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「第5話」(2007/07/09 (月) 05:13:47) の最新版変更点
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この世界には魔力が存在する。
いや、魔法のような力であらゆる法則が捻じ曲げられている。
その力がどうゆう原理、法則で働いているのか未だ解明されていない。
その力の影響が顕著に見られるのは生物である。
異常に巨大化した陸上生物。重力を無視して飛ぶ生物。生命なき生物等。
その力を研究し自在に操ろうとする者もいる。だが、一般的には不思議な力のまま進歩はない。むしろ深く考えず受け入れることを常識としていた。
シムルグの存在も魔力によるところが大きく、それだけにその力の謎を究明したく研究し続けているらしい。
ルースは昨晩の話を振り返りながらゆっくりと頭の整理をしていた。
気付けば外は明るくなっていた。
(今日、ここを出よう。)
最終的にそう決断した。
いろいろ考えすぎて、結果とまどいや不安に駆られ、タイミングを失うことを酷く嫌う自分に気付いたのだ。
(どうにもならない時は行動あるのみ。閉じこもって怯えていてもなにも変えられない。結果がどうなろうが、それを受け入れるだけさ。)
ルースが自己分析するに、恐らく元々は事前にいろいろ考えすぎて無用に心配し、行動力や判断力を鈍らす性格だったのではないか。結果、機を逸して不本意な結果になる。
事前に組んだ計画通りに事が進まなければそれだけで挫折する。
それを克服する為に考えを煮詰めてしまう前に、とりあえず目先の行動予定を組んだ時点で行動を開始するよう務めてきたのではないだろうか。
心の底に巨大な不安があるにもかかわらず、動かなければならないという強迫観念の方が強く働いている自分から、失われている過去の自分を想像した。
同時に、これまで生きた中で学習したことは忘れたわけではなく、ただ表面的に思い出せないだけなのも解った。
本当は相当臆病で小心者。それを克服したい、又は他人に悟られたくない為に、浅はかで愚かな結果に嘲笑されても行動することを重んじたのだろう。
それを長い間繰り返してきたのだろう。相当刷り込まれているようだ。
(危なく、自分は物事に動じない腹の据わった人間だと勘違いするところだった。これから暫くは自分探しの旅になりそうだな)
自分の弱い所、苦手とする所は結構簡単に見つけられるだろう。だが、長所や得意とする分野は自分を正確に評価できないと見つけられないだろう。ただでさえ自分に対して否定的でとても低い評価をしているのだから、自分の長所を自覚しているとは限らない。
(おっと!考えすぎない。追々解ることさ)
ふと、他へ目をやると朝食の準備が丁度出来たところだった。
(これ食べたら今日出て行くことを伝えよう)
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昔、この世界は巨人が支配していた。
人は食料若しくは奴隷として巨人に飼われていた。
あるとき、一人の英雄が現れた。
彼は人々を率い、巨人達に戦いを挑んだ。
力で圧倒的に勝る巨人を高度な戦術で次々と倒していった。
やがて世界のほとんどの巨人が人によって駆逐された。
それから人は文化を持ち、社会を構成した。
数百年後、人は大陸全土に散らばりそれぞれ独自の文化を発展させていた。
何故、如何にしてたった一人の英雄の出現のみで巨人に打ち勝つことができたかは、一切伝えられていない。ただ、巨人に勝った事実のみ伝えられた。
この大陸は北部に険しい山脈が有り、その北側は未だ未開の地だった。
今彼らが居るのはこの山脈の東の麓、人里離れた森の奥だった。
「ここから川沿いに2~3日下ると村がある。一番近い都市はそこから南に一月ほど行ったところにある。まず、村まで行って暫く滞在しこの世界の人に慣れ、文化や風習を学ぶと良い。」
シムルグは大雑把にこの世界について話すと、あとは自分で調べろと言わんばかりに今後の予定を決め始めた。
「まあ、服と最低限の旅支度は整えてやろう。あとは自らの力で道を切り開くがよい。」
「ちょっと待ってくれ。途中で獣に襲われたらそれまでなのか?こんな鬱蒼としたところだ、獣くらいいるだろう?」
「獣に襲われたらそれまでじゃ。と、言いたいところじゃが、さすがにそれは酷じゃのお。後で特製のお守りをやろう。」
「お守り?神頼みの運次第って訳か・・・。」
(死ぬな・・・オレ)
「安心せい!ここでのワシは神じゃ。事故にでも遭わん限り殺されはせん。」
(神ねぇ。ま、今は信じるしかないか。)
シムルグしか頼るもののない今、例え騙されているとしても従っておくしかない。少なくともここで一人で生きていく自信がないルースだった。
先ほどからウズヌルが大鍋で作っていた〝何か〟から美味しそうな匂いが漂ってきた。山菜と木の実で作ったスープだった。
ルースは遠慮なくご馳走になりながら、思いつく限りのことを聞いた。
外はいつのまにか夜の帳が降りていた。
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