チャタンヤラクーシャンク


概要

1992年にミッチェルが製作した対戦格闘ゲーム。
漢字で書くと「北谷屋良公相君」、英語の綴りは「Chatanyara Kuushanku」である。
本来は区切らずに一気に表記するのだが、区切りを入れて発音しやすくするなら「チャタンヤラ・クーシャンク」になるのだろうか。
「北谷屋良公相君」とは琉球空手の型の一つで、海外では分かりやすさ重視で『THE KARATE TOURNAMENT』の名で発売されている。

当時は『ストリートファイターII'』が発売され、全国で対戦が大いに盛り上がった対戦格闘ゲーム黄金時代。
そこに投入された本作は、プロデューサー*1は「市場迎合」と語ったそうだが、実は「『ストII』の常識が全く通用しない」という内容であった。
ストI』から『ストII』にかけて造り上げられた、現在の対戦格闘ゲームに繋がるフォーマットではなく、
それ以前に存在した『空手道』の系譜を継ぐゲームなのである。

『ストII』との違いで特徴的な所を列挙すると……
  • キャラクターは全員同性能の空手家。キャラの性能差・相性では無く、純粋にプレイヤーの技術のみが勝敗を決する。
  • 飛び道具無敵対空技コマンド入力を必要とする必殺技超必殺技、ガードを崩すための投げ技などは存在せず、
    ボタン1つで出る打撃技のみで戦うスタイル。小技と大技の違いはある。
  • 体力は長い1本のライフバーではなく、6マスに区分けされており、技を当てて1マスずつ減らしていく。
    「体力が尽きるまで殴り合う戦い」ではなく、「ポイントを取っていく試合」のイメージである。審判もいて、「技あり」「一本」と判定してくれる。
  • 「ニュートラルで立ち、レバー下でしゃがみ、レバー上でジャンプ」という『ストII』の動きではなく、
    レバーの上下はそれぞれ上段の構え、中段の構え、下段の構えになる。ここで言う「中段」は「しゃがみガード不能技」という意味では無い
    (そもそも1992年当時は、しゃがみガード潰しの地上技を「中段技」と呼ぶ習慣さえ生まれていなかったのだ)。
  • 後ろに行きすぎると「場外」となって仕切り直し。二度場外になると1ポイント取られる。
  • ダウンすると初期位置に戻って仕切り直し。その際「技あり」なら1ポイント、「一本」なら2ポイント取られる。
    このルールのため、本作には「起き攻め」という要素は存在しない。

……と、大きな差異が存在する。
2D対戦格闘ゲームを「『ストII』形式のゲーム」と定義するなら、本作は格ゲーでは無いとさえ言えるのだ
(『空手道』、『イーアルカンフー』などのような、「『ストII』以前に存在した格闘ゲーム」の中に入る)。

手から飛び道具を放つ者無敵対空で空高く吹っ飛ばす者しゃがんで待つ者スクリューで吸う者男性と戦う女性格闘家
果てはまんま獣の野生児やらヨガやら金網に登ってヒョーやらサイコパワーやら「現実的に考えればそれはおかしい」という内容のゲームが大人気だった頃に
物凄く真面目な空手試合を舞台として、2Dのドット絵なのにブラーがかかった流麗なモーションが印象的……なのだが、
なぜか審判が歌舞伎の格好をしている、試合に勝った後に飛び蹴りで次の会場に移動するとそこにはもう審判が待っている
(同じ格好した複数名の審判が用意されているのかも知れないが、それはそれで異様な光景である)、
試合前後の演出でとりあえず画面全体が爆発する、乱入時の演出が漢臭すぎる*2ステージクリアすると船に乗せられて移動し同乗の審判が決めポーズ
ステージ背景がどういう空間なのか意味不明の場所になっている*3、CPUが勝つと親指を下に向けて煽ってくる等々、不思議な要素も備えている。
これらの「作者が市場迎合と言ってるのとは裏腹に、時流に逆行さえしている復古的内容」
「頑ななまでの硬派さと、幻想的なまでの意味不明さが同居した世界」というアクの強さが印象的な作品である。



MUGENにおけるチャタンヤラクーシャンク(のプレイヤーキャラクター)

2P側のキャラクターとなる、ヘルメット(メンホー)を着用したキャラクターがThe_None氏によって製作されている。
キャラの名前は「helmet」になっている。
WinMUGEN用、MUGEN1.0用、MUGEN1.1用のファイルが同梱されており、それぞれのバージョンに合ったものを使用できる。

完全な原作再現のキャラクターではなく(そもそもそれは不可能である)、
『ストII』形式の操作方法、コマンド入力で出る必殺技、ゲージを使用する超必殺技、という形になっていたり、ランダムでメンホーの下が人外になったり
ジャンプの軌道がなんか変だったり、打撃技で異様に踏み込んで蹴りを入れて来たり、なんかやたら大量に流血したりと、
チャタン本来の動きとは違うが、こちらはこちらでかなりのアクの強さ。
AIもデフォルトで搭載されている。

また、この他にキャノン娘氏が審判を、Reginukem氏が原作の各ステージを製作している。
前者は音声付き、後者には音声こそ無いが漏れなく審判が付いてくるのでお好みで導入し、MUGENを北谷色に染め上げよう。

出場大会



*1
ストライダー飛竜』の製作に関わっていた四井浩一氏。
四井氏自身、琉球古武術の流れを組む空手の一流派、「糸東流」の黒帯持ちで審判の資格も所持している武道経験者。
後にミッチェルは『飛竜』の流れを汲む『キャノンダンサー』というアクションゲームを製作している。
アクションゲームとしての評価は非常に高く、「『飛竜2』ではなく『キャノンダンサー』こそが真の飛竜続編」と考えるファンも存在するほど。

*2

*3
『キャノンダンサー』を連想させる背景があるのだが、本作の登場時にはまだ『キャノンダンサー』自体はまだ存在してない
(本作は1992年発売、『キャノンダンサー』は1996年発売。恐らく『キャノンダンサー』開発時に本作の背景を発想元にしたのだと思われる)。
+ 摩訶不思議な背景の例
        


最終更新:2021年03月24日 20:46