※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

適材適所 ◆YYVYMNVZTk




目前の二人が不穏な空気を撒き散らしていることに関して、兜甲児は頭を悩ませる。
どうやらここに連れてこられる前からの知人ではあるらしいのだが、その関係は良好というにはほど遠いようなものだったらしい。
ガロード=ランという少年はシャギア=フロストという人物に対して大きな思い違いをしているのではないか、というのが甲児の正直な考えだった。
年上の人間に対してこんな感想を持つのは失礼ではあるのだろうが、シャギアは、その……
頼りにはなる。ノリも良く、親しみやすい。親戚にこんな兄ちゃんがいれば、さぞ楽しかったことだろう。
だが……どう見たって悪役というキャラではない、むしろ三枚m(ry と、甲児はそう思う。
実はガロードが勝手にライバル認定しちゃって追っ駆け回しちゃってるんじゃないかしらんとまで思っているのも甲児だ。

まぁ、そんな邪推はどこかに置いておいてだ。
この険悪な空気は甲児も好むところではない。出来れば和やかな雰囲気の中ガロードとも仲良くやっていきたいのだが……
と、そのとき甲児の頭上で電球が輝いた。
ポン、と手を打ちながら二人にこう話しかける。

「まぁまぁ二人とも、あんまり喧嘩腰になるのも良くないって。
 こんなときはやっぱり……」
「やっぱり?」
「レッツゴー・ゲキ・ガンガー3!」



  夢が明日を呼んでいる

        魂の叫びさレッツゴーパッション



「うおおおおおおお! ゲキ・ガンガー!」
「いいのかね甲児君? 確かもう13話まで視聴完了していたはずだが……」
「何言ってるんだよシャギアさん、名作ってのは何度見ても俺達の心を震わせてくれるんだ!
 それに、最初から見ないとガロードだって話についていけなくなっちゃうじゃないか」
「フフ、それもそうだな。……というわけだガロード=ラン。なに、気にすることはない。
 ゲキガンガーの熱いパッションが私たちの間の些細な問題など吹き飛ばしてk(ry

ダン! と、ちゃぶ台が揺れた。
湯飲みからこぼれた茶が手を濡らしたことにも気付かず、物凄い形相でシャギアを睨みつけるガロードがそこにいた。
「……別に、あんたたちのやり方に反対するわけじゃない。いや、俺だって本当ならその輪に入ってたと思うよ。
 でも……! やっぱり俺は、あんたを信用できない。あんた達兄弟を信用できないんだ」
まっすぐ見つめてくるガロードの視線をそのまま受け止め、シャギアは先ほどまでのテンションとは打って変わって真剣な表情で言葉を返した。
「君の言い分はよく分かる。……私も、少々羽目を外しすぎたようだな。
 ここからの私はシリアスモードだ。それでは……積極的情報交換、といこうか」

甲児が一人、気まずい思いをしていたのは言うまでもない。

 ◇

改めてちゃぶ台に座りなおし、二人は茶をすすりながら話の切り口を探していく。
まず動いたのはガロードだ。

「まずはじめに確認しておきたいのは、あんた達兄弟がどう動くつもりなのか、ってことだ。
 これを聞かないことには情報交換をするわけにもいかないからな」
「ふむ、それについてだが……少なくとも、今のところは君が邪推しているような物騒な考えは持ち合わせていない。
 私は……いや、私たちは生きて帰ることが出来ればそれ以上を望むつもりはない。
 少なくともこの点に関しては君とも協力できると思うのだが……どうかね?」
「……確かに一人しか生き残れないっていうんなら、あんた達がこの殺し合いに乗るという選択はないのかもしれない」
「分かってくれたのなら何よりだ。さて、早速情報交換と……」
「でも、だ」

と、ガロードはそこで一旦言葉を切り、甲児のほうをチラリと見た。
ガロードの懸念は、甲児の存在だ。
甲児は今のところ、フロスト兄弟のことを全面的に信用し、微塵も疑っていないようだ。
もし本当にフロスト兄弟がおとなしく協力するというのならば、これ以上シャギアの本質に踏み込み、甲児に要らぬ悪印象を与える必要はない。

「いや……やっぱりいい。先に話を進めよう」
「ああ。それではまず、クインシィのことについて教えてもらおうか。私としても見ず知らずの人間を艦に乗せておきたくないのでね」
「でもシャギアさん、あの人は比瑪さんの知り合いらしいぜ? 気を失ってるあのお姉さんの看護を自分から申し出るくらいだ、全く信用できないということはないと思うけどな」
「確かにそれはそうだが……こんな場所だ。ストレスの過負荷は精神の異常を引き起こす。ここは現在のクインシィについても聞いておく必要があるだろう」

