ガイバーI


生命。科学が及ばぬ無限のエネルギー。
今、その力を恐るべき武器へと変えて、何かが襲ってくる!
「ガイバァァァァァァッ!!!」


1985年より連載開始され、30週年を向かえなお継続中の高屋良樹氏による大人気漫画、
『強殖装甲ガイバー』の主人公・深町晶が「殖装」した姿。
本作はその特撮テイスト溢れるストーリー、長期連載にも拘らず破綻しない設定やSF考証、怪人のデザインなどで内外より高い評価を得ている。

父子家庭で育ち、幼馴染みの少女・瑞紀に片思いする、ごくごく普通の高校生だった深町晶(ふかまち・しょう)。
ある日の放課後、爆発事故に巻き込まれた彼は、偶然「ユニット」と呼ばれる物体と接触してしまう。
「ユニット」を纏った晶は「ガイバー」と呼ばれ、それを狙う秘密結社クロノスとの戦いに巻き込まれていく。

「調製」と呼ばれる遺伝子操作により強大な力を持った怪人「獣化兵(ゾアノイド)」達。
更にクロノス幹部が殖装した第二の「ガイバーII」の襲撃。
漆黒の強殖装甲、第三の「ガイバーIII」こと巻島顎人の暗躍。
そして獣化兵を遥かに凌ぐ力を持つ「超獣化兵(ハイパーゾアノイド)」。
晶は苦戦しつつもガイバーの能力でこれらの強敵を撃退していく。
クロノスは自分達の目的のため、無関係の人々を無慈悲に容赦なく犠牲にしている。
晶が戦いをやめれば、父や親友、瑞紀といった大切な人達を守る事が出来なくなる。
自分のせいでみんなを巻き込んでしまった事に苦悩しながら、晶は戦いを続ける決意を固めていく。

やがて遂にクロノスが最重要拠点とする「遺跡」──古代に地球へ降り立った宇宙船へと乗り込む晶。
だが、クロノスの最高指導者・原初の獣神将(オリジナルゾアロード)アルカンフェルの前に完敗を喫する。
必殺の「メガ・スマッシャー」も跳ね返されてしまい、ガイバー亡き後、あろう事か世界はクロノスによって征服されてしまう。

それから1年後……晶は戦場となった遺跡宇宙船の中枢を取り込む事で蛹となり、辛うじて生き延びていた。
昏睡の中で晶はアルカンフェルに対抗し得る力を渇望し、それに反応した中枢がさらなる規格外を呼び起こした。
ガイバーIはさらなる強殖装甲「巨人殖装(ガイバー・ギガンティック)」という強大な力を得て復活を果たす。
晶は悪の秘密結社によって統治された世界で、侵略者の尖兵として人々に恐れられながら、人類の自由と平和のために戦い続ける。

強殖装甲とは

元々地球に生体兵器開発の為にやってきた宇宙人連合、通称「降臨者」の標準装備──要は単なる宇宙服である。
降臨者は様々な種族で構成されているため、殖装した種族に合わせて形を変える強殖装甲の方が扱い易かったらしい。

降臨者達は宇宙戦争で勝利するための生体兵器として地球に様々な命を生み出し、
最終的にゾアノイドの素体として人類の開発に成功する。
そして降臨者達は実験の一環として、特に期待せず、人類に自分達の標準装備である強殖装甲を与えたのだった。
ところが、それを殖装した一人の地球人(通称「ガイバー0」)が、とんでもない戦闘力を発揮。
何の偶然か、地球人は強殖装甲をゾアノイド以上の兵器へと変貌させる事が出来たのだ。

自分達に属するどの種族よりも圧倒的な能力の増幅ぶりに「思わぬ発見があった」と喜ぶ降臨者達であったが、
これまた何の偶然か地球の生命には降臨者が施した服従システムを解除する因子が眠っており、
強殖装甲がその因子を活性化させた結果、突如として最初の殖装者が降臨者に反旗を翻してしまう。

たった一人の反逆者の手によってゾアノイドの大軍団はなす術もなく壊滅。降臨者はあわや全滅の危機に追い込まれてしまう。
地球生命体の支配者として創られたアルカンフェルの働きでなんとかその反乱を鎮圧したものの、
自分達に反逆する可能性がある人類の事を「規格外品」を意味する「ガイバー」と呼んで、破棄を決定したのだった。

