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我が道を走る人々 ◆C0vluWr0so



「それじゃガロード……ゆっくりと、話を聞かせて貰おうじゃないか」

B-1の戦闘から離脱し、周囲に敵影が無いことを確認。そのまま真ゲッター2を自動操縦に切り替えたガロードが聞いたのはクインシィお姉さんの刺々しい言葉だった。
切れ長の目を吊り上げて、せっかくの美貌も台無しだ。
……いや、こういう表情も意外と悪くな――

「ガロード! 聞いているのか!」

……やっぱりそれは無しで。だって今のお姉さんは、怒りに震える唇やうっすらと青筋を立てている額など、真ゲッター顔負けの顔をしているのだ。
例えばここに十人の子供がいたとしたら、七人は泣き出すような顔だ。
残りの三人のうち二人はすたこらさっさと逃げ出すだろうし、真っ正面から今のお姉さんに立ち向かえるのは一人いるかいないかといったところか。
ならガロードはどうだろう?
正直に言って、泣き出したい気分だった。逃げ出せるものなら逃げ出したい。
しかし、そういうわけにもいかない。勇敢にもガロードは、クインシィと真っ正面から向き合う覚悟を決めるのだった。

「……どうも俺って、ここに来てから振り回されてばかりだなぁ……」
「何か言ったか、ガロード?」
「い、いいえいいえ! それでお姉さん、話って……まぁ、何かは分かるけどさ」
「分かっているのなら何故敵に背を向けた? 勇の手がかりと! それを邪魔した男からもだ!」
「それは謝るよ。でも……それでも俺は、あそこから逃げたことを後悔してない」

きっぱりと言い放つガロードに、クインシィは納得のいかない顔を見せる。
クインシィにしてみれば、あの青い機体はこの不可思議な世界で勇に繋がる数少ない手がかり。
そのまま打ち倒し、勇の居所を吐かすことが出来れば愛しい弟とすぐに会えたかもしれないというのに……
それだけではない。途中で乱入してきた首無しの機体。
あれはクインシィの癇に障った。どこが、というわけではない。
勇の手がかりを横から打ち伏したこと。戦っていた自分ではなく神隼人しか気にかけていなかったこと。
それでも自分と互角以上に組み合ったこと。その全てがだ。
だからこそクインシィは気に入らない。やられたままでいるのはオルファンの女王の気質が許さない。
すぐにでも駆け戻り、屈辱を晴らしたいのだが、少年――ガロード・ランは、そんなクインシィに真っ向から反するのだ。

「……何故だ。どうしてガロードはそう言い切れるんだ?」
「神さんが言ってただろ? ゲッターは俺たちが信じられないような力を秘めている。
 けれど、その力のためには三人目の操縦者が必要だって。だから神さんは俺たちに三人目を捜せと
言った」
「それでは理由にならない! ゲッターは今のままでもやれる子だ、あのままでも首無しと勇の手がかりと二つとも相手に出来た!」
「確かにそうかもしれない。でもそれだけじゃ駄目なんだよお姉さん。それだけじゃ……あの怪物をどうにかすることなんか出来やしない。
 俺たちよりもゲッターのことを知っていた神さんはそれが分かってた。だから俺たちに三人目を捜すことを優先させたんだ」

(勇も……、ガロードも……ッ! どうして私を否定するんだッ!?)

ガロードの言葉に、クインシィは内心歯噛みする。確かにガロードの言い分も分かる。
いくらゲッターだろうが今のままでは並行世界さえ操るあの主催者たる怪物には敵わないだろう。
だが、クインシィとガロードには決定的な違いがあった。
ガロードは元の世界への帰還を目的にしている。しかしクインシィは違う。
彼女が本当に望んでいるのは愛しい弟、勇。優しかった勇だ。

「……なぁお姉さん。弟さん――勇って言ったっけ」
「そうだ」
「俺も一緒に捜すよ。絶対にお姉さんと勇を会わせてやる」
「え……」

ガロードの予想外の申し出に、一瞬だけ、少女の顔がクインシィ・イッサーから伊佐未依衣子のものに戻る。
そして――

「――お姉さん、機影だ! 進行方向に一つ!」
「なんだと?」

一瞬見せた優しい面影は、レーダーに映る一つの機影にかき消された。
前方数十キロ先に十数メートルほどの決して大きくはない影が一つ。
地中を進む真ゲッター2ならば、このままやり過ごすことも可能だろう。
接触するのか見逃すのか、どうせ返事は決まっているだろうと思いながら、ガロードはクインシィに判断を仰ぐ。
クインシィは、ガロードの確認を鼻で笑うと、はっきりとした声で告げた。

