• 3.5フレーバー

    アメノトリフネから降りた咲耶姫は、ふいに力が抜けてしまい、その場に座り込んでしまいました。不思議に思い、咲耶姫は、ぐぅっと力を込めましたが、体に力が入らず、立ち上がることができませんでした。

    「…これが、常世の国……?」

    これまで清らかな霊峰の加護の下でしか暮らしたことのない咲耶姫は、この常世の国の霊相に神質が合わず、その神力を発揮することができなかったのです。

    アメノトリフネも神力を失ってしまい、まったく動く気配を見せません。取るものも取りあえず逃げてきた咲耶姫は、どうすることもできず、その場に座り込み、故郷に残してきた姉妹たちのことを思いました。

    自分を逃がすために奮闘してくれた知流姫は無事だろうか… 自分の代わりに、知流姫自身が皇の妻になる、などと無茶なことを言ってはいないだろうか… 岩になり、放りだされてしまった姉様は無事だろうけれど、一度岩になってしまうとなかなか元にはもどれないから、そのままどこまで次元の川に流されていってしまっただろうか…

    そんなことを考えている間に、半日ほどが過ぎ、ようやくゆっくりと動けるほどには体が慣れてきた咲耶姫は、姉妹を助けるために、元の世界に戻る方法を探さねばと、ふらふらとよろめきながら、あてどなく歩き始めました。

    そうしてしばらく歩き、再び神力の限界かと思われた時、咲耶姫の前に見たことのない大きな樹が現れました。

    なんとも珍妙な形その大樹に、なぜか惹かれるものを感じた咲耶姫は、恐る恐るその樹の下へと近づきました。

    するとどうでしょう、その大樹がぼんやり光ったかと思うと、咲耶姫の中に神力がふつふつと蘇ってくるではありませんか。

    「これは…一体どうしたのでしょう…?」

    すっかり弱っていた咲耶姫でしたが、みるみるうちに回復し、それどころか、これまでに感じたことがないほどの神力に満たされていったのです。

    これほどの力があれば、あの紅蓮の瞳を持つ皇を退けることもできるかもしれない。そう考えた咲耶姫は、勢いよく足を踏み出しましたが、しばらく歩くと急激にまた先刻のように力が抜けてしまいました。

    咲耶姫は、頑張って先ほどの大樹のもとへと戻ろうとしましたが、勢いをつけて歩いてきてしまった分、なかなか大樹へとたどり着くことができません。そうしているうちに、咲耶姫はとうとう立っていることもできなくなってしまいました。

    咲耶姫がもうだめと、ふらりと倒れ込んだとき、その体が地面に着く前にぴたりと止まりました。

    みると、咲耶姫の体を、見知らぬ青年が抱きとめているではありませんか。

    咲耶姫は、その青年の顔を見て驚きました。青年の瞳は片方だけではありましたが、かの皇と同じように紅蓮に染まっていたからです。

    しかし、心配そうに咲耶姫の顔を覗き込む青年の瞳は、皇と違い不思議と怖くはありませんでした。


    ~『紅蓮古事記』其の壱の③~
    身長
    1.58[meter]
    体重
    恥ずかしい…です
    現在の生息域
    常世の国
    好き
    桜餅
    男性の好み
    強いて言うなら優しい方が…
    最近お気に入りの樹
    マナ樹
    Hitoto* -- (記録屋) 2016-12-25 13:27:32
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    Hitoto* -- (名無しさん) 2016-12-25 13:28:27