ワールドヒーローズ

ジャンル:元祖色物格闘ゲーム

格闘ゲーム黎明期に登場した色物キャラによる格闘ゲームの草分け的存在。
2021年度の『SDガンダム』シリーズではない。
製作はアルファ電子工業(『2』以降はADKに社名変更)。
『ワールドヒーローズ』『2』『2JET』『パーフェクト』の全4作。通称は「ワーヒー」など。

基本的には『ストリートファイターII』に非常に影響されているが(リザルト画面での敗者の負け顔など)、
登場するキャラがどれもこれも濃いというのが一番の特徴。
タイトル通り、実在する歴史上の英雄達を集めた最強の英雄決定戦…という触れ込みだが、
その実、漫画アニメ(主に80年代ジャンプ作品)に激しく影響された歪んだキャラ像が話題を呼んだ
怪僧極悪海賊など、史実ではヒーローと言い難い連中もいるが、気にしてはいけない。

しかし、単なる色物模倣ゲームではなく、毎回積極的に特殊なギミックを搭載することにより、
今日でも存在するシステムを確立するというパイオニア的な面も存在する。
この独特なシステムやギミックを搭載し、他社とは違うスタイルを提供した結果、
この時代にあった「ストIIの模倣」と呼ばれる対戦格闘ゲーム群から、
『ワールドヒーローズ』という独立したネームバリューを獲得したことは、充分に評価出来るであろう。

絶版商業漫画の無料公開サイト「マンガ図書館Z」にて、
雑君保プ氏が手がけたゲーメスト連載の『2』のギャグ漫画が公開されている。興味のある方はぜひ。

時は流れて2018年末、『月刊ヒーローズ』でまさかの漫画連載開始
稼働当時の漫画の復刻版ではなく、完全新規作品である。
2020年まで連載された(全3巻)。
ちなみに作者の横尾公敏氏は元ADK社員で、WHシリーズでは企画・デザイン・グラフィックに関わっていた人物でもある
(ゲーム内のグラフィックではラスプーチン、マッドマン、ジャックを手掛けている)。
ひょっとしてこの漫画の連載を機に格ゲーの新作が開発中なのか……?




ワールドヒーローズ



ストーリー

「史上最強の英雄は誰なのか?」
この謎が解かれる日がついに来た。
この疑問を持ったブラウン・シュガー博士の「タイムマシーン」が完成したのだ!
史上最強であることを示すため呼応した8人の英雄たちが今、時を越える。

概要・システム

1レバー+3ボタン(パンチ、キック、投げ)
パンチとキックはそれぞれ、押した長さにより強弱が決定する。

1992年7月、MVS(業務用NEOGEO)にて稼働。
ROM容量は82Mbit。(1Mbitは1MBの8分の1の単位で、8Mbit=1MBとなる)


記念すべき初代作品。

プレイヤーは全8キャラ(うち女性一人)、同キャラ対戦は不可と、
さらにはあからさまに『ストII』キャラに近い性能のキャラが多く反響を呼んだ。
だが、この頃はまだキャラは大人しかった
特徴的なのが「デスマッチモード」と呼ばれる特殊ルールバトルで、
その名の通り、接触するとダメージを受けるリングロープや地雷などが使われた、
実際するプロレス試合を彷彿させるシステム。
画面端での待ち戦法を抑制する為だと思われるがイレギュラー要素が強く、
純粋な腕比べになりづらいため評判はあまりよくなかった。
なお、「髪切りデスマッチ」という負けたら坊主頭になるというものもあった。

ゲーム的にはバランスが悪く、格闘ゲーム史上類を見ない、
ダイヤグラム10:0という伝説的な数値が付く組み合わせも出てしまった。
またコマンド技も、変に工夫されたものが目立つ。
特にハンゾウフウマは基本的に波動昇龍キャラなのだが、コマンドはそれを模倣しまいと、
烈光斬は↓→+パンチ、光龍破は→↙↘+パンチという、少々ひねった感じとなっている
(しかもちゃんと入力しないと技は出ない)。
また、デミトリの今や代表格のロマン技ミッドナイトブリスの独特の入力コマンドである、
「↓→↘+パンチ」というのも実はこのゲームが初出で、ブロッケンの対空技「ハリケーンアーム」がそれ。
そして真空波動拳でお馴染みの↓↘→↓↘→+パンチというコマンドも、ダブル烈光斬が「↓→↓→+パンチ」という入力で初出。
但しこちらの方は普通の必殺技であるが。

