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次の日も授業中や休み時間はほとんど口を利いてくれなかったが時々目が合うとかすかに笑ってくれる
幸一はそれだけで十分嬉しかった。レンが少しでも心を開いてくれたような気がして
「霧島さん、先に行ってるよ」
幸一はそう伝えると格納庫へ向かう。心なしか足取りも弾んだ
鍵を開け電気をつけて奥の机にカバンを放り投げる、できるだけ早く準備をしておきたい
「よ~し今日は風も落ち着いてて良い感じだ!」
レーダーや他の機材を見ながら着実にフライトの準備を進めていった
しかし30分経っても未だレンの姿は無い
「昨日あれだけ遅れちゃったし今日は逆か~でも仕方ないかな」
40分…50分…一向にレンの姿が見えず幸一も不安になってきた
「どうしちゃったんだろう…ミラーは何時でも飛べる状態なのに」
ガラッと音がしてレンが部屋の中へ入ってくる
「どうしたんだよ~随分時間掛かっ…」
そこまで言った所で幸一の表情が変わる
「どうしたの!?その格好」
幸一の前に現れたレンの姿はまるで大雨の中を傘もささずに歩いてきた様に濡れていた
「ごめん…遅くなっちゃって」
レンは自分の服が濡れている事には全く触れずにカバンを置くがその中からも水が溢れてくる
「今バスタオル持ってくるね!そのままだと風邪引いちゃうよ」
幸一は慌てて奥にあるバスタオルと小型のストーブを持ってくる
季節は夏…まさかこの時期にストーブを使うことになろうとは…物は置いておくべきであると幸一は思った
「ありがとう…」
バスタオルで体を拭きストーブにあたる
「一体どうしたの?!そんなにビショビショになって」
「…転んで下の池に落ちた」
全くのウソだという事は幸一にはすぐ理解できた
「クラスの連中にやられたの?僕が言ってくるよ」
レンは立ち上がる幸一の手を握り止める
「…駄目、私は池に落ちたって言ってるでしょ」
レンが何故そこまでして隠すのか幸一には分からなかった
しばらくしているうちにレンの服は乾き問題ない状態になる
「もういいよ、飛ぶ時間がなくなっちゃうし」
「そうだね、じゃ見せてよ」
幸一が離れようとした時手を掴む
「え?!」
「君も飛ぶんだよ」
「え、えぇぇー!僕も?!」
幸一はまさかのサプライズにビックリする
「だってミラーは1人用だし」
「少し広めに取ってあるから大丈夫だよ、こういうのは自分の体で体験するのが一番早いから」
(1人用に2人が入るって事は…体触っちゃうじゃん!?)
「ねぇ、早く上がってよ。又スカートの中覗く気なの?」
「ち、ち、違うよ!すぐ上がります~!」
慌てて駆け上がりコックピットに入るとすぐにレンも入ってきた
流石に2人では狭く操作もしにくいと思いきやレンは幸一の前に座ると一気にギアを上げる
「良い感じだね、これならすぐにでも飛べる」
小さなコックピットに年頃の男女が2人、幸一は高鳴る胸の鼓動を知られないように必死に抑える
(霧島さん大胆すぎるよ~僕だって男なんだからこんな事されたら…)
思わず抱きしめたくなる感情をギリギリの所で抑えながらも女性が発する独特の匂いに落ちそうになっていた
(あ~もう駄目だー!)
遂に我慢できなくなった幸一は後ろからレンを抱きしめようとした瞬間
ギュィィィィィ!!!
「うわぁぁぁぁ!」
物凄い加速に幸一はシートの背もたれに押さえつけられる
(ウソだろ!?ミラーってこんなに加速できたっけ)
ゴォォォォォォ!!!
