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なんとか迷わずに最初の川まで出ることが出来た。
改めて見ると流れは穏やかで、川に沿ってずっと川原が続いている。
当分は川沿いに歩いて行けそうだ。
足場は悪いが視界が広く、なにより迷わない。

半日ほど歩いただろうか。突然違和感を感じた。
痛みでも、不安でもない。なにか縛られていたのが開放された感じだ。

「なんだ?この感じは。」

足を止め、少し考えてから来た方へ戻ってみた。
今度は何かに圧迫される感じがした。

「そうか、結界が張られてたのか。たぶんシムルグのだな。」

いよいよここからはシムルグの手の及ばない、本当の一人旅の始まりだ。
ふと、疑問がよぎった。

「オレは何故あそこに留まらなかったんだ?オレらしくもなく無計画に見知らぬ土地で一人旅などありえない!」

今更何故そんな疑問が浮かんだのかさえ解らなかった。
都合よく魔術のせいにしてしまえば、シムルグに自分の思考をコントロールされていたと結論付けることができる。
しかしルースは粛然としなかった。
ただ、今更戻ったところで同じ手口で追い出されるのは明白だった。

「前に進むしかないか・・・。冒険とか挑戦とか、疲れることは好きじゃないんだけどなぁ。」

ブツブツと独り言を言いながら再び歩き始めた。

「せめてこの魔力ってヤツのことくらい教えてくれてもよさそうなものなのに。独学で修行するしかないか。」

恐らく本か何かで多少の知識は得ていたであろう気孔の要領で、単純にイメージしてうまく出来たのでなんとかなると思った。
だが、実際はそう簡単ではない。なにせ知識が乏しすぎるのだ。
だからと言って未熟なまま魔力を垂れ流している訳にもいかない。他者に気付かれれば無用なトラブルを招きかねない。
得てして敏感なヤツに親切で友好的な者などいない。
戦うはめにでもなれば最悪だ。何故ならルースは争い事が嫌いで、暴力で人を傷つけたこともなかった。
勿論武術、剣術等の経験もなかった。いくら魔力で馬鹿力が出せても、それだけで素人が戦いに勝てるはずもない。
ましてや相手が同じく魔力を所持している場合は手も足も出ない。

「せめて今出来る限りの鍛錬をしておこう。さて何が出来る?格闘や武器の扱いは一人ではほぼ無理だ。具体的な魔力の発動も知識がなさ過ぎる。イメージしようにもイメージがまったく沸かない。」

結論、彼はもし戦いになったら今の自分では勝てない。ならば戦いを極力避ける方法に徹底するほうがいいと考えた。

「トラブルを避けるには、先ず気付かれないことだな。力に気付かれ、目を付けられると面倒だ。あとは、戦いを避けその場を逃れる方法だな。」

自分の今後の目標をこの二点に絞り込んだ。具体的には魔力を押さえ込み他者に魔力を感じさせなくすること。人としての気配も消せるようになりたいが、人として不自然な行動は返って怪しまれる。
もう一点は、身を守ること。つまり、兎に角逃げる事だ。腰が抜けない限り、早く走れれば生き残る可能性は高いと考えた。

まだ人里までかなり距離があるだろう。ここで暫く修行しておいてから向かうことにする。

「さて、先ずは腹ごしらえだ。」

そう言って鞄をまさぐり始めた。