ファイターズヒストリー


-グレートグラップル開催のお知らせ-

概要

『ファイターズヒストリー』は、1993年に今は亡きデータイースト(通称デコ、Data East COrporationの略)が製作した、
アーケード用対戦型格闘ゲームである。
翌年の1994年には続編『ファイターズヒストリーダイナマイト』も発売、家庭用ゲーム機への移植も行われた。
略称は『ファイヒー』『FIH』等。続編のダイナマイトは『FHD』と略される。

本作は普通じゃないものを作ることにかけては天下一品のデータイーストの代表作の一つであり、
「デコゲー」と称される同社独特の世界観が構築されている。例えば、
等々。
またシステムにも本作ならではの独自のものが存在する(後述)。
『ダイナマイト』がNEOGEOソフト全盛期の時代に発売されたこともあり、知名度は比較的高い。



作品解説

ファイターズヒストリー

+ ストーリー
一年に一度だけ開催される世界異種格闘技選手権大会「グレートグラップル」。常勝無敗の帝王、Kが主催するイベントである。
かつては、世界最強を自負する格闘家達が集うに相応しいイベントであった。しかし、優勝者は常にKであった。
決して表の世界には姿を現さない彼のことを、 人々は「伝説の神の使い」と呼び恐れていた。
もはや開催の是非さえも問われていた「グレートグラップル」。
しかし、今年も命知らずの9人の格闘家が、名乗りを上げてきた。
あるものは破格のファイトマネーに魅せられて、またある者は、格闘家の名誉のために……。

シリーズ第一作。1993年稼動。
本作のコントロールパネルはそれ以降のシリーズとは違い『ストリートファイターII』と同じ6ボタン式であった
(1レバー、スタートボタン、パンチとキックのボタンがそれぞれ弱・中・強の3つ)。
最終ボスであるKとは、同社のアクションゲーム『カルノフ』の主人公、カルノフである。
また、このゲームはCAPCOMと一戦交えたことでも有名となったタイトルでもある*1

家庭用向けには、1994年5月27日にスーパーファミコン(以下SFC)版が発売されており、
隠しコマンドでボスのカルノフとクラウンが使用出来る。
2022年7月22日からは、このSFC版が『カービィのきらきらきっず』『ディーヴァ STORY6 ナーサティアの玉座』と共に「Nintendo Switch Online」にて配信され
最新ハードでいつでもどこでもプレイできるようになった。

キャラクター

  • 使用可能キャラクター
  • CPU専用キャラクター
クラウン(中ボス)、カルノフ(最終ボス)

ファイターズヒストリーダイナマイト

+ ストーリー
決して表の世界に姿を現さない謎の格闘家「K」が主催した「グレートグラップル」。
一年前、敗北を喫し、屈辱の炎に身を焦がした「K」が、再び格闘家達を呼び寄せた…。
一年間の鍛錬により、驚異的な新必殺技を身に付けた前大会参加者の9人を加え、謎の格闘家「K」に挑むため、
新たに2人の格闘家が集結した。今、熱い闘いの幕が、切って落とされようとしていた……。

シリーズ第二作。1994年3月17日稼動。『ファイターズヒストリー』の続編である。
海外名は『KARNOV'S REVENGE(カルノフズリベンジ)』。
本作からデータイーストはNEOGEOへと移行、SNKのアーケード筐体であるMulti Video System(MVS)向けに製作されており、
操作系は6ボタン制から4ボタン制に変更された。ROM容量は122Mbit。

システム変更に伴いグラフィックも一新、ほぼ別のゲームといっても良いほどバージョンアップした。
本作からシリーズの持ち味である異常な濃さが満載され、非常にデコらしい作品となった。