そのため本編内で「ガイバー」と言ったら「強殖装甲を殖装した人類」か「強殖装甲そのもの」を指すが、本来の意味は「人類そのもの」に対する蔑称である。
強殖装甲が収められていたカプセルも「ユニット・G(ガイバー)」と呼ばれているが、当然人類側の呼称に過ぎず、製造した降臨者による正式名称ではない
(降臨者と直接面識があるアルカンフェルなら正式名称を知っていると思われるが)。
前述の通り、降臨者にとっての強殖装甲は一般的な宇宙服でしかなく、とても規格外と呼べるほどの代物ではなかったのだから。

一方、圧倒的な戦闘能力を持ちながら降臨者の精神支配を受け付けないガイバーは、正に「規格外品」である。
クロノスの科学者の発言によると、エネルギーは獣神将(ゾアロード:アルカンフェルのゾアクリスタル(のコピー品)を持つ所謂幹部)に匹敵。
その小柄な体躯を考慮すればエネルギー変換効率はそれ以上との事。
(ガイバーが人間をみっちり包む程度のサイズ、獣神将は個体差はあるものの人より巨大で、個体によっては100mを超す)。
また、特殊能力を持つ獣化兵がそれに特化せざるを得ない一方、ガイバーは多数の武装を持ちながら高い汎用性を保っている。

外観に関しては見た目の影響も大きいのか人類、特に日本人視点だと特撮番組用のリアルな着ぐるみに見える程度の質感らしく、
作中序盤では晶が通っていた高校の生徒が、殖装した晶の姿を見て部活の自主製作特撮映画の着ぐるみに入っていると勘違いしていた。

「その力は厚さ500ミリのコンクリート隔壁を一撃でぶち抜き!!」
「自らに数倍する体躯を誇る獣化兵を……」
「たやすくひねりつぶす!!」
「これが、ガイバー!」
「ユニットGによる人類の殖装形態……」

「ガイバーだ!!」

+ 武装

武装

超高効率の額に装備された赤外線レーザー「ヘッドビーム」、肘部の突起が伸長して形成される一種の超音波カッター「高周波ソード」、
腰部重力制御球(グラビティ・コントローラー)から供給されたエネルギーを両手の甲にあるエネルギー・コンプレッサーを介して、
5指の間に収束し、極小のブラックホールを形成しその蒸発時の圧力を投射する「プレッシャーカノン」、
口の部分にある「バイブレーション・グロウヴ」から対象の固有共鳴周波数と同調する振動波を発射し、対象を粉砕する「ソニック・バスター」、
そして胸部装甲の下に存在する器官から発射する、100メガワット以上の出力の粒子ビーム「メガ・スマッシャー」。
そして頭部に配された複合三次元センサー群”センサーメタル”よる周辺警戒及びスキャン能力、
グラビティ・コントローラーによる重力制御での飛行能力、強殖細胞の持つ高い自己修復能力。
これらによる獣化兵を凌ぐ圧倒的な戦闘力で秘密結社クロノスに立ち向かう。
なお強殖装甲は初装着時に装着者の精神状態を含めて最適化されるため装甲や武装がある程度個体差が出る様になっており、
何が起こっているか分からず恐怖に怯えていた晶のガイバーⅠは装甲が厚めで再生能力が重視された防御寄りフォーマット、
「力」を求めて装着したガイバーⅢは高周波ソードが両腕に二基の計四基付いた攻撃寄りフォーマットとなっている。

余談ながら、前述の通り本来のユニット・ガイバーは単なる宇宙服である。
船外活動用の単なる基本機能のライトやら拡声器やら工具類が、何故か無茶苦茶機能増幅されてしまった結果が、
これらの武装群だと考察するとそれはそれでSF的になかなか面白いのではないだろうか。

+ 巨人殖装

巨人殖装


「力…もっと強い力を…今のままの俺では…瑞稀や哲郎さんを守りきれない…
 もっと強い力を…もっと強い身体を作り出さなければ…!!」

簡単に言えば「ガイバーの上にさらにガイバーを纏う」と言った物。
コントロールメタルを通して晶と接続された遺跡宇宙船が、より強力な戦闘力を求める晶に応えて発現させた。
3m近い身長、バリヤー、メガスマッシャーの100倍以上の威力のギガ・スマッシャー等、さらに圧倒的な力を持つ。
さらに巨獣神変化(ドラゴニック・バースト)により全長100mを越す巨大な怪獣となった獣神将・カブラール・ハーンとの戦いにおいては、
身長52mの赤い巨人ギガンティックXD(エクシード)となるなど、作中でも最強クラス。