「もちろん分かっているんだろう、ガロード?
 ――接近するぞ、速度を上げろ!」
「はいよ!」

 ◆

時刻は21:30、場所B-4。ようやく補給を終えたジョナサンは舌打ちを一つ。
思っていた以上に時間を食ってしまったことに軽い苛立ちを覚えながら、ジョナサンは現在の状況を確認する。
キラと別れてから三時間以上が経っている。ここからC-6に戻るには、どう急いでも一時間はかかるだろう。
つまり四時間。それだけの時間をキラはソロバン――トモロとかいったか――と過ごすわけだ。

(それはグッドじゃないな。あのいけ好かないソロバンがキラに何を吹き込むか分かったもんじゃない。
 ともすれば俺を置いて勝手に何処かに行ってしまうこともあるか……)

だが現状をいくら嘆こうと、100km以上の距離が縮まるわけでもない。
ええい、勝手なことをしてくれるなよ、とオルファンに祈りながら操縦桿に手を伸ばしたときだった。
突然地が割れ、こちらの二倍はあるような巨体が姿を現した。
全身にドリルが付いた――というよりむしろ全身がドリルという異質の姿にさすがに度肝を抜かれるが、呆けるのは一瞬だけ。
即座に臨戦態勢に入り、F91を空に飛ばしながら牽制代わりのマシンキャノンを放つ。
しかし敵の巨躯にとって、マシンキャノン程度は豆鉄砲のようなものらしい。
数発の銃弾が敵機の装甲を掠めるが、さしたる損傷は与えられない。
(クッ……! 硬いな。それに大きい)
まともにやり合えばこちらの分が悪い。大人と子供の喧嘩のようなものだ。地力の差は如何ともし難いだろう。
下手な攻撃は意味がない。そう考えたジョナサンはバーニアを噴かし回避に専念しようとする。
だがその時ジョナサンは気づいた。

(……? あれはこちらを攻撃する気が無いのか?)

見れば敵機はこちらに攻撃を仕掛けるもなく、その場に立っていた。
キラと同類の人間かとも思ったが、どうやらそれとも違うようだ。
ある程度の高度を保ったまま相手の出方を見ている内に、ドリルから通信が入る。

「待ってくれ! こっちは戦うつもりはないぜ。
 まずは話を聞いて……って、お姉さんちょっと待ってくれよ、お姉さんに任せたら――」

――成程、合点がいった。どうやら相手はあの一機に複数人乗っているらしい。
確かにあれだけのサイズなら複数のパイロットを乗せる余裕はありそうだ。
しかしどうするか。複数人でいるということ、通信の中身から考えるに相手はすぐに殺し合いをする気は無いようではある。
だがこのゲームの意図、そしてジョナサンの目的からすると参加者の数減らしというのは出来るときに出来る限り進めておきたい。
(まぁ、このガンダムであの巨体を倒すのを『出来るとき』とはいわないな……)
半ば自嘲気味に苦笑すると、ジョナサンはひとまず接触することを決める。
相手と協力するにせよ、相手を利用するにせよ、交渉は必要である。
返す文言を頭に思い浮かべながら通信機のスイッチに手を伸ばしたときだった。

「だからお姉さんに任せたらまとまるものも――」
「五月蠅い! 私を誰だと思っている? 私はクインシィ・イッサーだ! オルファンの女王として――」

その声を聞くと自然に笑みがこぼれた。
(やってくれるじゃないか……運命ってヤツもな!)

「久しぶりだなクインシィ! 女王がバロン、ジョナサン・グレーンはお前に会いたがっていたぞ!」
「な……! ジョナサン・グレーンなのか!?」
「え、あれれ? あの人ってお姉さんの知り合いなの? もしかして俺って一人置いてけぼり?」

 ◇

クインシィとジョナサンが互いの確認を終えた後の接触は、おおむねスムーズに進んだ。
余談ではあるが、クインシィがガロードにジョナサンのことを全く話していなかったと聞いて、ジョナサンは少しばかり浮かない顔をしたそうである。余談終わり。

「……それでクインシィ、お前は勇のことを捜しているんだな?」
「そうだ。勇のブレンごとな。……それで、どうするつもりだ?」
「決まっている。俺はクインシィのバロンだ。ついていくさ」
「それじゃそのキラって奴はどうするんだよ? まさかこのまま別れちまうつもりなのか?」

ジョナサンの返答にガロードが質問を重ねる。
ジョナサンがさも当然という顔で頷くのを見て、ガロードは何となくだがジョナサンのことを好きになれそうにないと感じた。
そしてガロードは一つの提案をする。

