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*&color(red){それぞれの立場 それぞれの道 ◆Nr7qwL8XuU} 耳を劈くような轟音が鳴り響く。 「え?なになに??何がおこってるの?」 このロワ最大の巨体を誇る無敵戦艦の膝が崩れ、その内部にあるブリッジも傾いていく。 慌てて慣れない手つきでモニターにかじりつき敵機の姿を探す。ここにはいつものように索敵をおこなってくれる仲間はいない。 映し出されるモニターの映像とレーダーに目を走らせている間にも突然襲ってくる振動とその度に傾いていく床に足を取られて何度もこけた。 やっとの思いで艦後方に大型機を確認したと思ったその瞬間、ダイは横倒しに倒れユリカは床に叩きつけられる。 モニターに映し出されているのは赤いマフラーが印象的な一つの大型機。 その大型機が追撃を加えようとして不意に飛び下がり、ダイとの間に一機の小型機が上空から割り込んでくる姿が見えた。 飛び下がった大型機を追って無数のマイクロミサイルが小型機から散布される。それを次々と蹴り砕きながら大型機は上空に舞い上がる。 最後の一機を蹴り砕いたとき、動きを予測し先回りしていた小型機が差し迫ってきていた。 「勝負だ」 小型機のパイロットがヘルメットを脱ぎ捨て、拳にフィールドを収束させる。 大型機のパイロットが瞬時に体勢を立て直し、その両脚が紫の雷光を発する。 交錯する拳と脚。大気が震えた。 だが、その激しい衝突の様子はユリカの目には映っていなかった。彼女の頭を占めているのは唯一つの思いだけ。 やっぱりあなたはア――― ガン! 頬杖をついていた左手から頬が滑り落ち、額が鈍い音をたてた。 ちょっと赤くなった額を涙目でさすりながらユリカは夢の中身を思い出そうと唸る。 何か大事な夢だったようなそんな気がする。 やっぱり・・・やっぱり・・・・・・なんだっけ? やっぱりアキトは私が好き!・・・・・・何か違う気がする。 違うって言うのは、アキトが私を好きとか嫌いとかいう意味じゃなくて・・・あっ!もちろんアキトは私が好きなんだけれど・・・・・・あれ? ちょうど夢の中身が完全に思い出せなくなったころ一つの通信が無敵戦艦ダイに繋がった。 「とりあえず礼の一言も言っておくべきかな・・・・・・」 ほんのわずかに語調に棘があるのに気づいてか、ロジャーはそこで言葉を区切った。 濃紺のボディーに黄色いラインが印象的な機体が眼前でこちらに向き合っている。 この相手は今しがたこちらを襲ってきた緑色の機体のコックピットを叩き潰したばかりである―――そうロジャーの交渉相手を・・・・・・。 乱入してきてから決着がつくまでの数瞬、口を挿む暇もなかった。いや、挿めなかったといったほうが正しいか・・・・・・。 わずかばかり眉間にしわがよる。 (・・・不快感?馬鹿馬鹿しい・・・だいたい誰にだ?奴か・・・・・・いや、私自身にか・・・。だが・・・) だが、この相手はえたいが知れない・・・。単なる好戦的なマーダーであるようではない。 しかし、この男の得体の知れないところはただ緑の機体のみを仕留めておいてこちらには何の行動も起こしていないところだった。それこそ通信の一つすらも・・・・・・。 その正体を見極め、交渉を行うべくロジャーは閉じた口を再び開く。 「単刀直入に聞かせていただく。君はこのゲームに乗った者か?」 先程の戦闘の一連の流れ。そこから相手の技量は伝わっていた。そして、同時に手馴れた様子も・・・。 「・・・・・・・・・いや」 暫しの沈黙の後、否定の回答が返ってくる。 「ならば」 「なら答えていただきます。何故、あの方を殺さなくてはならなかったのかを・・・」 ロジャーの弁を遮って、彼の言おうとしたことを凛とした声が代弁する。 「・・・・・・」 「彼は私の交渉相手だった。我々にはそれを聞く権利が十分にあるとおもうが」 「・・・通信を拾うかぎり奴が危険なのは明白だった」 YF-21が浮き上がりゆっくりと高度を上げていく。 「殺す必要はなかったはずです。あなたほどの腕前ならばわざわざ殺さずとも機体を無力化することもできたのではないでしょうか?」 徐々に高度を上げていたYF-21はやがてヴァルハラと同程度の高度に達するとそこで静かに上昇をやめた。 