通常投げ

通常投げとは、格闘ゲームにおいて基本となるシステムの一つである。
主な特徴は、近接間合いのみで使用可能な発生がそこそこ早くガード不能な攻撃であること。
ガードを崩す基本行動であり、投げの上手さおよびその対処でプレイヤーのレベルがある程度分かる。
2D格闘ゲームにおいて近接時の読み合いはいかに投げを読むかにかかっているといっても過言ではなく、
投げ潰し、投げ抜け潰し、投げ潰し潰しなど様々な行動が見られる熱い部分である。

ただ、現在では格ゲーの基本とでも言うべきシステムだが、初期の頃はその辺の認識が不明瞭だったのか、
『ストI』には投げシステム自体が存在せず、『ストII』以後でもCPU限定キャラは投げを使えない事が結構あった。
(例:対戦限定でCPUが使えた初代『龍虎の拳』では、全10人中6人が投げを使えない)。
一方で新しい作品でもキャラ付けとして、アースクェイクのような投げられることの無い「デカキャラ」や、
アポカリプスのような投げることも投げられることも無い「超デカキャラ」が存在するケースも見受けられる。
なお、最初に「投げ」が搭載されたゲームは『熱血硬派くにおくん』である
(ほぼ投げしか存在しないプロレスゲー及び相撲ゲーや柔道ゲーは除く。
 そもそも当時のプロレスゲーは、CPUに掴み掛ると9割の確率で自分の方が投げられてしまうため、「投げようとするな!」と言われる事が多かったし)。

基本システムの一種のため各ゲームごとに統一した入力システムが用いられる。
採用している入力方法としては、
  1. 指定されたボタンの同時押し
    (1998年以降の2D格闘ゲーム全般、『ストIII 3rd』以降の『ストリートファイター』シリーズ、『アルカナハート』、
      『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ)
  2. 専用のボタンが用意されている
    (初代『餓狼伝説』、『ワールドヒーローズ』、『スーパーマッスルボマー』、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ)
  3. 一定距離で特定のボタン+左右どちらかの入力
    (1997年以前の2D格闘ゲーム全般、『ストIII 2nd』以前の『ストリートファイター』シリーズ、『ヴァンパイア』、『MVC』シリーズ、『GUILTY GEAR』)
などいずれも簡易なものであり、複雑なコマンドが要求されるコマンド投げとは区別されている。
もちろん、コマンドが簡易な分性能は劣る。

有効な間合いはゲームおよびキャラによって異なるが、ほぼ近接間合いであり、
モーションは相手を掴んでからの行動があてられることが多い。
また、空中で使えるゲームも存在するが空対空および地対地のみ有効であり
空対地や地対空で有効な通常投げは基本的に存在しない(コマンド投げならばある)。

無効な状況で使用した場合、1と2ではすかりモーションが出ることがほとんどであるが、
3の場合そもそもすかりモーションがなかったり、通常技が出るので出る技の硬直によっては隙が無かったり、
自動二択によるキャラ差を産み出したり(『ヴァンパイア』)、FDCによるテクニックなどに発展する(『GGX』)ケースも見られる。
また、1の同時押しの場合、完全な同時押しが必要だと人操作では非常に出しづらいため、数Fの入力ズレを許容するシステムになっているが、
それを利用した「移動投げ」というテクニックで投げ間合いを広くすることができる作品も多い。

投げに関しては元祖である『ストII』において非常に強力であり、様々な物議を醸した。
特に当て投げに関しては20年後の今でも論争が続いている(詳しくは当該項目を参照)。

初期では回避方法が飛ぶくらいしかないケースも多々見られたが、現在では投げを仕掛けられた側が同コマンドを入力することにより、
投げを抜けられる「投げ抜け」が実装されているケースがほとんどである。
これによって投げ抜けが効かないコマンド投げとの差別化もさらに進むこととなった。
また、作品によっては明らかに技後の硬直状況下であるのにも拘らず、「投げ抜け」や「投げ受け身」ができるケースもあった。
しかしこれらに関しては後年で見直され、明らかな反確状況下においては不可能となっている。