急上昇しミラーはあっという間に高度1000M辺りまでたどり着くと一定の速度に戻る
幸一はまるで別の飛行機に乗ってるかのような錯覚さえ覚える
「桜井、乗る者によって機体は大きく変わる。これで分かった?」
「う、うん良く分かったよ」
ミラーは大きく上に下にとマニューバをえがく
マニューバとは、航空機の機動、動き方のこと。主に固定翼機に対して用いられる。
戦闘機同士の接近戦(ドッグファイト)手法や、アクロバット飛行の演目解説を行なう際に用いる場合が多い。
「ギヤァァァ!」
幸一は自分が考えていた以上の衝撃に軽い恐怖すら感じた
「もう分かったから!お願いだからスピードを緩めてよ!」
「え~どうしようかな…クスッ」
レバーを緩めるとミラーのスピードは下がり幸一が何時も操作している速度まで落ちた
「情けないな、でも初めてなんだし仕方ないね」
「う、うん…」
幸一は驚いた、飛行技術もそうだが何よりレンの変化にだ
普段からは想像もつかないほど明るい笑顔で話しかけてくる彼女はまるで別人のようだった
「何、私の顔に何かついてるの?」
少し不思議そうな表情をするレンから幸一は思わず目をそらしてしまう
(ヤバイ…可愛い…)
一時は恐怖で忘れてしまった感情が落ち着いたことによって再び蘇ってきた
「さて、一旦休憩しようか」
レンはそう言うとミラーを滑走路に向けて軌道変更し下降していく
「霧島さん、凄すぎだよ…」
「この位練習したら君でもできるようになるよ」
無事にミラーを止めると2人は降りる
「どうだった?感想が聞きたいな」
「何が何だかさっぱりって感じだよ」
今までに見たことも無い程上機嫌に話すレン
「フライトスーツを付けないで飛んだの初めてだな~」
「別に着なくても良いじゃん、暑苦しいし」
レンは手を胸の辺りでパタパタと上下に振りミラーに触れる
「ねぇ桜井、聞いても良い?」
「うん、何?」
ミラーに寄りかかりながら空を見上げる
「君は何のために飛ぶの?」
「え…何のためにって…それは…」
急に振られた質問に対して幸一は言葉を詰まらせた
「どうなんだろう…鳥みたいに自由に空を飛べて気持いいからかな~なんて」
少しおどけて見せた幸一だったがレンは空を見上げたまま何も言わない
(うわ~すべっちゃったよ…)
きまずそうにしている幸一にレンは静かに口を開く
「私も同じだよ…」
「お、同じ?!」
幸一は半分冗談で言ったつもりだったがレンは真剣な眼差しで同じ答えだと返す
「地上の呪縛から解き放たれる瞬間、辛い事も悲しい事も飛んでる時は忘れられるから」
「あ…何か分かる気がするな」
レンは幸一を見つめて少し笑う
「何で君に声をかけたのか、話しをしようと思ったのか…分かったよ」
「教えてよ~」
「フフッ…秘密さ」
幸一は笑顔で語るレンの顔を見てこれが本当の霧島レンだという事が理解できた
(本当の霧島さんはこんなに明るくて元気なんだ、学校での姿の方が偽りだ)
それから日が暮れるまで2人は空を飛んだ
次の日も授業中や休み時間はほとんど口を利いてくれなかったが時々目が合うとかすかに笑ってくれる
幸一はそれだけで十分嬉しかった。レンが少しでも心を開いてくれたような気がして
「霧島さん、先に行ってるよ」
幸一はそう伝えると格納庫へ向かう。心なしか足取りも弾んだ
鍵を開け電気をつけて奥の机にカバンを放り投げる、できるだけ早く準備をしておきたい
「よ~し今日は風も落ち着いてて良い感じだ!」
レーダーや他の機材を見ながら着実にフライトの準備を進めていった
しかし30分経っても未だレンの姿は無い
「昨日あれだけ遅れちゃったし今日は逆か~でも仕方ないかな」
40分…50分…一向にレンの姿が見えず幸一も不安になってきた
「どうしちゃったんだろう…ミラーは何時でも飛べる状態なのに」
ガラッと音がしてレンが部屋の中へ入ってくる
「どうしたんだよ~随分時間掛かっ…」
そこまで言った所で幸一の表情が変わる
「どうしたの!?その格好」
幸一の前に現れたレンの姿はまるで大雨の中を傘もささずに歩いてきた様に濡れていた
「ごめん…遅くなっちゃって」
レンは自分の服が濡れている事には全く触れずにカバンを置くがその中からも水が溢れてくる
「今バスタオル持ってくるね!そのままだと風邪引いちゃうよ」
幸一は慌てて奥にあるバスタオルと小型のストーブを持ってくる
季節は夏…まさかこの時期にストーブを使うことになろうとは…物は置いておくべきであると幸一は思った
「ありがとう…」
バスタオルで体を拭きストーブにあたる
「一体どうしたの?!そんなにビショビショになって」
「…転んで下の池に落ちた」
全くのウソだという事は幸一にはすぐ理解できた
「クラスの連中にやられたの?僕が言ってくるよ」
レンは立ち上がる幸一の手を握り止める
「…駄目、私は池に落ちたって言ってるでしょ」
レンが何故そこまでして隠すのか幸一には分からなかった
しばらくしているうちにレンの服は乾き問題ない状態になる
「もういいよ、飛ぶ時間がなくなっちゃうし」
「そうだね、じゃ見せてよ」
幸一が離れようとした時手を掴む
「え?!」
「君も飛ぶんだよ」
「え、えぇぇー!僕も?!」
幸一はまさかのサプライズにビックリする
「だってミラーは1人用だし」
「少し広めに取ってあるから大丈夫だよ、こういうのは自分の体で体験するのが一番早いから」
(1人用に2人が入るって事は…体触っちゃうじゃん!?)
