• 3.5フレーバー

    蛇は、主人の夢の中に人の子として生まれ出でて後、戦士として生きた。

    本来の蛇の感覚からすれば、その生は瞬きするほどに短い時間であったが、人の子として過ごすとそれなりに長きものであり、驚くことにその時間は、蛇が感じたことのない幸福感や、充実感といったようなものに満ちていた。

    思えばあの選択――主人の夢の中へと転生することは、間違っていたことだったのかもしれない。

    蛇は傍観する者… 主人の眠りを守る寝台であり、夢の終わりを見届けるだけの存在――それは、この先どんなに時が経ってもかわることはない。しかし、夢の中で人の子として生き、多くの者に出会い、様々な他の生に触れるうちに、蛇は己の存在について悩み、苦しむようになった。

    共に戦う赤眼の戦士を、見届けるべき夢の一部とは思えなくなってしまったのだ。

    言葉を交わすたび、彼らの心に触れるたびに、蛇の心はざわついた。

    もしも主人が目覚め、この世界という夢が破れたら、赤眼の戦士も、その心も、すべてが無へと帰ってしまう。

    幾度も見てきた夢の終焉が、世界が無に変わる瞬間が、今は、どうしようもなく怖かった。

    許されるのならば、彼らを支え、共に戦い続け、その思いを遂げさせてやりたい。そしてその後も、この世界と彼らの幸福が永久に続いて欲しい――


    ――そんなことを思いながら、蛇は、まだ眠る仲間の輪からそっと離れ、澄んだ湖をひとり眺めていた。

    すると、蛇の揺れる心を映し出したように、視線の先の水面がゆらりと揺れた。そしてそこに、満天の星が映しだされ、その光が集まって水面を白く――まるで、かつて蛇が主人と共に漂っていた、あの乳海のように染めあげていった。

    「偉大な戦士の迷いを感じ、導かんと来ましたが――なるほど、あなただったのですね、ヴィシュヌ様の隋獣よ」

    不意に聞こえた凜とした声に、蛇がはっと視線を上げると、そこには美しい水精の姿があった。


    …continued to “モハーナ”
    現在の人の姿の身長
    1.61[meter]
    現在の人の姿の体重
    48[kg]
    現在の生息域
    人の世の戦場
    世界とは
    主人の夢の中にあるもの
    命とは
    夢の中を彷徨うもの
    滅びとは
    夢の終焉…それだけだったのに…
    Hitoto* -- (名無しさん) 2016-07-11 02:20:33