機動刑事ジバン






   「警視庁秘密捜査課警視正!機動刑事ジバン!」


1989年から1990年に放送された東映の特撮番組『機動刑事ジバン』の主人公。

ドクター・ギバ率いる犯罪組織・バイオロン。
それに対抗する策としてジバンプロジェクトを進めていた五十嵐健三博士と、
その孫・まゆみが襲われていた所を、直人は身を挺して助け出した。
五十嵐博士は直人を死なせたくないという思いから、彼をサイボーグ「ジバン」に改造する事で蘇らせようとする。
結果、直人はジバンとして復活を果たすが、彼が起動する前に五十嵐博士は力尽き倒れてしまった。
警視庁の秘密調査室責任者である柳田誠一は、五十嵐博士亡き今、直人の命がいつまで持つか分からないと告げつつ、
彼を警視正に任命し、「機動刑事ジバン」としてバイオロンと戦って欲しいと懇願する。
直人はそれを受け入れ、まゆみ達のサポートを受けながらバイオロンとの戦いに赴く。

変身者はセントラルシティ署に勤務する刑事・田村直人
ただ、劇中での説明ではジバンに改造されて以降、直人の姿はホログラムで映しているだけである模様。
つまり「ジバンに直人が変身する」というより、「普段はジバンに改造される前の姿に変身している」のが正しいようだ。
(とはいっても単にホログラムだったら触ったらバレそうなものを気付かれる様子は無かったり、
 機動刑事としてのアーマーめいた姿も「バトルスタイル」と称されているため、外見が直接変化している可能性はあるが)
また本作には変身バンクが一切存在せず、画面外に消えた直人がいつの間にかジバンに変身しているのがほとんどで、
変身プロセスが明確に描かれる事が一度も無いという、珍しいヒーローでもある(直人の姿になる描写は一度だけされた)。
この関係でメタルヒーロー名物のメタリックなアーマーは、どこまでがジバンの体の一部でどこから装備品なのかはっきりしてない。

直人を演じたのは日下翔平氏。『シャリバン』『ジライヤ』へのゲスト出演を経て本作でメタルヒーローシリーズ主演となった。だから紙忍・折破じゃないぞ!
氏は現在俳優を引退しているが、本作への思い入れは強く、DVDの特典映像では「またジバンをやりたい」と語っている。
近年ではメタルヒーロー関連のイベントに参加する姿も度々見られ、
特撮オマージュ要素の強いアニメ『怪人開発部の黒井津さん』第6話にも本名の「所宏吏」名義でナレーターとして出演した
(同作では氏以外にも特撮出演経験のある俳優が各話ナレーターや声優として多数出演している)。


+ 直人が警察官を目指した理由は…
終盤で直人には妹がいた事が明かされ、少年時代に旅行に行った両親と共に行方不明になったと語った。
どうしても妹が死んだとは思えない直人は、その事件を探るため警察官になったのである。

そして、まゆみにはその妹の面影があり、それ故にまゆみを守り続けていたのであった。
だがそれは当然の話であった。まゆみこそ五十嵐博士がバイオロンの拉致から決死で救い出した直人の妹だったのだから。

第17話ではバイオロンが対ジバン用に作り出した「マッドガルボ」が登場、以降ジバンのライバルキャラとして何度も立ちはだかり、
更にまゆみがその策略が原因で記憶を失い直人と離れ離れになり、無実の罪を着せられ逃走中の青年・早川良と共に行動するようになる。
第28話では宇宙から第三勢力である「クイーンコスモ」が飛来、一時期クイーンコスモとバイオロンが手を組むなど、
ジバンは味方を失う一方で闘いは激化していく……。

+ ジバンのスペック
基本武装として「マクシミリアン TYPE-3」という武器を太腿に装備。
近接戦闘では十手のような形状の警棒として使用する。
遠距離では銃として変形し、普通の光線の他バイオノイドの正体を暴く「サーチバスター」が使用可能
マクシミリアンの全エネルギーを一気に放出する「ラストシューティング」という技もある。
さらに長剣「マクシミリアンソード」に変形し、これがジバン最大の武器となる。いわゆるレーザーブレード。
刀身にエネルギーを集中した後、すれ違いざまに横に斬って、振り向きざまに縦切りを決める「ジバンエンド」、
ジャンプして縦切りを決める「ジバンハーケンクラッシュ」を使う。

右腕にはドリルやビームを発射できる装備「マルチワーカー」が搭載。
ドリルは装着したまま普通に突き刺すだけでなく射出する事が可能。格闘戦で効果を発揮した。
設定では手錠も装備しているが、本編では使われなかった。