+ 弱点

弱点

……こう書くとまるで無敵のような印象を受けるが、実際の所物語序盤の時点で沢山の弱点が発覚している。
  • 額部のコントロールメタルを破壊されると制御を失った強殖生物に喰われる。
実際に破損のあったユニットで殖装していたガイバーII・リスカー(スタジオライブ版では何故か女性に変更されている)が、
ガイバーⅠとの戦闘でコントロールメタルを破壊され、暴走したユニットに捕食されている(とどめは恐怖にかられた晶のメガ・スマッシャーだが)。
実際、作中を俯瞰で見ればコントロールメタルの破壊に徹すればガイバーは呆気なく負けていると判断出来る描写も多く、
晶が生き延びている理由の一つとして「クロノス側がコントロールメタルの確保・捕獲に熱を入れ過ぎている」部分も否めない。
なんで一番の急所が剥き出しとなった作りなのかと思うかもしれないが、前述の通り本来は戦闘用ではなく、
またこのコントロールメタルは降臨者の用いた生体宇宙船の操縦インターフェース(通信装置)ともなっているため、仕方がないのだ。
逆にクロノスの首領アルカンフェルの目的を達成するためには、この宇宙船を操縦する必要があるので、
クロノスもコントロールメタルを傷付けるわけにはいかないのである。
またコントロールメタル自体の強度も決して低くはなく、後述の通りメガ・スマッシャーを反射されて消し飛んだガイバーIもメタルは無事であり、
コントロールメタルと似た金属は降臨者関係と推測される謎の人物により鎧に使用される程である。

ガイバー0がゾアノイドに近い人類(現代人類は降臨者撤退からの長い年月でゾアノイド用能力が退化してしまっている)、
ガイバーIIはクロノスの幹部級、ガイバーIIIはクロノス幹部候補としてそれぞれ高い身体能力を持っている。
後に不完全に再現されたガイバーIIFという女性ガイバー(上記OVA版とは別物)が登場するが、女性と言えどもプロなので戦闘能力は晶以上。
(コントロールメタルが不完全なので変身時間に制限があったり、生体宇宙船のコントロールには使えなかったりするが)。
つまり5体(0~3および2F)存在するガイバーの中で、主人公はスペック上最弱なのである。

  • ガイバーの強殖生物による生体装甲は、ガイバーIIのデータから序盤早々に解析が完了している。
そのため爪から生体装甲を溶解してしまう分解酵素を分泌するゾアノイド「エンザイム」が登場。
初戦で胸部装甲を破壊されてメガスマッシャーを封じられ、腕を噛み千切られ、腹をぶち抜かれ、コントロールメタルを抉り出され、晶は死亡した
その後、コントロールメタルが無事だったため辛うじて復活したが、以後も同タイプのゾアノイドには度々苦戦を強いられている。
しかもエンザイム絡みでトラウマイベントがあったため、一時期はエンザイムタイプが出て来ただけで殖装不能になった事まである。
+ 一体何があったのか?
エンザイムの有効性から、クロノスは確実に晶を仕留めるため捕らえた晶の実の父親をエンザイムIIの素体に使用
父親相手に戦う事の出来ない晶は、遂にエンザイムの爪で脳髄を破壊されてしまう
……だが、ユニット・ガイバーはその程度では晶を死なせてはくれなかった。
宿主が再生するまでの間、ガイバーは生存・再生の為の安全確保を目的に自動的に戦闘を開始
容赦なくメガ・スマッシャーでエンザイムIIを殺害してしまう。
意識を取り戻した晶が目にしたものは、かつて父であったモノの腕の一部だけが残る、焼け焦げた更地だった。

PTSDに陥った晶は無意識にその記憶を封じ込んでしまい、そのため殖装不能に陥った原因も分からず苦戦を強いられる。
これを克服する事が出来たのは、ひとえに自分が巻き込んでしまった幼馴染の瑞紀を守るためであった。

