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鞄の中にはウズヌルが持たせてくれた食料が入っていた。 木の実や果実、干し柿のように保存が利く果実等も入っていた。 が、肉はなかった。 「・・・菜食主義者め。」 保存の利かない新鮮な果実から食べようと鞄をまさぐる。 ふと、シムルグがくれたお守りの木の実が出てきた。 「これの事をすっかり忘れてたなあ。本当に効力あるのか?」 クルミ大のその実を手にとってじっくり観察してみる。 目を凝らして見ていると腕を通じて白っぽいモヤッとしたモノが木の実に向かって流れていくのが見えた。 「なんだこれ。もしかして溢れた魔力が吸われているのか?」 もし体外に溢れ出た魔力のみを吸収しているのなら当面の課題を一つクリアしたことになる。 ルースはシムルグの気遣いに感謝した。 「言っといてくれたら尚いいんだけどな。ま、オレが課題にしてた問題など先刻承知だった訳だ。あなどれんな。」 果実を頬張りながら、次の課題について考えていた。 魔力を集中させ、腕力を上げたように早く走ることは恐らく可能だろう。 問題は重たい荷物を持つための腕力、又はその他の事に魔力を分散させた状態での稼動を可能にすることだ。 集中力にあまり自信のないルースは、この魔力の複数並行使用を可能にするのにかなりの時間と精神力の向上が必要なことに愕然とした。 「ここでは基礎的な操作方法だけ練習して、使いこなす為の鍛錬はこれから先すっと意識し続けるしかないな。メンドクサイな。コイツが仕事ならすぐ辞めるとこだ。」 コツコツ積み上げていくタイプの仕事は恐らく避けてきたのだろう。したい事をしたい様に生きてきたツケが回ってきたといったところだ。 自分の生き方を少し反省しつつ、目の前に叩きつけられている現実にため息をついた。 「結局、自分がどんな仕事をしていたか具体的に思い出せない訳だし、もしかすると地道に頑張る努力家だったかもしれない。・・・・・・それはないか。」 例の如く一人でブツブツ言いながら食事を済ませた。 「さて、修行の方法を考えなくては。」 同時に魔力を2種類以上の事に使用するという事は、単純に複数の思考を同時に行なうのと似ている。 常に意識して複数の事を同時に考えるのは大変な上、それが必要な場面とは切迫した状態なので尚のこと無理だろう。 特定の行動に限定して体に叩き込むしかないとルースは考えた。 「当面、必要と思われる魔力操作は・・・」 先ずは、足を意識して早く走ること。 次に荷物、特に無駄に重たいウズヌルの剣を持ち続けること。 あとは、目や耳などの感覚を強化したいが、これは魔力で操作可能かどうかも定かでない。 後から攻撃される可能性も考えて背中くらいは意識し続けたい。 「とりあえず、今すべきはこれくらいだろう。」 そう呟くと、剣を背中に背負ってお守りの木の実をズボンのポケットに押し込み、その辺りを走り始めた。 さほど走らないうちに、勢いよく転んだ。 「イテテ・・・。加速しすぎだっての。力の微調整から始めた方がよさそうだ。並行使用はその後だな。」 そう言って剣を鞄のそばに置き、今度はゆっくりと走り始めた。 太陽はあと数時間で沈むであろう位置にまで傾いていた。 ルースは重大な事をすっかり忘れていた。 火のおこし方と寝床の準備だ。 #center(){[[前へ>第8話]]}
鞄の中にはウズヌルが持たせてくれた食料が入っていた。 木の実や果実、干し柿のように保存が利く果実等も入っていた。 が、肉はなかった。 「・・・菜食主義者め。」 保存の利かない新鮮な果実から食べようと鞄をまさぐる。 ふと、シムルグがくれたお守りの木の実が出てきた。 「これの事をすっかり忘れてたなあ。本当に効力あるのか?」 クルミ大のその実を手にとってじっくり観察してみる。 目を凝らして見ていると腕を通じて白っぽいモヤッとしたモノが木の実に向かって流れていくのが見えた。 「なんだこれ。もしかして溢れた魔力が吸われているのか?」 もし体外に溢れ出た魔力のみを吸収しているのなら当面の課題を一つクリアしたことになる。 ルースはシムルグの気遣いに感謝した。 「言っといてくれたら尚いいんだけどな。ま、オレが課題にしてた問題など先刻承知だった訳だ。あなどれんな。」 果実を頬張りながら、次の課題について考えていた。 魔力を集中させ、腕力を上げたように早く走ることは恐らく可能だろう。 問題は重たい荷物を持つための腕力、又はその他の事に魔力を分散させた状態での稼動を可能にすることだ。 集中力にあまり自信のないルースは、この魔力の複数並行使用を可能にするのにかなりの時間と精神力の向上が必要なことに愕然とした。 「ここでは基礎的な操作方法だけ練習して、使いこなす為の鍛錬はこれから先すっと意識し続けるしかないな。メンドクサイな。コイツが仕事ならすぐ辞めるとこだ。」 コツコツ積み上げていくタイプの仕事は恐らく避けてきたのだろう。したい事をしたい様に生きてきたツケが回ってきたといったところだ。 自分の生き方を少し反省しつつ、目の前に叩きつけられている現実にため息をついた。 「結局、自分がどんな仕事をしていたか具体的に思い出せない訳だし、もしかすると地道に頑張る努力家だったかもしれない。・・・・・・それはないか。」 例の如く一人でブツブツ言いながら食事を済ませた。 「さて、修行の方法を考えなくては。」 同時に魔力を2種類以上の事に使用するという事は、単純に複数の思考を同時に行なうのと似ている。 常に意識して複数の事を同時に考えるのは大変な上、それが必要な場面とは切迫した状態なので尚のこと無理だろう。 特定の行動に限定して体に叩き込むしかないとルースは考えた。 「当面、必要と思われる魔力操作は・・・」 先ずは、足を意識して早く走ること。 次に荷物、特に無駄に重たいウズヌルの剣を持ち続けること。 あとは、目や耳などの感覚を強化したいが、これは魔力で操作可能かどうかも定かでない。 後から攻撃される可能性も考えて背中くらいは意識し続けたい。 「とりあえず、今すべきはこれくらいだろう。」 そう呟くと、剣を背中に背負ってお守りの木の実をズボンのポケットに押し込み、その辺りを走り始めた。 さほど走らないうちに、勢いよく転んだ。 「イテテ・・・。加速しすぎだっての。力の微調整から始めた方がよさそうだ。並行使用はその後だな。」 そう言って剣を鞄のそばに置き、今度はゆっくりと走り始めた。 太陽はあと数時間で沈むであろう位置にまで傾いていた。 ルースは重大な事をすっかり忘れていた。 火のおこし方と寝床の準備だ。 #center(){[[前へ>第8話]]|[[次へ>第10話]]}

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