• …from “ラグナロク”

    「悪ぃな… やっぱこの黄昏もいつも通り、このオレが終わらせる“決まり”なんだ」

    そう言ってスルトは、その手に握った勝利の剣・レーヴァテインに終末の炎を燈した。そして、宙にて剣を逆手に持ち替え、自身の落下していく先にある聖竜の額に焦点を定める。

    「これで、いつも通り――なっ!?」

    急に、スルトの落下が止まった。

    見ると、巨大なスルトの体を、さらに巨大な腕が掴みとっていた。

    「…オイ、なんの冗談だこりゃあ」

    スルトを掴む腕、その先に繋がる体は終末の巨船――人の形に変容したスルトらムスペルの船、ナグルファル号であった。

    「オラァ! ムスペルどもぉ! 今すぐこの糞船をなんとかしろぉ!!」

    しかし、船内にいるはずである、炎の眷属たちからの返事はない。

    「糞がっ! 船に喰われたか? …ヘルの野郎、嵌めやがったな… いつも通り、ムスペルが全員そろってりゃ、こんなボロ船くれぇわけなかった… 全部…全部テメェか、オーディン! ずいぶんな小細工してくれたじゃ――ぐぉっ!」

    ナグルファルがスルトを握る手に力を籠める。苦悶するスルトは、堪らずにその手から“勝利の剣”を落とした。

    そして、その剣を受け止めたのは、満身創痍の聖竜。

    腕を組み、落ち着いた様子で事態を見守っていた戦神が、巨人に答えた。

    「…すまぬなスルト、この事態には余も少なからず驚いている。これは創世の摂理に一石を投じた輪廻の悪戯か、あるいは――」

    その時、そう戦神が言い終わらぬうちに、剣を咥えた聖竜が最後の飛翔を見せた。その狙いは、当然に、身動きできぬ炎の巨人。“勝利の剣”にて巨人を貫こうとする聖竜が、戦神のすぐ横を飛び過ぎた時、その悲しくも、正気を失った蒼翠の瞳を見て戦神は、自身の過ちに気付いた。

    「――待て…!」

    しかし、戦神の静止は届かず、勝利の剣は深々とスルトの体を貫いていた。

    「…かはっ! まいったぜ、やって…くれたな…」

    自らの炎に包まれるスルト。炎が、同時に力尽きた聖竜に燃え移っていく。炎と共に地に落ちる聖竜――しかし、その炎は勢いを弱めること無く、ますます大きく揺れる舌を立ち昇らせ、燃え盛っていく。

    「…これは、まさか…そうなのか…」

    聖竜を包む紅蓮の炎は、次第に竜の体内から染み出したかのような黒い炎へと置き換わり、その体は、黒い焔の炉と化した。

    「――黒淵か!!」

    そこまで口にしたところで、戦神は、腰の刃を勢いよく背後へと抜き放った。かすかな感触、しかし、捉えてはいない――。

    「おお~ 怖い怖い」

    戦神の後ろに揺れる影。

    「どうだい? いい手並みだったろう兄さん」
    「なるほどな、これは貴様の仕業か――」

    オーディンは背後に現れた影に言った。

    「――ロキ」
    「ご名答~~」

    影は、次第に人の形を作り、体の半分ずつが白と黒に色分かたれた魔神へと変わっていく。

    「フフ、兄さん同様、僕もこの黄昏の輪廻には飽き飽きしていてね。兄さんの企みが面白そうだったから、乗っからせてもらったんだ。ただ、ハッピーエンドは趣味じゃないからさ、結末はすこ~し変えさせてもらったけどね」

    戦神は苛立ちを見せると、今一度、斬鉄剣の一撃をロキへと見舞った。しかし、その姿は霞のように揺れるだけだった。

    「無駄無駄~ 僕は既にこの次元にはいないんだ。なぁ、そんなに怒るなよ~ 僕たちの仲だろう? 結果はどうだったにせよ、兄さんの希望通り“繰り返される黄昏の結末”は変わったんだぜ? フフ…それより見なよ。ほら、兄さんが手塩にかけて生み出したあの子が“転醒”するよ?」
    「…くっ!」

    ロキの声が響き渡る中、オーディンが目にしたものは、今もなお、黒淵の焔をごうごうと吐き続ける炉の中に浮かぶ影。それは、転醒を果たし、産声を上げる黒き竜。その身に纏っていた輝きは闇へと、その身に託された希望は絶望へと転じた。

