Queen of Heart'99

後に『MELTY BLOOD』で事実上の商業デビューを果たした同人サークル、
「渡辺製作所」(現・フランスパン)製作の2D格闘ゲームであり、同サークルの出世作。
近代同人ゲームの先駆けと言える存在であり、この作品が世に広まったことで同人業界でも本格的な製作環境を整え、
市販品さながら(もしくはそれ以上)のクオリティの作品が作られるということが広まっていった。
いわば同人ゲーム業界に革命を起こしたワケで、非常に意義深い作品である。
本作は前年度発表の『Queen of Heart'98』の続編にあたり、前作から全ての面において正統進化を遂げた。
その完成度は現在においても極めて高い水準にあり、商業作品にも決して引けを取らないレベルにある。

登場キャラクターは前作に引き続き人気PCゲーム『ToHeart』のヒロイン達。
本作では前作ゲスト出演の『WHITE ALBUM』勢の本格参戦に加え、『雫』『痕』勢、
さらに当時の最新作『こみっくパーティー』から高瀬瑞希が参戦した。
また、あきかん氏の二次創作作品に登場する「コモード芹香」も登場。
いわば同人作品同士のコラボレーションであり、これが後の『MELTY BLOOD』誕生への萌芽となる。
後に追加ディスク『QOH'99 SE (Second Edition)』+アップデートにより、総合バランスの再調整と、
アップデート時の最新作『ナイトライター』(『猪名川でいこう!』収録)のコリンを含めた
追加キャラが使用可能となり、現行における最終形となった。
裏性能キャラも含めれば全34キャラというボリュームや、4人同時対戦といったパーティゲーム的要素が、プレイバリューの大きさに繋がっている。

なお、同じくLeafの『こみっくパーティ』が元ネタとなっている『Party's Breaker』は正当な続編にあたり副題には『QOH'2001』が冠されているが、
登場キャラはほぼ『こみパ』のヒロインのみに絞られているため一新されており、高瀬瑞希以外の続投キャラはいない。
システム面では基礎部分は共通しているものの、エフェクトの大幅強化等、主に演出面で大幅にパワーアップしている
(半面要求スペックが高くなり、フルで楽しむには当時最新モデル級+αの性能が必要になるなど敷居が高くなっていた)。

システムは『あすか120%』がベースであり、ゲーム中の必殺技は他の格闘ゲームのパロディが数多く見られる。
ただし、技の大元のネタは『リーフファイト'97』(『初音のないしょ!!』収録)から来ているものがほとんどである。

参考動画


MUGENにおけるQueen of Heart'99

その人気からDOS時代のMUGEN界隈で同作のキャラがかなり多く出回ったものの、
それが渡辺製作所サイドに見つかったためかなり問題となり、
あまつさえMUGENでのキャラについての苦情を渡辺製作所側に寄せるという前代未聞の迷惑行為が多数発生。
結果、多くのキャラが公開中止となり現在に至っている。
MUGEN界隈も同人ゲーム界隈もまだ創生期だった当時故の悲劇だが、下手をすると現在も起こり得る話なので全く笑えない。
MUGENプレイヤー諸兄は肝に命じて置くように。

今でも公開されているキャラや作成されているAIがあるが、このような経緯からか動画での出番は少な目である。


QOH'99 SE 登場キャラクター


新城沙織 藍原瑞穂 月島瑠璃子
柏木初音 柏木楓 柏木梓 柏木千鶴
高瀬瑞希
神岸あかり 来栖川芹香 保科智子 長岡志保 松原葵 セリオ マルチ
姫川琴音 宮内レミィ 雛山理緒 来栖川綾香
森川由綺 緒方理奈
  • EXキャラクター
太田香奈子 不良初音 鬼千鶴 お下げのあかり コモード芹香
殺意の波動に目覚めた志保 LF97葵 HM-12
真のヒロイン姫川琴音 ラピード綾香
  • 隠しキャラクター
ティリア・フレイ コリン 坂下好恵 

Party's Breaker 登場キャラクター


高瀬瑞希 牧村南 猪名川由宇 大庭詠美 長谷部彩
桜井あさひ 芳賀玲子 塚本千紗
  • 隠しキャラクター
風見鈴香 ピーチ瑞希 立川郁美 玲子'94 御影すばる
  • ボスキャラクター(使用不可)


システム

A(弱攻撃)、B(中攻撃)、C(強攻撃)、S(特殊)の4ボタンで操作する。

  • 開幕前行動
ラウンド開始前に歩行、しゃがみ、ダッシュ、ジャンプが可能。
相手との間合い取りが出来る他、理緒のみ転倒攻撃(歩行中にランダムで倒れこむ)で攻撃できる可能性がある。