使用可能キャラクターは、前作から引き続き登場の11人に、
(ボスキャラのクラウン、カルノフも含む。この2キャラは引き続きボス役を担当)
新キャラクターとして韓国人の女性テコンドー使い柳英美と、ケニア人の空手家ザジィ・ムハバの2人が加わり13人になった。
継続して登場するキャラの中ではカルノフのみグラフィックが全面的に変更、デザインも一新され、
弱点もターバンからネックレスへと変更された。
その他の続投キャラにも技が追加されるなどしており(ただし全キャラではない)、説明書に無い隠し必殺技を持つキャラもいる。
難易度設定をノーマル以上にして全試合を1ラウンドも落とさず勝ち進むと、
『空手道』シリーズのボーナスゲームに登場する牛(オックス)がシークレットボスとして出現する
(この牛はネオジオ版、サターン版ともにプレイヤーキャラとしては使用不可能である)。

キャラクター(FHD)

  • 使用可能キャラクター
  • ダイナマイトで追加された使用可能キャラクター
  • CPU専用キャラクター
オックス(ボーナスステージ)

ファイターズヒストリー ~溝口危機一髪!!~

+ ストーリー
CPUバトルストーリー
三度開催される「グレートグラップル」。「K」を愚弄し、格闘家達全てを嘲る謎の主催者「C」
彼の正体を暴く為、また、己の実力を問う為、参加の名乗りを挙げた8人の格闘家が最後に目にするものとは……。
今、新たな伝説が生まれる!!
溝口モードストーリー
浪花を愛する溝口の目前で、浪花のシンボル”タコヤキ屋 浪花一番”の看板が奪われた。
犯人は、全身から鈍い光を放つ謎の男。果たして彼の本当の目的とは……。
格闘家からの情報を頼りに、看板を取り戻すため、溝口は旅立つ!!

シリーズ第三作にして最終作。1995年2月17日にSFC版で発売。シリーズ内唯一の家庭用でのみ発売された作品。
元々本作は『ダイナマイト』のSFC版移植作品として作られていたのだが、何時の間にか様々なアレンジが施され
(新必殺技の追加、オリジナルモードの搭載等)、結果的に『ダイナマイト』の続編的作品となった。
追加要素の中には最大5人まで設定出来る勝ち抜き方式のチーム戦モードや、
指定されたコンボを成功させていくミッション形式のプラクティスモードといった、当時でも珍しいものがある。
ただし、容量制限のためキャラクターは削られ、お兄ちゃんジャーマン親父
果ては主人公さえもがリストラの憂き目に遭い、主人公はレイから溝口に変更されるというまさかの展開となった。
溝口のストーリーにのみ特別な「溝口モード(サブタイトル『FIGHTER'S HISTORY 浪花快男児篇』)」が作られている。
新キャラクターはラスボスの「C」。
正体は、同社のアクションゲーム『チェルノブ』の主人公にして前作のラスボスであるカルノフ従弟チェルノブである。

キャラクター(危機一髪)

  • 使用可能キャラクター
  • 隠しキャラクター(隠しコマンドで使用可能)
チェルノブ(最終ボス)

(参考:Wikipedia「ファイターズヒストリー」)

その他の関連ゲーム

データイースト亡き後、その版権を所有するG-modeとSNKプレイモアのクロスライセンス契約の一環として、
溝口誠が『KOF MAXIMUM IMPACT REGULATION "A"』にも外部出演している。
詳しくは溝口のページで。

+ 黒歴史
『KOF MIA』の発売よりも12日前に、G-modeから携帯電話コンテンツとして『餓狼伝説VS.ファイターズヒストリーダイナマイト』が配信された。
餓狼伝説SPECAL』と『ファイターズヒストリー』のグラフィックを流用した横スクロールアクションゲーム。
テリー・ボガード不知火舞溝口誠の3人から選択して戦う。横スクロールだが餓狼と同じく2ライン
しかし、携帯コンテンツとはいえその出来、キャラのあまりな扱いに関して相当な物議を醸すものとなっている。
特に敵のアルゴリズムが相当嫌らしく、超反応で攻撃してくるため、難易度は異常なまでに高い。
落とし切りダウンロードで、単体コンテンツゲームではあるのだが、それを差し引いてもおつりが大量にくるほどの出来なため、
餓狼ファン、FHファン双方から存在そのものを疑問視する出来となってしまっている。
クロスオーバータイトルのはずなのに…。