キャラクター

  • 使用可能キャラクター
  • CPU専用キャラクター
ギガス(最終ボス)


ワールドヒーローズ2



ストーリー

「史上最強の英雄は誰なのか!?」
この疑問を解くために「タイムマシーン」を完成させたブラウン・シュガー博士。
そして、それぞれの時代で最強を誇る英雄達の時空を超えた戦いが行われたが、
その疑問に終止符が打たれることはなかった。
あれから一年・・・ニューヒーロー6人を加え、
今、再び史上最大のバトルが始まる。

2の概要・システム

1レバー+3ボタン(パンチ、キック、投げ)


1993年4月、MVSにて稼働。
ROM容量は146Mbit。
100メガショックシリーズ第4弾であり、サードパーティ初の100メガ越えのゲームである。

新キャラ5人を追加し、システム的にもパワーアップして帰ってきた作品。
同キャラ対戦も可能になり、デスマッチモードもパワーアップしている。
「投げ返し」や「跳ね返し」等の意欲的なシステムが搭載された。
投げ返しは2D格闘では定着しなかったが、後に「投げ抜け」として搭載されることが多くなり、
跳ね返しは今日における「飛び道具反射技」の原形となった
(条件である「直前ガード」自体は『シュマイザーロボ』というゲームの方が先)。

デスマッチモードでは、ラウンド制を廃止し「シーソーゲージ」という独特のシステムを採用。
これは2人分の体力が1本のゲージで繋がっており、片方がダメージを受けると、もう片方の体力が回復し、
シーソーのようにお互いの体力が増減するルールで、妨害の多いデスマッチモードならではのシステムと言えなくもないが、
試合展開がグダグダになりやすく、あまり好評とは言えなかった。
後にこのシステムを採用し、正当進化させた格闘ゲームは恐らく『餓狼伝 Breakblow』シリーズくらいだろう。

ゲーム内容も、前作と打って変わって対戦ツールとしてかなり耐え得る物へと仕上がっている。
ただそれでも粗が多く、パンチボタンを連打することで行える「コンビネーション攻撃」が、キャラによっては高性能すぎてハメが成立してしまったり、
上記の投げ返しもシステム上「7回繰り返したら、先に仕掛けた方が自動的に勝ちになる」という判定だったり、
飛び道具返しも、割と判定が甘い所もあり延々と飛び道具を跳ね返すだけで試合が終了してしまったりと、作り込みが足りない部分が多い。
ちなみにコマンド技の受付もこっそり変えられており、→↙↘+パンチも→↓↘+パンチで出せるようになっている。

しかし、これらの意欲的なシステムが功を奏し、ここで『ワールドヒーローズ』の名が単独で力を持つ程となった。

余談だが、このゲームでのエリックのステージ曲である「白夜のフィヨルド」のアレンジは、
フジテレビのニュース番組『ニュースJAPAN』のOPとして実に6年間も使われており、「日本一有名な格闘ゲームの曲」という異名を持っている。

2のキャラクター

  • 使用可能キャラクター
  • 2で追加された使用可能キャラクター
  • CPU専用キャラクター
ネオギガスDIO(最終ボス)


ワールドヒーローズ2JET



ストーリー

世界中の英雄を集め、一本勝ち抜き大会形式で5日間にわたって繰り広げられる超武会・・・。
しかし、その華やかな大会の裏で暗躍する黒い影が・・・。
予期せぬ戦いの渦に巻き込まれて行くヒーローたち・・・。
果たして暗黒超武会とは何か?そして、漆黒の闇にうごめく者の正体は?

2JETの概要・システム

1レバー+2ボタン(パンチ、キック)

入力の長さで強弱が決定するのは変わらないが、投げボタンが廃止され、相手方向にレバーを入れて、
ボタンの長押しで発動する様に変更。
ボタンを押してからワンテンポ遅れて投げることになるので、感覚に慣れないといけない。
投げボタンであったCボタンは挑発ボタンとなり、レバーとの組み合わせで様々な挑発が可能。


1994年4月、MVSにて稼働。
ROM容量は178Mbit。

『2』のマイナーバージョンアップ版。しかし、単なるバージョンアップとは思わせないほど変更点も多い。
本作での追加キャラは英雄に対する悪漢二人となっている。
JETの名の示すとおり、ダッシュとバックステップが追加され、ゲーム展開がスピーディーになったのが特徴。
反面、通常技・必殺技は全体的に前作よりも隙が多めになっていたり、カウンターダメージや体力差補正といった要素がより激しくなり、
どちらかと言えば「技の重み」を感じさせる調整になっている。
また、キャラクターのバランスを「攻撃型」「スピード型」などに分けられるようにし、
同じキャラでも性格付けを出来るようになっている。
その一方、不人気だったデスマッチモードと「投げ抜け」が削除された。
感情を表す「字幕システム」は対戦している当人は読んでいる余裕はないがギャラリーを楽しませた。