MUGENにおける通常投げ

MUGENでは、投げ全般は相手のステートを奪うことで再現されるため、内部的には乱舞技ロック系必殺技も同じ分類となる。
総称して「ステート奪取技」「ステートを奪う攻撃」などと呼ばれることもあり、スーパーアーマーの前には無効化される
(このため、初期のアーマーキャラに見られた「投げられるとアーマーが解除される」の再現が面倒なことになる)。
ステートを奪った相手は行動やステータスなどを思うままにすることができ、例えばやられ画像を攻撃側が指定することができる(特殊やられ)。
これが「MUGENではキャラクターの変身や交代を再現できない」という原因でもある。
代表的な対策は以下の3つ。
  1. ステートを奪われたら(またはダメージを受けたら)元の姿に戻るようにする
  2. 本体のやられ画像を透明にし、ヘルパーでやられ画像を表示する
  3. 投げ無敵を付加するとともに打撃および飛び道具に対するhitoverrideを実行し、hitdefのp2statenoやtargetstateを無効化する
極端な話、ステートを奪うと同時に即死させることも出来るので、凶悪キャラはステートを奪われないようにするのが基本とされる。
+ 反応投げ抜け

1.

相手が投げを仕掛けたことを見てから、投げ抜けを成立させること。基本的に人間操作の際に用いられる用語。
事前モーションの短い通常投げを見てから外すのは至難の業だが、これが可能になれば防御が非常に固くなる。
成功させるにはある程度の読みと、投げられた瞬間にきっちりコマンドを入れられる正確さが必要となる。

なお『ストリートファイターIII』における「しゃがみグラップ」や(3Dだが)『バーチャファイター』シリーズにおける「避け投げ抜け」のような、
他の入力と合わせて投げ抜けを保険として仕込んでいる場合は、一般的に反応投げ抜けとは言われない。

ちなみに、各ゲームの達人・筆頭クラスともなると(作品にもよるが)標準装備だったりする。人間の限界ってスゴイね!
…と思われるが、投げ抜けの受付時間は6F程度(『KOF』は12Fぐらい)なため、
大抵の作品では投げを食らってから人間が反応するのは、現実的に不可能(格ゲーでの限界反応速度が12Fと言われているため)。
実際は投げを使われそうな所で、確実に投げ抜けをしているだけのことである。
本当に見てからだったら投げの存在意義ないしね。

2.

CPU操作キャラが、プレイヤー側の通常投げに対して確実に投げ抜けしてくる様を指す。
上記1.の元となった言葉であり、主にCAPCOM作品に顕著で、いくら通常投げを仕掛けてもサクサク抜けられてしまう。
まぁ、CPUからすればこちらが投げを仕掛けたのはコマンドを入れた時点でほぼ筒抜けなのだから、仕方ないことではあるが…。
ただし上述通り反確状況下に於いて投げ抜け不可能となっている作品の場合はCPUがいくら超反応だろうがお構いなく問答無用で決まる。

MUGENでは「投げられた側が投げ抜け用のコマンドを入力したら投げた側が投げ抜け用のステートに飛ばす」という仕様で再現されている。
そのためAIは、投げ抜けを受け付けている数フレームの間に、MUGEN本体がランダムで実行するコマンドが運良く入力された時しか投げ抜けできない。
確率自体もかなり低くなるため、AIに対しては打撃に比べて投げの方がはるかに通りやすいこともあって、投げはかなり有効な攻撃手段となっている。
もっともいわゆる強AIに話を限ると、相手の投げ間合いに入った途端に高確率で投げてくるため、投げ抜け以前に相手に投げられることが多かったりする。

なお、凶悪キャラによく搭載されている「投げやロック技から脱出する能力」は投げ抜けと似て非なるものなので注意。
これらは公式で「やってはいけない」とされている行為である。そうした行為が前提となっている構造だからこその凶悪キャラなのだが。


最終更新:2023年12月11日 09:54