百聞は一見にしかず
溝口編(ステージ1)
舞編


システム

弱点システム

本作の代名詞とも言える最も特徴的なシステム。
各キャラクターには必ずなにかしらのアクセサリーが付いていて、そこに3回攻撃を受けるとアクセサリーが取れて気絶してしまう。
気絶するのは1ラウンド中一回のみだが、弱点が取れた後は防御力が著しく下がり、防御力の低いキャラには致命的、
そうでなくてもかなりのハンデを背負わされてしまう。
逆に言えば劣性から一気に逆転を狙えるチャンスがあるともいえ、このシステムにより本作は独自の緊張感を生み出すこととなった。
弱点の部位・大きさはキャラによって様々で、弱点の取れやすさ、取れにくさには個体差がある。
立ち回り・コンボにおいて重要な意味を成し、「弱点に当たりやすい技が多いからこのキャラには立ち回り有利」だとか、
「立ち回りは負けているが、弱点に当たりやすいコンボでワンチャン気絶があるから食い下がれる相性」などが生まれる。
なお、先述した『KOF MAXIMUM IMPACT REGULATION "A"』の溝口は、
ハチマキに攻撃を受けると受けるダメージが上がるという形で、このシステムを継承している。

+ 各キャラの弱点の位置
各キャラの弱点の位置
キャラクター 弱点
レイ・マクドガル 胸の稲妻マークのアップリケ
ジャン・ピエール 足のサポーター
サムチャイ・トムヤムクン 両肩の腕飾り
劉飛鈴 上半身の胸当て
嘉納亮子 ハチマキ
マーストリウス 両足首のレッグウォーマー
マットロック・ジェイド サングラスとヘッドホン
李典徳 膝(ズボンの膝部分が破れる)
溝口誠 ハチマキ
ザジィ・ムハバ ハチマキ
柳英美 腰巻き
クラウン 仮面
カルノフ ターバン(初代)、首飾り(ダイナマイト以降)
チェルノブ アイシールド

連続ガード

本作のガード動作(ガード硬直中)は中下段両方をガードすることが出来る、珍しい仕様となっている。
例えばジャンプ攻撃深当て>着地下段が連続ガードになる密度だった場合、レバー真後ろでもガード可能となる。
中下段の揺さぶりが激しいゲームではないが、この仕様があるため「中段で崩せる=無敵技で割れる」となり、
中下段2択の重要度が若干低いゲームとなっている。

食らい切り替え

前述の弱点システムへの配慮か、食らい中に立ち/しゃがみを切り替えることが出来る。
これにより、きちんと食らい切り替えを行えば気絶を免れるコンボが存在したりもする。
現在は研究が進み、キャラによっては食らい切り替えをしても弱点攻撃を免れないコンボも存在する。

無敵技

本作は無敵技の発生が軒並み2、3Fとなっている。
このため同世代のゲームによく見られる「詐欺飛び」が基本的に不可能となっている。
飛び込みに関しても、理論上「硬化中に刺さる跳び」以外はほぼ無敵技で落とせることになるため安易な跳びが通用しない。
しかし、弱点システムと高火力な調整によって「飛び込みのリターン」がかなり大きくなっているため、ある種のバランスが取れている。
跳ぶ側・跳ばせる側の両方に非常にタイトな反応、駆け引きが求められるため、非常に緊張感ある地上戦が本作の醍醐味となっている。
また、発生の早さと前述の連続ガードの特性から、崩しや固めは基本的に割れる。
しかし無敵技を読まれれば死に直結しかねないため、こちらも「理論上可能」と「極大リターン」でバランスを取っている。

