    「もっと話したいこともあったんだけどな…」

    【ニド…お前の…その…何物にも…臆せず…向き…合う…心を…大切に…し…ろ…】

    なんだって? 不意に告げられた言葉に、思わず聞き返す。

    【お前…は…兄として…何があっ…ても…しっかり…リシア…を…】

    ああ、ダメだ。話が噛み合わなくなってきた――僕はため息をついてうつむいた。これは、会話終わりの合図だ。一度ずれ始めるとだんだんと話が噛み合わなくなり、最後には会話が成立しなくなる、お決まりのパターンだった。
    &br

  • 「…じゃあ、そろそろいかないと」

    残念に思う気持ちを胸の奥にしまい、重い腰を上げた。今この部屋を出てしまえば、この機械人形とはもう会うことができないだろう――それに、

    「父上が、戻ったらこれまで黙ってここに来てたお仕置きだってさ…でも、お前は僕たちの味方だよな?」

    特に返事は期待していない、冗談めかした軽口――だったのだが、その機械人形はゆっくりと頷いた。

    【安心し…ろ…私は…い…つでも…2人の味方だ… この…命に…代えても…必ず…守…る…】

    命って、そんな大げさな――僕は笑って、そのどこまでも優しい機械人形に、今度こそ別れを告げた。


    * * * *


    これは追憶――まだ、そこに笑顔と優しさがあり、白く悲しみに染まった彼の髪が、父や妹と同じ、美しい黒に輝いていた頃の――剣を振るう手を止めると、青年はひとつ息をつき、背後に立つ影へと振り返る。

    そこには、同じように剣を取り、戦う一人の女性――一度は永遠に失ってしまったと思った、妹の姿があった。

    「…ここには俺がいて、リシアがいる。お前が守ってくれたおかげだよ――ドゥクス」

    青年は空を仰ぎ見て、今は亡きもう一人の父のことを想った。
    -- (名無しさん) 2016-06-26 17:56:47

  • その力:悪しき者を討つために
    その意志:剛毅なる鋼の如く
    出身:アヴァリシア王国
    殲滅対象:混沌種
    趣味:心身を鍛えること
    真名:ニド
    -- (名無しさん) 2016-06-26 17:57:51
  • ニドの方が大きいは流石に笑う -- (名無しさん) 2016-07-10 06:43:15
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最終更新:2016年06月28日 02:04