戦闘の終了後もクインシィは目を覚まさなかった。今は格納庫から発見された身元不明の男と共に、医務室で寝ている。
二人の看護は比瑪がやると申し出、二人が起きてきた場合危険が伴うとの反対意見も出されたが、ペガスを緊急時の備えとすることで話は決着した。

「お姉さんは……確かに短気なところもあって、気難しいところもあるけど……大丈夫だ。俺が保証する」
「どちらにしろ、私がこの目で確かめるつもりではあったが……いいだろう。彼女が意識を取り戻すまで、ナデシコで保護することを約束する」
「ってわけだ。だからそんなに心配するなよガロード。このナデシコの中にいればどんな奴が襲ってきたって平気だって!」

ひとまずクインシィと自分の身の安全を確保し、ほっと一息つくガロードであった。
しかしまだ気は抜けない。相手はさんざフリーデンを苦しめ、ティファを付け狙ってきたフロスト兄弟の片割れ。
この非常事態のさなかで何かしらの行動を起こすかと言われれば、決して否定出来ないのもシャギア=フロストだ。
元の世界に戻る算段さえあれば、混乱に乗じガロードの殺害を目論む……ということも十分に考えられる。
シャギアが身の安全のためにクインシィの安全性を確かめるように、ガロードもまたフロスト兄弟の危険性について再度知る必要があった。

「それでシャギア……今、オルバはどうしてるんだ? さっきの口ぶりだとオルバとも合流してたみたいだけど……?」
「……フフ、弟の心配をしてくれているのか? あれでなかなか可愛げのある弟だ。そう思ってくれたことに対して悪い気はしないな。
 オルバには今、フェステニア=ミューズという少女と共に別行動を取ってもらっている。別行動の理由については後々の情報交換の際に教えるつもりだ。
 一つヒントを出しておくと、はぁとまぁくな話題……といったところか。いや、これではヒントではなく殆ど答えになってしまっている……なぁ、甲児君?」
「ちょっとちょっとシャギアさん、この手の話はもっと引っ張っておかなくちゃ!w ガロードには秘密にして二人でニヤニヤしたかったのにさ!」

……甲児と和やかに笑い合うシャギアの姿を、ガロードはどことなく白けた目で見ていた。
ここには、厄介な敵だったフロスト兄弟はいない。……もしかして、これがヘイコン世界ってヤツなのか?
いやいや、そんなことはないはずだ。きっとこれも周りを騙すための演技のはず……多分。

「ま、まぁオルバが無事だってんならそれでいいさ。それじゃようやくだけど、情報交換といこうか」
「共有しておきたい情報は、それぞれの接触者の情報と、ここまでの道程だ。それと……“これ”についても、何か知っていること、気づいたことがあれば教えてもらいたい」

そう言ってシャギアは自分の首筋を指さす。“これ”とは首輪を示す代名詞。
首輪がここからの脱出の一番のネックになるということは、ガロードだって気づいている。
軽く頷くと、まずはシャギアの言葉の前半部について話し始める。

「俺が最初に会ったのはお姉さんだ。お姉さんは俺の前にも誰かと会ってたみたいだけど……これはお姉さんが起きてから聞いてくれ。
 場所はB-1で、その後周囲の探索をしている途中で、ギンガナムが乗ってるガンダムが……」
「ギム=ギンガナムのことか? 二回目の放送でその名前が呼ばれていた」
「ああ、それだ。んで、そいつがいきなり襲いかかってきて戦闘になって……あっ! あいつ……! どこかで見たことがあると思ったら、あの時仕掛けてきた機体か!
 ついさっき戦闘した、剣を使うあの機体、あれが戦闘に割り込んできたんだ」
「やっぱりさっきの奴は、この殺し合いをやる気なヤツってことなのか?」
「……それは分からない。あいつは、なんというか……確かにやる気なのかもしれないけど、決してそれを望んでない。どこか諦めてる感じがする」
「それは仕方のない選択とも言えるだろう。あのような超常の力を持つ異形に歯向かうというのは、一歩間違えればただの無謀にしか過ぎない」
「確かにそうかもしれないけど……でもさ、俺は分かってほしいよ。無理だと諦めてちゃ出来ないことは世の中にはいっぱいあるけど、やろうと思って出来ないことは、俺たちが思っているよりもずっと少ないってことをさ」

