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貴方は覚えてますか。

桜が舞う季節のことを・・・

【覚えてますか?】

「望美さん?どうかしたんですか」
「・・・・え。あぁ・・ごめんなさい。ぼーっとしちゃって」

柔らかな声に振り向くと、弁慶さんは笑みを浮かべて言った。

「僕と一緒にいるというのに。別の人のことを考えていたなんて、妬けてしまいますね」

いつもこんな調子で。本心なんて見抜かせない。

「そ、そんな!!ただ・・・今、この瞬間が永遠に続けばいいのに、と思って」

悲しい事実を思い出したくないから。私は眼を伏せて言う。

「ふふ、可愛い人ですね。・・・でも、そんな顔をして言うような言葉じゃありませんね」

過去に彼が犯した過ちを。死という、その結末を。それを変えるために私はここにいる。
・・・・運命を捻じ曲げて。

「・・・弁慶さんは何でもお見通し、なんですね。私は・・・弁慶さんのこと、何にも分からないのに」

少し拗ねたようにつぶやく。
私が弁慶さんの本心を見抜けていたら。あんな結末にはならなかったかもしれない。

「見てください。桜が綺麗ですよ」

私の言葉には触れずに、弁慶さんは桜の枝に手を伸ばす。
そして、その枝を手折り、私の髪に挿してくれる。

「思った通りです。君にはこの花が似合いますね」
「弁慶さん?」

弁慶さんは私の髪に触れたまま、言葉を続ける。

「・・・・実は、僕も同じことを思っていました」
「君は純粋で真っ直ぐな女性です。だから。
 その眼に見つめられるのが怖いんです。僕の何もかもを見透かされているようで。
 僕のことを知ったら、君はきっと幻滅してしまうでしょう」
「そんなことありません!!私は弁慶さんのことを信じて・・・っ」
「それ以上は言わないでください。僕は君にそんな風に思われていい人間じゃありませんから」

優しい腕の中に引き込まれて。私は思わず言葉を飲み込んでしまった。

「今の君の顔が見れないのが残念だな」

弁慶さんは悪戯っぽく私の耳に囁いた。そして、ふと真剣な声になり、言った。

「君はいつか元の時代へ帰ってしまう。君が掴めそうで掴めない女性だと分かっていながらも、君の事を知りたいと思うこの気持ちは罪なのでしょうか」

そんなことない、罪なんかじゃない、と叫びたかったけれど。
声にはならずに、ただ首を振ることしか出来なかった。

「・・・いや。きっと、僕の存在自体が罪なんでしょうね・・・」

ボソッとつぶやいた言葉。

「え?弁慶さん、よく聞こえなかったんですけど・・・」
すると、弁慶さんはいつもの調子で言った。きっと、微笑んで。
「いいんです。いずれ分かることですから。それより、もうしばらくこのままでいさせてもらってもいいですか?」
「はい・・・・」

私は弁慶さんの言う、先の運命を知っている。だから、二度と同じ過ちは繰り返さない。
愛おしい人の最期のときをもう1度なんて見たくはないから。
この幸福な時間を噛み締めて。心に絡まる景色に眼を閉じて。
さよなら、と言えた時に・・・未来は動き出す。
見えない未来で。
花びらが舞い散る頃のことを。
貴方は覚えてますか。


お題なんですけど、正真正銘のSS1作目でございます。
・・・恥ずかしいですね(笑)

何かありましたら、以下からどうぞ。
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