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「第1話」(2007/07/09 (月) 05:18:03) の最新版変更点
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その鳥は男のすぐ前にいた。
男はなにげなく鳥に声をかけた。
「お前が口を利けるなら、いろいろ聞きたいんだがな。」
とりあえず言葉まで忘れていないことに安堵しつつ、次に何をすべきか考えていた。何故ここに居るのか、どうすれば記憶が戻るのかなどは後で考えることにした。明日のことは今目の前にある問題をクリアしてからだ、と刷り込まれているようだ。
「ワシが知っていることなら、答えてやらんでもないぞ!」
ふいに鳥が喋りだした。
男は驚きのあまり硬直して声が出ない。
見知らぬ世界、己の常識で考えてはいけない。解っていても混乱せずにはいられなかった。今更ながら、平静を保っていた自分が壊れていくのをどうすることも出来なかった。
「ワシが人間の姿にでもなれたなら、そこまで混乱させずにすんだんじゃが。すまんのぉ。」
鳥は申し訳なさそうに言った。
暫くして、落ち着きを取り戻した男は改めて鳥の方を向いた。
「先ほどは失礼しました。私は一切の記憶をなくし、ここで目が覚めたのです。」
「知っておる。ずっとここでお前をみていたからのぉ。」
男は鳥が喋るという事実をなんとか受け入れ冷静に話したが、そっけない鳥の返答に肩透かしを喰らった。
「ならば先ず、オレが何者か教えてくれ。それとあんたのことも。」
男は希望に満ちた眼差しで鳥に詰め寄った。
「すまんが、お前のことは何も知らん。それと、急に態度が変わってないか?・・・お前」
鳥は羽をバタバタさせながら言った。
「うむ・・・恐らく興奮して素の自分が出たんだろう。驚かせてスマン。」
「ま、まあいい。で、ワシの事じゃが・・・」
改めて体制を整えた鳥はゆっくりと深呼吸をして話し始めた。
「ワシはこの辺りを縄張りにしている鳥にすぎん。お前がワシの縄張りに現れた故、ワシがここに飛んできたと云う訳じゃ。」
男はふと頭に浮かび上がった疑問を投げかけた。
「何者か解らないオレに不用意に近づいて、襲われるかもしれないとは思わなかったのか?」
「こう見えてワシは逃げ足には自信がある。それにお前は気づいてない様じゃが、ワシの手下どもが見張っておるでの。ワシが捕まるか飛び上がれば襲うよう言ってある。」
(・・・鳥の手下か。なめられているのか?)
男はこのときの先入観をすぐ後悔することになる。
「もういいだろう。手下を紹介してやる。」
鳥はそういうと歩いて林の方へ向かった。
(そうか、飛ぶと襲う合図になってたんだよな。)
男は鳥を無言で見送りながら、その後姿に愛嬌を感じていた。
次の瞬間、男は青ざめた。
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光に包まれていた。
春の陽だまりのような・・・
このまま眠り続けたい。
突然、落ちる感覚に襲われた。
必死に手足をジタバタさせる。
下腹をなにかに掴まれるリアルな感覚。
このままでは地面に激突する。
痛い。怖い。恐怖で思考が止まる。
無闇にもがき続ける。
(嫌だ!死にたくない。)
次の瞬間、目前に真っ青な空が現れた。
まだ、状況が理解できない。
心臓の鼓動が耳に響いている。
手足は硬直している。
体中汗だくだ。
どうやら、夢を見ていたのだと気付く。
だんだん筋肉の緊張が緩んできたので、周りを見渡してみる。
四方は林しか見えない。今いるところだけ木々がないようだ。
水の流れる音が聞こえる。どうやらここは川原らしい。
自分は大きめの平らな石に寝ているらしい。
(・・・ここはどこだ?)
記憶がない。思い出せない。
「ま、思い出せないなら仕方ない。それより汗を流すか。」
かなりいい加減というか、能天気な性格しい。
側の川で顔を洗う。冷たくて気持ちがいい。
顔を拭こうと、自分を見て初めて自分の格好に気付いた。
(・・・スーツ???)
どうやら自分の意思で眠った訳でも、ここへ来たわけでもないことに漸く気付いた。
再び自分の記憶に集中してみる。
(だめだ。思いだせん。)
あっさり考えるのを諦めた。そうとういい加減な性格らしい。
(さて、なにからするべきか・・・)
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