【嘲弄】ガープ(R)
基本情報
名前 【嘲弄】ガープ
種族 魔種
ジョブ アタッカー
召喚コスト 30
<タイプ> 凶禍
タイプ ソロモン
HP
ATK 40
DEF 50
覚醒
超覚醒
アーツ
CV 北沢力

アビリティ
召喚 なし
覚醒 なし
超覚醒 悪意嘲笑の大総裁
攻撃力が上がる。さらに、ダッシュアタックに必要な移動距離と移動速度が下がり、ダッシュアタックを敵ユニットに当てたとき、自身が後方に一定距離瞬間移動する


ステータス
状態 HP ATK/DEF
召喚 400 40/50
覚醒 450 60/70
超覚醒 500 160/130

DATA・フレーバーテキスト
+ Ver3.?
Ver3.?
身長 クク…見た目と体重から察しろ
体重 クク…見た目と身長から察しろ
お気に入り 現在の契約者
能力のひとつ 瞬間移動
悪魔となる前 能天使
かつての主人 ラファエル
イラストレーター 猫将軍
フレーバーテキスト
 湿った藁が敷き詰められた獣用の檻の中で、少女は薄く目を開けた。

目の前に広がる仄暗い闇――それを見て、一瞬はっとしたような息を漏らす。

――が、自身の口から漏れ出た息の感覚と、絶え間なくざあざあと耳に刺さる雨音に気付き、横たわったまま不機嫌そうに眉を歪める。

「……生きてんのかよ……」

少女は、“首輪”から伸びた鎖の音を響かせながら、ゆっくりと上体を起こし自身の体を見回した。

腕や足のあちこちに痛々しい傷跡があったが、その全てが見る間に塞がっていく。

「……ちっ」

少女は傷を見つめながら、つい先刻まで出演していた『舞台』を思い返してみた。

下卑た観客が囲む壇上――そこに放たれる殺気立った猛獣――次いで自分も舞台に放り出され――『団長』の鞭を合図に観客が一気に湧き上がる――薬を打たれて目を血走らせた獣が涎を滴らせながら走り寄ってきて――。

そこからは、はっきりと覚えていない。ただ、赤黒い塊がこびりついた左腕には、肉をえぐったいやな感覚だけが残っていた。


自由都市リンドラの地下墓所で『魔導師』を名乗る男によって“造られた”少女は、幼くしてこの『獣小屋』に売られた。

以来、少女はここに閉じ込められ、人々の好奇と蔑み、そして恐怖の視線を受けながら、獣との殺し合いを強いられるだけの日々を送っている。

逃げることもできず、せめて死んでしまえたら良かったのだが、彼女の身に宿ったヒトならざる力はそれを許さなかった。
「今度こそ死ねたと思ったんだけどなぁ……」

先刻殺しあった猛獣の牙が突き立ったはずの、今はすっかり綺麗になっている腹をさすりながらつぶやく。


≪クク……なるほどなぁ、“だから”手を抜いていたのか≫


暗闇の中、くつくつと低く笑う者がいた。

「……!」

声のする方、薄暗い部屋の隅へと目を向ける。

≪――だがもう少しで死ねるというところで意識を失い、あとは本能のまま一瞬で獣を八つ裂き、か……ククク……いやはや怖い怖い……とんだ“絶望”もあったものだ≫

しかしそこにあるのは闇だけで、誰の姿もない――

「……なんだよ、新入りか? その背中の皮みたいの、『羽』ってやつか? 今度は“何男”だよ」

――が、少女は確かにそこにいる“何か”を見ていた。

全身闇に溶けそうな黒を纏い、その背中にも黒々とした翼が生えている。唯一、黒の中で鈍く青色に光る頭は大きな目玉のようであり表情はうかがえない。しかし、“それ”が少女の様子を見ながら嘲るようにニヤついていることはハッキリとわかった。