乗り物として自動車のレゾン、バイクのバイカン、VTOL戦闘機のスパイラスがあり、
いずれもAIや武装が搭載され会話やジバンの支援を行う事が可能。
レゾンには戦闘メカ・ダイダロスが収納されており、ジバンはこれを装備して飛行可能な他、
これを砲台として使用可能、ダイダロスファイヤーという強力な光線を出せる。

+ パーフェクトジバン
中盤でジバンはマッドガルボとサイノイド、クイーンコスモとの壮絶な戦いの末機能停止してしまった。
しかし、その事を無意識に悟ったまゆみが五十嵐博士の墓に隠された仕掛けを機動、
ジバン基地に隠されていた蘇生装置によってジバンは強化復活を果たし、さらに新しい装備を手に入れた。

新しい装備は右腕に装備される大型ドリル・ニードリッカーと左腕に装備されるパワーアーム・パワーブレイカー。
さらに大型の火器・オートデリンガーが使用可能となった。
オートデリンガーはザコの掃討に使う「サブマシンガンモード」と、
エネルギーチャージを行いダイダロスファイヤーの30倍以上の威力を誇る強力な大砲になる「ファイナルキャノンモード」が搭載、
ファイナルキャノンは終盤におけるジバンのメイン必殺技となった。
これらの装備は必要に応じて転送される。

余談だが、「ジバンが死亡し、強化復活する」という展開を手がけたのは本作メインライターである杉村升氏であるが、
氏は本作の前年に『仮面ライダーBLACK』でもヒーローが死亡するという脚本を書いている。なんというヒーロー殺し。
しかし、創世王の手助けがあったとはいえ基本的に一対一の決闘でBLACKが有利だった仮面ライダーに対し、
本作は強化改造された敵幹部と怪人+今まで手も足も出せなかった第三勢力にフルボッコされ腕が切断されるなど、
サブタイトルが示すようにかなり壮絶で、全国の子供達のトラウマになったとか。

+ 対バイオロン法
バイオロン対策として制定された架空の法律であり、ジバンがバイオノイドに対して電子警察手帳を掲げ、
これを読み上げていくのが本作のお約束でもある。
が、この対バイオロン法、条文の構成などが色々アレすぎて、ファンからは「稀代の悪法」と呼ばれている
条文は以下の通り(劇中で登場したもののみ)。
  • 第1条
    機動刑事ジバンは、いかなる場合でも令状なしに犯人を逮捕することができる
  • 第2条
    機動刑事ジバンは、相手がバイオロンと認めた場合、自らの判断で犯人を処罰することができる
    (補足)場合によっては抹殺することも許される
  • 第3条
    機動刑事ジバンは、人間の生命を最優先とし、これを顧みないあらゆる命令を排除することができる
  • 第5条
    人間の信じる心を利用し、悪のために操るバイオロンと認めた場合、自らの判断で処罰することができる
  • 第6条
    子どもの夢を奪い、その心を傷つけた罪は特に重い
  • 第9条
    機動刑事ジバンは、あらゆる生命体の平和を破壊する者を、自らの判断で抹殺することができる

まず「法律に必要な目的・用語の定義が条文に無く明文化されていない」というのはこの際些細な問題なので置いといて、
第1条で現行犯以外は令状なしで逮捕できないという、憲法や刑訴法の逮捕令状主義を完全に無視しており、
第2条では一個人かつ現場の警察官であるジバンに処罰権限まで与え(当たり前だが憲法違反)、
しかも「相手がバイオロンと認めた場合」は「ジバンが」認めた場合なので気に入らない奴をバイオロン認定して処罰可能。
第5条は第2条に含まれるのでいらない。
第9条に至っては相手がバイオロンに限定されていないし「処罰」じゃなくて「抹殺」。下手すれば第一次産業従事者皆殺し。
というか第6条はもはや法律でも何でもない

というわけでこの法律を簡潔にまとめると「ジバンが何をやっても許される法律」という事になるのである。
あ、おまわりさん こいつおまわりさんです

このようにツッコミ所満載で見事すぎるほどの人権侵害・違憲立法の典型なのだが、
作中ではジバン=田村直人が正義感が強い青年で、法律をこの上なく正しく運用し、暴走する事が無かったため、
ちゃんと本来の目的である(と思われる)バイオロンの排除・撲滅にしっかり貢献していた。
ジバンが直人でなかったらどうなっていた事やら。
プロデューサーが言うには「正義の味方の行動原理を法律と言う形で問題なく動かせるようにしたもので、
倫理には何も背いていないから問題ない」らしい。……そうか?

