当て投げ

打撃技をガードさせてから相手に近付き、ガード硬直が解けた所でそのまま(一般的には通常投げで)投げてしまう戦法のこと。
当て身投げとは逆で、 当てた方が投げる。
固め(打撃で攻め続ける戦法)に対する裏の選択肢であり、ガードで固まる相手を崩す際に効果的。
これに対する対策は、打撃技をガードする前ならば、
  • 小パンで暴れる(発生前に潰す)
  • 無敵技で潰す(無敵で回避・投げスカりを潰す)
  • ジャンプする(掴まれない)
  • バックステップする(投げ間合いから逃げる)
など何らかの動きを見せれば、まず防止できる。
打撃技をガードした場合でもタイミングが甘ければリバーサル必殺技で潰すことができ、
上手いタイミングでも投げに来たところを投げ返せば逆転可能。
もちろん投げに対する対策をとると、対の選択である打撃に負けることも多い。
さらにコマンド投げで仕掛けられた場合は、作品によっては暴れても無敵時間で抜けられるし、投げ返しもできないので注意。

『KOF』や『ファイターズヒストリー』など、作品によってはコマンド投げコンボに組み込めるものもあるが、
これはただの連続技であり、この項で言う所の当て投げとは全くの別物なので要注意。

この当て投げと密接に関わる要素に「リバーサルの投げ無敵*1」と「投げと打撃の相対的な判定の強さ」という二つの要素がある。
前者が短く設定されているゲームでは当て投げが容易であり、
後者で「投げ>打撃」という判定強さの場合は通常投げが割り込み手段として強力になる。
両者を備え持つ場合は当て投げが容易な上に、若干遅れても生半可な判定では逆に投げで潰されるという一方的な状況になる。
このため、投げを攻撃手段(崩しの一種)と解釈したゲームでは前者、
投げを防御手段(割り込み)と解釈したゲームでは後者を取り、
もう一方は弱体化させる場合が殆どである。

格闘ゲームの原点である『ストリートファイターII』シリーズでは、
  • 投げ抜けが無い(後に投げ受け身が追加されるもダメージが少量入る他、ダルシムの折檻など連続してダメージを与える、所謂掴み投げは受け身不能)
  • 投げ間合いが非常に広い(通常投げでも昨今のコマ投げより広い)
  • 投げに失敗してもコマンドが→+中or強Pなので通常技が出るだけ、投げのスカリモーションなどは無い
  • ごくわずか(1F)だが、ガード硬直が解けないまま投げることができる状態が存在する
などの要素から当て投げが強力な戦法になり、今なお問題視するプレイヤーが存在する。
肯定派と否定派の対立は根深く、2ちゃんねるの格闘ゲーム板では今でも議論スレが存在する程。
特に当て投げ性能がヤバかったのが『II'』のベガで、サイコクラッシャーが性能およびコマンド(←タメ→+P)の関係上、
「サイコクラッシャーを中以上で出してレバー入れっぱなしのままボタン連打すると、相手のガードと同時に着地して即投げ」という、
お手軽な割に凶悪な当て投げ(通称「サイコ投げ」)が可能になっており、文句無しの最強キャラであった。

だが、時代を経るに従って、
  • 投げ抜けの追加(→投げてもノーダメージで仕切り直しに)
  • 投げ間合いの弱体化(→小技をガードさせた後は間合いの外で、ガード硬直が切れた瞬間に投げるのは不可能)
  • 通常投げの威力が減少し、同時にコンボダメージが増加(→当て投げのリターンが減少)
  • 投げスカリポーズが追加(→投げ失敗時のリスクが増大)
  • 地上戦の比率が減少(→当て投げが機能する場面自体が減少)
等々、コンボゲー化していく格闘ゲームのバランスの変化と共に弱体化し、
「一方的に相手を封殺できる戦法」から「崩しに使う一戦術」程度に落ち着いている
(もっとも投げからコンボに繋がる作品もあるため、コンボゲーにおける当て投げの強さは作品ごとに様々である)。