≪“聞こえる”だけじゃなくて、“見え”もするのか……オマエ、面白いな≫

「なんかぼやけてるけどな……あ、『ぼやけ羽男』とかか? まぁ、バケモンならなんでも一緒だけどよ」

≪化け物? 確かにオマエらからすると化け物なのだろうが……ちと違うな。それに、オレは見世物でもない≫

「あ? この小屋で見世物の他に必要なもんなんてねぇだろうが」

≪だろうな――だがオレはな、オマエに惹かれて来たのだ。珍しいのがいたものだ、とな≫

「あたしに? じゃあ『お客様』さんかよ!?」

≪――客でもないな≫

「あぁ!? 何なんだよ、めんどくせぇ野郎だな!」

言いつつ、少女は少し腰を浮かし警戒し始める。

「――んじゃ、アレか……たまにいんだ。テメェみてぇにわざわざ忍びこんで、ニヤニヤ笑いながらあたしらを痛めつけに来る奴がよ……」

しかし“それ”はそんな少女の様子を見てさも楽しそうに、

≪……あ~、オマエは勘違いしているぞ? オレはな、“悪魔”なのだよ≫

と言った。

「………?」

≪オレが興味を持ったのはな、オマエの魂さ≫

「……た……ましい? 何だそれ?」

≪……知らんのか? オマエの体に入ってる『命の形』のことだ≫

悪魔の言葉に少女はきょとんとしていたが、

「……ふうん。ずーっとここにいるからさ、小屋の奴に聞いたことあるもんしか知らね」

と眉根を寄せしばらく何かを考えるようにしたあと、

「で、あたしのそれが欲しいのかよ――じゃあ、持ってけ」

と言ってのけた。

≪――魂を抜けば、死ぬぞ?≫

「いいよ、死にてぇし。殺されもしねぇで痛めつけられるだけなのはヤだけどな」

少女の返答が意外だったのか、言葉が途切れ、しばしの沈黙が落ちる。

悪魔はしばらく青く光る眼で少女を見つめ続けていたが、ふと首を傾けた。

≪その力もそうだが……本当に珍しいやつだな。オマエの魂は間違いなく世界への憎しみと絶望に染まっているが、よく見ればそこに恐怖というものがない――死にも、生に対してもだ。悪魔というのはな、魂が汚れて、傷ついて、苦しみ恐怖する様を楽しみ、最高の仕上がりを見せたときに奪い去る、そういうものなのだ。だからな、『やる』と言われて『もらう』ものでもないのだよ」

悪魔の言葉に少女は思いきり顔をしかめ、

「はぁ……とことんめんどくせぇ野郎だな。なんだそりゃ、ろくでもねぇ――」

とため息をつき、どすんと腰を下ろした。

「――でも、それがその“あくま”ってのなら仕方ねぇか。そう生まれちまったなら、そうするしかねぇんだもんな。アタシもこんな風に生まれたせいでクソみてぇな生き方しかしてねぇけど、テメェもだいぶクソだぜ」

≪………≫

少女の言葉に、悪魔が再び首を傾ける。

≪生まれついたからそうするしかない……? それもまた違うな。オレはかつて、“天使”と言われるものだった≫

「また違ぇのかよ!? なんなんだてめぇは!? 知らねぇことばっか言いやがるしよ!」

≪天使と言うのはな、神に仕える奴らさ。神を信じる者を導き、信じない者を罰する。秩序という“決まり”を守らせる存在だ≫

「……なんだそりゃ? んじゃ結局前もヤな奴じゃねぇか。その神ってのも『団長』みてぇだし……じゃ、なんでその“てんし”ってのやめたんだよ」

悪魔はしばらく押し黙ると三度頭を傾けた。

≪どうだったかな?≫

「はぁ?」

≪ずいぶんと昔のことでな……ただ、そうなりたいと思い続けていたらそうなった、といったところだ≫

「……“あくま”っての、なってどうなんだよ?」

≪どうだろうな、別段これといってないが≫

「……ふぅん……」

少女は、すっかり警戒心をなくしたように胡坐をかきながら頬を掻く。

「――まあ正直どうでもいいけどよ、でも、思い続けたら叶ったってんなら……まあ、悪くねぇんじゃねーの? 良かったじゃねぇか。こっちは思い続けてたってどうにもなんねえことばっかだぜ、ったくよ……」

そう言う少女の顔には――ほんの僅かだが柔らかい笑みが浮かんでいた。

つい先程まで死を望み、もはやその魂は絶望で塗り固められていたはずであったのに、いったいどこにそのような感情が残されていたというのか――。

しかし、少女はすぐに不機嫌な顔に戻って言った。

「で? 結局、どうすんだよ? “たましい”」

悪魔はじっと少女を見つめ――。

≪――やめた≫

「あ!?」

≪もうしばらくお前の魂を見ていたくなった≫

「なんでだよ!?」

≪オマエは思ったよりも“面白そう”だ。オレは幾ばくかの未来を見ることができるのだがな、お前の未来は全く見えん……そういうのは珍しいんだ。本当なら絶望を囁き続けて最後の仕上げをしてやるつもりだったんだがな……≫

