見よ人の心の光! 輝き唸る神の掌! ◆ZqUTZ8BqI6







戦うための力――人はそれを、『ガンダム』と言った。





「シャアアアアアアアアッ!!!」

獣にも似た鋭い雄叫びをあげ、メタルビースト・シャイニングがVF-22Sに飛びかかる。
紙一重でカミーユは操縦を間に合わせ、回避する。しかし、続いて虚空を蹴り上げ、でたらめな軌道で空を走るメタルビースト・シャイニング。
圧倒的な脚力で空を蹴り飛ばし、形容しがたい言語を全身から嘯きながら、 VF-22Sに追走する。

「なんだこのざらついた感じ……!?」

回避をくり返しながらも、F-91から受け取ったガンポッドを牽制がわりに打ち込む。
メタルビースト・シャニングの背面からの攻撃――しかし、腕や装甲の隙間から覗く黄色い瞳が一斉に動き、VF-22Sへ向けられた。
ガンダムとしての顔は前を向いたまま、後ろの攻撃を完璧に察知し、空高く跳躍してメタル・ビースト・シャイニングは弾幕をよける。

滴るような悪意を垂れ流し、敵意と害意にまみれていながら、心を全く感じられない歪な生命体が、カミーユの目の前にいた。
どこからともなく溢れ、アムロとカミーユを追い立てる謎の生命体群。そのどれもが、既存の生命とはまるで別種の肉体と精神を持っていた。
観測された次元の狭間より来たる、外なる狂気を秘めたインベーダー。
多くはむき出しのタールと個体をいったりきたりする肉体であったが、一部は機械を取り込んでいた。
おそらく、周囲の砕け散ったマシンの破片か何かを取り込んでいるのだろう。

その中でも、完全に原形をとどめたものに寄生したのが、今大きな壁として立ちはだかるメタルビースト・シャイニング。

カミーユとアムロも、それを理解していた。
インベーダー自体はそこまで素早いわけでもなく、強固な肉体を保有しているわけではない。
しかし、欠けたインベーダー同士が融合し再生する。メタルビースト・シャイニングも例外ではなく、
削り与えたダメージ箇所にインベーダーが入り込み、再生させてしまう。
事実上、メタルビースト・シャイニングの周囲にいる無数のインベーダーは、すべてメタルビースト・シャイニングのサブタンクだ。
トモロによる大規模な艦砲射撃でまとめてインベーダーはけし飛んで行くが、数が多すぎる。
禁止エリアより次々補充されしまう。

「くっ!」

オクスタンライフル・Eモードが、メタルビースト・シャイニングを打つ。
しかし、メタルビースト・シャイニングがかざした腕から黒い粘液が幕のように広がり、メタルビースト・シャイニングの体を包みこむ盾となった。

「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!」

汚れた涎をしたたたらせ、体から黒い触腕を伸ばすメタルビースト・シャイニング。
先端には、黒い歯肉と不揃いで黄色がかった牙が無数に並んでいる。
カミーユは怪奇な軌道を描き迫るそれらの悪意を、正確に追い撃ち落としていく。
ほぼすべて撃ち落とした直後、滑り出されるように撃ち放たれるオクスタンライフルのBモードの弾丸が、メタルビースト・シャイニングの腹部へ。
正確に装甲の狭間、ブレンバーが刺さり脱落していた部分に弾丸が飛びこんだ。
爆ぜる黒いタール状の肉。だが、相手は一歩たたらを踏むだけ。
即座に、空を飛んでいたインベーダーが傷に飛び込み補修、くぼんだ場所が元通りに。

カミーユが唇をかむ。
分かってはいるが、攻撃力が足らない。
一撃で、相手のガンダムの装甲ごと全身を吹き飛ばすか、内部だけに大量のエネルギーを流し込まない限り勝算はない。
それは分かってる。分かっているのだが、だからはいそうですかとできるわけではないのだ。

VF-22Sも、F-91も、瞬間的な最大破壊力では、特機に比べるべくもない。圧倒的に劣る。
全身を吹き飛ばすなど、絶対に、と言っても過言ではないほど不可能だ。
通常のモビルスーツ相手でも正確に攻撃し爆発粉砕することはできても、跡形もなくとなるとサイコガンダム等でなければ難しい。
まして、今目の前にいる化け物相手ともなれば言わずもがな、だ。

