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日が傾き、すっかり視界が悪くなっていた。 「そろそろ切り上げるか。」 足元はもう殆ど見えなくなっていた。 ほんの数時間だが力を調整し、全力ではないものの剣を担いで走れるようになっていた。 案外魔術師の素質あるんじゃないかとルースは思った。 魔力の扱いは筋力のそれと違い、力の流れをイメージして感じることなので、無用な力みは返って魔力の正確な伝達を妨げるのだと解った。 ただ、はっきりとイメージできる様になるまでまだ時間がかかりそうだった。 「なに、時間はたっぷりある。それに力を使えるようになるのが今は面白くて仕方がない。当分は鍛錬を怠らないだろう。」 他人事のように自己分析しながら鞄を置いてある方へ歩いていた。 なにげに森の方へ目をやる。 なにかの影が動いたような気がした。 全身に緊張が走る。 足を止め森の方をじっと見つめる。 なにも動きがない。 (気のせいなのか?) 気のせいなのか調べる方法は森に近づき、何も居ないのを確認する他ない。 だが、何かが居るとしたらそれはとても危険な行為だ。 (どうする?このままじゃ休息もとれな。行くしかないか) 意を決して、ゆっくりと森の方へ向かう。 恐らく役には立たないが一応剣を構える。 (魔力で目や耳を強化出来たらなぁ) すぐ逃げれる様に足を意識しつつ、耳を澄ませる。 もう殆ど目は役に立たない。 闇雲に森に飛び込むのはあまり利口な行為じゃない。 どんな結果でもいいから早くこの緊張から開放されたい衝動を抑えつつ、森のすぐ手前まで来た。 「だ、誰かいるのか!」 言葉が通じる相手かどうかも判らないが、一応声を掛けてみた。 何かが飛び出してもいいように剣を横に構える。 左手5メートル程の所から何かが飛び出した。 咄嗟に向き直って剣を構える。 「まってくれ!戦う気はねぇ。」 暗くて影しか見えないが、どうやら男のようだ。 ルースは緊張のあまり声が出なかった。 「信じてくれ。武器はここに置く。」 男はそう言って何かを地面に置いた。そしてゆっくりと川の方へ移動する。 どうやら硬直して動けないルースを隙のない戦士とでも勘違いしたのだろう。 川の近くは僅かに夕暮れの光を留めていた。 徐々に男の姿が顕になってゆく。 まだ顔はよく見えないが、皮っぽい鎧を身に付け襷状に何かを背負っているようだ。 中肉中背と言ったところか、筋骨隆々とはいかないが鍛えられた二の腕が見えた。 少し冷静を取り戻したルースもゆっくりと男と平行に川へ向かって歩き始めた。 「ここで何をしていた?」 漸く声を出すことが出来た。少し上ずっていたが仕方がない。 「信じてもらえないだろうが・・・・迷子だ。」 ルースはこの男の言葉が本当かどうか確認する方法を必死に考えていた。 「信じられないのも無理はねぇ。いくら迷ってもこんな所に人がいる訳がねぇ。だが、それはお互い様だろ?」 男は肩を竦めてそう言った。 言葉を探すルースを置いて、男は話を続けた。 「オレはレクトムから魔獣を追って来たんだか、途中で仲間とはぐれちまった。もう三日も彷徨っている。」 男の話しを聞きながらルースはある程度考えをまとめた。 とはいっても今自分が出来ることと、状況を軽く分析したに過ぎない。 「アンタが迷子なのは信じよう。だが残念なことにオレも迷子のようなものだ。アンタを助けられない。」 ここで疑り続けても疲れるし、奪われて困るものも持っていない。相手の実力が判らない以上戦うリスクは避けるべきだと考えた。 第一、緊張して体が自由に動かなくなっていたので、戦って勝てる自信が全くなかった。 「いや、こんな所で人に出会えるなんて奇跡だ。よければ同行させてくれないか。ここは一人では危険すぎる。」 確かにこんな所に人が居るのは有り得ないだろう。なにせシムルグの結界のすぐ傍だ。 男の言葉を信じれば、ここは相当危険な所なのだろう。 男の言うとおり一人よりは二人のほうが数段安全だろう。 だが同行するかはもう少し男の事を知ってから決めることにしよう。 「アンタ、火を熾せるか?暗闇で立ち話もなんだろう?」 「ああ、そうだな。ちょっと待っててくれ。」 そう言うと男は背負っていた袋を下ろし、中から道具をいくつか出しなにやら作業を始めた。 ズリズリと音がして暫く、なにかが焦げる匂いがしてきた。 パチパチと音がした後、赤い火種が闇に現れた。 男は手近の枯れ枝や落ち葉を集め、その中に火種を入れた。 あっという間に炎が辺りを明るくした。 男は休まず薪を集め始めた。 ルースも見よう見まねでそれらしい大きさの薪を集めた。 なんとか火を落ち着かせ、二人は焚き火を挟んで向かい合って座った。 男は焚き火でお茶を沸かしながら、自己紹介を始めた。 #center(){[[前へ>第9話]]}
