バイラス


「最後の手段…私はどんな事をしてもガメラを殺す…」

1968年3月20日に公開されたガメラシリーズの映画『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』に登場する怪獣
メイン画像の個体は後述する「ボス」で声優は 若山弦蔵 氏。
別名「宇宙怪獣」「分裂怪獣」(『宇宙怪獣ガメラ』では「水中怪獣」)。
身長96m、体重120t(共に巨大化時)。デザインのモチーフはイカ
「バイラス」という名前は「2倍、4倍」と巨大化する事から付けられたものとの事。
ウイルスの英語読み*1次元戦団ではない。

肩書や外見からして怪獣のように見えるが、設定的には怪獣というより宇宙人である。
宇宙一優秀なバイラス人にとって、我々以外の物は全て不必要」という発言もあり、他の生物を見下している。
主な攻撃方法としてはその長い足を使い相手の手足や首を締めたり豪快に投げ飛ばす事ができる。
また頭部を閉じて槍状に変化させる事も可能で、ガメラとの戦闘時にはこの状態でガメラに突撃し腹部を貫いた。

+ 劇中での活躍
劇中では自身の生命維持に必要な窒素が豊富に存在するとの理由で地球を植民地化しようと宇宙船で飛来するが、
宇宙空間でガメラに遭遇してしまい呆気なく爆発。
しかし間を置かずに二機目の宇宙船が派遣され、こちらは一機目の反省を生かし地球侵略の最大の障害であるガメラの排除を第一目標にする。
こちらは地球の茅ヶ崎市海岸に到着し、更に海底にいたガメラを宇宙船からのスーパーキャッチ光線で捕獲する事にも成功する。
バイラス人は捕獲したガメラの記憶を解析し、ガメラの唯一の弱点が「子供」だと知る。
そしてちょうど海岸で行われていたボーイスカウトのキャンプに参加していた、正夫とジムの2人の少年を拉致し人質とした。
子供を人質にされ攻撃できないガメラに対し、バイラス星人は脳波コントロール装置をセットし、
ガメラに黒部ダムや東京などで破壊活動を行わせる事に成功する。
人類がガメラを止める方法として、ガメラを操る宇宙船を攻撃する方法が考えられたが、
国連は人質の子供達を犠牲にできないと非現実的な決定をし、バイラス星人に降伏した。
地球侵略もほぼ成功に終わると思われたが、人質となっていた二人によりガメラの解放と二人の脱出を許してしまい、
ガメラに宇宙船を破壊され追い詰められてしまう。

最後の手段として中にいたバイラス星人のボスは、他の分裂体を合体吸収して巨大化しガメラとの戦いに臨んだ。
長い触手や頭部でガメラの腹を貫くなど有利に戦闘を進めたが、頭部が深く刺さる事を利用されガメラに上空へと持ち上げられてしまう。
その後低温下で凍り付いた状態で海へと叩き落され粉々となる最期を迎えた。

画像のような姿を見せたのは劇中後半になってからであり、当初宇宙船の内部で主に見られたのは地球人のような姿をした「バイラス人」であった。
その正体は分裂したバイラスが人間に寄生し、行動を支配しているもので、腕がちぎれてもすぐに元に戻るなどもはや人間ではない。
ボスだけは写真と同じ形態のまま人間大で何故か檻に入ってただのイカを装っていた。
終盤にはボスに首を刎ねられ、刎ねられた首の代わりに触手が生えた状態でボスが巨大化する為に吸収された(自ら歩み寄る様に融合していった)。
ちなみに彼らは目だけを光らせた黒いシルエットのような不気味な姿を見せるが、
電球を仕込んだアイマスクをまぶたに貼り付けて撮影されたため、電球の熱でまぶたをやけどしたらしい。

『ガメラ対ジャイガー』と『宇宙怪獣ガメラ』では、上記の映画の映像を流用する形で登場。
特に『宇宙怪獣ガメラ』では肩書の「宇宙怪獣」がガメラに取られてしまったため「水中怪獣」に変更されていたり、
単独の侵略者ではなく宇宙海賊の手先という設定になっている。

+ 作品についての余談
今作からアメリカでの放映計画が盛り込まれている影響で、中身は前3作よりも勧善懲悪テーマが強調されており、
その結果シリーズ初の子供を主役に置いた子供向けの作風となっている。
主人公も日本人の正夫と外国人のジムの二人になっており、この「日本人の少年と外国人の少年(少女)が主人公」という形式は、
以降の「ガメラ対ジグラ」まで引き継がれることとなった。