「ゲヒャゲヒャゲヒャゲヒャ!!」

不快な笑い声にも似た音を放ち、全身から触腕を伸ばし、四肢を地面につけ暴れ狂うメタルビースト・シャイニング。
その姿に、モビルスーツらしさ、引いてはガンダムとしての気高さなど一片も残っていない。
多頭龍(ヒュドラ)を強引に人型に押し込めたようなフォルム。全身から見える爛々と輝く瞳。
全身にできた口で金属をはむためVF-22Sに追いすがる。人よりも獣に近いその動作。
その常軌を超えて偏ったアンバランスさ、怪奇さは人に畏怖を与えるには十分なものだ。

空中にいるインベーダーたちは、トモロが牽制し、ビームライフルなどを持たないため露払いに回ったアムロが撃破してくれている。
おかげで、カミーユはメタルビースト・シャイニングと一対一で戦えるわけだが、逆を言えば一切の支援は受けられないということ。
たった一人で、絶対に撃破しなくてはならない。
アムロの懸命の戦いで、こちらに乱入するインベーダーは少ない。
だが、僅かに防衛網をすり抜けたインベーダーはここで待機、メタルビースト・シャイニングの糧となる。
かなり、厳しいと言っていいだろう。

「いけっ……!」

距離をとっての戦いを続けていたが、徐々にメタルビースト・シャイニングが距離を詰める。
機械ではできない常識はずれの旋回速度が、ガンダムにバルキリー並みの速度を与えていた。
カミーユは、即座に武器を納め、拳にエネルギーを収束させる。
ピンポイントバリアパンチ―――その空間ごと押し込む力を受けても、メタルビースト・シャイニングは全身を止めない。
全身ごとぶつける勢いで進撃するメタルビースト・シャイニング。
いくらバリアがあるとはいえ、突撃する巨大な質量を受け止められるはずがない。

バリアを全開にし、反発で距離を再度取り直す。
だが、相手の足をやっと止めたと思えば、再び全身よりわき出るインベーダーが盾となる。
弾丸が吸い込まれ、黒いタールに波紋が走ったかと思えば逆に矛となる大蛇に似たインベーダーが殺到する。

膂力が違う。
速度が違う。
耐久力が違う。
常識が――違う。
人間というくくりを超えた性能を発揮するメタルビースト・シャニング。
何もかも違い過ぎ、元となったシャイニングガンダムとの近似点を見つけることなど不可能。

「だからって……!」

だからってあきらめたら、何になるのか。
命を賭けて守ってくれたベガさん。自分が討った、あのどこかへ帰りたかった男。
正にしろ負にしろ、そういったものを今更かなぐり捨てられるはずがない。

果敢に何度もカミーユはメタルビースト・シャイニングに攻撃を繰り返す。
致命傷はなくとも、少しずつ摩耗していく装甲。残弾。エネルギー。
揺るがないメタルビースト・シャイニングを前に、カミーユは進む。

距離をとっての戦いが駄目ならば、逆に距離を詰めての打ち合い。これしか活路はない。
だが、これはあまりにも危険だ。元来、近接戦闘を最も得意とし、質量的にもVF-22Sの上を行くシャイニングガンダム。
それのなれの果てに近づいた上で、再生を超える破壊を叩き込もうというのだ。
虎の口に直接飛び込むに等しい行為だろう。

メタルビースト・シャイニングの拳が、VF-22Sの顔を掠める。
しかし、それをくぐり、クロス・カウンターにピンポイントバリアパンチを叩きこむ。
メタルビーストの腕が二つに割れ、両サイドから挟み込もうと迫る。
オクスタンライフルとガンポット。両手に持った火器が火を噴き、同時に叩き落とす。
メタルビースト・シャイニングから放たれるバルカン。
それをピンポイントバリアで防ぐ。

どれもがギリギリのタイミングでありながら、一撃でも受ければ中破以上は確実。
そんな攻撃を研ぎ澄まされた感覚でカミーユは避けている。

「ガアアアアアアアアアアッ!!」

攻撃に当たらないことに対しての怒りか、メタルビースト・シャイニングが雄叫びをあげる。

まるで子供のように折れたブレンバーをでたらめに振り回し、VF-22Sに叩きつける。
わし掴みにした棍棒か何かを振り落とすかのような隙だらけの攻撃。
回避はたやすい、はずだった。事実、ブレンバーは回避できた。
だが、同時に文字通り四方八方から襲い来る蛇に似た触手が、VF-22Sの装甲を食いあさる。
強引にだが戦闘機への変形を選択。変形による関節などの回転、可変の勢いによりその牙を引きはがす。
だが引きはがされるまでのラグで、空高くへ打ち上げられたのち、地面へと落ちて行くメタルビースト・シャイニング。