この法律については、円道祥之著『空想科学裁判2』で『バトルロワイアル』のBR法と共に「架空の悪法」の例として取り上げられ
(ただし、バトルロワイアルはBR法が悪法である事が前提のディストピア世界なので、ヒーロー物であるジバンとは異なる)、
前述通りの問題を指摘し、第6条には「気持ちはわかるが、意味がわからん」とまで言い放っており、
最終的に「ジバンが暴走しないから機能しただけで、モノづくりは一流だが法の扱いが二流」と締め括られた。
ジバンはサイボーグであって物ではないのはさておき

「対バイオロン法、執行!」

本作はメタルヒーローシリーズ第8作であり、平成になってから最初の作品でもある。
本作は途中から放映時間の変更が行われ、それまで日曜朝9:30からの放送だったメタルヒーローシリーズは、
日曜朝8:00からの放送に変更された。そしてその枠が、2017年に再度移動するまで続いた平成ライダーシリーズの放送枠なのである。
ジバンの造形やモーションには『ロボコップ』の影響が窺え、これは更に後の『特捜ロボジャンパーソン』に受け継がれる。
『ロボコップ』のモデルには『宇宙刑事ギャバン』があるので、本家が逆輸入した形と言える。
またジバンが扱う「電子警察手帳」の玩具が好評だった事から、それまでフィギュアなどが中心だった玩具展開が、
変身アイテムや小道具などの「なりきりアイテム」を中心にするように変わっていった。

このように後に与えた影響は大きく、作品自体も堅実にまとめられた良作ではあるのだが、
ファンからの印象は「シリーズの中ではやや地味」という所なのではないだろうか。
まあ同一のシリーズで前年が世界忍者戦、翌年がシリーズ革命児『レスキューポリスシリーズ』の第1作で、
しかも同年に放映された『仮面ライダー』がよりによって『BLACK』の続編『BLACK RXとなれば、
相対的に本作が地味な印象になってしまうのは否めないだろう。
なお、RXロボライダーのデザイン案の中にはジバンによく似たものもあったりする。

他にも「主演・日下翔平よりもまゆみを演じた子役・間下このみの方がギャラが高かった」という噂話や(間下氏は当時人気の子役だった)、
本作の音楽担当としてクレジットされている渡辺宙明氏はちゃんと新曲を作ったのに、
音楽プロデューサーの裁量で主題歌や挿入歌を除く音楽のほぼすべてが渡辺氏の過去作品の流用になったり
(当然渡辺氏は抗議し、以降2012年の『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン』まで実に22年間東映作品に関与しなかった)、
本作放映中に埼玉幼女連続誘拐事件が発生、オタクへの風あたり、ひいては特撮批判が厳しくなったり、
本作の早川良役・小林良平氏は『BLACK RX』の次の仮面ライダーの主演を飾る事が決まっていたが、
プロデューサーがとんねるずのパロディにキレたためお蔵入りになってしまった*1りと、
製作事情や当時の社会情勢などについて結構アレなエピソードが散見されたりする。呪われていないだろうな、この作品

主な客演としてはコンパチヒーローシリーズにおけるファミコン用アクションゲーム『SDヒーロー総決戦』にて、
メタルヒーロー代表としてシャイダー、メタルダーと共に参戦。
ウルトラマン仮面ライダーガンダムと共闘し、ダークブレイン率いる悪の軍団と戦った。
攻撃手段は恐らくダイダロスファイヤーで、二門砲であるためか二発同時発射される。
何故か緩く上下斜め方向に飛んでいくため、カバー範囲が広く段差のある箇所で特に強い上に、
一発の威力がやたらと高く、ウルトラマン系最強であるタロウのストリウム光線を凌ぎ、
しかも至近距離で撃てば二発同時ヒットさせやすい。
同じく二発同時発射でガンダム系最強のνガンダムなぞは上下幅があるため両弾ヒットさせるのが難しく、
させたとしてもダイダロスファイヤー一発に及ばないというのに。
この高性能なダイダロスファイヤーのおかげで、同作最強キャラは文句なくジバンである。
余談だが、マッドガルボもボスとして出演しているが、何故か宇宙コロニーステージに登場する。
さらに余談だが、メタルヒーローは「宇宙刑事(シャイダー)」→「軍の秘密決戦兵器(メタルダー)」→「お巡りさん(ジバン)」と、
パワーアップするほど設定上の肩書きがしょぼくなっていくが、放送順だから仕方ない
(ただしメタルダーに関しては太平洋戦争中に作られた旧式機なのでジバンより弱くて当然と言う見方も出来る)。

また映画『スーパーヒーロー大戦Z』ではレンジャーキーを使用して歴代のスーパー戦隊に変身できる海賊戦隊ゴーカイジャーが、
ギャバンType-Gから渡されたメタルヒーローキーを使用し、ゴーカイシルバーこと伊狩鎧(いかり がい)がジバンへと変身
(鎧は「少女(彼の場合は通りがかりのだが)を助けるために命を落としかけ、その後ヒーローの力を得た」という直人との共通点がある)。
他の面々もドラフトレッダー、ブルービート、ビーファイターカブト、ジライヤ、ジャンパーソンへとそれぞれ変身して
そのまま戦う事は一切せず必殺武器のゴーカイガレオンバスターを放っている。

