スライムナイト


「そりゃ!うりゃ!」

スクウェア・エニックスのRPG『ドラゴンクエスト』シリーズにおける敵モンスター。
数多くあるスライム系のモンスターの一つで、スライムに乗った鎧姿の小さい騎士、と言う姿のモンスター。
スライムか騎士かどっちが本体なのかというのが良く議論の種にされる。
外伝等ではスライムの方が本体で、騎士はスライムの一部だとする設定が多くあるのだが、
作品によっては騎士側がスライムを振り回して攻撃する事もあり、どっちが命令を出して攻撃しているのかは正確には分からない。

初登場は『ドラゴンクエストV』から。その後のシリーズでも、外伝を含めてもほぼ皆勤で登場する。
だいたい序盤から少し経過した所で登場し、攻撃は通常攻撃の他、ホイミでHPを回復してくるのが主。
シリーズによってはマホトラでMPを吸い取ったり、痛恨の一撃を出してくる場合もある。

『V』及び『VI(SFC版のみ。DS版では別の方法で仲間にする)』では、倒した後仲間にする事も可能。
仲間にした一匹目にデフォルトで付く名前は「ピエール」モンタリオとかジャン没キャラポルナレフとは無関係。
ちなみに『V』での二匹目はアーサーと正に王道ネームである(余談だが『V』では「まほうつかい」のマーリンも仲間にできる)が、
三匹目は「ちゅん」と妙に場違い感の強い名前に。
開発元の社名の由来でもある中村光一社長のあだ名からだろうか。他にも「アキーラ」とか「すぎやん」とかいるし
『V』では序盤から簡単に仲間にする事が出来る(それこそ普通にアーサーまで仲間に入るレベルな)上に性能は概ね優秀であり、
主人公並みの重装備が可能な事に加え、ベホマなどの回復呪文やキアリクなどの補助呪文、イオ系など攻撃呪文をバランス良く覚える。
さらにギラ(+炎ブレス)、イオ、バギ、デインに強耐性という優秀な耐性を所持しており、
何よりこれ以上の耐性を持つ仲間モンスターと比べてダントツで仲間になりやすい事から、
最初から最後まで、魔王戦でも前線を張れる実力者である。
前述の「重装備」には吹雪の剣、メタルキングの剣等の天空の剣以上の性能を誇る武器も含まれており
このため、仲間にした時からチームの主力もしくは補助・回復役として終始活躍出来るため、エンディングまでずっと連れ回した人も少なくないだろう。
攻撃呪文は中ダメージのイオラ止まりなのと、成長率の関係で中盤以降は能力的な物足りなさを感じなくもないが、
成長限界がレベル99なので、最終的には最強クラスの実力者となる。
弱点はメラ系と吹雪系全般なので、吹雪ダメージを軽減させる防具を装備させれば、さらに頼りになる。

『VI』でも大体同じような成長を見せるが、自慢の耐性は弱まり、能力も一回り小さく押さえられている上、
仲間にする時期が遅め(何故か最初に登場する場所では仲間に出来ないため)なので『V』ほどの活躍の場は無い。
ただし、スライム闘技場では、装備品の豊富さを活かし、重装備で臨む事が出来る。
仲間モンスターに代わってスライム系モンスターを仲間にする「スライムスカウト」が登場したリメイク版では、
最初に仲間になることと耐性が強化されたことにより、SFC版よりは活躍しやすい。ただしステータスは変わらないので終盤はやや辛い。
『VIII』ではスカウト出来るモンスターにスライムナイトの「の戦士ピエール」が登場する。
主人公のレベルが低い序盤こそ力不足を感じるが、主人公のレベルが上がるに連れて強化されていき、
最終的にはスライム系ではダントツの攻撃力を誇るまでに成長する。
弱点はHPが低めな事だが、他のモンスター2種をスライム系のモンスターで固める事で2倍になるため、かなり頼れるモンスターになる。

『モンスターズ』シリーズでは成長力が弱いなどで、基本的に彼自身は低い地位~中堅程度に甘んじてしまう。
テリワン以降はかなり優秀な特性を持ってはいるのだが、
テリワンでスキル一個でほとんどの魔法をシャットアウトする「ダークナイト」、イルルカで稼ぎパーティーで大活躍の「ハートナイト」、
『DQMJ3』で何故かメタルスライムと同じ耐性を得た上で、物理攻撃へのカウンターを固定特性で持っていたため大暴れしていた「メタルライダー」
といった、彼の色違い共の方が尖った個性を持っており、戦闘でも育成でも明らかに目立っている。