他にも弱点と言うには大げさかもしれないが、メガスマッシャーを撃つ時は胸の装甲を自らの手で開く必要がある。
そしてメガスマッシャーを撃つレンズ状の器官は「肺が退化したスペースに増設された物」。つまり内臓が剥き出し状態であり、諸刃の剣ともなっている。
また、殖装の際は「異次元から背後にスーツを召喚する」事になるのだが、
その際に押しのけられた空気によって背後にコンクリートにクレーターを作るほどの衝撃波が発生する。
攻撃にも応用出来るが、必ず発生するため殖装の際は背後に気を使わなければなない。
実際に一度、味方を背中合わせに縛られて殖装を封じられた事がある。…まぁ晶以外は悪人なので気にせず殖装するだろうが。

これらの弱点により全身がドロドロに溶けたり脳髄を粉砕されたりメガ・スマッシャーを跳ね返されて跡形も無く消滅したり……死に方が豊富

更に同じ高校の生徒会長でありクロノス内部で下克上を狙う幹部・が変身するガイバーIIIと合流したは良いが、
自前の組織に情報を持ち逃げされた上、獣神将との戦闘中にギガンティックを剥ぎ取られる等かなり散々な目に遭っている
しかも剥ぎ取られた原因は「精神コントロールの命令力が上」という理由で、物理的妨害や策略のせいではないという、主人公ェ…な場面であった。
後でやり返せたけど。

弱点が多いとはいえ、額のコントロール・メタルさえ無事であれば肉片の一つからでも再生可能なので致命的事態にはなっていないが、
厳密に言うと「記憶をコピーしたクローン」でしかないので、実は1巻の時点でオリジナルは死亡している。
まあ本人が魂の在り処などを気にしてしまう事がなければ問題は無く、実際、晶は自分が複製である事を「実感がない」の一言で片付けている。
ただ流石に切断された腕から蘇生した「記憶の無い強殖細胞体」との戦いには躊躇いを覚え、システムに取り込まれたのは自分だと恐怖したが。

更に実は通常のガイバーの状態で超獣化兵を倒した事は無く、もっと言えば獣神将を自力で倒したと言えるのは、カブラール戦のみである
(一応プルクシュタールには勝ったといえなくもない。両者ともトドメを刺したのは晶ではないが)。

おまけに敵である秘密結社クロノスが世界征服に成功してしまったため、クロノスと戦っているガイバーは異星からの侵略者尖兵扱い。
一般大衆からはヒーローどころかテロリストとして見られている。
……世界征服を成功させた悪の軍団があっさり一般大衆に受け入れられ、それに抗うガイバーの方が悪者扱いされてるの一見変な話に見えるが……。

+ 秘密結社クロノス

秘密結社クロノス

前述通り人類を規格外品と断定した降臨者達は人類の放棄、および地球自体の破壊を決定し、小惑星を地球に打ち込んだ。
しかしそれに怒ったアルカンフェルの反撃で地球破壊は失敗(降臨者は知ってか知らずか、そのまま放置して宇宙に去っていった)。
こうして、人類は地球で順調に増え、幾多の文明を築き上げるに至ったのである。

一方、アルカンフェルは小惑星破壊の反動、降臨者との戦闘で体の機能を狂わされ、長い休眠を余儀なくされながらも、
降臨者に会って文句を言うため に、地球を惑星国家として成立させてからの外宇宙進出をスローガンとして「クロノス」を結成。
まずは前準備である世界征服を達成するために暗躍を始めた………。

そんな中、自身の不調を治療するために強殖装甲を欲していたアルカンフェルは、
日本に残っていた遺跡宇宙船から3つのユニットを発見する事に成功する。
しかし調製に失敗してクロノスを恨んでいたゾアノイドがユニットの破壊を目論んで持ち出してしまい……第一話に繋がる事になる。
そして最終的にガイバーIに勝利した事で、一年も経たずにクロノスは世界征服に成功。地球全土を穏便に統治している。
というのも後ろめたい部分は隠しているものの、
  • 自分達の技術を惜しまずに民間へと提供し、調整技術の副産物である医療を中心にテクノロジー水準を大いに上昇させる
  • 上記同様生命科学・工学技術を惜しみなく使い自然環境を地球規模で改善
  • 国境の政治的撤廃による紛争・経済問題解消
  • ゾアノイドヘの調整は必要と訴えつつも、義務ではなく希望者を募る方式を採り、各種優遇措置を図る事で希望者の能動的増加を促す
など、善政に善政を重ねた極めて真っ当な方式で統治しているからである。
さらに言えば前述通りクロノスの最終目的は外宇宙進出、上位種族である降臨者への反発と目的自体は極めてまとも。

