プロローグ「世界の中に」
二年前――そこに、「それ」はいた。
銀河系の中の、ひとつの惑星の中に。
その「地球」という惑星の中のある国の中に。
その「日本」という国の中のひとつの中に、
確かに「少女」と呼ばれる「それ」はいた。
真っ白な雪景色の土手のなかで、雪の様に真っ白な手をだらん、とぶら
下げて虚ろな目で空を見ていた。
少女は人間だった。
しかし少女は何もしゃべらない。
まるで生きていないかのように。
やがて少女は口から霧のような息を出し、ポツリとつぶやいた。
「私は・・・なに?」
最終更新:2007年04月03日 17:56