スライムもりもりドラゴンクエスト』シリーズではスライム族の武器として登場。スライム族が騎士人形を背負う事でその機能を発揮する。
アーケードカードゲーム『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』においては、素早さが高めである事を除けばほぼ平均的。
相手を麻痺させる「ジャンプ斬り」は上手く決まれば強い。魔法使いと組ませると「イオ」を使うが、威力はさほど高くない。
また、意外かもしれないが魔法使いと相性が良く、戦士とは相性が悪いのが特徴。
見た目だけで戦士と組ませてしまうとポテンシャルを生かせないのだ。
メタルライダー、ダークランサーと組ませるとスライムジェネラルに合体する。
各種媒体でも出演の機会は多く、特に『V』のノベライズではピエールの名で登場。熟練の戦士として青年期以後の準主役とでも言うべき活躍を見せる。
+ ノベライズ版の詳しい活躍、ネタばれ注意
ノベライズ版のピエールは、元々一匹のスライムにすぎない存在だった。
そんな彼を変えたのが、リュカ(主人公)の母であり『V』のキーパーソンであるマーサとの出会いである。
少女時代の彼女やその幼馴染である少年イーブ(ノベライズ版オリジナルのキャラ)と交流を重ねるに連れ、ピエールは徐々にマーサに惹かれるようになり、
そして、報われない愛と知りつつも彼女を守りたいという決意を固め、「騎士の芽」*1を生やす決意をした。

しかし、騎士の芽を生み出せるのはスライムの中でも鍛え抜かれた者だけであり、
しかもその実行には相当の激痛を伴い、それだけで死にかねない程の苦行でもあった
ピエールもその例外ではなく長い期間を苦しむ事になったのだが、マーサへの想いから必死に耐え抜き、
遂には一人のスライムナイトへと成長を遂げる事が出来た。
しかし、一番にその姿を見て欲しかったマーサはこの時、リュカの父親パパスと駆け落ちして既に故郷のエルヘブンから姿を消していたのだった。
その後、彼は自暴自棄になって行き倒れていた所を一人のソルジャーブルに養子として迎えられ、
武具を受け継いで一人前の戦士として一党を率いる程の実力者になるまでに至った。
しかし、その目的はあくまでマーサの奪還であり、パパス(の名前は知らなかったが)の抹殺、ひいては人間への復讐であった。
そして数年後、ピエールは神の塔付近でマーサの息子であるリュカとの運命的な出会いを果たし、パパスと駆け落ちしてからのマーサの経緯を知り、
彼女を救うべくリュカの仲間に加わるのであった。
以後、彼はパーティーのサブリーダー的な役割を果たしていく事になり、特にゲームにおける中盤の山場であるデモンズタワー以降は、
もう一人の主人公と言ってもいいほどの活躍を見せていく
(そもそも、彼の半生は青年期前半の冒頭で語られ、リュカに出会うまではピエールの視点で話が進む。
 つまり、小説版においては青年期前半の最初の主役も務めている)。

まずこのデモンズタワー編だが、仲間モンスターがピエールとキラーパンサーのプックル、城の留守番を任されていたマーリン、ロッキー、ジュエルと、
後に生存が確認されたコドランを除いて、実に六名もの仲間死闘の果てに死亡してしまうという壮絶な展開になっている。
ピエールとプックルが助かったのは戦いの影響でリュカと分断されてしまったからなのだが、
ここではリュカの石化というイベントもあるため、相当な悲しみを背負わされる羽目になったのだった。
その後、マーリンやプックル、オジロンらと共に両親不在のティミー王子ポピー王女の師として、或いは親代わりとして二人を育てていく事になる。
ちなみに、その間にラインハットのヘンリーの元へと使者として、リュカの捜索に助力を求めたりもしている辺り、
魔物でありながらグランバニア国内においてそれなりの立場を認められている事が窺える。

そして数年後、成長したリュカの子供達と共にリュカを助け出し、再びマーサとリュカの妻ビアンカ救出のために旅へと復帰する事になる。
この旅の最中にピエールは、自分を育ててくれたソルジャーブルが天空人を助けるために尽力していた事を知るのだが、
彼の行動は魔物達のリーダーであるゴンズの怒りを買ってしまい、既にこの世にはいなかった。
ピエールは当然ながら激怒し、自らの手でゴンズを倒して仇討ちを果たす
(ゴンズはリュカにとってもパパスの仇であるため一悶着あったが、結局「リュカに復讐は似合わない」とピエールが背後からゴンズを仕留めている。
 なお、ソルジャーブルについては、彼自身も原作において仲間に出来、装備グループもスライムナイトと同一である事を踏まえた上でこのような役回りを与えられたと思われる)。
その後、ゴンズを操りパパスを殺害した宿敵ゲマとの戦闘においては、リュカとティミーと共に三位一体の攻撃を繰り出し、撃破に成功する。

