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「Opening(ver.IF)」(2008/06/27 (金) 00:52:09) の最新版変更点
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*&color(red){Scenario IF ――Opening――}
どの世界でもない、どの時空でもない空間の果て……
あらゆる可能性を秘めた世界。あらゆるIFを持つ世界。
「新たな世界……失敗」「やり直しを……完全なる生命体……」「人間は……混沌」
「混沌ゆえに……完全なる命の源」「可能性」「やはり、人間は……」
「彼」の生み出した、限りなく地球に近い宇宙のフラスコで……
「彼」しか存在しえなかった世界に亀裂が音もなく走る。
純粋な世界に傾れ込む混沌の種。裂け目より現れるのは、50人のサンプル……いや生贄達。
彼らは、あるものは驚き、あるものは脅え、あるものはを押し黙っていた。
「ここはどこなんだ!?」
「なんだよ!?これ!」
「これは……アクシズ周辺ではないのか?」
「人の意思がまるで感じられない……」
「空気がある?宇宙には空気がないと聞いていたが……それにあの赤い結晶は?」
まるで統一性のない生贄達の動きを眺めていた「彼」は、それ以上監視の意味がないことを確認し、
存在を世界に顕現させた。
「混沌故に、純粋なる存在の可能性を……全能なる可能性を持つ……人間」
荘厳な、そして圧倒的な威圧感を持ち、声が響き渡る。
何もなかったはずの空間が白く圧縮され、円環より人知を嘲笑う、存在しえないような生物が顕現する。
顕現した「彼」……「アインスト・レジセイア」を見て、少なからず驚愕する生贄達。
植物のような触腕をもち、無機物のような光沢を持ち、骨格のような外皮を纏い、動物のような爪を携え
……人のように話す。
あらゆる生物の可能性を寄り合わせたような究極の生命体であり、
同時に、その進化の不均衡さにより膨張する体はどこまでも不完全で、「出来そこない」であった。
数百mの、あらゆる生物の進化を内包した巨躯が空間を震わせる。
「故に……」
――人間は、完全なる生命のアーキタイプ。
「故に……」
――でも、力は不安定で、脆くて……でも、時に「彼」をもしのぐ。
「故に!」
――そんな人間により、混沌の中生み出される力を知るために。
「混沌こそ法の世界……閉鎖世界で……ただ一人になるまで……」
水を打ったように沈黙する生贄達。
「次からは、こちらが説明しますの」
不意に、その場にそぐわない幼い声がした。
「今から、皆さんには、殺し合いをしてもらいますの」
どこからかわからないが、突然青い髪をした少女が「レジセイア」の前にいた。
「ルールは……これを……」
少女が指揮者のように腕を上げる。すると、空間の片隅にあった真紅の色をしたストーンサークルが砕け散った。
ぼんやりと蛍のように赤く光る細かい石が、少女の腕に合わせて、上下のない世界で踊る。
そして……
『!!』
一度、また一箇所に集まったかと思うと、生贄達全員の首に向かって拡散、ぶつかった。
しかし、彼らに怪我はない。代わりに、首には真紅の首輪がはめられていた。
同時に、生贄達に膨大な知識が流れ込んでいく。
「マシンの操縦方法から、殺し合いのルールまで、全て圧縮しておきました……ですから、分かると思いますの。マシンは……」
「ちょっと待ってお嬢ちゃん!いったいどうしたって言うの!?」
金髪の女性が、少女に話し掛けた。他の者は静寂を保っている。
「エクセレン……それにキョウスケ。お久しぶりですの」
「答えになってないぞ、アルフィミィ。女王蜂は、俺たちが倒したはずだ。それに、お前は何ををしている?」
続いて、おそらく察するに「キョウスケ」と呼ばれた男が呼びかけた。
「私たちは……思念体の一部。思念体のそのものはこちら側にありますので……」
「『私たち』、か。お前はもう操り人形じゃなくなったはずだ。違ったのか……!?」
語気を強くして、「キョウスケ」は「アルフィミィ」に言う。
「私は……不完全で、ペルゼインの一部。でも今は違う。独立して存在できるようになりましたですの」
「答えろ!アルフィミィ!」
「お嬢ちゃん!」
2人が呼びかけるが、もうアルフィミィは何も言わない。
彼女が空に円を書くと、今度は大小違う赤い球が生贄の前に現れる。
「その球に触れてくださいですの。中には渡すものが全て入っています」
しかし、誰も入ろうとしない。疑って用心するもの、まだ戸惑っているもの、様々だ。
「だから答えて!お嬢ちゃん!」
相変わらず「エクセレン」が呼ぶ。すると、少し目を伏せてポツリと、
「もう、レジセイアは貴方達を必要としていない。ですから、終わりです。もう赤い球に入ってください」
「そんな!そんな理由わかるわけないじゃない!だってあなたは……」
「お願いです……」
小声で「エクセレン」の声を遮るようにこぼすが、彼女は話しつづけた。
「『もう一人の私』なんだから!そっちにいないでこっちにきて……」
「レジセイア」の手が急に輝くいた。すると
ポン
軽い音と共に、首輪がはじけた。煙も上げず、音だけのような爆発を残し……彼女は首を永遠に失った。
もう、何も喋ることはない。
「エクセ……レン?」
うわごとのようにキョウスケが言った。
「これ以上、手間はかけたく……ありませんので……レジセイアが……手を下しました……急いで球に入ってください……」
震えるような声でアルフィミィが言うと、彼女は指を動かした。すると、キョウスケの体は赤い球にぶつかり、
吸い込まれていく。
「他の人も……早く……」
その声に促され、次々と触れては中に入り、どこかへと転移していく。
残されるのは……誰かの泣きじゃくる声だけだった。
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|本編0話|[[Opening]]|
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