「・・・・・・逆に聞く。お前達はどうするつもりだった?」 「説得するつもりでした」 「何故?」 「その前にあなたのお仲間のところに私を案内してください」 暫くの逡巡のあとアキトは二機をダイに案内することに決めた。 「地球圏統一国家外務次官リリーナ・ドーリアンです」 「ナデシコ艦長ミスマル・ユリカで~す! ・・・ぶいっ!」 場を奇妙な空気が占め一瞬時間が止まったかのような感じになる。 「・・・完全に出鼻をくじかれたな。なるほど、うまいやり方だ」 気勢を削がれたロジャーはなんか小声で感心している。 無敵戦艦ダイでの四者のやり取りはそんな感じで始まった。 「先程の問い。答えてもらおうか・・・」 艦周囲の哨戒に当たりつつアキトが口火をきる。ちなみに彼は音声通信での参加となっている。もっともユリカはしきりに着艦することを勧めたのだが・・・。 ともかくその問いに答えるべくリリーナはこのゲームにおえる自らの信念を説き始めた。 「私はかつてロームフェラ財団代表の座にあったときにひとつの宣言を行いました。地球の国家間の紛争の原因であった国家と国家を区別する垣根を取り払うと。 それと同じ事を参加者の皆さんにも考えていただきたいのです。 同じ参加者同士。互いに巻き込まれたに過ぎない私たちはこれほどまでに憎みあわねばならないほどの存在なのでしょうか? 傷つけあわねばならないほど分かり合えない関係なのでしょうか? 私たち個人の間にある垣根は取り払えないほどのものなのでしょうか? 私は全ての参加者が武装を放棄し一つになることを望み、今はまだその道は見えずともこのゲームの平和的解決を目指します。 そして、その為にあなた方の力を貸していただけることを希望します」 話し終えたリリーナは静かにユリカを見据える。 地球圏統一国家やらロームフェラやら聞きなれない言葉が混じっていたがようは―― 「話し合いで全てを解決しようということですね。そしてその為に武装は放棄すべきだと」 リリーナは静かにうなずく。 「でしたら賛成はできません」 「何故ですか!」 「このゲームの中には自分の大切なもの――自分の命や仲間の命、好きな人を守ろうとして銃を持った人、ゲームに乗った人もいると思います。 そんな人達に大切なものを守るための武器を捨てろとは私にはいえません」 「その武器を持つという行為が間違っているのです!」 「なら武器を持たず。襲われたら大切なものも守れず黙って死ねと、それを自分だけでなく他人に強制しろというのですか!私にはそんなことできません!!それに――」 そこで一度ユリカは言葉を区切り、そして続けた。 「それに、あなたには何よりも大切な人の一人くらいいないのですか!!」 直後、論戦に割り込むようにアキトの通信が飛び込んできた。 「・・・・・・話は終わりだ。艦前方で爆発を確認」 「ガイさんはこのまま戦闘空域へ。襲われている人を助けつつ、こちらの指定した空域へ敵機を誘い出してください」 通信と同時に一つのデータを送る。それを確認したアキトは機体を加速させ見る間にその機影は小さくさせていった。 「ロジャー、私たちも出ます。襲っている人も襲われている人も説得してみせます」 強張った顔でデッキに向かう依頼主を横目にロジャーはやれやれと肩を竦めつつユリカに向き合う。 「少し、よろしいか」 「なんでしょうか」 「ユリカ嬢、貴女とは残念ながら意見が別れてしまったが、彼女のような考えの参加者もいるということを覚えておいていただきたい」 「・・・・・・」 「そして、いつか彼女に賭けてみる気になられるのをお待ちしている。・・・・・・私は彼女の桁外れの一途さになら賭けてみてもいいと思っている」 言い終わると踵を返したロジャーはリリーナを追って歩いていった。 周囲が破壊されここわずか一・二時間のあいだに廃墟の様相を呈してきた市街地に、既に息も絶え絶えな白い巨人の姿があった。 ほんの十数分前に目的地にたどり着いたソシエは同じ様に戦闘のあとを目印によってきた参加者に突然襲われた。 説得をしようにも聞いてもらえず。応戦をするも見る間に追い込まれていった。 すでにホワイトドールの右腕は失い。メインカメラの半分は死んでいる。 現状を把握しなおしたソシエは眼前の敵機を睨みつけ 「このおおおぉぉぉぉぉ!!」 