ビホルダー

TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)に登場するモンスター。
球体に巨大な一つ目と口がついており、さらに先端に小さな眼のついた多数の触手を頭頂部につけた異形をしている。
巨大な球体に一つ目、頭頂部に触手と、有名な西洋妖怪「バックベアード」と共通点も多いが、全くの別物であるので注意。
(一部ゲームのバックベアードではビホルダーを意識したような能力を付けられる時もあるが、これは後述の事情もあると思われる)。
「behold」は「見つめる、注視する」という意味の英語。メガオプティックブラストの掛け声と言えば分かりやすいだろうか。

主な能力は以下の通り。
  • 巨大な一つ目から発せられる魔法無効化光線(アンチマジックレイ)
    • 全ての魔法が打ち消され、魔法の薬はただの水に、魔法の剣もただの剣になる。一応視界から逃れればマジックアイテムの魔力なら復活する。
  • 触手の眼から各種凶悪な光線を発する
    • 石化、分解、即死など計10本10種類。特に分解を喰らって塵と化すと死体も残らないので復活させることが出来ない(方法が無いわけではないが)。

この様に凶悪な能力を持っている上に「この世に自分以上に優れた存在などいない」と本気で考えている傲慢さ、
様々な悪事を実行できる高い知性などから、『D&D』の悪役代表と言った扱いを受けている。
そうした性質からよく事件の犯人・黒幕として抜擢されることも多く、キャンペーンシナリオのラスボスを務めることもあるほど。
ただし、能力自体はあくまで「視線」によるものなので、視界外にさえ出れば無効化することも出来る。

スーパーファミコンソフト化の際『D&D アイ・オブ・ザ・ビホルダー』とタイトルに入っていたりと、
下手をすればドラゴン以上に『D&D』を象徴するモンスターと言っても過言ではない。

+ 日本での別名は「鈴木土下座ェ門」
『D&D』のモンスターは神話や伝説からそのまま取ったものも多いのだが、このビホルダーはオリジナルの怪物(=著作権がある)である。
さらにかつて『D&D』の当時の版権元であったTSR社(現在はWoC社に売り渡されている)は権利関係で厳しい姿勢を取っており、
特段このビホルダーについては当時の日本の販売元の新和(現在は角川書店を経てホビージャパンが代理店になっている)が厳しく反応していたとのこと。
ジャンプの漫画『BASTARD!!』に(おそらく伝説の怪物か何か(=著作権が無い)と思って)ビホルダーをそのまま出した際、
名前も上述の権利関係からクレームを受けるbeholderになってしまった。
単行本収録時には手足が生えた姿になり、更に担当の鈴木氏が土下座して謝ったというネタから「鈴木土下座ェ門」と言う謎の名に
(ただし後のインタビューで、当時の関係者に鈴木と言う人物は居なかったと答えている)。
あとジャンプの読者プレゼントで「バスタードの作者もファン」と言う売り文句と共に『D&D』が入ったりもした。

なお冒頭で述べた様に「behold」は単なる動詞であり、「beholder」(見つめる者)も一般名詞なので、名前だけでアウトは取られない。
邪眼での攻撃もメデューサ(石化:原典では邪眼では無かったが)や吸血鬼(魅了)がおり、
一つ目の怪物もサイクロプスやカラカサお化けなど多数いるのでこれだけでも特に問題はない。
「邪視で攻撃してくる」「一つ目の大目玉」「ビホルダーという名前」が揃うとアウト。
このためか「一つ目に触手が生えた怪物」を、水木しげる氏の妖怪図鑑などから「バックベアード」、邪眼そのものを意味する「イビルアイ」、
あるいは上記のメデューサ(ゴーゴン三姉妹)の頭部パーツ*1とされているケースが多い。