結果、世界中の一般大衆はすっかりクロノスの統治を受け入れてしまっており、
日本に至っては大衆の意識操作目的で送り込まれた、全員がゾアノイドのビジュアル系ロックバンド「獣歌団」に、
若い女性ファン達が黄色い声を上げる始末だったりする。
ちなみに獣歌団は演奏中に変身して曲が終わる辺りで元に戻るというパフォーマンスを得意としており、
元に戻った後は例外なく全裸という際どさが女性に支持される秘訣なんだとか。女性アイドルでもお願いします!

これだけならクロノスの方が正しい様に見えるが、ゾアノイドは上位統率者であるゾアロードに思念波に逆らう事が出来ない。
つまりクロノスは全世界レベルで洗脳と人体改造を推し進めている、紛うことなき「悪の秘密結社」なのである。
ただし他のゾアロード達(元地球人類)はともかく、地球の管理者として生み出されたアルカンフェルに悪意は無いのだろう。
羊飼いが羊を家畜として扱うのは当然の話である(正確には、降臨者=羊飼い、アルカンフェル=牧羊犬、と言った所か)。
そしていずれ降臨者と対峙する事を思えば、人類を「本来の姿」であるゾアノイドに戻して戦力を強化する事も必要なのだろう。

しかし地球人類にとっては、クロノスの統治の果ては個人の意思・自由が奪われた世界でしかない。
深町晶は仲間達と共に、人類の尊厳を守るために戦うただ一人のガイバーとしてクロノスと対決する道を選んでいる。

+ 深町晶

深町晶

「ガイバーが招いた災厄には、ガイバーが!!俺がケリをつける!!」

映像媒体(後述)での担当声優は 水島裕 氏(劇場版アニメ)、 草尾毅 氏(OVA版)、 野島健児 氏(TVアニメ版)。
前述した通り散々な目に遭っており、クロノスにも敗れ、スペック上なら間違いなく最弱のガイバーなのが主人公である。
……が、決して主人公(笑)というわけではない。
単なる巻き込まれた高校生(一応特撮研究会所属でアニメや特撮等に詳しい「オタク高校生」の類ではあるが)であり、
戦わなければ生き残れなかったとはいえクロノスとの対決を決意し、
獣神将ですらめったに会えないというクロノス総帥に迫り、激闘の末、遺跡宇宙船からギガンティックを造り出したのも彼である。
そのギガンティック形態でなら多数の超獣化兵を相手に暴れまくっている上に、獣神将でも太刀打ち出来ない程強い。
OVA版ではガイバーIで超獣化兵を倒している作品もあるし、ガイバーIIIを精神力で打ち破ってギガンティックを取り戻したり、
危機的状況下でXD化に目覚めたり、そもそも苦戦するのが当然という戦力差で戦い続けているため、決める時には決めてくれる。

これに関しては、原作者のコメントで、
「(晶は)あくまでも平凡な一高校生として描いていきたい」という明確な意図の下描かれているからであり、
更に「(例えば)ヒロインが殺されて、(精神的に)どうにかなってしまうような展開にはしないつもりです」とまで明言。
あくまで受け手に感情移入し易くする為に、こういったキャラクターに設定したという事である。
……そんな一高校生が世界征服を企み(そして成功させた)強大な悪の秘密結社にたった一人で立ち向かい、
獣神将より強いギガンティック、果てにガイバーIIIですら太刀打ち出来ないほど強さと大きさが跳ね上がったXDにまで進化する辺り、
単行本第1巻の設定資料集で書かれた様に晶と共に成長する、 最弱故に最も伸び代が大きい ガイバーであるとも言えよう。

さらに晶の人間性に関して、
クロノスの命令で晶に戦いを挑むも返り討ちで仲間達を殺されてしまい、復讐の機会をずっと狙っていた戦闘生物アプトム*1も戦いの中で晶を認め、
生死不明になっていた間も必ず晶は大切な者の傍に戻ってくると確信し、晶の親友と幼馴染を影から守り続けた。
もちろんそれは帰還を果たした晶と決着を付ける事が目的だったのだが、その後も何やかやと共闘を続けるはめになり
戦闘でも強殖装甲の上から融合合体する事でガイバー・アプティオンという形態を取るなど、出会った頃からは想像もつかない戦友ぶり。
今では一度人質に取って全裸に剥いた晶の幼馴染みからさえ「家に上がっていけば良いのに」と言われる関係になっている。

