偽名 ◆T0SWefbzRc




「ほう…」
懐から出した手鏡を覗き、男は思わず嘆息した。
「これは…」
額の、三日月型の飾りに指を這わす。
「ふむ。良いではないか。目元の造形が少し因縁深い感じだが、またそれもいいだろう」
 地上にそびえる、肩に二本のドリルを白い巨大なロボット。
「あれは…」
アムロ・レイはその巨体を、何も無い平原という位置取り故にレーダーの範囲外から目視で確認した。
「どうしたものか…」
自らの機体、トーラスの変形を解き離れた場所に止める。
「あれ程の大型機だ。味方に引き込めればいいが…」
遠くからの目視だ。比較対象になる物体も無く、正確な大きさは計ることが出来ない。しかし、
ざっと見でもアムロの機体の倍の大きさはあると思われた。
「ここでこうしていても始まらない」
言いながら、操縦系に手を掛ける。
「いざとなったら変形を使って逃げられる、か?」
その頃。当の巨大なロボットのコックピットの中。
「何故だ!何故だ外れん!」
取れない。押しても引いてもヘルメットが取れない。
「く、なんと無様な…!」
男はとても焦っていた。
 事の始まりは、コックピットの収納ケースに入っていたマニュアルと衣装だった。
「ふむ。スレードゲルミル、か…」
彼は最初にマニュアルに手を伸ばし、読み耽った。そして、操作法を一通り学んだ後。
「ウォーダン変身セット…!」
彼は、その項を見た瞬間、衣装に手を伸ばしていた。

 アムロの優れた直感力が彼に警戒を促した。
「この感じ…!シャアか!?」
近付いて通信を繋げるまでもない。良く知った感覚だ。
「く…!向こうも気が付いたようだな」
巨人が、旋回しアムロの方に近付いてくる。
「攻撃してくるか?いや、奴だってこんな所での決着は望まないはずだ。ならば…」
通信回線を繋げるためにアムロは手を伸ばした。
「初めまして」
しかし、それよりも早く、相手は通信を繋げてきた。とりあえずは交戦の意思が無いようだ。
「初めまして…だと?」
アムロは、目を疑った。目の前にいるのは自分の良く知るシャア・アズナブルに相違ない。アムロの直感は彼にそう告げていた。だが。
「…ふざけているのか?シャア」
「私は、シャア・アズナブルなどではない。…ウォーダン。ウォーダン・ユミルだ!」
モニターに映っているのは、珍妙な仮面を付けた男が顔を真っ赤にして叫んでいる姿だった。



【アムロ・レイ 搭乗機体:トーラス(白)(新機動戦記ガンダムW)
 パイロット状況:シャア?
 機体状況:良好
 現在位置:G-1
 第一行動方針:協力者を募る
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【ウォーダン・ユミル(シャア・アズナブル) 搭乗機体:スレードゲルミル(スーパーロボット大戦OG2)
 パイロット状況:私はシャアではない
 機体状況:良好
 現在位置:G-1
 第一行動方針:NOT シャア宣言
 最終行動方針:???
 備考:ウォーダン変身セットと手鏡を所持、ヘルメットを被って取れなくなった】

【初日 14:35】



本編10話 赤い彗星


最終更新:2008年06月29日 02:24