日が傾き、すっかり視界が悪くなっていた。 「そろそろ切り上げるか。」 足元はもう殆ど見えなくなっていた。 ほんの数時間だが力を調整し、全力ではないものの剣を担いで走れるようになっていた。 案外魔術師の素質あるんじゃないかとルースは思った。 魔力の扱いは筋力のそれと違い、力の流れをイメージして感じることなので、無用な力みは返って魔力の正確な伝達を妨げるのだと解った。 ただ、はっきりとイメージできる様になるまでまだ時間がかかりそうだった。 「なに、時間はたっぷりある。それに力を使えるようになるのが今は面白くて仕方がない。当分は鍛錬を怠らないだろう。」 他人事のように自己分析しながら鞄を置いてある方へ歩いていた。 なにげに森の方へ目をやる。 なにかの影が動いたような気がした。 全身に緊張が走る。 足を止め森の方をじっと見つめる。 なにも動きがない。 (気のせいなのか?) 気のせいなのか調べる方法は森に近づき、何も居ないのを確認する他ない。 だが、何かが居るとしたらそれはとても危険な行為だ。 (どうする?このままじゃ休息もとれな。行くしかないか) 意を決して、ゆっくりと森の方へ向かう。 恐らく役には立たないが一応剣を構える。 (魔力で目や耳を強化出来たらなぁ) すぐ逃げれる様に足を意識しつつ、耳を澄ませる。 もう殆ど目は役に立たない。 闇雲に森に飛び込むのはあまり利口な行為じゃない。 どんな結果でもいいから早くこの緊張から開放されたい衝動を抑えつつ、森のすぐ手前まで来た。 「だ、誰かいるのか!」 言葉が通じる相手かどうかも判らないが、一応声を掛けてみた。 何かが飛び出してもいいように剣を横に構える。 左手5メートル程の所から何かが飛び出した。 咄嗟に向き直って剣を構える。 「まってくれ!戦う気はねぇ。」 暗くて影しか見えないが、どうやら男のようだ。 ルースは緊張のあまり声が出なかった。 「信じてくれ。武器はここに置く。」 男はそう言って何かを地面に置いた。そしてゆっくりと川の方へ移動する。 どうやら硬直して動けないルースを隙のない戦士とでも勘違いしたのだろう。 川の近くは僅かに夕暮れの光を留めていた。 徐々に男の姿が顕になってゆく。 まだ顔はよく見えないが、皮っぽい鎧を身に付け襷状に何かを背負っているようだ。 中肉中背と言ったところか、筋骨隆々とはいかないが鍛えられた二の腕が見えた。 少し冷静を取り戻したルースもゆっくりと男と平行に川へ向かって歩き始めた。 「ここで何をしていた?」 漸く声を出すことが出来た。少し上ずっていたが仕方がない。 「信じてもらえないだろうが・・・・迷子だ。」 ルースはこの男の言葉が本当かどうか確認する方法を必死に考えていた。 「信じられないのも無理はねぇ。いくら迷ってもこんな所に人がいる訳がねぇ。だが、それはお互い様だろ?」 男は肩を竦めてそう言った。 言葉を探すルースを置いて、男は話を続けた。 「オレはレクトムから魔獣を追って来たんだか、途中で仲間とはぐれちまった。もう三日も彷徨っている。」 男の話しを聞きながらルースはある程度考えをまとめた。 とはいっても今自分が出来ることと、状況を軽く分析したに過ぎない。 「アンタが迷子なのは信じよう。だが残念なことにオレも迷子のようなものだ。アンタを助けられない。」 ここで疑り続けても疲れるし、奪われて困るものも持っていない。相手の実力が判らない以上戦うリスクは避けるべきだと考えた。 第一、緊張して体が自由に動かなくなっていたので、戦って勝てる自信が全くなかった。 「いや、こんな所で人に出会えるなんて奇跡だ。よければ同行させてくれないか。ここは一人では危険すぎる。」 確かにこんな所に人が居るのは有り得ないだろう。なにせシムルグの結界のすぐ傍だ。 男の言葉を信じれば、ここは相当危険な所なのだろう。 男の言うとおり一人よりは二人のほうが数段安全だろう。 だが同行するかはもう少し男の事を知ってから決めることにしよう。 「アンタ、火を熾せるか?暗闇で立ち話もなんだろう?」 「ああ、そうだな。ちょっと待っててくれ。」 そう言うと男は背負っていた袋を下ろし、中から道具をいくつか出しなにやら作業を始めた。 ズリズリと音がして暫く、なにかが焦げる匂いがしてきた。 パチパチと音がした後、赤い火種が闇に現れた。 男は手近の枯れ枝や落ち葉を集め、その中に火種を入れた。 あっという間に炎が辺りを明るくした。 男は休まず薪を集め始めた。 ルースも見よう見まねでそれらしい大きさの薪を集めた。 なんとか火を落ち着かせ、二人は焚き火を挟んで向かい合って座った。 男は焚き火でお茶を沸かしながら、自己紹介を始めた。 #center(){[[前へ>第9話]]|[[次へ>第11話]]}

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