他、晶は一部の獣神将による独断で偽ギガンティックによる無差別テロ事件が起こった時、
敵である筈の前述の獣神将・プルクシュタールや、その上に立つ同じく最初の獣神将・バルカスから、
「あの忌々しいガイバーIII・巻島顎人めならばとにかく、あのガイバーI・深町晶が無差別テロじゃと?
と、その人間性に関して、極めて高く評価されている事が明かされている。
ただしバルカスについては、晶が良心的な人物でなければ成立しない作戦で前述のトラウマを与えた張本人であり、
「心情的に人間性を評価している」というよりは「精神学的な分析結果を述べている」のに過ぎないのかもしれないが。

そして前述のプルクシュタールとの交戦も、偽ギガンティックの事を知らなかったプルクシュタールが、
偽ギガンティックによるテロ活動を防ぐ(真相を知る)という目的で出撃した事が、その発端となっていたりする。
クロノス幹部である彼がわざわざ直接出向いたのも、前述のバルカスの疑念とほぼ同じ考えに基づいていたためであり、
偽ギガンティックがプルクシュタールの差し金だと思い激怒して闘いに臨んでいた晶と対決する事で、結果的に晶の潔白は証明された。
さらにプルクシュタールの親友であり後任のシンは、
ガイバーIをプルクシュタールの仇だという仲間(※偽ギガンティック作戦およびプルクシュタール殺しの真犯人)の説明を全く信じておらず、
実際に対決してガイバーIの策にしてやられた時も恨むどころかいたく感心していた

実際、必要な情報交換のために、シンが「話が通じる相手」と信用し交渉を行ったりもしているし、
晶自身も「(クロノスのやり口は極めて問題だが)組織としては必要な存在」と、ある程度の相互理解が築かれている。

……まあ、ガイバーIII=顎人は野心が高すぎてクロノスを裏切った人間であり、ぶっちゃけ作中一番の悪人。
ガイバーIIは既に亡く、ガイバーIIFもクロノス離反者かつ高圧的な態度を取る割にうっかり負ける事も多いという有様で、
これといった人格上の問題が無く、勝てなくとも諦めず戦い続ける晶が、内面を敵から好意的に評価されるのも致し方ないのかもしれない。
一応顎人も話自体は通じる相手だが、他人を道具としか考えていないので、いつ裏切るか分かったものではない。
クロノスによって両親を奪われたコンプレックスを盛大にこじらせた彼は、強さを追い求め、地球の頂点に立つ事を目論んでいる。
晶同様、彼にも仲間や幼馴染みの少女はいるが基本的に全員道具扱い、幼馴染みも「使用人の娘」なので最初から対等に見られておらず、
同じくクロノスによって父を殺害されながら瑞紀を守るため戦う晶とは対照的に、支えてくれる幼馴染が居るにも拘らず顎人は道を踏み外したまま。
そういう意味では、晶こそ間違いなく最も心の強いガイバーだと言えるだろう。

+ 映像化

映像化

劇場版アニメが1作(OVA化もされているためスタジオライブ版と表記される事も)、OVAが2シリーズ(こちらはバンダイビジュアル制作)、
TVアニメ版が1作(WOWOW制作)、実写映画が2作と映像化に恵まれている。
特に実写映画版は、初めてハリウッドで映画化された日本漫画原作作品である。
獣化兵が関西弁を話したりと内容はツッコミ所満載なのだが、『スター・ウォーズ』のルーク役だったマーク・ハミルが準主役だったり、
着ぐるみ造型がプレデター造ったのと同じスティーブ・ウォンだったりと、かなり力が入った作品となっている。
また、実写映画二作目の方は前作の反省点を踏まえて制作されているため、日本人から見ても十分見応えのある作品として完成されている。
メガスマッシャーがショボいとか言ってはならない
おかげで海外での人気は根強いようであり、3体存在するMUGEN版ガイバーの2体が海外製なのも、これが関係しているのだろう。
実写映画版第2作目戦闘シーン集(※グロ注意)

