• あの学術調査の日以来、気がかりでならないことがある。
    あの日、私がフクロウのような、猿のような、あの奇妙な生き物を見た直後、一緒にいた教授は唐突に亡くなってしまった。
    死因は持病の発作だと聞いたが、やはり私が見たあの生き物が、教授のいう『死神』だったのではなかろうか…。
    そうだとしたら事は重大だ。急ぎ学会で報告しなければ…。

    「ねー パパー」
    まずは資料を…文献は…これか…?
    なになに…<死神は『ア・プチ』と呼ばれており…>

    「ねーねー パパってばー」
    パパは今お仕事で忙しいんだ。あっちで遊んでなさい。
    <…呪いをかけた者に忍び寄り、その者を死の国に連れ去る…>

    「パーパー ママが パパのぬいぐるみ かえしてくれないのー」
    わかったから あとで…ぬいぐるみ?
    「うん パパがちょーさで買ってきてくれたフクロウのぬいぐるみ」
    フクロウ…そんなものは…

    「ママってば あの子だっこしたままうごかないんだよー」
    ……まさか…そんなまさか……だって…
    <……その呪いは、伝染する……>
    全長
    死の数に比例する
    重量
    死の数に比例する
    移動速度
    気づいた時にはそこにいる
    お気に入り
    最近手に入れたドクロ
    欲しいもの
    もっと若いヤツのドクロ
    異名
    ユム・シミル
    -- (3.3) 2016-02-24 00:18:35
  • あのフクロウのような、猿のような、不気味な生き物が、伝説の死神『ア・プチ』であることは、もはや明白だった。教授が死に、妻が死に、そのうえ、妻を亡くして塞いでいた私に、研究の協力を申し出てくれた後輩までもが、奴によって死の国に連れていかれてしまったのだから。

    私は、悲しいというよりも恐ろしかった。文献にあった通り、呪いが確実に広がっていたからだ。そして次は私の番だと思うと、一時たりとも気が休まらなかった。

    しかし、それは違った。次の標的は、私の幼い一人息子だったのだ。そして息子の死を最後に、なぜかヤツの呪いはパタリと止んだ。

    なぜ、私だけ――死から逃れたことよりも、何故自分だけが呪いから逃れることができたのかが気になって仕方なかった。私は研究室に引きこもり、誰にも会わず、飲まず食わずで調べ続けた。

    しかし、どれだけ文献を漁っても、その答えは見つからなかった。なかば諦めの気持ちで最後の文献をめくった時、その一説は見つかった。

    〈ア・プチは連れてゆく者を“見定める”。その呪いは伝染し――〉

    そうか、私は奴のお眼鏡にかなわなかった…だから見向きもされなかった…そういうことか――なんとも言えない不毛な敗北感に包まれたその時、ふと違和感を感じて、窓を見た。

    そこにア・プチがいた。ヤツは椅子に座り、くりくりとした丸い目でじっと私を見つめて――椅子? いや…そんな、まさか…あれは窓に映った私の……私はもう一度文献を確認した。

    〈その呪いは伝染し、“ア・プチ”もまた、伝染する〉

    全長
    死の数に比例する
    重量
    死の数に比例する
    移動速度
    気づいた時にはそこにいる
    生息域
    ミトナル
    捕獲対象
    生者の魂
    こだわり
    捕まえる順番
    -- (re3.0) 2016-02-24 00:20:30

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最終更新:2016年02月24日 00:20