二度の戦闘を交わした相手に対して、ガロードは何かを期待していた。もしかしたら、あの少年はまだやり直せるかもしれないと。
人は変われる――成長することが出来るということを、ガロードはフリーデンでの長い旅路の中で知った。
例えば自分の殻を破り、外へ向かって歩き出した少女のように、或いは自らの過ちを知り、その贖罪のために街に残った少年のように。

「……現実的ではないn「教えてやれるさ! やろうと思って出来ないことは少ない、なんだろ?」

シャギアの否定の言葉を、甲児の陽気な声がかき消した。
甲児の能天気な言葉に内心苦笑するシャギアだったが、太陽のような、と形容するのが相応しい甲児の人柄は人を集める船の艦長としては最適である、とも考えている。
だからここは強く言い下がらずに、甲児に賛同しておくことにした。
ただでさえガロードとの内輪話についていけてなかった印象もある。無下に扱うことで甲児の発言力を奪っているとガロードに勘違いされては要らぬ誤解の種になりかねない。
シャギアはそう考え、甲児の言葉にガロードが強く頷き、話の続きを始めるまで沈黙する。

「次に会ったのが神隼人さん。お姉さんが乗ってたゲッターロボと同じ世界から連れてこられた人で、俺たちにゲッターの扱い方を教えてくれた。
 だけど……青い機体が接近してきた途端、お姉さんが急に暴れ出して、そのままなし崩し的に戦闘になっちまった。
 その途中で竜馬とかいう隼人さんの知り合いも混じってきて、俺とお姉さんはその場を神さんに任せて戦線離脱」

神隼人――それもまた、二回目の放送で呼ばれた名前だ。ガロードの顔を見れば、何があったのかそれなりには推測できた。

「そして逃げている途中で、今度はジョナサン――さっきお姉さんを守って死んだ、あの男――と会ったんだ。
 その後、俺はジョナサンが乗ってたガンダムに乗り換えて、隼人さんを助けにB-1へと再び向かった。
 今度はギンガナムとブンドルってお兄さんが戦ってるのに出くわして、まぁその場はブンドルが丸く収めたんだけどね」
「ギンガナムを殺した――のか?」
「いや、違う。なんと……説得でギンガナムを味方に引き込んだんだ。で、俺は二人と別れて、ようやくB-1に到着。
 そこでブンドルの仲間のアムロさんと会って、機体をアムロさんと交換して、アムロさんはマシントラブルでその場に残って俺だけお姉さんの救援に向かって……その後は知ってのとおりさ」

ガロードの話を聞き、シャギアは冷静に戦力を計上する。
こちらの仲間となってくれそうな人物はブンドルとアムロの二人。
同行しているはずのギンガナムが死亡していることからブンドルの安否が気遣われるが、ガロード曰く相当の戦闘狂であるらしいギンガナムの説得に成功したという手腕から判断するに、相当に能力の高い人物であるらしい。
ブンドルに関してはあまり心配する必要もないだろうとシャギアは考える。
アムロについては、合流も容易であるようだし、合流後に詳しい話を聞くつもりだ。
そして、敵対者。先程戦闘となった剣を使う青い機体は、今後もナデシコの敵になる可能性が高い。
戦闘力ならばナデシコの敵ではないが、ガロードと甲児はなんとか味方にしたいと考えているようだ。ナデシコの大火力で戦うのは難しいだろう。

「それでは今度はこちらの話をしよう。まず私とオルバは、初期位置が近かったことが幸いし、かなり早い段階で合流することができた。
 その後は甲児君と比瑪と合流。最初は微笑ましい勘違いもあったがね、今は見ての通りの仲だ。
 二人と合流した後は、ある艦と戦闘を行った。――君たちが同行していたジョナサン=グレーン操るJアークとだ」