一方『ストリートファイターII』の続編である『ストリートファイターIII』ではブロッキングを仕込んだ当て投げなどが逆に強力で、
投げがブロッキングを崩す有効な手段であることも手伝って「投げゲー」などと呼ばれるようになった。

また、最も投げが強いと言われる『GUILTY GEAR』シリーズでは、
  • 通常投げに失敗しても通常技が出る
  • 発生0Fで切り返しにも使える
  • 空中版もあり(『XX』以降)
  • ほとんどが追撃可能(無条件はごく一部)
  • 投げ抜けが無いため、対応が困難(ACで投げ抜け可能に)
等々非常に高性能。おまけに『GGX』~『青リロ』までは、投げ失敗後の通常技を1Fで立ち状態に戻せるFD仕込みというテクニックまである。
このおかげで通常投げがリスクほぼ無し。
流石にガード硬直中を投げることはできないが、かなり猛威を振るっていた(『XX/』以降はほぼ無くなった)。
また、空中通常投げの対空性能が高く「空投げゲー」と言われることもあった。

ちなみに大概の格ゲーでは暗黙の約束として「ガードポーズ・ガード硬直中の相手は(少なくとも通常投げでは)投げられない」
というものがあるのだが、この約束を守らないとどうなるかが分かる話として、
ガードポーズを投げてしまうと設置技や飛び道具等のガードポーズを取れる行動中に投げを出された場合、
後ろ入力で歩けず回避もままならないと言った状況に陥る(ムラクモの地雷爆破投げ等)。
これを解決するために相手が投げを行った時にガードポーズを解くといった処理を行うと、
先に出した飛び道具等をガードできなくなるという事態に陥る(『サムライスピリッツ』シリーズ恒例のパピーガード不能バグなど)。
さらにガード硬直中の相手も投げることができる『ジョイメカファイト』では、
人操作での当て投げが脱出不能になってしまい、『サムライスピリッツ 斬紅郎無双剣』でも、
キャンセル可能な通常技をガードさせてコマ投げを入力すると、投げ間合いの外でもそのまま投げてしえるため、永久共々猛威を振るっていた
(有名なのは牙神幻十郎(修羅)の近立ち中斬り→雫刃、リムルルの立ち蹴り→ルプシ テク ヌムなど)。
つまり、そういった無言の約束があるのにはちゃんとした理由があったというわけである。
昨今では『BLAZBLUE』シリーズなどもこの約束を破ってはいるが、
このシリーズは相手がヒット硬直中やガード硬直中だと投げ抜けの受け付け時間が普通より延びる仕様となっている
(これは大半のコマンド投げですら例外ではない)ために、投げのせいでバランス崩壊という事態にはなっていない。
ただし抜けやすい分投げ技のリターンそのものも非常に大きいため、狙う価値は十分にある。
また、投げが成立する前に何かしらのコマンドを入れている(暴れている)と「スロウリジェクトミス」となり、
投げ抜けが不可能になるため単純に暴れが有利というわけでもなく、このあたりは良調整と言える。


MUGENにおける当て投げ

MUGENでは投げの途中で防御側が勝手に復帰した場合、多くは攻撃側が投げの動作を一人で続けることになるため、
投げ抜けできるかどうかの設定は攻撃側が行う。
このため、防御側のAIが投げ抜けを行うかどうかというのは、
「MUGEN本体の機能として組み込まれているAIがたまたま投げ抜け用のcommandを実行する」か、
「攻撃側が勝手に投げ抜けさせる」の二つに一つとなるため、AI戦で見ることは非常に稀である。