気迫と共に槍を突き出す。それを長く赤いマフラーを棚引かせてかわした敵は一歩踏み込み残った片腕を蹴り上げた。 槍が宙を舞い大地に突き刺さり、砕けた腕の破片が舞い散る。 間近で翻るマフラーの赤がやけに鮮やかだった。 視界の中を右から左へゆっくりと流れていったマフラーに続いて紫電の光が目に映る。 大雷凰が繰り出した回し蹴りがドスハードに吸い込まれるその刹那、ソシエは絶叫と共に一筋の光線を放った。 周囲に轟音が鳴り響き、粉塵が立ち込める。その粉塵を裂いて蹴り飛ばされたドスハードが背後のビルに叩きつけられた。 咄嗟にブースターを拭かせてその場から距離をとろうとしたソシエを妙な減速感が包む。 そして次の瞬間、前方の粉塵にドスハードは引き寄せられ、 「カウンタアアアァァァァァァァァッスパイクッ!!!!」 その両足までもが蹴り砕かれ背中から大雷凰の遥か後方に落下した。コックピットを激震が襲う。 「くうぅぅ!」 粉塵の中からゆっくりと大雷凰が姿を現す。先のビームはかわされたのか目だった傷跡はついてはいない。 私はここで死んでしまうの―― 落下の衝撃で朦朧とする意識の中でソシエは思った。 冗談じゃないわ―― 機体の腕を動かそうと試みる。が、すでにその腕はない。足もない。戦うことはおろか逃げることすらこの状態では無理だった。 そういえば、あの小さな機械人形はいつの間にか落としてしまった。 どこに落としちゃったんだろう―― ぼんやりとそんなことを考える。止めを刺しに大雷凰が迫ってくるまでがやけに長く感じられた。 ようやく目前までやってきた大雷凰が不意に体勢を崩しドスハードに倒れこんでくる。 「キャアアアアァァァァァァァァ!!!」 再び激震がソシエを襲い。彼女は目を白黒させる。 大雷凰はすばやく起き上がり機体を反転させるとそのあまりにも小さな乱入者に向かい合った。 「君かい?僕を踏み潰したのは?」 大雷凰の通信機が外部音声をひろい突然の乱入者の言葉を竜馬に伝えた。 「・・・・・・だとしたらどうする?」 「僕を足蹴にして許されると思っているのかい?人間風情がっ!」 「へっ!上等だ!!」 二機が互いに構え合ったその時、ビームガンの射線が二者の間を縫い。遅れて着弾したガンポッドがあたりに粉塵を撒き散らした。 「ちっ!何が起こってやがる。うおっ!そこかぁ!!」 粉塵を抜けた大雷凰を狙っていたかのように上方から射撃が襲う。竜馬が見上げたその先には濃紺の小型機の姿があった。 「・・・・・・消えろ」 無数のマイクロミサイルがYF-21から散布される。それを次々と蹴り砕きながら大雷凰は上空に舞い上がる。 YF-21の拳と大雷凰の脚が交錯した。 一方、その反対側では凰牙とテッカマンが対峙していた。 「人の楽しみを邪魔するなんて・・・それは無粋ってものじゃないのかい?覚悟はできているんだろうね、Mr.ネゴシエイター」 「待ちたまえ。我々は争うためにここに来たのではない。話を聞いてもらえはしないだろうか?」 「フッ、僕に説教でもするというのかい?」 「そうではない。だが我々はゲームの平和的解決を求めている。君が望むならこの機体からも降りてみせよう。ただし君も武装を解除してくれるという前提でだが・・・」 「平和的解決?つまり・・・人間風情とつるめと?できない相談だね」 「人間がどうとかという話ではない。同じ参加者として手を取り合おうというのだ」 「無駄だね。僕は君を倒して僕を足蹴にしたあの許すまじき人間を殺しに行かせてもらうよ」 憎悪を胸に小さな機械人形はテックランサーを構えた。 【ソシエ・ハイム 搭乗機体:機鋼戦士ドスハード(戦国魔神ゴーショーグン)  パイロット状況:軽い脳震盪(機体がガンダム系だと勘違いしています)  機体状況:両腕両足損失(AIは取り外され、コクピットが設置されています)         槍は近場の大地に突き刺さってます。  