またこれまでのシステムで投げに振り分けられていたCボタンが挑発専用となり、試合中にフェイントとして機能する。
…目的で作られたはずなのだが、実質テンポの速くなった試合展開で挑発をすること自体自殺行為であり、殆ど意味の無い機能となってしまった。

2JETのキャラクター

  • 使用可能キャラクター
  • 2JETで追加された使用可能キャラクター
  • CPU専用キャラクター
ゼウス(最終ボス)


ワールドヒーローズパーフェクト



ストーリー

暗黒超武会から一年・・・。
全世界に平和が戻り、自らの時の流れに帰っていった英雄たちのもとに、
またしてもブラウン・シュガー博士からの手紙「第三回世界英雄大会」の招待状が届いた。
修行の成果を試す者、ライバルとの決着をつけようとする者、
それぞれの決意を胸に英雄たちが集結する。
それを聞きつけたゼウス達も前回の雪辱を晴らすべく乱入をたくらむ。
すでに波乱含みの大会・・・。
だが、真の恐怖はそれだけではなかった!

PERFECTの概要・システム

+ システム
1レバー+4ボタン
操作系が大幅に変化し、ボタン単体で小と中、同時押しで大攻撃の「疑似6ボタン構成」と変化した。
 Aボタン…………小パンチ
 Bボタン…………中パンチ
 AB同時押し……大パンチ
 Cボタン…………小キック
 Dボタン…………中キック
 CD同時押し……大キック

  • エクストラアタック-ABCボタン同時押し
 キャラ個別の特殊動作で、後年のストIII3rdでいうパーソナルアクションのようなもの。
 効果は全ての通常攻撃をキャンセルしたり、ゲージを溜めるといった使い道のあるものから、
 ひたすら長いだけの挑発などネタ技まで様々。

  • 挑発-レバー+BC同時押し
 レバーニュートラル・←・↓・→でそれぞれ異なった挑発になる。
 中には気絶モーションと同じものもあり、うっかり間違えて攻撃してきた相手を返り討ちに……と上手い具合には行かず、
 攻撃を食らってもいないのに突然気絶モーションを始めても嘘だとバレバレであった。

  • 投げ-相手に近付いてレバー入れABorCD同時押し
 キャラによって、レバー前入れor後ろ入れおよびボタンでそれぞれ別の投げが出る。

  • 打撃防御攻撃
 後年のガードポイント付き攻撃。キャラそれぞれ特定の通常攻撃に設定されている。
 飛び道具を潰したりは出来ず、どちらかというと攻撃相殺のイメージに近いか。

  • ガードはじき攻撃
 相手のガードを崩す攻撃。キャラそれぞれ特定の通常攻撃に設定されている。
 はじかれた方は一度レバーをニュートラルに戻さないと防御し直せない。
 状態は五分なので、はじかれても反応さえ出来れば次の攻撃をガードすることは可能。

 多段技でトドメを刺すと、KO時ボイスが追加ヒットするごとに再生される。
 バグでもなんでもなく仕様である。
 主な加害者はマッスルパワージョニー・マキシマムラスプーチン
 主な被害者はシュラ(「負けたッスー!!」)、ドラゴン(ホォ~!!)、ジョニー・マキシマム(Shiiiit!!)。

  • ダメージ補正
 さりげなく補正が仕込んであり、体力が少なくなるほど攻撃力と防御力が上昇する。
 ADK側の意図としては、対戦での緊張感を維持するため、窮地から一発逆転する可能性を高めるための補正らしい。
 しかし元々攻撃力の高めな本作では、このおかげで同じ技でも減る時と減らない時の差が極端になり、
 より一層大味な印象を残すことに。まぁ体力ゲージなんて飾りです。

  • HEROゲージ
 攻撃を当てると増加するゲージ。HEROゲージが溜まっている時に対応する必殺技及び究極奥義を出すと強化版になる。
 ゲージは1本しかなく、通常版と強化版を任意で使い分けることは出来ない。
 強化されるのは主に演出と判定であり、ダメージ自体は強化版の方が減らない技すらある。
 なお勘違いされやすいが、HEROゲージは特定の技を強化するだけで、究極奥義使用条件とは直接関係無い。