「……お前ほんっと胸クソ悪ぃな――あーもう、好きにしろ! バカバカしいぜ、あたしは寝る!」

そう言って、少女はごろんと悪魔に背中を向けて寝転んでしまう。

悪魔はそんな背中を眺めながら、

≪前にもオマエのような奴に会ったよ……クク……たまにこういうやつに会えるからな――≫

笑った。

≪――『人間』は面白い≫

「……え……おい、お前今なんて……?」

少女が振り返ると、悪魔は闇に溶けてしまったかのように消えていた。


檻の中に再び静寂が戻る。

絶え間なく降り続いてた雨は、いつの間にかすっかり止んでいた。

少女は、ふぅと小さく息を吐いた。

思えば、こんなに長く誰かと会話したのは初めてだったかもしれない。

「ちっ……わけわかんねぇ……結局何がしたかったんだ、あいつ……」

ほっとしたような、しかし少し寂しいような妙な気持ちになりながら、少女はそう呟き目を閉じた。


* * * *


「おら、ぼーっとしてんなガープ! てめぇもとっとと来い!」

方々で煙が上がる戦場を、あの頃よりふたまわり程背が伸びた少女が、使い魔の軍団を引き連れ駆けていく。

少女の声に応えるように、そのすぐ横の空間に染み出すように闇が広がっていき、やがて黒い羽を広げた悪魔を形作る。

≪……クク……“化け物”が人の世を救うのか?≫

「だーれがバケモンだ!! あたしは“人間”だっつってんだろ!」

≪そうだったか? 初めて会ったときは“化け物”だったはずなんだがなぁ≫

「あいっかわらずっめんどくせぇな……これから『レムギアの牙』の大一番なんだ! ごちゃごちゃ言ってねぇで気合入れろ!」

戦場の張り詰めた空気にそぐわぬやり取りをするふたり。

ふと、悪魔がいつもより低い声音で尋ねた。

≪テオ、ひとつ聞かせろ≫

「ああ?」

≪――お前は、もう憎むのをやめたのか? 世界はまだオマエたちを憎んでいるぞ?≫

宙を滑空しながら、悪魔は青い目で少女をじっと見る。

「………」

少女が足を止め、悪魔もまたその正面に降り立った。

悪魔は少女を見つめ続けていたが、少女は目をそらし足先で地面に転がる小石をつつく。

「――別にやめたも何もねぇよ。そういうのに決まりとかねぇだろ? 気分だ気分。世界とかわかんねぇし、クソな野郎はどこでもクソだしよ……」

そして「ちっ」と小さく舌打ちをすると、

「……でもまぁ、結構いい奴らには会えたと思うぜ」

そう言った。

その少女の顔は――。

≪……そうか≫

「てめ、何ニヤついてんだよ」

≪こういう顔なんだ≫

「いーや笑ってたね、あたしにはわかんだよ! てか、それ顔なのか?? 先行ってっぞ、のろガープ!!」

少女が悪魔にむけて小石を蹴り飛ばし走り去る。

悪魔はせせら笑いながら瞬時に黒い闇となってそれを避けると、少女の背を眺めながら何かを思い出すように腕を組み、大きな青い眼の下に手を当てた。

≪やはり面白いなぁ……テオ、オマエのような奴に会ったのは三人目か。誰もが死を望む地獄のような絶望の中で、それでも笑ってみせる――オレは昔それを見た時、ただ清廉であれとする神なんぞより、オマエら『人間』の方がすごいと思ってしまったのだよ。そしてそれが羨ましく、そうなってみたいと思っていたら――まぁ、確かに悪くないな……クク……たまにはダビデのガキのとこにも顔を出すかね――≫

そしてゆっくりと翼を広げると、

≪あぁ、それより先に魔界か? 長いこと魂を運んでないからなぁ……アマイモンの奴もそろそろ痺れを切らしていそうだ……≫

そんなことをひとりぶつぶつと呟きながら、少女の方へと飛び去った。


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special past episode

◆『人と魔と』◆



「――君は、人間だよ」


半仮面の青年が言った。

初め、少女には青年が何を言ってるのか解らなかったが、その言葉を反芻し、ようやく意味を理解した。

そんなわけはない――なぜなら、彼女の左半身は到底人の姿形をしておらず、それ故にこの見世物小屋で飼われているのだから。

「でも君は人間なんだよ。僕と同じように」

少女は理解に苦しんだ。

何を言っているのだろう? この新入りは――そんなわけあるはずがなかった。

各地の珍獣、奇獣をあつめたこの『獣小屋』の中で、人間とは『団長たち』や『お客様』のことであり、対して自分達は『バケモノ』なのだ。

夜になれば『バケモノ』達は『団長』に鞭打たれながら『お客様』の前に引きずり出される。すると決まって着飾った女たちが悲鳴を上げ、連れの男たちが女を安心させようと肩を抱く。そして罵声を浴びせながら“セット”の石を投げつける――それが幼い頃からの『人間』と少女たちとの関係だった。