  • 空中ジャンプ
所謂2段ジャンプ。全キャラ共通で使用可能。
主に空中戦・空中コンボで活用されるが、香奈子のように移動手段として常用されるケースもある。
また、ダッシュジャンプからの空中ジャンプではダッシュ分の慣性が持続し、通常ジャンプからの空中ジャンプとは軌道が変化する。

  • 空中ダッシュ&バックダッシュ
芹香やコリンなど、一部のキャラのみが使用可能。
基本的に『GUILTY GEAR』など他作品のものと同じだが、キャラによって無敵があったり軌道が違ったりと性能は様々。

  • 滑り
フロントダッシュは、一定時間キーを押し続けることで予備動作からダッシュに移行するようになっている。
その前にキーを放すとキャンセルされ、このとき前方に慣性が付き、その後の行動に影響する。
これを利用することで攻撃の射程を延ばす、通称「スライディング」などの戦法が存在する。
特にダッシュ攻撃はチェーンキャンセルで出す場合とダッシュから出す場合とで射程が大きく異なり、それぞれ運用方法も変わってくる。

『MELTY BLOOD』で言う所のリバースビート(強→弱のような、通常の弱→中→強の流れと逆行する繋ぎ)が可能。
これにより隙の大きい強攻撃も、弱攻撃につなぐこと隙消しが可能であり、安定性は高い。
ただし、それぞれの技によりチェーンキャンセルできるタイミングは様々で、
一部の技はキャンセル不能であったり、相殺時のみに限定されるなどの特徴を持つ。
必殺技とジャンプによるキャンセルはこれとは異なり、基本的にヒット直後である。
また、リバースビート補正がなく、低空に浮かせた相手に強攻撃→弱攻撃(空振り)を複数セット入れる高威力コンボも可能。
なおダッシュ攻撃をチェーンに組み込めるので、『MELTY BLOOD』とはコンボのつなぎ方が大きく異なる。
その代わり、一連のチェーンに組み込める技は通常技特殊技の内、
各1回(別の技を挟まなければ連打キャンセルは1回として計算)、6種までになっており、
それ以上は必殺技かジャンプでキャンセルすることしかできない。
崩しを重視する連携だけでなく、ガードゲージを利用したガードクラッシュ連携があるのも特徴。
その他、コンボ受付時間が存在し、一定の時間を過ぎると相手が無敵状態になり、攻撃が繋がらなくなる。
しかし、一部の追い討ち属性を持っている技は、コンボ中一回だけその受付時間を無視して当てることが可能。
この受付時間は、コンボ数が上がると短くなり、繋ぎにくくなるようになっている。

コンボについて補正がかかるのはもちろんのこと、ライフが相手より上回っている場合にも補正がかかる。
また、相手の姿勢によっても補正がかかり、空中食らいやダウン中には減少するが、しゃがみ食らいでは逆に増加する。
その他、クリティカル発生時やガードクラッシュ中にもダメージが増加するようになっている。


相殺判定と攻撃判定、または相殺判定を持つ技同士がぶつかった際、相殺が発生する。
相殺直後には無敵が発生し、攻撃のランクに応じて時間が長くなる。
相殺戦に打ち勝った場合、相殺後に当たった技のダメージに「相殺した回数×300」上乗せされるため、
打ち勝った際は通常より大きいダメージを与えられる。

  • クリティカルヒット
攻撃ヒット時、たまに赤い画面フラッシュが発生し、星が飛び散る。
これはクリティカル発生を示し、攻撃のダメージが2倍になる。
基本的にヒット数が多いほど発生しやすくなる。
この時のヒットストップは通常ヒットより5F長く、キャンセル受付がずれるため、コンボ失敗を誘発することもしばしば。

特定の攻撃をヒットさせると、相手が壁に吹っ飛ばされたり、地面に叩きつけられる。
この際、相手が壁または地面に接した際に受け身を取らなければ、叩きつけダメージ(壁で900強・地面で700強・どちらも補正無視)が入る。
この効果が発生すると、相手がダウンし起き上がる、あるいは回避完了まで一切の追撃ができなくなる。

  • 波紋ヒット
特定の攻撃をヒットさせると波紋状のエフェクトが発生し、相手は受け身が取れなくなる。
受け身が取れないため、この状態では叩きつけダメージが回避不能になる。

  • 空中投げ
由綺やティリアなど、一部のキャラのみが使用可能(空中投げ抜けは全キャラでできる)。
空中攻撃をキャンセルして出せる上、喰らいモーション中の相手を投げることもできるのが特徴。
なお『Party's Breaker』の詠美はレバー入力の異なる2種類の空中投げを持ち、
さらに空中大攻撃から空中投げにつないだ場合は投げ抜け不能となる特殊な性能を持つ。


  • パワーゲージ
画面下に表示されるゲージ。基本的に「POWER」と書かれるのでパワーゲージだが、
琴音のようにゲージの名称が変わるキャラもいる。最大9本までストック可。