「まだっ!」

空高くまで昇った後、逆U字を描く軌跡で地面へ。その最中に変形、オクスタンライフルを構える。

「撃ち貫いてやる! ……ゼロ距離、取った!」

落下の最中にあるメタルビースト・シャイニングから黒い触手が伸びる。
だがそれらの直撃コースのみを避けての全速突撃(チャージ)。
オクスタンの意味通り刺突槍の如くオクスタンライフルが肉を裂き装甲の亀裂に刺し込まれる。
どんどん地面へ向けて加速。加速度(ベロシティ)が限界点(クリティカル)を突破。
地面へと叩きつけられたメタルビースト・シャイニングの落下点が爆心地を作り出す。

「化け物は化け物の巣にいろ! お前たちは人のいる場所にいちゃいけないんだよ!」

そのまま引き金が引き絞られる。体内で爆ぜるBモ-ドの弾丸。Eモードの光波。
全身を砕くことはできずとも、VF-22Sでも可能な方法。すなわち内部からの破壊。
雷光を放ち炸裂を繰り返す。爆心地(グラウンド・ゼロ)の名にふさわしき爆発と衝撃を放ち続ける。
藁をも掴まんと何かにすがる腕に似た、蛇の頭たちのわななき。しかし、それも一時をおき、しなだれ、朽ちて行く。



完全なる沈黙――それをカミーユは確認し、荒い息を吐きながらやっとオクスタンライフルを引き抜いた。

度重なる酷い疲労で痛む頭をおさえ、カミーユはVF-22Sを立ち上がらせる。
まだ、空を見ればアムロさんが多くのインベーダーが戦っていた。自分だけ、疲れたからと言ってやめられるはずがない。
機体のチェックを軽く行い、そのままアムロの支援に向かおうとした。

その矢先。

「なんだ……!? ヤザン・ゲーブル……!?」

カミーユが、メタルビースト・シャイニングから熱狂にも似た気配を感じ、そちらへ機体を振り向かせる。
その瞬間、カメラに浮かんでいたのは……光弾だった。


      ◇       ◇        ◇

「カミーユ!」

アムロは、メタルビースト・シャイニングで吹き飛ばされたVF-22Sを通信を繋げる。
小さくを呻きをあげるカミーユ。起きる気配はないが……大きな外傷は見当たらない。
アムロ自身、多くのインベーダーを相手取るのに限界で、カミーユの援護に入れなかったわけだが……
それでもその意志力を感じ取る力でメタルビースト・シャイニングが機能を停止したことは理解していた。

だというのに、完全に機能を停止、つまり死んだはずのメタルビースト・シャイニングが再び牙をむいたのだ。

「何が起こっている!?」

メタルビースト・シャイニングの悪意に満ちた思念は死んだ。それは間違いない。
なら、今あれを動かしているのは何者なのか。ひどく既視感を感じる波長を前に、アムロの額に汗が流れた。
無資質でもあった化け物の気配とは対極にある、むせ返るほどの闘争心にまみれた人間らしいと言えば人間らしい存在の感覚。
メタルビースト・シャイニングになにが起こったのか。アムロがヴェスバーをメタルビースト・シャイニングに向ける。
それと同時のタイミング。



「一度は落とした命をまた拾えるとは……菊の季節に桜が満開! 我が世の春! 再びここに来たれりぃぃぃぃぃッ!」

立ち上がったメタルビースト・シャイニングから聞こえる、天をもつかんという声量の咆哮。
その声は―――

「ギム・ギンガナム!?」
「その通りだ! いかなる奇縁か冥府の淵から帰ってきたぞ! もちろん……」

メタルビースト・シャイニングが、F-91にブレンバーを投げつける。
もちろん、あっさりF-91に乗るアムロはそれを回避したが、ギム・ギンガナムの行動自体は理解できるものではない。