それは、痛くて、怖くて、とても悲しい関係だったが、自分が『バケモノ』である限り変わらないもの――だから、必死に慣れることにしたもの――それを、この新入りは――。

半仮面の下に生えた鱗から『蛇男』と名付けられたこの青年――「団長」曰く最後の貴重品らしい――はさらに続けた。

「慣れてはダメだよ。考えて、感じた事を伝えることができる、それこそが人間なんだから」

彼の話は難しく、あまり他人と会話をした事のない少女には、少し鬱陶しいものだった。

何故こんなに自分に構うのか――少女が問うと蛇男は恥ずかしそうに、

「――それは、僕が人間だから」

そう言った。

ならなぜ仮面を? 人間は普段から仮面などつけない――さらに少女は尋ねた。

「その……変な話だけど、これをつけてると自分が人間だと思えるから……はは、可笑しいよね」

少女は、自分は“人間だ”と言いながら“人間であろう”とするこの青年を変な奴だと思いながらも、その照れくさそうな笑顔がほんの少し気に入ったのだった。


その日から、少しだけ少女の生活が変わった。

舞台が終わると、外の世界を知る蛇男は、色々な話をしてくれた。

外の人間たちの暮らしや様々な美しい風景――もし蛇男の言うように自分が人間で、外の世界に出られることがあったなら、どうやら面白そうだ、蛇男の話を聞くうちに少女はそう夢想するようになっていった。


一方蛇男は土地が体に合わないのか、次第に痩せ細り、日に日に弱っていった。

そして弱るにつけ、今はもう無いという故郷の話をよくするようになった。

「僕は死ぬまでに、もう一度あの風景を見たい……けど、もう叶うことは無いのだろうな……なら、せめて死ぬ前に――」

そう話すときの彼の目が少し怖いなと思いつつ、少女が故郷が無くなった理由を聞くと、彼は決まって悲しい顔ではぐらかすのだった。


そして、『大侵攻』の日が訪れた。

怯えいななく獣達、小屋に上がる火の手――慌てて鎖を掴み、まだ使えそうな獣と少女を小屋から引きずりだそうとする『団長』が突然のけぞった。

『団長』の口からあふれ出る赤い泡――その喉笛には、息絶え絶えの蛇男が食らいついていた。

もんどりうって倒れる二人。

少女が蛇男にかけ寄る。

「やった……やれたよ……死ぬ前に“果たせた”! ごめんね君の目の前で……でも、僕は人間だから慣れる事はできなかったんだ……君も諦めないで……君……は……」

そう言って事切れた蛇男は、とても柔らかな顔をしていた。

少女はしばらくその顔を眺めたまま呆然と座り込んでいたが、一度目を伏せると立ち上がり、駆け出した――外の世界へ。


* * * *


「――オマエは、人間などではない」


魔導師が言った。

自由都市リンドラ――自由という名のもとに、あらゆる道徳を背徳へと貶めるこの町の地下墓所で、“異界”から来たという魔導師による、成功実験体二号――テ・レーゼと名付けられた少女の“教育”と“調整”は行われていた。 

では、自分は何者なのか?――そう尋ねる少女の右半身は、黒々とした魔物の姿形をしていた。

「オマエは『魔の者』……私の魔術が作り上げた最高の結晶だ。そしてオマエの主人は私であり、私のあらゆる命を聴く、それがオマエだ。オマエを生み出すのにどれほど苦労したことか……あぁ、アルギアの闇市に流した水霊を使った実験体はそこそこ良かったが、うん……やはりオマエには遠く及ばないな」