シャギアの言葉に、ガロードは目を丸くする。ジョナサンは――そんなことは言っていなかったはずだ。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ! ……その時、キラって奴は?」
「勿論いた。……私がクインシィを信用できないと言った理由が分かったか? ジョナサンが限りなく黒に近いからといってクインシィまで黒と見るつもりはない。
 だが、ジョナサン=グレーンが私たち……正確には、ジョナサンのことを知る比瑪のことを襲ったという事実は覚えておくことだ」
「まぁまぁシャギアさん、あの時は誰も怪我もなにもしなかったし、過ぎたことは一旦忘れようじゃないか。
 ジョナサンは別として……俺、ガロードのことは信用していいと思ってるんだ」
「ありがとな、甲児。……話を続けてくれ」
「その後しばらく、他の参加者との接触はなかった。……いや、正確にはなかったと考えていた、というべきだろうな。
 ある戦闘の跡地にて使えそうな機動兵器を発見したため、ナデシコに回収した。ちなみに他にあったものは大破した巨大な機体と死体が一つずつだ。
 ……実は、回収した機動兵器の中には気絶した参加者が乗り込んでいた。クインシィと共に医務室で眠る男がそれだ。
 いやはや、延々と眠り続けるあの男がここまで生き残れたのはまさに幸運というほかないだろうな。
 そして、次に遭遇したのは――ミスマル=ユリカの乗る無敵戦艦ダイ一派とキラの操るJアーク一派、それに謎の黒いガンダムを加えた大乱戦だ。
 結果としてミスマル=ユリカは死亡し、ダイは大破。Jアークに属するものも二人ほど死んだようだ。
 テニアの話によれば、Jアークに乗るものはキラ=ヤマトとソシエ=ハイムの二人とのことだ」
「まぁ、テニアを仲間にできたし、悪いことばっかりじゃなかったぜ。肝心のJアークがどこに行ったのかは分からないけど……」
「そのことについて話しておきたいことがある。今まで私だけのヒ・ミ・ツ☆ だったわけだが……実は、ロジャー=スミスがJアークを追っている」
「ロジャーって……あの場所で一番目立ってた全身真っ黒の男か!?」
「ちょっとシャギアさん、さっきはそんなこと言ってなかったじゃないか!?」
「元々いつまでも秘密にするつもりはなかったのだがな。ひとまず、放送でロジャーの生存も確認したことだし、皆にも知ってもらうことにした。
 ネゴシエイターと言っていたか、あの男は。おそらくは、Jアークに対して交渉にいったのだろう。豪気な男だ」

驚く二人を尻目にシャギアは更に言葉を重ねていく。

「その後は特に大きな事柄もない。放送を迎え――さっきの戦闘だ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。ということはつまり、ロジャーはいまJアークと一緒にいるってことなのか?」
「交渉人が本当にJアークを追いかけていったのかどうかは私にも分からない。だが……九割方そうなっているだろうとは考えているがね」

と、ここでシャギアは話すのを止め、少々考え込む。
その間に、ガロードと甲児は今後の行動について話し始めた。

「それでガロード、この後どういう風に動くつもりなんだ?」
「ひとまずはお姉さんとアムロさん待ち……かな。三人揃ってからどうするかはまだ考えてない。
 やっぱり、“これ”をどうにかしないといけないんだろうけど、どうすりゃいいのか全く分からないしな……」
「こっちも“これ”については全然だなぁ。一応ナデシコには設備も揃ってるみたいだし、どうにか出来ないこともないんだろうけど……
 専門の人がいないんじゃ、下手に弄るのも危ないだろうしな」
「アムロさんはそういうのに強いって感じの口ぶりだったから、ちょっと期待してもいいかもしれないぜ。……まぁ、俺らが役に立てそうにないのは変わらないんだけどな」

首輪について頭を悩ます二人だった。残念なことに、二人とも機械系の専門知識は持っておらず、どちらかといえば頭より体を動かすタイプの人間。
ガロードにはアムロという心当たりがあるものの、アムロでさえも手を出せないような複雑なものだとしたら本当にお手上げだ。

「私もチャレンジはしてみるつもりだが……分不相応ということも分かっている。他に役者がいるならばその役は彼に譲るのもやぶさかではない」
「そんな言い方は他人任せみたいで嫌なんだけどな……でも仕方ないか。俺たちは俺たちに出来ることをやればいいんだ」
「そうそう、適材適所ってやつさ。それでシャギアさん、ちょっと考え込んでたみたいだけど何か気になることでもあったのかい?」
「私たちが他の参加者をどれだけ把握しているのかを考えてみた。甲児君には二度目の話にはなるのだが……最初のあの場所にいたのが50~60人といったところだろう。
 そこから放送で名前が呼ばれた者たちの数を引けば、残りは20~30人といったところ……更にこのナデシコを中心に確認したものを数えていく。
 私、オルバ、甲児君、比瑪、テニア、眠り男、キラ=ヤマト、ソシエ=ハイム、ロジャー=スミス」
「俺が会ったうち、まだ生きているのが……俺、お姉さん、ブンドル、アムロさん、それにあの剣を使う機体の持ち主か。あ、さっき言い忘れてたけど、アムロさんがアイビスって女の人を探してるらしいんだ。
 何かてがかりみたいなもの……ないかな?」
「残念ながら。既に死亡したジョナサンを加えれば、放送時点で生きていたと思われる参加者の半数は私達で確認できているわけか……
 逆に言えば、未だ把握できてない参加者も少なくないということだがな」
「それについてはオルバさんとテニアの二人に期待しようぜ。あの二人がもっと仲間を集めてくれれば……きっと、大丈夫だ」
「きっと大丈夫か……フフ、甲児君が言うと、何故か不思議な説得力があるな。これが艦長の器というものか」
「やだなぁシャギアさん、あんまり褒められると俺困っちゃうぜ」