現在位置:D-7市街地  第一行動方針:戦闘を止める  第二行動方針:条件付でシンヤに食料を分ける  第三行動方針:仲間を集める  最終行動方針:主催者を倒す】 【相羽 シンヤ(テッカマンエビル) 搭乗機体:無し  パイロット状況:テッカマン形態、PSYボルテッカ使用により疲労、無茶苦茶空腹 怒り心頭(空腹なのちょっと忘れてる)  機体状況:機体なし  現在位置:D-7市街地  第一行動方針:竜馬を殺す  第二行動方針:その為の障害の排除  第三行動方針:食料の確保  第四行動方針:機体の確保  第五行動方針:他の参加者を全滅させる  最終行動方針:元の世界に帰る  備考:テックシステムの使用はカロリーを大量に消費】 【ロジャー・スミス 登場機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童) パイロット状態:若干体力消耗 機体状態:左腕喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)、ENレッドゾーン 現在位置:D-7市街地 第一行動方針:シンヤと交渉する 第二行動方針:竜馬と交渉する 第三行動方針:リリーナを護りながら、参加者へ彼女の完全平和主義を説く 第四行動方針:リリーナを説得してENの補給 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉) 備考:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能】 【リリーナ・ドーリアン 登場機体:セルブースターヴァルハラ(GEAR戦士電童) パイロット状態:健康 機体状態:良好 現在位置:D-7市街地上空 第一行動方針:ソシエの無事を確認する 第二行動方針:シンヤ及び竜馬に完全平和主義を説く 最終行動方針:話し合いによって殺し合いを止める 備考:ハイパーデンドーデンチ12本(凰牙の補給6回分)搭載】 【テンカワ・アキト 登場機体:YF-21(マクロスプラス) パイロット状態:良好 機体状態:左腕喪失、マイクロミサイル1/3消費、ガトリンクガンポッド若干消費、EN若干消費 現在位置:D-7市街地 第一行動方針:危険人物(竜馬)の排除 第二行動方針:ユリカを護る(そのためには自分が犠牲になってもかまわない) 最終行動方針:ユリカを元の世界に帰す(そのためには手段は問わない)】 【ミスマル・ユリカ 登場機体:無敵戦艦ダイ(ゲッターロボ!) パイロット状態:良好 機体状態:良好、大砲を一発消費 現在位置:D-7補給施設 第一行動方針:襲われている人の保護 第二行動方針:補給施設を占拠して仲間を集める 第三行動方針:ガイの顔を見たい 最終行動方針:ゲームからの脱出 備考:YF-21のパイロットがアキトだと知りませんが、もしかしたらとは思っています    アキトの名前はガイだと思っていますが若干の疑問もあります】 【流 竜馬 搭乗機体:大雷鳳(バンプレストオリジナル)  パイロット状態:良好  機体状態:装甲表面に多数の微細な傷  現在位置:D-7市街地  第一行動方針:アキトを殺害  第二行動方針:周辺にいる参加者を全て殺害  第三行動方針:サーチアンドデストロイ  最終行動方針:ゲームで勝つ】 【初日 17:00】 ---- |BACK||NEXT| |[[堕ちた少女]]|[[投下順>http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/11.html]]|[[血に餓えた獣達の晩餐]]| |[[ふりまわされる人、ふりまわす人]]|[[時系列順>http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/12.html]]|[[彼らの乗機は強力です]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |[[護るべきもの]]|ロジャー|[[血に餓えた獣達の晩餐]]| |[[護るべきもの]]|リリーナ|[[血に餓えた獣達の晩餐]]| |[[護るべきもの]]|アキト|[[血に餓えた獣達の晩餐]]| |[[護るべきもの]]|ユリカ|[[血に餓えた獣達の晩餐]]| |[[パンがなければお菓子をお食べ]]|ソシエ|[[血に餓えた獣達の晩餐]]| |[[パンがなければお菓子をお食べ]]|シンヤ|[[血に餓えた獣達の晩餐]]| |[[殺意は昏き火が如く]]|竜馬|[[血に餓えた獣達の晩餐]]| ----