投げ

本作の投げは0F発生で、通常投げもコマンド投げもコンボに組み込むことが出来る。
このため、ヒット時有利になる小技からの当て投げが非常にきついゲームになっている。

参考動画

しかし、ここまで「濃さ」を滲み出しているゲームであるにも拘らず、
(同じMVS(NEOGEO)で本家SNKが作る一連の格闘ゲームと比較すると)ゲーム全体から見た「地味」さは拭うことは出来ず、
NEOGEO全盛期にリリースされた作品としては、それほど注目されたゲームではなかった。
しかし、「過剰なまでの超必や演出が無い」「最後はその一手の読み合いで勝負が決する」という、
濃さに裏付けられた「ストイック」な仕様が、読み合いを重視する格ゲーユーザーの支持を受け、
今なお小規模でありながら大会が開かれるという、根強い人気を誇る格闘ゲームとして語り継がれている。

その他、『コミックゲーメスト』にて連載された、津雲幻一郎氏による漫画版『ファイターズヒストリーダイナマイト』も存在。
物語上の主役は溝口誠と李典徳、カルノフやマーストリウスが完全な悪人、溝口と亮子が従兄妹の関係、
更に李典徳とクラウンの意外な関係など、原作ゲームとかけ離れたギャグ要素皆無の別物ストーリーとなっているが、
作品自体の構成力も高い良質バトル漫画となっているので、もし古本屋で見かけたら一読をお勧めしたい作品である。


MUGENにおけるファイターズヒストリー

その圧倒的濃ゆさストイックさが国内外を問わず多くの製作者を惹きつけるのか、全キャラがMUGEN入りを果たしている。
一時期はサムチャイをはじめ数体が入手不可となっていたが、現在はどのキャラも入手可能なものが存在する。
『FHD』をベースにアレンジが施されているものが多く、弱点システムを再現しているキャラも存在する。


*1
この話題はよく「6ボタン訴訟」と呼ばれる。
カプコンが『ストII』で開発した6ボタン構成を、ファイヒスが採用したことで裁判沙汰になった、という認識である。
しかし同時期には、タイトーの『カイザーナックル』やセガの『バーニングライバル』といった6ボタン構成の格ゲーも発売されている。
この後にもデコは『水滸演武』で引き続き、6ボタン構成の対戦格闘ゲームを発売したり、
他社からも6ボタン構成の対戦格闘ゲームが出ていたことを見ると、これらが訴訟対象となっていない以上、
単純に6ボタンが原因だったわけではないことが分かると思われる。

というのもこの問題は、元カプコンスタッフがデコに移籍して『ファイターズヒストリー』を製作したという両者の確執が発端で、
実際の争点は複数あり、中にはこのスタッフが、
ライフバータイムカウント周りのソースコードを『ストII』からまんま流用している」なんてのもある。
ここからさらにカプコン側が「対戦格闘ゲームというジャンルそのものを模倣している」という、
格ゲー市場独占を狙ったとも取れる発言に及んだため、デコは「対戦格闘ゲームの始祖はデータイーストの『対戦空手道』であり
むしろ『ストリートファイター』シリーズが模倣である」と反訴、同社に対する誹謗をただちに取り止め、
謝罪広告を掲載するよう求めていく。

なお、最終的に両者は和解している。『ゲーメスト』1994年12月30日号の記事によれば、
カプコン側は現状の著作権法上で権利侵害を訴えることは困難であることを認識して訴訟を取り下げ、
それに伴ってデコ側も反訴を取り下げること、両者は、ゲーム開発には莫大な時間と費用がかかり、
違法な模倣の横行は開発費の回収を妨げ、ゲーム業界の発展そのものが阻害されることを認識し、
今後は共にゲーム業界の融和と発展のために努力することを確認して和解した、とのことである。


最終更新:2023年02月21日 23:57