宇宙刑事シリーズとスーパー戦隊シリーズの『特捜戦隊デカレンジャー』のクロスオーバー作品である『スペース・スクワッド』では、
全銀河の広範囲な連携を前提とした特別チーム「スペース・スクワッド」のメンバー候補の一人となっている。
ただし、本人の出番は無いので実際に入隊したのかは不明。

+ ニコニコ動画での扱い
前述したように良作ではあるが、地味な印象の本作はニコニコでも話題に上る事が少なかった。
MAD『忙しい人の為の機動刑事ジバン』で前述の「対バイオロン法」を元ネタとしたギャグ「対ハゲオロン法」が作られたぐらいか。

しかし2012年に東映がニコニコ動画に公式チャンネルを開設。
動画の配信が始まったのだが、その第一弾のラインナップに本作が選ばれた
毎週水曜朝8時に更新され、最新話は配信後1週間だけ無料という形式で配信された。
現在は全52話と劇場版が有料で配信されている。

無料配信時には前述の対バイオロン法の他、直人のロリコン疑惑 マユミの重量感
ダイダロスファイヤーの30倍以上の威力のファイナルキャノンモードの登場により 1/30と呼ばれてしまうダイダロス 等がネタにされていた。


MUGENにおける機動刑事ジバン

+ ゆ~とはる氏製作
  • ゆ~とはる氏製作
FCのアクションゲーム『SDヒーロー総決戦』のスプライトを用いている。
ファミコン30周年記念として製作したとの事。

元のゲームの仕様に沿ったため、システムはいたってシンプル。ジャンプと射撃だけのアクションゲーム仕様である。
射撃は原作通りの2way弾で、しゃがんでいると使えず、画面内に一発でも残っていると次弾が出ない。
モーションが短いので隙自体は少ないものの、連射するとモーションだけが空ぶる事になる。
しかしやはり原作同様、至近距離でなら二発とも当てやすいので、擬似的に連射も可能となる。
威力こそ抑えられているがガード不能でヒットバックがないため、近付いての連射さえ出来れば恐ろしい事になる。

ジャンプも当然アクションゲーム仕様なので、ボタンを押した長さで高度が変わり、空中でも横方向に移動できる。
元のドットがドットなので非常に小さく、攻撃が当てづらい。しかも仰け反りには当然無敵時間がある。
基本的に音声はなく、一部行動でセリフの文字が出る。ジャンプの「でやっ」やダメージの「あうっ」がちょっと可愛らしいかも。

12Pカラーで特殊仕様になる他、特殊やられも充実している。
12Pカラーでは弾速が2倍速になったり連射制限がなくなるため、凶クラス程度の相手ならばほぼ封殺できる。
一部ボイスが搭載されており、メタ返し死兆星カットイン演出時に発生する。
AIは未搭載。

+ Ryou Win氏製作
  • Ryou Win氏製作
多くのロボコップキャラを製作している氏によるジバン。
MUGEN1.0以降専用で、原作の映像からキャプチャして製作されている。
イントロでボイスを日本語とブラジル語から選択可能で、対バイオロン法もきっちり読み上げてくれる。相手がバイオロンじゃなくても気にするな!
ジバン自身の武装のみならず、バイカン、スパイラスといったマシンも実装されている。
なお、超必殺技使用時のカットインでは顔が一瞬へのへのもへじになるというシュールな演出があるが、
これはまだ演出が未完成で暫定的なものなのか、はたまた仕様なのかはわしにも分からん・・・・
AIはデフォルトで搭載されている。
紹介動画(公開サイトへのリンク有り)


「俺は鬼になったのだ!本当の愛のために、鬼になったのだ!」

出場大会

  • 「[大会] [機動刑事ジバン]」をタグに含むページは1つもありません。

出演ストーリー



*1
ただし、「11代目仮面ライダーの企画が突如中止になったと小林氏が発言している」事、
「『BLACK』シリーズは当初は3年は続ける予定だったと吉川Pが発言している」事、「吉川Pがノリダーへ激怒していた」事を示す資料は存在するが、
「ノリダーに怒った事が中断の原因」と吉川Pが明言した資料は見付かっておらず、
「中断の原因はテレビ局の編成の都合」と吉川Pが発言したインタビュー記事があり、
『RX』当時オーディションを担当していた高寺氏は「続編は作らないと聞いていた」と証言している。

なお、このお詫びなのか小林氏はその後『地球戦隊ファイブマン』にてファイブブラック・星川文矢役に起用されている。


最終更新:2023年10月14日 02:45