そして、ピエールにとって最大の見せ場と言えるのが、この後に乗り込んだ光の教団との戦いである。
教団はリュカが幼少時に奴隷として囚われていた場所でもあり、他にも石化したビアンカが囚われている、マーサに化けた魔物が出現するなど、
ストーリーとしても大きな山場なのだが、実はノベライズ版だと、ここで原作には無い要素が一つ加わっている。
ゲームではこの教団の教祖としてイブールという魔物が現れるのだが、事前に名前も出ずにいきなりの登場で「お前誰?」と言わざるを得ない展開であった。
しかも、まだこれで強いのなら救いはあったのだろうが、ぶっちゃけると強さはかなり微妙
その前のボスであるゲマのインパクトが強烈すぎたり、ブオーンの様に凶悪すぎる性能を誇るボスとそれ以前に戦っている事もあって、
プレイヤーの印象にはあまり残らない不遇のキャラだった。
リメイク作品のPS2版及びDS版に至っては、シナリオが変更されゲマに処刑されるという哀れにも程がある結末を迎えているし……しかし。
ノベライズ版ではその汚名を返上するかのように、優れた実力を発揮。
リュカ達と五分に渡り合い、最後にはゲマですら倒した三位一体の攻撃も防ぎ切ろうとした……しかし。
弾き飛ばせたのはリュカとティミーの攻撃のみであり、ピエールの刃はイブールを貫いていた。
そしてピエールは、ここでイブールに対し「イーブ」と彼を呼んだ……。
そう、教主イブールの正体は、ピエールが幼少期を共に過ごしたイーブだったのだ(イーブ=イブールであるのは青年期前半から示唆されていたが)。
イーブはここでようやく、ピエールがかつてマーサの側にいた小さなスライムだと気付き、
彼がマーサを守りたい一心で自分すら凌駕する存在へと成長した事に驚愕。
最後はその隙を突いたティミーの一撃を受け、倒される事になった。

この後も、マーサ救出のために魔界へと乗り込み、遂にマーサと再会を果たすが、 ほとんどその直後に魔王との戦いでマーサは死亡
苦節約30年の月日を経て母と再会したと思ったら、すぐ死別したリュカの悲しみも察するに余りあるものがあるが、
ようやく再会したと思ったら自分が手を出せない間にマーサを死なせてしまい(魔王戦は魔物メンバーは参加出来なかった)、
遂に「マーサを守る」という誓いを何一つ果たせなかったピエールの悲しみも相当のものであろう……。
エピローグでは、リュカを支えるべくグランバニア城の一員として奮闘している姿を見せている。
……彼の騎士の誓いとその半生は決して無意味なものではなかったと思いたいものである。

このノベライズ版を元にしたCDシアターでは 中尾みち雄 氏が演じている。
上記の設定はなく、性格は気さくなお兄さんという雰囲気。


「……オレたちって 無口なんで 急に話しかけられると 何言えばいいか わからんのです。」


MUGENにおけるスライムナイト

asasin氏が手描きで製作したものが存在していたが、現在は入手不可。
剣を用いた近距離での接近攻撃が主体のキャラで、どちらかというと地上での戦闘が得意。
ゲージを消費するが、画面端近くで爆発を起こす強版のイオやほぼ全画面のイオラを織り交ぜれば遠距離でも戦える。
ゲージを吸い取るマホトラや、相手を叩き付ける稲妻を落とす稲妻斬りなど攻め手は多彩。
2ゲージ消費のホイミは、溜めた後に体力を3割回復する事が出来るが、攻撃されるとゲージの無駄遣いに終わるので注意。

また、特殊カラーも存在する。
1~5Pが通常の性能で、ドラクエ5基準のレベル1のスライムナイト(攻撃44身の守り45)に、
はがねのつるぎ(攻撃+33)、はがねのよろい(防御+30)、てつのたて (防御+16)、てつかぶと(防御+16)を装備した状態。
合計でATK77、DEF107となっており、守備力は高めだが攻撃力は謙虚
だが6~11Pカラーになると攻撃力がレベル30時の95に加えてまどろみの剣(+55)装備で150になる他、
守備力は変化しない代わりに根性値が付加され、回避が完全無敵になり、ホイミが6割回復のベホイミに変化する。
12Pにもなると攻撃力がレベル99時の255にメタルキングの剣(+135)装備で385と猛烈な値になり根性値が強化。
回避の完全無敵に加えてゲージとHPが徐々に回復し、必殺技が必殺技でキャンセルが可能になり、必殺技に無敵付加される。
加えてベホイミがベホマに変化し、溜め動作中も無敵になりHPも完全回復するようになってしまう。
また、しゃがみ弱で出せる毒針に、相手をまれに一撃で倒す即死効果も付加されている。
とはいえ、大ダメージ無効化など狂キャラ等にありがちなものは無く、うまく戦えば並キャラでも勝機は十分にある。
AIは搭載されていないが、nns氏が外部AIを公開している。

出場大会



*1
この騎士の芽とは名前の通りスライムナイトの騎士部分であり、
このノベライズ版では「スライムナイトの騎士は、スライム自身の体から生やした分身」という解釈が取られている。
後に『モンスターズ』等においても同様の設定が見られるため、ここから逆輸入された可能性が高い。
なお、この設定故に小説版の挿絵ではスライムナイトの騎士に足が無い。


最終更新:2023年07月02日 20:03