  • 究極奥義
 所謂超必殺技使用条件は体力50%以下だけである。
 体力が50%以上あるなら、たとえHEROゲージがMAXでも究極奥義は出せない。
 HEROゲージがMAXならパワーアップ版となる。

1995年5月、MVSにて稼働。
ROM容量は226Mbit。

シリーズ完結作にして集大成。よりスタンダードな格ゲーになった。
パワーゲージや究極奥義(超必殺技)など、他のゲームで人気を得たシステムも盛り込まれている。
大味なのは変わりないが、バランス的には一番安定している作品。

なお、本作からは「ハンゾウ」ではなく「服部半蔵」といったように、キャラクター名を正式名で表記するようになっている。

しかし、隠しコマンドで無調整のボスが使えることが初期から発覚してしまったため、
アーケードでの稼働は短命に終わってしまった。
それでも、対戦格闘ツールとしては円熟な域にまで達しており、
ワールドヒーローズの実質的な最終タイトルとして相応しい完成度に仕上がっている。

※熟練者同士だとここまで駆け引きが熱くなる例

PERFECTのキャラクター

  • 使用可能キャラクター
  • CPU専用キャラクター(孫悟空とNEO-DIOは隠しコマンドで使用可能)
孫悟空(乱入キャラ)、ゼウス(中ボス)、NEO-DIO(最終ボス)


その他のゲーム

  • 熱闘ワールドヒーローズ2JET(GB)
1995年にタカラから発売されたゲームボーイ用対戦格闘ゲーム。
2JETの全キャラクターを使用出来るが、全て二頭身にデフォルメされている。
独自要素として究極奥義(超必殺技)が追加された。
当時、SNKの格闘ゲームは熱闘シリーズとして同様の仕様で複数発売されていた。

  • ワールドヒーローズゴージャス(PS2)
2007年10月にSNKプレイモアから『NEOGEOオンラインコレクションvol.9』として発売されたPS2用ソフト。
初代からパーフェクトまでのアーケード用作品4作を収録した復刻版である。
パッケージイラストは、かつて『ワールドヒーローズ』シリーズのイラスト担当だったさいとうつかさ氏が書き下ろしている。
なお、氏の画風は十数年の間に大きく変化しているため、どちらかというと少年漫画のような爽やかな絵柄になっている
(特にジャンヌと良子は非常に可愛らしくなっている)。


MUGENにおけるWHシリーズ

全キャラが存在する。移植されているキャラは『パーフェクト』準拠のものが多いが、
ネオジオバトルコロシアム(NBC)』に登場したキャラはそちらの性能のキャラも製作されている。
NBC版は今風にアレンジされているが、原作準拠のものは全体的に火力が高く設定されている。
WHP仕様でも、HEROゲージをボタンで任意に使い分け出来たり、HEROゲージ専用究極奥義があったり、
本来体力が赤くなってからでないと使用出来ない究極奥義がゲージストック出来たりと、
どちらかというと『CVS』のSグルのような解釈をされているものも見られる。

全体的にスピード感の増した2000年代以降のゲームと比べれば動作が重く、キャラ自体も数年前に作られたものが多いため、
AIの増えてきた今のMUGEN動画ではイマイチ光らないかもしれない。
しかし、コンボゲーと真っ向から対立するような重い攻撃は逆に新鮮に感じられる面もある。
ただの必殺技1発で10割などはその最たる例と言えるだろう。
キャラ自体は古くから存在しているが、AIが未搭載、または簡易AIしかないキャラも存在する。
+ キャラの入手状況
  • キャラ、AI入手可能
ハンゾウ、フウマ、ドラゴン、ラスプーチン、ブロッケン、マッスルパワー、J・カーン、
キャプテンキッド、マッドマン、ジョニー・マキシマム、リョウコ、シュラ、DIO、ジャック、ゼウス

  • WHの再現度が高いキャラが存在しないor入手不可能だが、アレンジ仕様やNBCのキャラが存在する
ジャンヌ、ギガス

  • 入手不可能
エリック、呂布、悟空

なお、MUGENのワーヒーキャラの多くは連続判定の技でKOすると何度もやられボイスが再生されるという点までしっかりと再現されているため、
一部の相手をこの手の技でKOすると非常にカオスなことになる。
詳しくはマッスルパワーの項にて。

ちなみに、デスマッチモードもタッグ相手にすることでMUGENでも擬似的に再現が可能。
こちらも詳細はデスマッチの項で。


最終更新:2023年06月10日 11:44