「ならさジョナサン……あんたのガンダム、俺にくれないか?」

「ハ? それは一体どういう意味だ?」
「俺はあのガンダムに乗って、一回B-1に戻りたいと思ってる」
これにはクインシィの方が反応した。
「どういうつもりだガロード? お前も私のそばにはいたくないと……そういうことなのかッ!」
「どうしたもこうしたも……って、後半明らかに論理飛躍してるよお姉さん!
 俺は別にお姉さんのこと嫌いじゃないし、それとこれとは理由が別だ。とりあえず、手分けをしようって言ってるんだよ。
 俺は神さんを迎えに行く。ついでに勇の手がかりって奴にも会えたらラッキーかな。
 そんでお姉さん達はその間にゲッターでキラって奴のところに行ってくれないか?
 単純に考えれば、二手に分かれた方が勇に会える確率も二倍って寸法だぜ」

悪くない話だろ? そう話すガロードの顔を眺めながらジョナサンは冷静に計算する。この話に乗った時のメリットとデメリットをだ。
まずメリット。クインシィと二人きりになれることだ。いや、違う。
もし分かれた両方が仲間との合流に成功した場合、得られる戦力は大違いだろう。
クインシィの優勝を目的としているジョナサンにとって、あまり強すぎる集団が出来るのは避けたいところだが、まずはクインシィと自分の安全の確保が必要だ。
強集団に入り込み、まわりの面子に盾になってもらうというのは悪い作戦じゃない。
油断している頃を見計らって行動すれば、切り捨てることも難しくない。

そしてデメリット。これは単純に今現在の戦力がダウンすることだろう。
だが、このゲッターというマシンなら、たいていの機体とは渡り合えるに違いない。これは無視しても良いレベルの問題だ。
むしろ問題はガロードという存在がいないクインシィだろう。
この二人は出会って間もないというが、ジョナサンには分かった。
クインシィはガロードに依存し始めている。これは良くない兆候だ。
(クインシィの悪い病気……というところか。勇に対しても、ガロードに対しても……)
だがここでガロードとクインシィを切り離すことは後々のメリットに繋がる。
本当ならガロードのような存在は早めに排除したいところだが、無闇に自分が手を出しクインシィの不信を買うこともない。
ガロードが単独行動の最中に死んでくれるのなら――そちらの方が良いのだ。

どう考えてもデメリットよりもメリットの方が大きい。そう判断したジョナサンは賛成の意を表する。
二人の意見に押され、クインシィもガロードの案に納得した。
そして二人は機体を乗り換える。
ガロードのいたジャガー号にはジョナサンが、ジョナサンの乗っていたF91にはガロードが乗り込む。

「フン……このゲッター、なかなか良いマシンのようだな。アンチボディとは違う……だがオーガニック的な何かを感じる」
「それじゃガロード、ここで一旦お別れだ。お前にオルファンの加護があることを祈ってやる、感謝しろ」
「ああ、それじゃお姉さんもジョナサンも、俺のことキラって奴によろしく言っといてくれよ。
 合流場所は……C-8、でどうだい?」
「了解だ」

ガロードは操縦席に身を落とし、モニター越しに映る月を見た。
その詳細は異なっていて、地球から見える月とは違うもののように思える。
だがそれを言うならこのパイロットシートの感触だって、計器の一つ一つだって、自分が乗っていた『ガンダム』とは違っている。
ここでもガンダムに乗ることになるなんてな、と苦笑。
しかしその目はまっすぐ前を向き、瞳には少年の運命を象徴するよう月が映り込んでいた。

「よーし……それじゃ行くぜ! ――ガンダムF-91、発進!」




【ガロード・ラン 搭乗機体:ガンダムF-91( 機動戦士ガンダムF-91)
 パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。
 機体状態:微細な傷(戦闘に支障なし)
 現在位置:B-4
 第一行動方針:B-1にて神隼人との合流
 第二行動方針:勇、及び勇の手がかり(エイジ)の捜索
 最終行動方針:ティファの元に生還】

【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~世界最後の日)
 パイロット状態:疲労小
 機体状態:ダメージ蓄積
 現在位置:B-4
 第一行動方針:ジョナサンと共にキラのところへ
 第二行動方針:勇の撃破(ユウはネリーブレンに乗っていると思っている)
 第三行動方針:ギンガナムの撃破(自分のグランチャーを落された為逆恨みしています)
 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】

【ジョナサン・グレーン 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~世界最後の日)
 パイロット状態:良好
 機体状態:ダメージ蓄積
 現在位置:B-4
 第一行動方針:クインシィと共にキラと合流
 第二行動方針:キラが同行に値する人間か、品定めする
 第三行動方針:強集団を形成し、クインシィと自分の身の安全の確保
 最終行動方針:クインシィをオルファンに帰還させる(死亡した場合は自身の生還を最優先)
     備考:バサラが生きていることに気付いていません。

【初日22:30】




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