他にも『FINAL FANTASY』(初代)に登場したビホルダーは上記のような姿だったのに、
90年に発売された海外版では一つ目お化けのようなデザイン(頭部触手がない)に変更にされ、名前も「アイ(EYE)」とそのまんまになり、
国内作品も94年の『II』との合併版では、名前こそ「ビホルダー」だが海外版の一つ目お化けの姿にされ、攻略本では「イビルアイ」と呼ばれていた
(以後のリメイク版では全て、本編でも書籍でも一つ目お化けの「イビルアイ」で登場)。
ちなみに色違いのデスビホルダーも同じように外見が変わり、名前も海外版1「ファントム(PHANTOM)」→リメイク「デスアイ」となった
(まぁ、『FF1』は実は『D&D』をコンピュータゲーム化した代物な為、まんまなのはビホルダーに限らず、
 他のモンスターやアイテムも同じというほとんど何も考えずに出しただけなのだが)。

SaGa』シリーズでもビホールダーが移植・リメイク時に名前と姿を変えられ「デスアイ」となっている。
このあたりはおそらく自主規制の範疇だと思われる。
後に『FINAL FANTASY XI』にも「ビホルダー」というモンスターが登場しているが、
こちらは姿が全然違う(泥が積み重なったような体形に目が多数)ため問題は無いらしい。

また、『ドラクエ』ではさすがにこの名前では出さなかったのだが、『DQ2』で乏しい容量の中でビホルダーを意識しているっぽい一つ目触手のモンスターが、
「メドーサボール/ゴーゴンヘッド」と「あくまのめだま/ダークアイ」と色違い抜きで2タイプも登場している
(ご丁寧に全種状態異常を起こしたりMPを吸い取るといった、補助系攻撃に充実したモンスターというのが面白い)。

悪魔城ドラキュラ』シリーズでも「一つ目の球形のモンスター」はほぼ全ての作品で登場しており、
通常は「ピーピングアイ」の名称で登場するが、より大型のタイプに「ドゲザー」なんて名称が付けられたことも。

TRPGプレイヤーをネタにしたギャグ漫画『賽の目繁盛記』では「名前を呼んではいけない怪物・スカイライン(仮)」として登場している。
表向きはダークファンタジーだが、裏ではTRPGネタが満載なAAスレ発のライトノベル『ゴブリンスレイヤー』でも「名前を言ってはいけない怪物」として登場
(ゴブリンスレイヤー(主人公)の言動はTRPG界隈で言う「和マンチ(和製マンチキン)」を元ネタとしており、
 「名前を言ってはいけない怪物」に対して使った「粉塵爆発」も和マンチが好む戦法だったりする)。
鳴き声が「ビホルダー」と言っている様にしか聞こえない様になっていた。

ある意味、そこまでしても出したくなるほどの魅力がある怪物であると言えるのかもしれない。
『賽の目』と『ゴブスレ』は自主規制と言うよりも土下座ェ門事件を茶化す方がメインだが

「邪視で攻撃してくる」「ビホルダーという名前」
だけならセーフという例


ゲームにおけるビホルダー

CAPCOMが開発したベルトスクロールアクションゲーム『ダンジョンズ&ドラゴンズ』にもボスモンスターとして登場する。
原作通りの魔法無効化や被攻撃中に割り込む反撃などで、対処法を知らないプレイヤーの数々を全滅させた。
同作でもかなり特徴的なアヘ顔動作や攻撃方法を持つキャラである。


