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昔、この世界は巨人が支配していた。 人は食料若しくは奴隷として巨人に飼われていた。 あるとき、一人の英雄が現れた。 彼は人々を率い、巨人達に戦いを挑んだ。 力で圧倒的に勝る巨人を高度な戦術で次々と倒していった。 やがて世界のほとんどの巨人が人によって駆逐された。 それから人は文化を持ち、社会を構成した。 数百年後、人は大陸全土に散らばりそれぞれ独自の文化を発展させていた。 何故、如何にしてたった一人の英雄の出現のみで巨人に打ち勝つことができたかは、一切伝えられていない。ただ、巨人に勝った事実のみ伝えられた。 この大陸は北部に険しい山脈が有り、その北側は未だ未開の地だった。 今彼らが居るのはこの山脈の東の麓、人里離れた森の奥だった。 「ここから川沿いに2~3日下ると村がある。一番近い都市はそこから南に一月ほど行ったところにある。まず、村まで行って暫く滞在しこの世界の人に慣れ、文化や風習を学ぶと良い。」 シムルグは大雑把にこの世界について話すと、あとは自分で調べろと言わんばかりに今後の予定を決め始めた。 「まあ、服と最低限の旅支度は整えてやろう。あとは自らの力で道を切り開くがよい。」 「ちょっと待ってくれ。途中で獣に襲われたらそれまでなのか?こんな鬱蒼としたところだ、獣くらいいるだろう?」 「獣に襲われたらそれまでじゃ。と、言いたいところじゃが、さすがにそれは酷じゃのお。後で特製のお守りをやろう。」 「お守り?神頼みの運次第って訳か・・・。」 (死ぬな・・・オレ) 「安心せい!ここでのワシは神じゃ。事故にでも遭わん限り殺されはせん。」 (神ねぇ。ま、今は信じるしかないか。) シムルグしか頼るもののない今、例え騙されているとしても従っておくしかない。少なくともここで一人で生きていく自信がないルースだった。 先ほどからウズヌルが大鍋で作っていた〝何か〟から美味しそうな匂いが漂ってきた。山菜と木の実で作ったスープだった。 ルースは遠慮なくご馳走になりながら、思いつく限りのことを聞いた。 外はいつのまにか夜の帳が降りていた。 #center(){[[前へ>第3話]]|[[次へ>第5話]]}
鬱蒼とした林を歩いているハズだった。 周りは確かに鬱蒼とし、鉈かなにかで掻き分けないと歩けそうにない。 だが、この巨人の行く先には妨げる何者もなかった。 どうやら、頻繁に使っている道なのだろう。 どれくらい歩いただろう・・・ そろそろ一息入れたいと感じてきた頃だった。 目に前に少し開けた場所が現れた。 大きな岩を背に小さな小屋が建っている。 どうやらそれが目的地のようだ。 ふと、妙な違和感に包まれた。 小屋に近づいているのに辿り着かず、どんどん小屋が巨大化していた。 (そうか、巨人の家なんだよな・・・。) 漸く小屋に辿り着いた。 ドアの取っ手にすら手が届かない程の大きさに呆れながら、促されるがまま中へ入った。 小屋にはイスやテーブルはなく、真ん中に火を熾した後がありその周りに獣の皮を折り重ねた敷物が敷き詰められている。 何もない部屋に多彩な柄の敷物がハデに映る。 適当なところに腰をおろし、差し出されたコップの水を一気に飲み干した。 「あれ?大きくない。」 あらゆる物が巨人サイズのなか、何故人間サイズの食器があるのか疑問に思った。 「ここへは時折人間の客が来る。それは来客用じゃ。」 無口な巨人の代わりにお喋りな鳥が説明する。 「人食い鬼に人間の客?よほど彼は有名なんだな。」 ウズヌルが菜食主義者であることを知らなければ、客としてここを人間が訪れることはあり得ないとルースは考えた。 「ヤツはこの世界では有名じゃよ。じゃがヤツが菜食主義者であることは誰もしらん。ここに来る人間は一人だけじゃ。」 「一人・・・何者なんだ!その人間は。」 人食い鬼を恐れるなら近寄らないだろうし、出会っても戦うか逃げるかで一緒に小屋でくつろぐことには普通ならないだろう。 いくら人を食わないと言われても、それを信用する根拠がない。近づいた途端に食われるかもしれないと考えればやはり近寄らないだろう。 ルースが自分なりの結論を導き出すのとほぼ同時にシムルグが話し始めた。 「その人間はお前と同じ境遇の者じゃ。ただ、その者はワシの後ろにウズヌルが控えているのを見ただけで自分に敵意が無い事を悟りよった。故にその者は未だウズヌルが菜食主義者であることを知らない。いや、知る必要がないのじゃ。」 「つまりオレと違って、恐ろしく頭がキレるってことだな。それとも鋭い観察眼ってとこか?」 少し不機嫌な口調で答えながら、同じ境遇の存在に興味を覚えた。 「その者の話はここまでじゃ。その者に甘えてしまっては、この世界でこれから生きていく上であまりよろしくない。」 「ふん、優しいんだか、厳しいんだか・・・」 「優しさ故の厳しさと心得よ。」 「そうだな。そうゆう事にしておこう。」 確かにこの世界で残りの一生を終える前提なら、生活の基盤も人脈も自分で作った方がより人生を楽しめるだろう。生きる以上の目的がないのならば。 だが、いつか記憶が戻り、元の世界へ帰りたいと思ったとき、同じ境遇の存在が何かの役に立つかもしれない。 (誰がそうなのか、手がかりになる情報を持っておいたほうがいいな) 「どうやらその人間はこちらの世界でうまくやってるみたいだな。」 「ああ、この世界の多くの人間よりもよくやっておる方じゃな。」 (つまり出世して高い地位にいるってことだな) 「あんたの教えが良かったんだろうな。オレも頼みますよ!先生。」 「残念じゃが、ヤツにはこの世界の歴史と現在の世界観を大雑把に教えたにすぎん。ワシはなにもしとらんよ。」 「・・・そうなのか。」 (何もないところから出世してるってことは、かなり目立っている存在の可能性が高いな) 「すまない、話が大分それたな。この世界の事を教えてくれ。」 今はこれ以上情報を引き出せそうにないし、未だ混乱治まらない状態を解消する方を優先すべきと思い話を変える事にした。 「そうじゃな、本題に入るとするか。」 そう言ってシムルグはこの世界の現在の状況を話し始めた。 「今この世界は大きな戦などない平和な時代が100年以上続いておる。文化をもつ種族は人間のみで、他は滅ぶか世界の隅に隠れておる。ウズヌルもその一人じゃ。」 シムルグはルースが理解出来ているかなどお構いなく話を続けた。 #center(){[[前へ>第3話]]|[[次へ>第5話]]}

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