予算面で言えばかなり厳しかったらしく前作の3分の1程度しかなかったらしい。そのため多くの予算節約の工夫が見られ、
•火薬の節約のため、後脚のみジェット噴射をするスタイルを新規撮影箇所で多用。
•バイラス星人の円盤の内部はほとんど同じデザインという設定にして全て同じセットで撮影。
•バイラス星人がガメラの記憶を覗き見るシーンやガメラが操られるシーンは、前3作のバンクフィルムを使用。
•物語の舞台がほとんど茅ヶ崎海岸か宇宙船。
など現場は相当苦労したようだ。
撮影期間も短くわずか25日。製作スタッフ一同は本作がガメラシリーズ最後の作品になると考えていたが、子供達の評判が大変良くて映画は大ヒット。
次作『ガメラ対大悪獣ギロン』の制作が決定された。

+ 映画作品以外でのバイラス(漫画、小説など)
破李拳竜氏の漫画『大怪獣ガメラ』においてもギャオスの配下としてバルゴンギロン、ジャイガー、ジグラと共にガメラを襲ったが、
気絶させたギロンを振り回す「ガメラ剣法まとめ切り」からのプラズマ火球乱れ撃ちで他の怪獣諸共倒された。

1996年刊行のアメコミ『Gamera: The Guardian of the Universe』にも敵怪獣の大ボスとして登場。
外見はほぼ昭和版と同じだが、出自の設定が大きく異なり、高い知能を持つが宇宙人ではない。
本作は平成ガメラ3部作の第1作『ガメラ 大怪獣空中決戦』と2作目の間の時系列の作品である。
本作のバイラスはコントロール可能な怪獣を作ろうとする狂った女科学者のグレタ・カルボーン博士が、
平成版ギャオスの死体から回収されたギャオスのDNAを使用して作り出したバイオ怪獣である。
グレタ博士の脳液や髄液を打ち込まれたため、グレタ博士と精神が繋がっており、
グレタ博士を逆に支配下においてコントロールし始めてしまう。
浅黄の勾玉を強奪してガメラを操り、人類にガメラを殺させた後に全人類を支配しようと企んでおり、
海で怪獣大に成長した後にフランスのパリに上陸して暴れ回る。
強奪した浅黄の勾玉をグレタ博士に持たせてガメラを操り、人類の攻撃を防ぐ盾にしたが、
主人公達の活躍でガメラは正気に戻り、ガメラとの直接対決の末ガメラに敗れ去った。
本作のバイラスは頭部を閉じて敵を突き刺す技は一切使わなかったが、
代わりに頭部の3本角の中央から放電光線を放つ能力を多用する。
映画では使わなかった能力だが、恐らくは当時の昭和ガメラの怪獣解剖図に掲載されていた、
「頭部の3本角の中央から放つ10億ボルトの殺人光線」の設定を元にしていると思われる。
本作は2018年に株式会社フェーズシックスより『ガメラ 宇宙の守護者』の題で日本語翻訳版が刊行されており、
バイラスの都市破壊、平成ガメラとの怪獣対決が躍動感と迫力のある画で見られるので読んでみてもいいだろう。

また、『小さき勇者たち~ガメラ~』の小説版には「Gバイラス」として登場する。

2023年Netflix配信の3Dアニメ『GAMERA-Rebirth-』では、他の昭和ガメラ怪獣共々久々に映像媒体で登場を果たした(通称「リバースバイラス」)。
今作では地球外生命体ではなく明確な怪獣だが、クラーケン風のクリーチャー染みたデザインにアレンジされている他、体色も金色に変更されており、
「黄金色の悪魔」の二つ名を持つ、作中に登場した怪獣の中でも際立って強力な個体として登場した。
触手から電撃を放てる他、その能力の応用なのかガメラの火炎弾も防げる電磁シールドを張ることも可能で、
高高度まで運ばれて凍らされた昭和版と異なり、触手を折りたたんで宇宙空間まで飛行可能で宇宙でも活動に支障が無い。
これらの能力は、昭和版のバイラス星人の宇宙船の電撃状の光線やバリアー「スーパーキャッチ光線」のオマージュと思われ、
実際に飛行形態はバイラス星人の宇宙船を思わせる形状となっている。
最大の武器は頭部を開いて放つ高火力の荷電粒子砲。
少なくとも過去に一度死んでいたようだが、ユースタス財団の代表のノーラに母親を殺されて復讐に燃えるエミコ・メルキオリの手により復活する。
ガメラとの戦闘ではガメラの火炎弾をバリアーで無効化し、ギロン戦の傷も完治していないまま接近戦を余儀なくされたガメラを電気ショックで昏倒させるが、
損傷したシャトルから脱出を試みる和多大輝達を狙った所で意識を取り戻したガメラの捨て身の突撃を受け、
荷電粒子砲で迎撃を試みるが、競り負けた末に攻撃をもろに受けてバラバラになり倒された。
しかし、ただでさえ無理を通して戦っていたガメラはこの戦闘で完全に限界に達して瀕死の状態となり、
さらにバイラスの死骸をある怪獣の特異個体の幼体がエミコごと捕食し……?