    「う~ん、いい感じに仕上がったねぇ~。可愛い娘も、きかん坊の息子もいい仕事をしてくれたよ。兄さん、わかるかい? 兄さんの可愛い予言の子はさ、ただただ無垢に、使命を信じ、聖いままでいなけりゃならなかったのさ。それを、我が息子フェンリルという友を得て、失って、“悲しみ”を知ってしまったんだ。悲しみを知った者には闇が生まれる… 闇を持った者が行う“討伐”は“聖儀”なんかじゃあない――それは混沌のだ~い好きな、ただの“殺し”なんだよ」

    ロキの影は、オーディンの顔に浮かんだ苦悶の歪みを覗き込み、満足そうな笑みを浮かべた。

    「…ロキのとっつぁんよ。ご機嫌なご高説中悪ぃが、さっさとこいつを連れてこうぜ」

    不意にかかる声。見ると、影のすぐそばに、全身に紋様を彫り込んだフードの男が立っていた。

    「オレは忙しいんだよ… なんたって、“鍵”はまだ残り五つもあるんだからよ…って、あちち、まだホッカホカじゃねぇっか… そんじゃ、連れてくぜ?」

    フードの男が手に持った“機械仕掛けのグリモア”を開くと、未だ炎を纏った漆黒の竜は、空中に出現した紋様へと吸い込まれ、消えた。

    「はあ、せっかく高慢な兄さんを出し抜いて悦に浸ってたってのに、せっかちな奴だよねぇ。まあ、いいや。僕もまだまだやることがあるんだ。甘えん坊の末っ子の仕事も見届けなきゃならないしね。それじゃ兄さん、え~と…あ、そうそう――教会に、福音を、かな?」

    そう笑うと、ロキの影もまた、姿を消した。

    あとに残された戦神は、歯噛みと共に、燃え残った黒淵を剣風にて吹き飛ばした。

    「ロキめ… 得意の“たぶらかし”、してやられたぞ。褒美にその子はくれてやる。だが、お前の企みがまだ終わっておらぬように、余の計画も未だ半ばよ。次は好きにはさせぬぞ――我が黄昏は、まだ終わらぬ」

    そう言って、戦神は、漆黒の竜が消えた空間を見つめ、笑って見せた。
    全長
    35[meter]
    重量
    85[t]
    最高速度
    1800[km/h]
    望むもの
    破壊による再生
    『鍵の座』
    第9席
    真名
    ラグナロク
    新村 直之 -- (名無しさん) 2016-07-15 21:57:27
  • 今回の外れ枠かな…明らかにぬわの方が優秀なんだよね -- (名無しさん) 2016-07-16 03:01:59
  • MELT降魔は瞬間的な爆発力が肝って感じだけど、黒竜は中途半端に防御面や継戦能力を持ってしまった関係で決戦時の切り札としては心許ない上に部隊を組んで粘り強く戦うなら通常の□降魔の方が断然向いてるのがね。
    残念エラッタされたラグナロクには死体蹴り染みた扱い。 -- (名無しさん) 2016-07-17 01:05:29
  • 使い方次第定期 -- (名無しさん) 2016-07-17 16:57:21
  • 使ってて感じたがタワーを背負った守備が滅茶苦茶得意だな。
    カルマ1さえ残ってたらタワーに2.3秒籠るだけでほぼ全快。
    低めの防衛力はアーツでカバー、カルマ2以下のアーツ+ガーディアンでも310のDEFがあるから余程の△の暴力に見舞われない限りはそうそう落ちないし。
    -- (名無しさん) 2016-08-09 13:54:15
  • 上方修正及び魔神化自体(0体)のバフが加算されてなかったので数値訂正及び考案加筆致しました。
    アビリティの構成的にも魔神で荒らしてハイアーツでタワーを守るのが一番持ち味を生かせる。
    ハイアーツ+カルマ1以上のコイツで守ってるタワーはまず折られない………制圧要員を撃破してくれるサポートがあればの話だが() -- (名無しさん) 2016-08-18 12:15:13
  • 終盤に出す形なら盤面を見てUSも選択肢に入れつつ主力潰しと石防衛にぶん投げるかって感じかね
    他と違って積極的に動かせる時と、毒が消えて防衛に向かわせ易い時のメリハリがあるから運用の仕方自体は分かりやすい -- (名無しさん) 2016-08-20 23:53:29
  • 上方修正で数字がそこそこ馬鹿にならなくなってきたので文面のニュアンスなど微調整
    ハイアーツの効果時間どんなもんなんですかね。検証できるほどゆっくりできる試合が無くて…
    降魔自体のHPは下げられたものの魔神状態での最大HPは十分あるしスピード高いから前に出つつ、魔人化解除されてカルマ5切れるまでに全力で帰ればサクッと全快できるのはツァ犬に近い楽しさ -- (名無しさん) 2016-08-28 01:17:40