また、MUGENではリバーサルの無理解と、MUGENの仕様と一般的なcnsの記述方法の組み合わせの都合により、
硬直後すぐに投げで掴めるように設定してあるキャラが大半である。
このため2P側かつ発生1Fの投げ技限定で1Fではあるが、
実質的にガード硬直が解けないまま投げることができる状態がほとんどのキャラに発生し得る。
ガード硬直が切れる前後のMUGEN内部の処理は、
  1. プレイヤー操作やAIの行動を決定する常時監視ステート(-3、-2、-1ステート)が処理される。
  2. この時点ではまだ内部ではガード硬直が切れておらず、ctrlが無効なのでchangestateなどを受け付けない。
  3. ガード硬直にあたる150番台ステートが実行され、ctrlが有効になると同時にガードポーズにあたる130番台のステートに移る。
という工程になっている。
ところが、130番台ステートから他のステートに移ることができるキャラクターはほぼ存在しておらず、
攻撃をガードした方が1P側だった場合、処理が2P側に移る。2P側は相手が130番台のステートにいるので通常ガード状態だと判定し、
ここで投げの攻撃判定が出ると確定となる。しかも攻撃側のcnsが相手のガード硬直中(150番台ステート)には、
投げ属性のhitdefを出さないようにしてあっても、現実に130番台にいるので出てしまう。
なお、ガー不攻撃もガード状態に関係なく当たる攻撃なので、もちろんこれも確定する。
どちらもHitdefのGuard.distパラメータや、AttackDistステコンでガードポーズ移行距離を0にしておくと良い。
ちなみに投げ技の発生が2F以上であった場合、キャラクターの処理順序が変更され、たとえ2P側であっても先に処理が行われる。
このため、発生が2F以上の投げ技では必ずしも投げは確定しない。

また1P側でも、投げのhitflagに-を付けているだけで実行トリガー自体に制限がかかっていない場合、ほぼ同様の現象が起こる。
これは、hitflagによる成否判定がプレイヤーの処理が終わった後に行われるのが原因である。
なお2P側とは違い、こちらはhitdefの実行トリガーにp2stateno!=[150,155]などを追加すれば防止可能。

なお、130番台のステートに常時監視ステートと全く同じステコン群を記述すれば、
150番台から130番台ステートに移った時点で行動が可能になる。
だが、この仕様を見越してガード硬直の時間を設定しているキャラクターも存在するので、
慣例上130番台ステートには最低限の記述だけを行っている製作者が多い。
さらに、たとえガード硬直が解除されていても防御側に投げを回避する手段が無いため、実質的に確定してしまうケースもある。
ジャンプ移行モーションを掴むことができるようにしたい場合は別だが、
そうでなければhitdefの実行トリガーにp2stateno!=40を追加しておいた方がよい。

この辺りの仕様を利用し、猶予0Fの目押しとなるディレイキャンセルをかけ、
小技をガードさせた時点で投げを確定させる凶悪AIを組むことも可能。
また、キャンセルで出せない投げ技であっても、技の発生より長い有利フレームが生じる状況なら
相手側のgethitvar(ctrltime)やgethitvar(hittime)などを参照することで容易に確定させられる。
AI製作者の善意により、この凶悪な当て投げ連携を明確に狙った立ち回りをするAIは少ないが、
高確率で牽制技として1F発生の投げを出すAIの場合、意図せず確定させているケースもある。
一方でフレーム数設定の関係上、最速キャンセルで上記の投げ確定が成立してしまっているキャラクターもいるが、
こればかりはMUGENだからしょうがない。

ちなみに、この確定連携はヘルパーから相手のstatenoを監視し、
2P側では相手のガード解除後1Fには発生1Fの投げ技が出せないようにすることで防止可能。
ガード解除後には複数回のchangestateが行われるため、prevstatenoの監視だけでは防止できない。
なお上記のような確定連携ではなくても、「硬直中にキー上要素を入れっぱなしにしておく」、
「リバサで無敵技を出して回避する」などのテクニックが必要になるレベルの当て投げはいくらでもある。

ちなみに少数ではあるが、原作再現キャラや格ゲーに準拠したシステムのキャラクターの中には、
「相手のガード硬直や仰け反りが解除された直後、あるいは起き上がり直後のnフレームは投げで掴むことができない」
ように設計されているキャラも存在する。
この制御にもprevstatenoは役に立たず変数を使わざるを得ないが、本体の変数が足りなければヘルパーの変数で代用することも可能。