魔導師は言いながら実験室を歩き回り、“調整”のために“破壊”させた死体の指をつまんでぐりぐりと弄ぶ。

「それに引き替えオマエの片割れ……アレはまるでダメだった。早々に見世物小屋に売り払ってやったわ。アレには心があったからな。あれではまるで……」

心とはなにか?――その言葉が出る度に少女は尋ねるが、

「オマエには不要なものだ」

魔導師は決まってそう答えるのだった。


数年後、“調整”は終わり、少女は魔導師の理想の『魔の者』となった。

魔導師は勇んで各国の軍部や研究機関へと赴き自身の研究結果を売り込んで回ったが、魔術や呪法そのものを怪しげな迷信と捉えるこの世界にその成果を認める者などなく、むしろ気味悪がられ、排斥の憂き目を見るだけであった。

魔導師は、魔術を受け入れないこの世界を恨み、酒に溺れていった。

そして少女はその様子を、これはきっと『魔の者』――心なき自分には理解できなくていい事なのだろう、と何の感慨も無くただ眺めるのみであった。


そんな折、『大侵攻』がリンドラを襲った。

溢れかえる魔物の大群に人々が逃げまどう中、魔導師は浮足立った。

「好機だ……この世界に復讐する好機だ!」

魔導師は少女を連れ、魔物の群れを率いる紅い眼の亜人に駆け寄った。

自分は異界からきた『協会』の者だ――見ろ! この傑作を! 


少女を目にした亜人は、自分を取り立てるよう必死に訴える魔導師にニヤリとうなづくと、少女を受け取り耳元に何かを囁く。

少女はうなずき、これからはこの亜人が主人なのか、と尋ねた。

魔導師はウンウンと笑顔で首を縦に振る。

ならば命令に従う――少女は“新しい主人”に言われた通り、魔導師を“破壊”した。


それからは、新しい主人に言われるがままにリンドラの町で破壊を繰り返した。

何も感じず、何も考えず――しかし破壊の最中、ふと、少女は違和感に気付いた。

共に破壊を続ける魔物達は、愉悦、喜び、興奮といった感情を露わにしていた。一方、自分にそう言った感情は一切ない……。

『人間』とは心を持つもので、自分はそうではない『魔の者』だと魔導師は言った。

しかし、同じ魔であるあの者たちには心というものがあるように思えてならない。

あの人間の魔導師は心がある故に自分を作り、魔物たちも心がある故に破壊を続けているではないのか? では、ならば心の無い自分とはいったい――。

そう考えた時、少女は何もできなくなった。

剣を落とし、下を向き、ただ立ち尽くすしかなかった。

何日も何日も、ただそこに立ち続けた。

悲しくもない、苦しくもない――ただ、一歩も踏み出せない。

これは、心が無いからなのだろうか……。


いつしか破壊の嵐は過ぎ去り、街には瓦礫と死体の山だけが残った。

灰にまみれ薄汚れたまま立ち続けていた少女は、自分もこの町のようにあとは朽ち果てていくだけなのかな――と、変わらず下を向き、そんなことを考えていた、その時――。


「よぉ、あんたもバケモノの仲間か?」


顔を上げると、目の前に左半身を包帯で覆った少女が立っていた。

ざわり、と胸のあたりがむず痒く揺れた。

「……わからないわ」

「ふぅん」

包帯の少女は、少女の返事に特に興味を示すことなく地面を探りはじめた。

「……あなたは、ここで何をしているの?」

「あぁ、ちっとな、忘れ物」

そう言って瓦礫をどかし始める。

少女はそのまま黙ってあっちを探り、こっちを探りとしていたが、しばらくして、

「お、あった」

と声を上げた。

そこにあったのは、命を亡くした人の体――。

包帯の少女は、あっけらかんとした言葉の調子とは裏腹に少し悲しげな顔をした後、瓦礫に埋もれた死体から赤い「半仮面」を拾い上げる。

そしてその仮面を試しに着けてみたが少し大きかったようで、不満そうにした後、そっと懐にしまいながら言った。

「あんたは何してんだよ」

「……わからないわ」

「ちっ、なんでもかよ」

少女が踵を返し歩きだす。

――が、数歩進んだところでふと立ち止まり、少し上をみてから振り返った。

「……一緒に来るか?」

「……どうして?」

少女の問いに、包帯の少女は少し恥ずかしそうに、

「あたしはその……人間だかんな。あんたも……きっとそうだろ?」

と答えた。

少女の胸が大きくざわついた。

――このざわざわはなんだろう……。

気づくと少女は、包帯の少女にむけて一歩を踏み出していた。


これは、創世宇宙の片隅、無限に広がる可能性のひとつ――

しかしそのざわつきこそが、少女にできた小さな小さな生まれたての“心”の種だった――。


――fin

考察
Ver3.5KKで追加された魔種30アタッカー。
【】付き抜擢の理由としてはテオちゃんの相方使い魔であるからか。
相手を翻弄する悪魔らしい、瞬間移動の荒らし向けアビリティを持つ。