*&color(red){それぞれの立場 それぞれの道 ◆Nr7qwL8XuU} 耳を劈くような轟音が鳴り響く。 「え?なになに??何がおこってるの?」 このロワ最大の巨体を誇る無敵戦艦の膝が崩れ、その内部にあるブリッジも傾いていく。 慌てて慣れない手つきでモニターにかじりつき敵機の姿を探す。ここにはいつものように索敵をおこなってくれる仲間はいない。 映し出されるモニターの映像とレーダーに目を走らせている間にも突然襲ってくる振動とその度に傾いていく床に足を取られて何度もこけた。 やっとの思いで艦後方に大型機を確認したと思ったその瞬間、ダイは横倒しに倒れユリカは床に叩きつけられる。 モニターに映し出されているのは赤いマフラーが印象的な一つの大型機。 その大型機が追撃を加えようとして不意に飛び下がり、ダイとの間に一機の小型機が上空から割り込んでくる姿が見えた。 飛び下がった大型機を追って無数のマイクロミサイルが小型機から散布される。それを次々と蹴り砕きながら大型機は上空に舞い上がる。 最後の一機を蹴り砕いたとき、動きを予測し先回りしていた小型機が差し迫ってきていた。 「勝負だ」 小型機のパイロットがヘルメットを脱ぎ捨て、拳にフィールドを収束させる。 大型機のパイロットが瞬時に体勢を立て直し、その両脚が紫の雷光を発する。 交錯する拳と脚。大気が震えた。 だが、その激しい衝突の様子はユリカの目には映っていなかった。彼女の頭を占めているのは唯一つの思いだけ。 やっぱりあなたはア――― ガン! 頬杖をついていた左手から頬が滑り落ち、額が鈍い音をたてた。 ちょっと赤くなった額を涙目でさすりながらユリカは夢の中身を思い出そうと唸る。 何か大事な夢だったようなそんな気がする。 やっぱり・・・やっぱり・・・・・・なんだっけ? やっぱりアキトは私が好き!・・・・・・何か違う気がする。 違うって言うのは、アキトが私を好きとか嫌いとかいう意味じゃなくて・・・あっ!もちろんアキトは私が好きなんだけれど・・・・・・あれ? ちょうど夢の中身が完全に思い出せなくなったころ一つの通信が無敵戦艦ダイに繋がった。 「とりあえず礼の一言も言っておくべきかな・・・・・・」 ほんのわずかに語調に棘があるのに気づいてか、ロジャーはそこで言葉を区切った。 濃紺のボディーに黄色いラインが印象的な機体が眼前でこちらに向き合っている。 この相手は今しがたこちらを襲ってきた緑色の機体のコックピットを叩き潰したばかりである―――そうロジャーの交渉相手を・・・・・・。 乱入してきてから決着がつくまでの数瞬、口を挿む暇もなかった。いや、挿めなかったといったほうが正しいか・・・・・・。 わずかばかり眉間にしわがよる。 (・・・不快感?馬鹿馬鹿しい・・・だいたい誰にだ?奴か・・・・・・いや、私自身にか・・・。だが・・・) だが、この相手はえたいが知れない・・・。単なる好戦的なマーダーであるようではない。 しかし、この男の得体の知れないところはただ緑の機体のみを仕留めておいてこちらには何の行動も起こしていないところだった。それこそ通信の一つすらも・・・・・・。 その正体を見極め、交渉を行うべくロジャーは閉じた口を再び開く。 「単刀直入に聞かせていただく。君はこのゲームに乗った者か?」 先程の戦闘の一連の流れ。そこから相手の技量は伝わっていた。そして、同時に手馴れた様子も・・・。 「・・・・・・・・・いや」 暫しの沈黙の後、否定の回答が返ってくる。 「ならば」 「なら答えていただきます。何故、あの方を殺さなくてはならなかったのかを・・・」 ロジャーの弁を遮って、彼の言おうとしたことを凛とした声が代弁する。 「・・・・・・」 「彼は私の交渉相手だった。我々にはそれを聞く権利が十分にあるとおもうが」 「・・・通信を拾うかぎり奴が危険なのは明白だった」 YF-21が浮き上がりゆっくりと高度を上げていく。 「殺す必要はなかったはずです。あなたほどの腕前ならばわざわざ殺さずとも機体を無力化することもできたのではないでしょうか?」 徐々に高度を上げていたYF-21はやがてヴァルハラと同程度の高度に達するとそこで静かに上昇をやめた。 「・・・・・・逆に聞く。お前達はどうするつもりだった?」 「説得するつもりでした」 「何故?」 