「何のつもりだ、ギム・ギンガナム!」
「もちろん、戦うつもりなんだよ! 心残りだった黒歴史の勇者たちとの戦い! ここで晴らさずしてしていつ晴らす!」

F-91に突撃してくるメタルビースト・シャイニング。
F-91はビームサーベルを抜き放ち、メタルビースト・シャイニングのビームソードを受け止めた。

「こんな時でも闘争を続ける気かお前は!?」
「無論! 黒歴史に名を残す貴様の言うことではないな!」

つばぜり合いのあと、F-91は後ろに飛び退る。

「また黒歴史か……それはなんだ!? いったい何の関係がある!?」
「いいだろう、教えてやる! 黒歴史はなあ、すべての過去の戦いの記憶だ!」
「過去の戦いの記憶……!?」
「そこには刻まれているんだよ! νガンダムに乗ったアムロ・レイ! ストライク・フリーダムガンダムに乗るキラ・ヤマト!
 Ζガンダムに乗るカミーユ・ビダン! ガンダムDXに乗るガロード・ラン! どれもが……ガンダムに乗り黒歴史でも特に名を残す武名!」

ギンガナムの言葉にアムロは驚愕する。
自分とカミーユだけでなく、キラもガロードも、同じ時間軸の未来か過去に位置する存在であったことを。

「そんな英傑たちと戦えるこの機会、捨てるには惜しいだろう!?」

メタルビースト・シャイニングの体が、金色に輝きだす。

「そしてこのシャイニングガンダムも! 黒歴史が英雄ドモン・カッシュが乗るモビルファイター!
 本来会うことのなかった黒歴史のガンダム同士の戦い、これに心を躍らせず、なにがある!」

両腕を広げ、荒ぶる声で叫ぶギンガナム。

「剋目せよ!これぞ!
 ス ー パ ー モ ー ド で あ る ! 』

ぶすぶすとメタルビーストが焼けていく。
メタルビーストが、ギンガナムの『気』を受けてオーヴァーロードしたため起こる現象である。
しかし、ギンガナムは満足そうに笑いを上げている。

メタルビースト・シャイニングとF-91の戦いがギンガナムの奇行で止まったことに業を煮やしたのか、一匹のメタルビーストがF-91に突撃する。

「この原生生物が! 小生とアムロ・レイの戦いに入ろうなんざ百年早いんだよ!」

それをあっさりと切り捨てるギンガナム。

メタルビースト達は、アムロとカミーユを倒すには、現状無理と判断した。
故に、かつてスティンガー博士やコーウィン博士、そして早乙女博士たちを蘇生したのと同じようにギンガナムを蘇生……いや寄生し、機能を復活させたのだ。
運よく、肉体自体は首が吹き飛んだ程度で、ギンガナムの肉体自体は欠損していなかったことが幸いしたのだろう。
もっとも、どれだけ欠けていようと、メタルビースト・シャイニングのように強引に再生していた可能性もあるが。

だが、ここで予想外のことが起こった。
本来、性格の原型を僅かに持つだけでメタルビーストの傀儡と化すはずだったのに、
あろうことか生前の自分のメンタリティ、自意識をはっきり持ったままギンガナムは蘇ってしまったのだ。
ギンガナムがその闘争心含みメタルビーストが望む性格そのままだったのでいじる必要がなかった部分は大いにあるが、
一重に、我が道を爆走するその強固な意思が早乙女博士同様意識を残す結果にもなったのかもしれない。
メタルビーストがアムロとカミーユの攻撃で弱っていたのも一因だろう。

複数の条件が完璧なかたちで揃ったが故の奇跡――いや、悪夢。
ギンガナムはメタルビーストの影響を精神的にはまったくと言っていいほど受けずに再生した。してしまった。
肉体自体はメタルビーストに少なからず依存している以上、反発がつらくないわけがないのだが……
精神的にハイになりすぎているためそちらが上回っているのか。

変則的ではあるが、これもまたインベーダーを人の魂が凌駕するという証明の一つ。

足元に転がっていた、どこかのメタルビーストのつけていた三本指の腕――ラーズアングリフの腕――を、
溶けかけたインベーダーがいる腕の断面に押し付け強引に補強すると、メタルビースト・シャイニング……いや、シャイニングガンダムは構えを取る。
さしものメタルビースト達も、ギンガナムの勢いに押されてか、傍観する形になっていた。

「いざ行くぞぉ!」

金色に輝くシャイニングガンダムがF-91へ肘鉄を打ち込もうとする。
メタルビースト・シャニングだった時よりはるかに速い。
メタルビーストで補強することで得ていた力を失ったことで生まれたマイナスよりも、
ギンガナムの『気』でスーパーモードになったことによるパワーアップのプラスのほうが大きく上回っている証明。