三人はさらに情報を交換する。……とはいっても、ここから先は他愛もない、世間話に近い……いわゆる自己紹介である。
遅まきながら、と三人は互いの紹介を済ませ、ナデシコメンバーの人となりについてあーだこーだと話していく。

と、その時だった。艦内スピーカーから、助けを求める比瑪の声が聞こえてきたのは。

「……! シャギアさん、ガロード! 俺が行ってくる!」
「一人で大丈夫なのかよ?」
「こう見えても俺、結構強いんだぜ? 心配するなって!
 ……だからさ、シャギアさんとガロードも、俺がいないうちに話したいことは話しておいてくれよ。それじゃな!」

そう言うやいなや、甲児は医務室まで駈け出して行った。シャギアの無茶をするなという声も聞こえたのかどうか。
――残された二人は、顔を見合って沈黙。互いに最初の切り口を探していく。

「……」
「……せっかく甲児君が用意してくれた機会だ。話したいことがあるなら話してみればどうだ?」

シャギアのことを知らぬ者には何気ない言葉に聞こえるかもしれない。だが、ガロードとフロスト兄弟の因縁を考えれば、ある意味挑発ともとれる口ぶりである。
対するガロードは……


【ガロード・ラン 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
 パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。
 機体状況:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し)
 現在位置:C-8市街地(ナデシコブリッジ)
 第一行動方針:シャギアと話をする
 第二行動方針:アムロと合流する
 第三行動方針:勇、及びその手がかりの捜索
 最終行動方針:ティファの元に生還】

【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:良好、テニアを警戒
 機体状態:EN55%、各部に損傷
 現在位置:C-8市街地(ナデシコブリッジ)
 第一行動方針:ガロードと話をする
 第二行動方針:人気がなく見晴らしのいい場所へ移動
 第三行動方針:首輪の解析を試みる
 第四行動方針:比瑪と甲児を利用し、使える人材を集める
 第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除
 最終行動方針:オルバと共に生き延びる(自分たち以外はどうなろうと知った事ではない)
 備考1:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ)、自分たちの交信能力は隠している。
 備考2:首輪を所持】

 ◇

こうしていれば依衣子さんも優しい顔をしているのに、というのがクインシィの寝顔を眺めての比瑪の感想だった。
いつだったか、直子おばあちゃんの家でもそっくりの寝顔を見たことを思い出す。やっぱり姉弟なんだということを実感。
いつも浮かべていた険しい表情は消え、安らかさに彩られた綺麗な顔はより一層美しく見える。
口ではあんなことを言っているけれど、きっと世界で誰よりも弟のことを気にかけてる優しいお姉さん。

「こんな依衣子さんだから……ジョナサンさんも命をかけたんだろうね」

ポツリと呟いて思い出すのはジョナサン=グレーンのことだ。クインシィのために命をかけ、死んでいった男。
アノーア艦長の息子で、勇の知り合いで、オルファンのリクレイマー。よく考えれば、ジョナサンについて比瑪が知っていることはとても少なかった。
ノヴィス・ノアにジョナサンが潜入してきた時も、比瑪は殆どジョナサンの顔を見ていない。
あの後のアノーア艦長の様子やみんなの噂を聞いて、そのときの様子はなんとなく知ったけれど……
今になって、もっとジョナサンのことを知りたかったと思う。
きっと、みんながお互いのことをよく知って、そして今より少しだけ優しくなることが出来れば、不幸せなことは減って、その分幸せなことがいっぱい増えるのに。
でもそれはとても簡単で、とても難しいということを比瑪は知っている。
ただ言葉にするだけで叶うことではないと分かっていたから、比瑪はノヴィス・ノアに乗ってブレンで戦っていたのだ。
戦わなければ変えられないのなら、戦うことも辞さないのが比瑪の強さでもある。
戦いが不可避でもあるということを知っているから、争いが何もならない無意味なものであるということも知っている。
自分の意志で戦うということは、戦いたくないという意思とは決して相反しないのだ。