MUGENにおけるバイラス

レイザースゲルカドンを手掛けたバリ音スクス氏によるバイラスが2015年11月29日に公開された。
その後、スキキラーハーゲッシ氏に管理が移管され、同氏による改変・調整・改変元には無かったAIの追加が施されたものが、2022年5月1日に公開された。
公開場所が検索では見付けにくいが、『MUGEN怪獣キャラ総合スレ3』の956のリンクから公開先へ行く事ができる。
バリ音スクス氏曰く「外部サイトで紹介する時はスキキラーハーゲッシ氏製作扱いとして欲しい」との事。

バリ音スクス氏製、スキキラーハーゲッシ氏製共にディスプレイネームやドットに大きな差異は無いが、性能自体はかなり異なる。
基本的には性能がよりバランスよく調整され、デフォAIのあるスキキラーハーゲッシ氏版の方が使いやすいだろう。
以下は両バージョンの共通点と個別の性能について解説する。

+ 両バージョンの共通点
  • 両バージョンの共通点
バリ音スクス氏が以前手掛けたガドルフォドンバギラジグラをベースに製作されている。
手描きドットで製作されており、劇中の姿や頭部が槍状に変化する所もしっかり再現されている。
通常技・ゲージ技・超必殺技のいずれも搭載されているが、原作よりもバリエーションが大幅に増えている。
相手に横方向で突撃する「水平突き」やガメラの腹部を貫いた「急降下突き」は威力が高めであり、
後者は相手の位置をサーチして真上から急降下して槍のような頭部で攻撃する技になっている。
更に円盤からの「スーパーキャッチ光線」及び「スーパーキャッチ光線逆回路」や、
誘拐していたという設定でジグラやギロンストライカーとして召喚する事もできる。

+ バリ音スクス氏製作
  • バリ音スクス氏製作
2018年11月18日の更新でこれまでのバージョンに存在した不具合の修正や性能調整がされており、
現在は『MUGEN怪獣キャラ総合スレ3』の853にて他の共々公開されている。

2018年11月更新版ではAI戦で相手がガードできなくなる状況が発生する不具合などが修正され、
オプションで技使用後に一定時間使用不能になる技が今使用可能なのかどうかを表示する事が可能になった。
同梱のreadmeの記述に従って記述を修正すれば、アイコンで使用不能な技が分かるようになるので人操作向きかもしれない。
AIは未搭載。

+ スキキラーハーゲッシ氏製作
  • スキキラーハーゲッシ氏製作
2022年5月1日公開開始。
エフェクトや演出などが強化され、技も追加されている。
性能も全体的に調整され、有利フレームができたり発生が早まった技も多い。
また、クールタイムのある技として、伸ばした触手の吸盤で相手に接近する技の「吸盤触手」が追加。
距離が開きすぎると飛び道具が不足気味なので、反撃される危険はあるが接近手段として使いたい。
投げもリーチが短い通常版と、リーチが長いがクールタイムがあって多用できない「触手伸ばし投げ」の2種類に変更された。
3ゲージ技だがライフが半分以下の場合はゲージ不足でも使用可能な「急降下投げ」はエフェクトが強化されており、
ガメラらしい緑色の血しぶきがメカや人間相手でも飛ぶようになった。
通常技の火力が低めな分、頭部を槍にする攻撃中心のゲージ技の威力が高く、対戦相手として対峙した場合は注意が必要となる。

AIはデフォルトで搭載済み。
一般~強クラスくらいの怪獣相手ならそれなりに良い勝負をしてくれるだろう。

出場大会

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*1
ウイルス(virus)の英語読みでもあるが直接は無関係(「ウイルス」はラテン語読み)。
日本でもかつては業界によってはドイツ語由来の「ビールス」と発音されていた事もあったが、今では「ウイルス」に統一されている。
そのためそっちの意味での「バイラス」は日本では馴染みが薄く、特撮ではこの後40年以上経たないと出てこない。


最終更新:2023年10月16日 15:07