「その前にあなたのお仲間のところに私を案内してください」 暫くの逡巡のあとアキトは二機をダイに案内することに決めた。 「地球圏統一国家外務次官リリーナ・ドーリアンです」 「ナデシコ艦長ミスマル・ユリカで~す! ・・・ぶいっ!」 場を奇妙な空気が占め一瞬時間が止まったかのような感じになる。 「・・・完全に出鼻をくじかれたな。なるほど、うまいやり方だ」 気勢を削がれたロジャーはなんか小声で感心している。 無敵戦艦ダイでの四者のやり取りはそんな感じで始まった。 「先程の問い。答えてもらおうか・・・」 艦周囲の哨戒に当たりつつアキトが口火をきる。ちなみに彼は音声通信での参加となっている。もっともユリカはしきりに着艦することを勧めたのだが・・・。 ともかくその問いに答えるべくリリーナはこのゲームにおえる自らの信念を説き始めた。 「私はかつてロームフェラ財団代表の座にあったときにひとつの宣言を行いました。地球の国家間の紛争の原因であった国家と国家を区別する垣根を取り払うと。 それと同じ事を参加者の皆さんにも考えていただきたいのです。 同じ参加者同士。互いに巻き込まれたに過ぎない私たちはこれほどまでに憎みあわねばならないほどの存在なのでしょうか? 傷つけあわねばならないほど分かり合えない関係なのでしょうか? 私たち個人の間にある垣根は取り払えないほどのものなのでしょうか? 私は全ての参加者が武装を放棄し一つになることを望み、今はまだその道は見えずともこのゲームの平和的解決を目指します。 そして、その為にあなた方の力を貸していただけることを希望します」 話し終えたリリーナは静かにユリカを見据える。 地球圏統一国家やらロームフェラやら聞きなれない言葉が混じっていたがようは―― 「話し合いで全てを解決しようということですね。そしてその為に武装は放棄すべきだと」 リリーナは静かにうなずく。 「でしたら賛成はできません」 「何故ですか!」 「このゲームの中には自分の大切なもの――自分の命や仲間の命、好きな人を守ろうとして銃を持った人、ゲームに乗った人もいると思います。 そんな人達に大切なものを守るための武器を捨てろとは私にはいえません」 「その武器を持つという行為が間違っているのです!」 「なら武器を持たず。襲われたら大切なものも守れず黙って死ねと、それを自分だけでなく他人に強制しろというのですか!私にはそんなことできません!!それに――」 そこで一度ユリカは言葉を区切り、そして続けた。 「それに、あなたには何よりも大切な人の一人くらいいないのですか!!」 直後、論戦に割り込むようにアキトの通信が飛び込んできた。 「・・・・・・話は終わりだ。艦前方で爆発を確認」 「ガイさんはこのまま戦闘空域へ。襲われている人を助けつつ、こちらの指定した空域へ敵機を誘い出してください」 通信と同時に一つのデータを送る。それを確認したアキトは機体を加速させ見る間にその機影は小さくさせていった。 「ロジャー、私たちも出ます。襲っている人も襲われている人も説得してみせます」 強張った顔でデッキに向かう依頼主を横目にロジャーはやれやれと肩を竦めつつユリカに向き合う。 「少し、よろしいか」 「なんでしょうか」 「ユリカ嬢、貴女とは残念ながら意見が別れてしまったが、彼女のような考えの参加者もいるということを覚えておいていただきたい」 「・・・・・・」 「そして、いつか彼女に賭けてみる気になられるのをお待ちしている。・・・・・・私は彼女の桁外れの一途さになら賭けてみてもいいと思っている」 言い終わると踵を返したロジャーはリリーナを追って歩いていった。 周囲が破壊されここわずか一・二時間のあいだに廃墟の様相を呈してきた市街地に、既に息も絶え絶えな白い巨人の姿があった。 ほんの十数分前に目的地にたどり着いたソシエは同じ様に戦闘のあとを目印によってきた参加者に突然襲われた。 説得をしようにも聞いてもらえず。応戦をするも見る間に追い込まれていった。 すでにホワイトドールの右腕は失い。メインカメラの半分は死んでいる。 現状を把握しなおしたソシエは眼前の敵機を睨みつけ 「このおおおぉぉぉぉぉ!!」 気迫と共に槍を突き出す。それを長く赤いマフラーを棚引かせてかわした敵は一歩踏み込み残った片腕を蹴り上げた。 