F-91が木っ端のように吹っ飛ぶ。
どうにか機体を維持し、背面ブースターで姿勢を整えようとするが、ギンガナムはそれを許さない。

「っ……!」

反射的に横へ移動。
一瞬後に、大剣と化したビームソード、『シャイニングフィンガーソード』が大地を割った。
片手分の出力しか送られてないとはいえ、そのサイズはF-91のビームサーベルよりはるかに巨大で、受け止められる代物ではない。
牽制にメガマシンキャノンを撃つが、まったく異に介さずシャイニングガンダムは風を纏い突進してくる。

まるで爆発が起きたかのような轟音。
シャイニングフィンガーソードの剣戟を受けた大地から駆け抜ける烈風が、コントロールを根こそぎ奪う。
それでも、アムロは、ビームシールドを展開。羽虫に似た音を立ててぶつかり合うシールドとソード。
当然シャイニングフィンガーソードを受け止められるわけもない。ワンテンポ遅らせるだけだ。
だがそれで十分。すばやくF-91の体をねじり、踏み込んできたシャイニングガンダムの側面へ回らせる。

「そんな小細工でぇ!」

防御など関係無いと言わんばかりに、恐るべき威力を秘めた一刀を強引に横薙ぎに振り切るシャイニングガンダム。
直上へアムロは回避する。だが、下からの風のあおりを受け、10m以上ある機械の巨体が、凄まじい勢いで後方へと弾き飛ばされてゆく。
直ぐ様シャイニングガンダムは大地を蹴って、F-91に更なる追撃を仕掛けようとしている。

「まずい……!」

実態がないエネルギーソードは、当然重みもない。つまり、現実に大剣を振るうのと違い、振った反動などが手にほとんどないのだ。
まるで扇風機の如く振り回される剣は、確実に逃げ場を減らす。木の葉のように風にあおられ、翻弄されるF-91。
カミーユは気絶し、トモロはインベーダーがカミーユに近づかないようにするのが手いっぱいだ。
確実に狭まる行動範囲を的確にアムロは移動する。

だが、それも終わりは来る。

ついに、シャイニングフィンガーソードが、アムロを捕らえる。回避不能の直撃コース。

「まだだ!」

アムロは、ヴェスバーを抜き放ち、速射―貫通に調節した一撃の引き金を引いた。
長い間使用し、エネルギーを消耗していたこともあって、シャイニングフィンガーソードがついに砕ける。
だが、完全に動きを止めた致命的な隙。

「そらそらそらそらそらぁ!」

連続で放たれるシャイニングショットが、F-91を弾き飛ばす。
元々近接戦闘能力に特化したシャイニングガンダムの遠距離兵器、威力はそれほどでもないが、次々襲う衝撃は容赦なくコクピットを揺らす。
あっけなくF-91は地に伏した。

「噂ほどではないなぁ! それが伝説と言われたファーストニュータイプか!?」
「ぐっ………まだだ、ガロードから譲り受けたガンダムを、この箱庭の戦いを終わらせるまで壊すわけにはいかない!」
「戦いを終わらせるだと!? 闘争に次ぐ闘争が人間の歴史だ! 過去未来現在その真理はかわらなかったと黒歴史は教えてくれたぞ!
 ガンダムもなあ、そのための道具なんだよ!」
「……分かってるさ」

四肢に力を入れ、F-91が立ち上がる。
この男だけには負けてはいけない。この男に負ければ、人間が、未来永劫進化しない生き物であると認めるようなものだ。
アムロもまた、カミーユ同様決してあきらめない。

「だから、誰かが世界の人の心に光を見せなきゃならないんだろ……!」

自分がそうであるなどと傲慢なことはいわない。自分たちの世代ですべて終わらせるなどどは思わない。
それでも、遅遅とした歩みでも、やらなければならないことがある。
ガロード達の世界が、どの時間で発生したかは知らない。しかし、彼らのようにニュータイプは幻想であると受け入れる社会の訪れが見える時もあるのだ。
それを、過去を垣間見たからと全て否定させるなど、一人の人間として許すわけにはいかない。