MUGENのAIで高頻度で当て投げをするAIには、無敵医師氏作(AIは平成センチ氏)のポチョムキンや、サチ氏作のダークかりん(旧バージョン)などが存在する。

暗転と当て投げ

上述の通り、当て投げというのは相手に(ヒット・ガードによる)硬直を与え、ガードを固めようというつもりにさせた上で、
投げ技が「見てから反応して回避行動を取れない早さのガード不能攻撃である」ことを利用し投げてしまうというものであるが、
超必殺技系の投げの場合、発動時に時間停止を伴う暗転演出などが入ることにより、「攻撃側が投げを使ったことがばれてしまう」ために、
仕掛けられた側が反応できるようになってしまうという問題がある。
そこで超必殺投げなどの場合、商業ゲーでも一部の技を除き暗転を見てからではジャンプなどでの回避が間に合わない(不可能な)ように設定されている。
一般的には暗転後も継続する時間停止を利用し、投げる側だけが一方的に動ける間に投げ判定を出して成立させてしまうというのが多いと思うが、
MUGENの場合、superpauseを使った時間停止中でもctrl=1の状態でさえあれば(つまり暗転前に硬直に入っていたのでなければ)、
時間停止中にキー上要素入力をすれば「見かけ上のchangestateは起こらないのに内部的には既にジャンプ予備動作ステートに移動している」状態になるらしく、
投げ側が「相手のジャンプ予備動作は掴めない」ような記述にしていると、時間停止中に赤枠を当てるだけでは暗転中に投げを確定させることができない。
この辺り、暗転中に攻撃が発生する打撃技が時間停止中のキー後ろ入れでガードされてしまう現象と似たことが投げとジャンプでも起こっている形である。
変数などを用いて「暗転前に相手がジャンプ予備動作に入っていなかった場合はジャンプ予備動作でも掴めるようにする」記述を作ることもできるが、
投げられる側のキャラが「ジャンプ予備動作中は投げ無敵」になっている場合も往々にしてあるので、
確実に「暗転を見てからジャンプ回避不可能」にするなら処理の順番を変え、暗転する前に投げの成否を判定した上で、
投げ動作(投げすかり動作)の方で暗転を演出として入れるのが簡単で確実である。
ザンギのFABのような「暗転したタイミングではこれから掴みかかるようなポーズで暗転が終わってから捕まえる(ように見える)」技についても、
AIRの設定、changeanim2を入れるタイミングなどで「処理は暗転前に投げ成否判定を成立させつつ見た目は暗転後に捕まえる(ように見える)」
設定にすることが可能。


関連項目: 格闘ゲームテクニック一覧


*1
「投げ無敵」と記述するが、この項では「(相手が設定する)投げで掴めない時間」ではなく、「(自分が設定する)投げで掴まない時間」とする。
これは主に「ジャンプ中」と「ガードリバーサル」のことを指す。
どちらも防御側が投げ無敵を設定してしまえば(防御側としては)問題はないが、
前者は一部コマンド投げにある「低空なら掴める」という特性を活かすため、後者は一部ゲームの「硬直中でも掴める」という特性を活かすため、
または上記の「相手のリバーサルの投げ無敵」に合わせるために、防御側が投げ無敵を設定していないことが多い。
投げというのは非常に強力な攻撃手段である。故に掴める状況というのはよく考えて設定すべきであり、
逆に防御側が無闇にnothitbyなどを使ってこれらのステートで無敵を設定すべきではない。
なお、例外的にジャンプ移行に関しては、common1.cnsでジャンプ移行用に設定されている40番ステートの他にも、
ハイジャンプなどのために40番以外のステートがジャンプ移行に使われていることがあるので
statenoをトリガーにすることは難しく、またジャンプ中であればstatetype=Aをトリガーにできるが、
「ジャンプ移行中は立ちくらいになる」ことを再現するためにジャンプ移行のstatetypeがSにされていることも多いので、
投げを仕掛ける側が「ジャンプ移行ステートを掴めない」ように規定するのは難しい。
一応、ジャンプ移行を空中判定とし、打撃判定に対するHitOverRideを設定して地上食らいに移行させるといった方法もあるが、
こちらはMUGEN豆知識の記載の通り仕様が何かと特殊なこともあり、
作者によってはジャンプ移行に限り、防御側がnothitbyなどで投げ無敵を設定していることも稀にある。


最終更新:2020年08月02日 09:01