槍が宙を舞い大地に突き刺さり、砕けた腕の破片が舞い散る。 間近で翻るマフラーの赤がやけに鮮やかだった。 視界の中を右から左へゆっくりと流れていったマフラーに続いて紫電の光が目に映る。 大雷凰が繰り出した回し蹴りがドスハードに吸い込まれるその刹那、ソシエは絶叫と共に一筋の光線を放った。 周囲に轟音が鳴り響き、粉塵が立ち込める。その粉塵を裂いて蹴り飛ばされたドスハードが背後のビルに叩きつけられた。 咄嗟にブースターを拭かせてその場から距離をとろうとしたソシエを妙な減速感が包む。 そして次の瞬間、前方の粉塵にドスハードは引き寄せられ、 「カウンタアアアァァァァァァァァッスパイクッ!!!!」 その両足までもが蹴り砕かれ背中から大雷凰の遥か後方に落下した。コックピットを激震が襲う。 「くうぅぅ!」 粉塵の中からゆっくりと大雷凰が姿を現す。先のビームはかわされたのか目だった傷跡はついてはいない。 私はここで死んでしまうの―― 落下の衝撃で朦朧とする意識の中でソシエは思った。 冗談じゃないわ―― 機体の腕を動かそうと試みる。が、すでにその腕はない。足もない。戦うことはおろか逃げることすらこの状態では無理だった。 そういえば、あの小さな機械人形はいつの間にか落としてしまった。 どこに落としちゃったんだろう―― ぼんやりとそんなことを考える。止めを刺しに大雷凰が迫ってくるまでがやけに長く感じられた。 ようやく目前までやってきた大雷凰が不意に体勢を崩しドスハードに倒れこんでくる。 「キャアアアアァァァァァァァァ!!!」 再び激震がソシエを襲い。彼女は目を白黒させる。 大雷凰はすばやく起き上がり機体を反転させるとそのあまりにも小さな乱入者に向かい合った。 「君かい?僕を踏み潰したのは?」 大雷凰の通信機が外部音声をひろい突然の乱入者の言葉を竜馬に伝えた。 「・・・・・・だとしたらどうする?」 「僕を足蹴にして許されると思っているのかい?人間風情がっ!」 「へっ!上等だ!!」 二機が互いに構え合ったその時、ビームガンの射線が二者の間を縫い。遅れて着弾したガンポッドがあたりに粉塵を撒き散らした。 「ちっ!何が起こってやがる。うおっ!そこかぁ!!」 粉塵を抜けた大雷凰を狙っていたかのように上方から射撃が襲う。竜馬が見上げたその先には濃紺の小型機の姿があった。 「・・・・・・消えろ」 無数のマイクロミサイルがYF-21から散布される。それを次々と蹴り砕きながら大雷凰は上空に舞い上がる。 YF-21の拳と大雷凰の脚が交錯した。 一方、その反対側では凰牙とテッカマンが対峙していた。 「人の楽しみを邪魔するなんて・・・それは無粋ってものじゃないのかい?覚悟はできているんだろうね、Mr.ネゴシエイター」 「待ちたまえ。我々は争うためにここに来たのではない。話を聞いてもらえはしないだろうか?」 「フッ、僕に説教でもするというのかい?」 「そうではない。だが我々はゲームの平和的解決を求めている。君が望むならこの機体からも降りてみせよう。ただし君も武装を解除してくれるという前提でだが・・・」 「平和的解決?つまり・・・人間風情とつるめと?できない相談だね」 「人間がどうとかという話ではない。同じ参加者として手を取り合おうというのだ」 「無駄だね。僕は君を倒して僕を足蹴にしたあの許すまじき人間を殺しに行かせてもらうよ」 憎悪を胸に小さな機械人形はテックランサーを構えた。 【ソシエ・ハイム 搭乗機体:機鋼戦士ドスハード(戦国魔神ゴーショーグン)  パイロット状況:軽い脳震盪(機体がガンダム系だと勘違いしています)  機体状況:両腕両足損失(AIは取り外され、コクピットが設置されています)         槍は近場の大地に突き刺さってます。  