  • EX必殺技
所謂超必殺技にあたり、パワーゲージを1本消費することで出せる。
必殺技の強化版であり、波紋ヒットになるものも多い。
また、一部の技は必殺技やEX技からさらにキャンセルして出すことができるものもある。

  • 超必殺技
所謂隠し超必殺技。大技だけあり威力が高いものが揃う。
ほとんどのキャラはパワーゲージを3本消費するが、葵の「葵スペシャル」のような例外はある。
相殺戦を駆け引きのメインとするシステムのためか、攻撃動作に全身無敵がつくのはほぼこのクラスになる。


体力バーの横、キャラの顔絵の周囲にガードゲージが存在。
システム的には『ストリートファイターZERO3』のガードゲージに近い。
ガードゲージは相手の攻撃をガードすることで減り、攻撃を受けないでいると少しずつ回復する。
ゼロになるとガードクラッシュが発生し、ガードが解ける上に直後に喰らった攻撃の被ダメージが2倍になってしまう。
なお、クリティカルヒット成立時は効果が重複発動するため、運が悪いと4倍ダメージ(=2重クリティカル)になってしまう。

相手の攻撃をガード中、規定のキャンセル不能時間経過後にガード硬直をキャンセルして必殺技が出せる。
キャンセル不能時間は、しゃがみガードでは立ち、空中ガードより長く設定されており、しゃがみ姿勢の優位性を緩和している。
ただし無敵時間がついたりはしないので、下手な技を出すともれなく潰される。
なお『Party's Breaker』では「5ヒット以上の連続ガード時に」常時発動可能となり、
さらに発動後はガードゲージがゼロになってしまう等、発動条件が厳しくなった。

  • フォルトレスディフェンス
智子や瑠璃子など、一部キャラのみが使えるシステム。
GUILTY GEAR』の同名システムと同じく、
パワーゲージを消費する代わりに削りダメージとノックバックを消し、さらにガードゲージの消耗も防ぐ。
また、相手を押し返す効果もあり、これが生命線となるキャラもいる。
ただし、パワーゲージの端数が一定以上必要であり、ゲージが溜まった直後などは使えない。

梓や綾香など、一部キャラのみが使えるシステム。
ストリートファイターIII』と若干異なり、
レバー前入力の後にニュートラル状態に戻した段階でブロッキング判定が発生する。
なお、綾香のみレバー前連打だけでブロッキング判定を連続発生させられるため、
「詐欺ブロッキング」とも呼称される。

  • KO後行動
相手をKOした後も、相手が追撃不能状態でダウンするまでKO後行動が可能。
KOした相手を攻撃してもパワーゲージが溜まるため、オーバーキルは戦略上認められる。
ただし、KO後行動で超必殺技などを使った場合は使用したゲージが減ったままとなるため、
最終ラウンド以外でアピールのためにKO後行動を行うことは、自分の首を絞めるだけである。


  • 多人数モード
この手のゲームとしては珍しく、一対一の対戦モードだけではなく、2on2の対戦も可能。
それぞれにプレイヤーかCOMを割り当てることが出来、最大で4人同時対戦出来る。
ライフバーは別だがゲージ共有など、MUGENのタッグバトルとほぼ同じ仕様である。
なお4人対戦時には、一部の超必殺技が味方にも当たる味方殺し技と化す。味方に初音かコリンがいたら注意。

  • 通信対戦
『QOH'99』は非公式ツール無しでLAN・インターネット経由での通信対戦に対応している。
exeファイルのリンクを作り、リンク先を、
「"(QOH99のインストールパス)\qoh99.exe" net」
と書き換えることでLAN・インターネット接続用の画面が起動する。
PCの性能が高くなく、回線もISDNが主流だった発売当時に通信プレイができた人はかなり限られていたが、
PC・回線共に飛躍的に進歩した現在では特に問題なくプレイ可能。
あらかじめ全キャラ開放&ボイスパッチの統一を済ませておくとなお良し。


『Party's Breaker』専用システム

  • アドバンシングガード
ガードゲージを10%分削ることで、ガード状態から相手を押し戻す。
ガードゲージが減るリスクを除けば、性能的に『ヴァンパイア』シリーズのものと同じ。

  • エンドバック
画面端で地上攻撃を受け、仰け反り中に画面端へ追いやられた場合、本来下がるべき距離だけ前へ戻される。
これにより、『QOH'99SE』以上に画面端が脅威となった。

  • ガードフロート
吹き飛ばし、または浮き属性の攻撃を地上でガードした場合、強制的に空中ガードにさせられる。
ガードフロート時の強制空中ガードは空ガ不能技も防げる特殊なものだが、空中状態になるため地上必殺技でのガードキャンセルは当然できなくなる。

  • イニシアチブダッシュ
イニシアチブゲージに「OK!」と表示されている状態で、特定の地上通常技の動作中に前ダッシュ入力をすることで、技の動作をダッシュでキャンセル可能。


最終更新:2020年12月20日 09:33