「ねぇ、早く上がってよ。又スカートの中覗く気なの?」
「ち、ち、違うよ!すぐ上がります~!」
慌てて駆け上がりコックピットに入るとすぐにレンも入ってきた
流石に2人では狭く操作もしにくいと思いきやレンは幸一の前に座ると一気にギアを上げる
「良い感じだね、これならすぐにでも飛べる」
小さなコックピットに年頃の男女が2人、幸一は高鳴る胸の鼓動を知られないように必死に抑える
(霧島さん大胆すぎるよ~僕だって男なんだからこんな事されたら…)
思わず抱きしめたくなる感情をギリギリの所で抑えながらも女性が発する独特の匂いに落ちそうになっていた
(あ~もう駄目だー!)
遂に我慢できなくなった幸一は後ろからレンを抱きしめようとした瞬間
ギュィィィィィ!!!
「うわぁぁぁぁ!」
物凄い加速に幸一はシートの背もたれに押さえつけられる
(ウソだろ!?ミラーってこんなに加速できたっけ)
ゴォォォォォォ!!!
急上昇しミラーはあっという間に高度1000M辺りまでたどり着くと一定の速度に戻る
幸一はまるで別の飛行機に乗ってるかのような錯覚さえ覚える
「桜井、乗る者によって機体は大きく変わる。これで分かった?」
「う、うん良く分かったよ」
ミラーは大きく上に下にとマニューバをえがく
マニューバとは、航空機の機動、動き方のこと。主に固定翼機に対して用いられる。
戦闘機同士の接近戦(ドッグファイト)手法や、アクロバット飛行の演目解説を行なう際に用いる場合が多い。
「ギヤァァァ!」
幸一は自分が考えていた以上の衝撃に軽い恐怖すら感じた
「もう分かったから!お願いだからスピードを緩めてよ!」
「え~どうしようかな…クスッ」
レバーを緩めるとミラーのスピードは下がり幸一が何時も操作している速度まで落ちた
「情けないな、でも初めてなんだし仕方ないね」
「う、うん…」
幸一は驚いた、飛行技術もそうだが何よりレンの変化にだ
普段からは想像もつかないほど明るい笑顔で話しかけてくる彼女はまるで別人のようだった
「何、私の顔に何かついてるの?」
少し不思議そうな表情をするレンから幸一は思わず目をそらしてしまう
(ヤバイ…可愛い…)
一時は恐怖で忘れてしまった感情が落ち着いたことによって再び蘇ってきた
「さて、一旦休憩しようか」
レンはそう言うとミラーを滑走路に向けて軌道変更し下降していく
「霧島さん、凄すぎだよ…」
「この位練習したら君でもできるようになるよ」
無事にミラーを止めると2人は降りる
「どうだった?感想が聞きたいな」
「何が何だかさっぱりって感じだよ」
今までに見たことも無い程上機嫌に話すレン
「フライトスーツを付けないで飛んだの初めてだな~」
「別に着なくても良いじゃん、暑苦しいし」
レンは手を胸の辺りでパタパタと上下に振りミラーに触れる
「ねぇ桜井、聞いても良い?」
「うん、何?」
ミラーに寄りかかりながら空を見上げる
「君は何のために飛ぶの?」
「え…何のためにって…それは…」
急に振られた質問に対して幸一は言葉を詰まらせた
「どうなんだろう…鳥みたいに自由に空を飛べて気持いいからかな~なんて」
少しおどけて見せた幸一だったがレンは空を見上げたまま何も言わない
(うわ~すべっちゃったよ…)
きまずそうにしている幸一にレンは静かに口を開く
「私も同じだよ…」
「お、同じ?!」
幸一は半分冗談で言ったつもりだったがレンは真剣な眼差しで同じ答えだと返す
「地上の呪縛から解き放たれる瞬間、辛い事も悲しい事も飛んでる時は忘れられるから」
「あ…何か分かる気がするな」
レンは幸一を見つめて少し笑う
「何で君に声をかけたのか、話しをしようと思ったのか…分かったよ」
「教えてよ~」
「フフッ…秘密」
幸一は笑顔で語るレンの顔を見てこれが本当の霧島レンだという事が理解できた
(本当の霧島さんはこんなに明るくて元気なんだ、学校での姿の方が偽りだ)
それから日が暮れるまで2人は空を飛んだ