「やらなくちゃ、私に出来ること」

比瑪が決意を固めているその時、医務室のベッドの一つが動き始めたことに比瑪は気づいていなかった。
気づいたのは、うめき声のような、声にならない声がし始めてから。

「もしかして……目が覚めたの?」

振り向いたその瞬間――既に男は比瑪の目前にまで迫っていた。
声をかける前に、男に腕を掴まれた。握る力は強く、男性を感じさせる。
握る力はだんだん強くなり、比瑪に痛みを感じさせ始める。
半ば反射的に、比瑪は手近にあった艦内スピーカーのスイッチを入れ、助けを呼ぶ声を上げた。
比瑪の力では男の力に対抗できない。必死にもがき、なんとか振りほどこうとする。
甲児かシャギアが医務室に来るまでどのくらいかかる? 走れば五分とかからない。それまでなら多分持ちこたえられる。
比瑪はその時必死で、混乱していた。だから甲児が来るその時まで気づかなかったのだ。
男のうめきは、助けを求める声にならない叫びだったことに。比瑪に縋ろうとするあまり、つい手に力が入りすぎてしまっただけだということに。

「比瑪さん、大丈夫か!?」

甲児が男のもとに駆け寄り、豪快に投げ飛ばす。そのとき、宙に飛んだ涙を見るまで、比瑪は気づかなかった。
だけど、ようやく気付いた。自分が本当にしなければいけなかったこと。

「良かったぜ、なんとか間に合って……まったく、なんて奴だ。起きるなり比瑪さんを襲うなんて……」
「違うの。きっとこの人は……助けて欲しかっただけ」
「へ?」

自分が本当にしなければいけなかったこと。自分が出来ること。
その両方に、いっぺんに気づくことができた。
それは、手を差し伸べることだったのだ。
男に手を差し伸べ、比瑪はこう言う。

「ごめんなさい、気づいてあげられなくて。でも、もう大丈夫よ。うん、大丈夫。私が、みんながいる。
 そうだ、起きたんだからあなた何かしたいでしょう? そうね……まず立ってみよう。立ってから考えましょ。
 この手に掴まればきっと立てるわ。だからあなたは大丈夫」



【兜甲児 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状態:良好
 機体状態:EN70%、相転移エンジンによりEN回復中、ミサイル90%消耗
 現在位置:C-8市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:とりあえず状況を把握する
 第二行動方針:ヒメ・フロスト兄弟と同行
 第三行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
 最終行動方針:アインストたちを倒す 】

【宇都宮比瑪 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状態:良好、ナデシコの通信士
 機体状態:EN70%、相転移エンジンによりEN回復中、ミサイル90%消耗
 現在位置:C-8市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:バサラを助ける
 第二行動方針:甲児・フロスト兄弟に同行
 最終行動方針:主催者と話し合う
 備考:ナデシコの格納庫にプロトガーランドとぺガスを収容】

【熱気バサラ 搭乗機体 プロトガーランド(メガゾーン23)
 パイロット状況:神経圧迫により発声不可、顔に落書き(油性マジック)、混乱
 機体状況:MS形態
      落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障
 現在位置:C-8市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:新たなライブの開催地を探す
 最終行動方針:自分の歌でゲームをやめさせる
 備考:自分の声が出なくなったことに気付きました】

【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~世界最後の日)
 パイロット状態:気絶中
 機体状態: ダメージ蓄積 、胸に裂傷(中)、ジャガー号のコックピット破損※共に再生中
 現在位置:C-8市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:勇の捜索と撃破
 第二行動方針:勇がここ(会場内)にいないのならガロードと協力して脱出を目指す
 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】

【パイロットなし 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好、現在ナデシコの格納庫に収容されている
 現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ格納庫内)】

【二日目8:30】




BACK NEXT
家路の幻像 投下順 古よりの監査者
すべて、撃ち貫くのみ 時系列順 争いをこえて

BACK NEXT
命の残り火 シャギア 判り合える心も 判り合えない心も
命の残り火 甲児 判り合える心も 判り合えない心も
命の残り火 比瑪 判り合える心も 判り合えない心も
命の残り火 バサラ 判り合える心も 判り合えない心も
命の残り火 ガロード 判り合える心も 判り合えない心も
命の残り火 クインシィ 判り合える心も 判り合えない心も


|