ダッシュアタックを当てると瞬間移動で向いていた方向と逆へバックする。
瞬間移動は、使い魔2体が間に挟まる距離で、おおよそタワー半径程度。
助走距離は、使い魔1体半程度?で足りる。
必要速度は、なんと70コスト超覚醒のスロウアタックを受けても足りる。
(魔種のタイプ凶禍に速度バフのあるフルフルがいるので、彼のアーツを使った場合も要検証)

瞬間移動が派手であるのでそちらに目が行きがちだが、多少のスロウアタックは振り切ってダッシュアタックで逃げられるので強気にヒットアンドアウェイをこなせる点こそ強み。
むしろ、スパクリ確1を取れないゆえに一撃目を入れたあとの追撃をするか下がるかをその場その場で判断する必要がある。
超覚醒ATKが160なのでカウンターを受けて防衛に回ったときにも動きやすくするためにトライブサポートAでもう一声盛ると捗る。
またタイプ凶禍であるので、タイプサポート使い魔を持ってくるのも面白いか。

弱点としては明らかに低いDEF130。
相手ディフェンダーと距離を取りやすいがレンジアップ系とは違い、被弾自体を抑えるのはやや難しい。
瞬間移動と言ってもダッシュアタックで接近し殴るモーション分の一拍があるので、待ち構えられると一撃は貰う。
ただし上で述べた通り逃げやすいので2発目は貰いにくいのと、根本による一斉攻撃からも逃れやすいのは強み。
またダッシュアタック系使い魔全般の例に漏れず、アタッカーのフリッカーで壁を作られるとアビリティを無力化される。
他に、防衛時に逃走する敵使い魔にダッシュアタックを当てると自身がバックしてしまい追撃が難しくなることもある。
歴代使い魔だと助走の短いダッシュアタックの性質的に人獣のSTリヴァイに近い感覚になるが、それでも挙動が独特なので慣れるまで操作感に振り回されないよう注意。

あと、同コスト帯のパラケルススはDEFも上がるので終盤でも頭数に数えられたが、【】ガープは多少ステータスを盛っても終盤になると瞬殺されてしまう。
固定値持ちの根本使い魔やディフェンダー相手に耐性はある一方、荒らし以外で役割を持ちづらかったりと弱点もあるので豊富な魔種30コスト帯人材からの検討は慎重に。

中々面倒な同コストのリディア、キャンサー、ポポイのスロウアタックから逃げられるのは大きな強み。
流石にライヒハートや速度強化された神族30コストディフェンダーからは逃げられないが、40コストでも1度スロウアタックを失敗すればそのまま逃げることができる。
50コスト以上でも逃げれることには逃げれるが、流石にHPとDEFが低いのでそこまで保たないのがほとんど。


キャラクター説明
テオちゃんの相棒使い魔。
フレーバーテキストではテオ・テレーゼの過去について多くのことが語られている。
(テレーゼの相棒使い魔であるミリアの【】版フレーバーテキストはあくまでミリアとニドの物語で完結したため)
見世物小屋にいた頃のこと、彼女らの生んだ魔導師が『協会』関係者であること、アルス・ヴォルフの仲間であるマニカの誕生にも関係があるらしいこと、テオの半仮面の由来などが語られる。
(『協会』は設定資料などを読むとバン・ドレイルなどが関わる《教会》とは一応区別されている。ドゥクスや人造アルカナに関わるのが『協会』、多彩な次元や場所を行き来し《鍵》集めをしているのが《教会》)

+ 編集用コメント *編集が苦手な方はこちらへ情報提供お願いします
  • 40超覚醒(【】クロートー)及び覚醒60(カリオストロ)のスロウからは逃げられる事を確認。
    それ以上に関しては大体死滅してしまうので不明… -- 名無しさん (2017-02-05 22:16:41)
  • 70超覚醒のスロウから逃げられるのを確認。リヴァイと同じく距離さえ稼げればダッシュアタックできるのかも?
    とは言えD130なんで生き残れる状況のが稀だが -- 名無しさん (2017-02-11 22:21:22)
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  • そもそも覚醒状態でスロウの効果違うの知らなかった -- 名無しさん (2017-02-12 09:59:50)
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最終更新:2017年02月13日 17:00