「いらっしゃい♡
 君達ちょうど良かった。
 私の魔法ためさせてもらうわね!!」

TOD』、『SOM』どちらの作品もルート選択によりビホルダーを回避することが可能。
特に一作目の『D&D TOD』では終盤でレッドドラゴンとの選択になるが、レッドドラゴンルート一択だとよく言われる。
これはレッドドラゴンルートがレッドドラゴンとの戦闘だけで終わること、戦闘前に体力が全快すること、
戦闘後に多量のアイテムとポーションが得られること、そしてレッドドラゴン戦の対策が確立出来るのに対し
ビホルダールートは「ザコ戦→ビホルダー戦」という流れでHPが減る危険があるうえ戦闘前後で体力回復が一切無く、
貴重なアイテムも入手できない等、ビホルダールートに行くメリットが一つも無いためである。
特に体力回復が無いのは本当に死活問題(もうショップが無いのでこれ以降最後まで大幅な体力回復ポイントが無い)。
作中ではビホルダールートの方が簡単そうな描写がされている(レッドドラゴンと本当に戦うのか?と何度も聞いてくる)のと、
レッドドラゴンの最初の攻撃(炎の息)が対処法を知らないとほぼ即死で罠ルート(クリア不可能ルート)に見えた為、
稼動初期こそビホルダールートに行く人も多かったが、攻略が確立された今日、TODでビホルダーと戦う人は稀である。
なおSS移植版の『D&Dコレクション』ではレッドドラゴンが異様に強化され、攻撃速度や追尾性能が高くて回避が安定せず、
こちらの起き上がりに攻撃を重ね続けて10割持っていくこともある世紀末ぶりのため、ビホルダーを選んだ方が安全とされる。
なお、何故かオカマチックな話し言葉になっていた。……まぁ、性別の概念は無さそうなので、別に問題無いかもしれないが。
あと笑い声が「ビホホッ」……カプコンは一つ目キャラの口調を弄らないと気が済まないのだろうか。

『SOM』の方でも序盤の腐海ステージに登場、前ステージで時間をかけすぎると強制で腐海ルートになるが、
そうでなければ街と腐海、そしてエルフがいればエルフルートの選択となる。
全体の難易度と入手できるお金が高額なことから基本的に街ルートがよく選択されるが、
腐海ルートは魔法剣などアイテムが多数入手でき、慣れればビホルダーを簡単にノーダメージで倒せるため選択されることも多い。
ドロップアイテム「ビホルダーの眼」と交換できるレビテーションブーツ(浮遊靴)で遊べるのは、腐海ルートの特権である。

ちなみに『TOD』と『SOM』ではアンチマジックレイ対策が異なり、
TODでは触手からの光線を発射する際に目を閉じた時(触手の光線もアンチマジックレイの影響を受けると言う設定のため)、
SOMはこちらを向いていない時が魔法を使うチャンスとなる
(TODでは背中に廻っても魔法を唱えた瞬間に強引に割り込んで振り向く。
 更にPCの魔法は所謂「暗転状態」になるので、挟み込んだとしても「二人同時に魔法攻撃」は不可能であり順番に消される)。


MUGENにおけるビホルダー

procyon氏による『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のドットを用いたビホルダーが存在していた。
現在はOneDriveの消失により入手不可。
原作通りの攻撃を行う他、相手を睡眠状態にする泡を出したり、相手のコンボが5ヒットに達すると自動反撃したり、
アンチマジックレイで投げ以外の超必殺技を無効化したりする。

適当に技を出す程度の簡易的なAIもデフォルトで搭載されているが、睡眠攻撃など結構凶悪な性能なので中々の強さとなっている。
特に、食らったらレバガチャで抵抗しないと即死する石化光線(原作再現)は、
基本的にレバガチャしないAIにとっては文字通りAI殺し
空中で食らった場合は石化しないのと、AIの使用頻度の低さが救い。
アンチマジックレイは『SOM』準拠で背後からの攻撃には無力なのだが、シングル戦の場合そこを突くのは難しいだろう。
また、タッグ戦ならタッグ戦で後ろの方に居座られるだけでキャラによっては詰む
このように遠距離戦能力は高いものの、ガードを崩す手段が噛み付きしかなく、
切り返し技は5ヒット食らうまで出せないこともあり、接近戦で押されると意外と脆い一面も。
総合的には強クラスと思われる。
プレイヤー操作(4:30~)

出場大会

プレイヤー操作



*1
例としてFCディスクの『光神話パルテナの鏡』では、ラスボスがはっきり「メデューサ」と言われているのだが、
戦闘時は頭部だけで巨大な一つ目(横向きなので分かりにくいが)で、目からビームを出したり、髪の毛の蛇を発射して攻撃する怪物として登場している。
また、ナムコのシューティングゲーム『フェリオス』の1面ボスのメデューサも首を切り離して攻撃してくる(ただし目は二つ)。


最終更新:2023年07月29日 20:23