+ 作品周辺に関するお話
日本国内でもマイナーではあるが特撮・模型業界の玄人業界人などにファンが多く、
OVAが発売されていた90年代のホビージャパンではタイアップ記事があったりと人気の実績はある。
連載中の雑誌の休刊による移籍を二度も経験しているが、逆に言うと雑誌の休刊と同時に打ち切られない程の根強い人気を誇ると言う意味でもある。
『超人ロック』と並んで漫画界の死神とも…
ただし最初の掲載誌『少年キャプテン』では創刊号から連載を始めて10年以上経っての休刊なので、単に話の進みが遅すぎとも言えるが。
長期連載となっているのはこの展開の遅さによるものも大きく、
「無告知休載当たり前」「掲載されたと思ったら(月刊誌なのに)8ページしかない」「しかも見開きで2ページ使う」という体たらくで、
単行本の巻末でネタにされた事もある。
「掲載されたと思ったら下書き」やら「いつ掲載されるんだかまるで分からない」やら、長期連載人気作品あるあるなのかもしれない

ぶっちゃけ『キャプテン』が休刊したのも「ガイバーが休載してる月は売上が半減」と言われていたのが原因とされている。
とはいえ創刊時にはたがみよしひさ氏の『GREY』がガイバーと二枚看板で連載されており、ガイバー共々アニメ映画化され、
他にも『ゲッターロボ號』『超兄貴』『夢幻紳士』『仮面ライダーZO』『宇宙家族カールビンソン』『トライガン』等の傑作・名作も数多く連載されていた。
また雑誌の売上自体は落ち込んでいても単行本の売上はかなり好調で、雑誌としての人気は低迷しても各作品の人気は高かった。
そして休刊号も次回予告が掲載されており、編集長ですら休刊を直前まで知らされていなかったという証言から、
実際の『キャプテン』休刊理由は(雑誌売上低迷もあるものの)「徳間書店社長が気まぐれの思いつきで決定した」という説が濃厚である。

実は、連載開始に当たり編集から「仮面ライダーのようなヒーローもの」を求められた作者は、
まず当時特撮ヒーローの主流だったメタルヒーローをモチーフにした案を提出したが、インパクトが弱いと言われ、
生物系要素を加えて企画を進めていると、直前になって他誌で生物系ヒーロー『バオー来訪者』がスタートするという、
肝が冷えるシンクロニシティを経験したとか……。


MUGENにおけるガイバーⅠ

海外の製作者による手描きキャラと、
それを改変したキャラが数体存在しており、その内の1体は国産である。

+ Nadjib "Jeeb" Assani氏製作
  • Nadjib "Jeeb" Assani氏製作
海外の製作者であるNadjib "Jeeb" Assani氏によるもの。
ネームは「Guyver2」。2といっても上記のガイバーIIことリスカーではないので、ver.2.0くらいの意味であろうか。
手描きキャラで、「高周波ソード」や「プレッシャーカノン」、「メガ・スマッシャー」といった技の他、
LGM(Limited Gravity Manuvers)ボタンがあり、これ+レバーでナギッっぽい高速移動が可能。
実は前述の海外実写映画で脚本や撮影の都合等々の事情で極端な飛行表現が出来なかったため、
代わりにグラビティコントローラーの重力制御機能表現として創作されたものなんだとか。
動きのベースとして意識したのは『GGX』との事で、そのせいか高周波ブレードでの攻撃パターンが多い。

一方ポートレイトが大小共に無かったり、しばしば消えたり、やられボイスがカンフーマンのままだったりと、未完成という印象がある。
ポートレイト用と思われる画像は用意されているのだが、どうやらイメージ番号が間違っている模様。
正しく設定すればこのようになる。

+ YoungDragun氏製作 Ultimate Guyver
  • YoungDragun氏製作 Ultimate Guyver
上記のガイバーIを改変したもの。
改変元より少し小さめのサイズで、デフォルトカラーは緑色。
イントロでは深町晶が登場し殖装する。このドット改変元は七夜志貴。細身学生服キャラが他にいないという事だろう。
ヘッドビーム等の技が増えた他、メガスマッシャーは必殺技と超必殺技の二つがあり、
後者は一度高周波ブレードで攻撃し、ヒットするとメガスマッシャーを放つ即死技となっている。
また、cnsファイルが二種類存在し、通常の状態では神キャラ状態になっているのでご注意を。