現在位置:D-7市街地  第一行動方針:戦闘を止める  第二行動方針:条件付でシンヤに食料を分ける  第三行動方針:仲間を集める  最終行動方針:主催者を倒す】 【相羽 シンヤ(テッカマンエビル) 搭乗機体:無し  パイロット状況:テッカマン形態、PSYボルテッカ使用により疲労、無茶苦茶空腹 怒り心頭(空腹なのちょっと忘れてる)  機体状況:機体なし  現在位置:D-7市街地  第一行動方針:竜馬を殺す  第二行動方針:その為の障害の排除  第三行動方針:食料の確保  第四行動方針:機体の確保  第五行動方針:他の参加者を全滅させる  最終行動方針:元の世界に帰る  備考:テックシステムの使用はカロリーを大量に消費】 【ロジャー・スミス 登場機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童) パイロット状態:若干体力消耗 機体状態:左腕喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)、ENレッドゾーン 現在位置:D-7市街地 第一行動方針:シンヤと交渉する 第二行動方針:竜馬と交渉する 第三行動方針:リリーナを護りながら、参加者へ彼女の完全平和主義を説く 第四行動方針:リリーナを説得してENの補給 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉) 備考:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能】 【リリーナ・ドーリアン 登場機体:セルブースターヴァルハラ(GEAR戦士電童) パイロット状態:健康 機体状態:良好 現在位置:D-7市街地上空 第一行動方針:ソシエの無事を確認する 第二行動方針:シンヤ及び竜馬に完全平和主義を説く 最終行動方針:話し合いによって殺し合いを止める 備考:ハイパーデンドーデンチ12本(凰牙の補給6回分)搭載】 【テンカワ・アキト 登場機体:YF-21(マクロスプラス) パイロット状態:良好 機体状態:左腕喪失、マイクロミサイル1/3消費、ガトリンクガンポッド若干消費、EN若干消費 現在位置:D-7市街地 第一行動方針:危険人物(竜馬)の排除 第二行動方針:ユリカを護る(そのためには自分が犠牲になってもかまわない) 最終行動方針:ユリカを元の世界に帰す(そのためには手段は問わない)】 【ミスマル・ユリカ 登場機体:無敵戦艦ダイ(ゲッターロボ!) パイロット状態:良好 機体状態:良好、大砲を一発消費 現在位置:D-7補給施設 第一行動方針:襲われている人の保護 第二行動方針:補給施設を占拠して仲間を集める 第三行動方針:ガイの顔を見たい 最終行動方針:ゲームからの脱出 備考:YF-21のパイロットがアキトだと知りませんが、もしかしたらとは思っています    アキトの名前はガイだと思っていますが若干の疑問もあります】 【流 竜馬 搭乗機体:大雷鳳(バンプレストオリジナル)  パイロット状態:良好  機体状態:装甲表面に多数の微細な傷  現在位置:D-7市街地  第一行動方針:アキトを殺害  第二行動方針:周辺にいる参加者を全て殺害  第三行動方針:サーチアンドデストロイ  最終行動方針:ゲームで勝つ】 【初日 17:00】 ---- |BACK||NEXT| |[[堕ちた少女]]|[[投下順>http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/11.html]]|[[血に飢えた獣達の晩餐]]| |[[ふりまわされる人、ふりまわす人]]|[[時系列順>http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/12.html]]|[[彼らの乗機は強力です]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |[[護るべきもの]]|ロジャー|[[血に飢えた獣達の晩餐]]| |[[護るべきもの]]|リリーナ|[[血に飢えた獣達の晩餐]]| |[[護るべきもの]]|アキト|[[血に飢えた獣達の晩餐]]| |[[護るべきもの]]|ユリカ|[[血に飢えた獣達の晩餐]]| |[[パンがなければお菓子をお食べ]]|ソシエ|[[血に飢えた獣達の晩餐]]| |[[パンがなければお菓子をお食べ]]|シンヤ|[[血に飢えた獣達の晩餐]]| |[[殺意は昏き火が如く]]|竜馬|[[血に飢えた獣達の晩餐]]| ----

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