この他に、mechadiablo氏によってボイスを変更されたバージョンも存在する。こちらのキャラ名は「UltimateGuyver(Smashmod)」。
ボイス以外は改変元とほぼ同じである模様。

+ Ryon氏製作 MVC_Guyver
  • Ryon氏製作 MVC_Guyver
こちらもNadjib "Jeeb" Assani氏製の改変で、MUGEN1.0以降専用。
外見や大きさに変化は無いが、英語のボイスが追加されている。
その名の通り『MVC』風の6ボタン方式となっており、チェーンコンボやエリアルレイヴ、アドバンシングガードが可能。
なお、コマンド表の類が付属していないため、各種コマンドはcmdファイルを開いて確認する必要がある。

性能としてはオーソドックスな波動昇龍系で、ヘッドビームやプレッシャーカノン、高周波ソードで切り上げる対空技を所持。
なお、高周波ソード切り上げの中版は2ヒットするにも拘らず繋がらないという死に技なので、存在を忘れた方が良いだろう。
超必殺技はお馴染みメガスマッシャーと乱舞技の2種類。特に3ゲージ消費の強化版メガスマッシャーはフルヒットで5割超と強力。
乱舞技は高周波ソードで滅多斬りして吹っ飛ばした後、瞬間移動からのキックで追撃するという中々カッコいい演出なのだが、
非ロック式かつ実は途中で空中受け身が可能なので、〆のキックが空振りする可能性がある非情の技となっている。
ゲージは発生判定共に優秀なメガスマッシャーの方ににつぎ込むのが無難かもしれない。
AIは搭載されていない。

+ 亜-人氏(真崎アスカ氏)製作
  • 亜-人氏(真崎アスカ氏)製作
2020年10月30日、遂に公開された初の国産ガイバーI。
真崎アスカ氏がYoungDragun氏改変版を改変したもので、氏曰く改変理由は「国産の晶がいないから」との事。

劇中での設定に反映してか常時ライフ回復に根性値、ブロッキングが搭載されている。
反面、超必殺技のメガスマッシャー以外の技の火力が控え目になっている。
そのためゲージ回収率の高いプレッシャーカノンやガードキャンセルからのコンボで戦いつつ、
超必版メガスマッシャーで逆転を狙う長期戦向きのキャラとなっている。
反面、ライフ回復といっても一般のキャラでも普通にダメージを通せる程の回復量であり、
プレッシャーカノンを当てないとメガスマッシャーが使えないため大技での逆転が狙えない、
メガスマッシャーも劇中同様に発生が非常に遅く無敵ではないため、素早いキャラだと即座に潰される等といった弱点もある。
そのため、プレイヤー操作で使う際は油断しているとこれらの弱点を突かれ、一方的に叩きのめされる事もあるので注意。
また、12Pは全属性ハイパーアーマーのギガンティックガイバーモードとなっており、
改変元の狂キャラ仕様と互角の性能を持っているので凄まじく強いが、即死当身は通る。

2022年3月24日に更新されたものでは、全ゲージ版が即死ではなくなる等メガスマッシャー関連の技が弱体化された。
その代わりに喰らい抜けバーストが搭載されるなど、より格闘ゲーム寄りの調整が施されている。

AIもデフォルトで搭載されており、通常カラーはEXグルGルガDIOら強ランク審査員と互角の戦いが出来るためランクは強下~中位、
12Pが狂中~上位と言った所か。

出場大会



*1
余談だが、アプトム自身もある意味ガイバー(規格外品)である。
元々精神支配を受け辛い調整失敗作「ロストナンバーズ(「型番無し」と言う意味。成功作「ナンバーズ」はエンザイムの様に量産されている)」であったため、
そんな気配は最初からあったものの
(話の発端となったゾアノイドが「ユニットGを盗んでクロノスから脱走する=ゾアロードの精神支配に逆らえた」理由でもある。
 ただしロストナンバーズ扱いになるのは、精神支配云々よりも「生殖能力を失った」と言う生物兵器的な理由の方が大きい)、
晶への復讐の為に無茶な調整を繰り返し受けた結果、元ゾアノイドながらもゾアロードの精神支配を一切受け付けなくなってしまっているのだ
(肩書が「戦闘生物」なのもそのため。ロストナンバーズも一応は獣化兵である)。
能力的にもまるで意思を持った強殖生物だと追加調製したバルカス自身が戦慄するシーンがある。


最終更新:2024年04月22日 18:21