人の歴史は、円環ではないのだ。螺旋を描き、確かに少しずつ変化し昇って行く。
だからこそ、たどり着ける場所もある。

「それが……『永遠に争う世界』がお前の見た俺たちの未来なら! 俺たちはそれを変えてみせる!」

F-91の仮面が割れ、その下の装甲が露わになる。
それと同時に三枚の肩のフィンが黄金の粒子を大量に纏う。

F-91を包む金色の輝きが、シャイニングガンダムのシャイニングショットを次々と弾き飛ばす。
オリジナルニュータイプアムロの感応力とF-91のバイオコンピュータの完全なる融合。
質量のある幻影を超える、次なる段階――質量を持ったエネルギー。
乖離した大量の微細な装甲箔がさながらネットワークのようにエネルギーを伝達しあうことで発生する、
点と点を繋ぐエネルギー波を複雑かつ何重にも張りめぐらされた力場が生成する一種のバリアフィールド。
そう、つまり―――

「伝説のニュータイプバリアだとぉぉぉぉおおお!?」
「F-91は……いや、『ガンダム』は伊達じゃあないっ!」

数多の宇宙で、正義として、悪として、平和の使者として、混沌をもたらすものとして、生まれてきたガンダム。
その無限にも等しいガンダムと、そのパイロットの系譜の中の一人と一機。
『ガンダム』という名は、決して虚構でも嘘でもない。アムロの言うとおり――伊達ではないのだ。

「だがそうおいそれとぉ!」

シャイニングは鋭い回し蹴りをF-91に叩きこむ。しかし、その一撃はF-91の聖なる守りに阻まれ、弾かれる。
足を弾かれ軸がぶれた間に、F-91が拳をシャイニングガンダムの顔に叩き込んだ。
モビルスーツとはかけ離れたモビルファイターじみた一撃を受け、地面を削りながら後方へシャイニングガンダムは飛ばされる。
またたく間に距離を詰めるF-91が、シャイニングガンダムの隙間を縫ってさらに連続で追撃を加え続ける。

「これほどの格闘戦もこなすとは……さすがはアムロ・レイ!」
「昔取った杵柄だ!」

アムロは、元来格闘戦が得意なのだ。
ランバ・ラルのグフも、シャアのジオングを相討ちに持ち込んだ時も、始めてザクを撃破した時も、黒い三連星を倒したときも……
そのどれもが格闘戦だ。モビルスーツは、本来ミノフスキー粒子で半有視覚で戦闘を強いられた環境で戦うためのもの。
戦車や戦闘機とはまったく別種、人間と同等の機能を使用しての戦いを可能にする。近接した上での切り合い殴り合いはある意味正しいのだ。
その後は、技術の発達とともに、戦車や戦闘機同様に射程を延ばしての射撃戦に以降にしていくわけだが、
その最初期、格闘を基準とした時代をアムロはエースとして戦場を駆けたのである。
苦手であるはずもない。νガンダムが最期にサザビーに格闘を繰り出したのも、当然のこと。

だが、ギンガナムもやられ続けているわけではない。
多少のダメージは無視して攻撃を仕掛けている。
しかし、

「……!? 受けるのに当たらないだとぉ!?」

『ギンガナムの攻撃は当たらないがアムロの攻撃は当たる』のである。
無数の質量をもった分身が、シャイニングガンダムを取り囲む。完全に判別不能であるため、どれか正解か分からず、
シャニングガンダムは手あたり次第に攻撃を加えていく。当然、幻影であるそれらに攻撃は通らない。
だが、逆にF-91の攻撃はどうなっているか。
質量を半ば持つまで顕現したバリアフィールドは、幻影でありながら正確にシャニングガンダムを打つ、打つ。打つ!
一対無数にも似た状況が造られていく。

「ぬあああああ!?」

多重に重なり合い映りだされるF-91から、無数の拳が繰り出される。
さながら、拳だけが高速で撃ち出され、分裂したように。瞬きすらも許さぬ速度で繰り出される拳が、モビルファイターを押し倒す。

「ガロード、これがお前たちの世界のニュータイプか……?」

アムロは、一人静かに呟く。
このニュータイプの感応能力を使った人形とその操作は、
ガロードから聞いたガロードの世界……いや自分たち過去か未来の世界のニュータイプの戦闘活用法が発想の元になっている。
すなわち、ビットモビルスーツだ。伝動するエネルギーを人型にして意思を乗せて操作する。
ニュータイプの力を使った、ニュータイプの戦闘方法だ。

「さすがはニュータイプということかぁ!?」
「……いや違う! これが、人間の力だ!」
「戯言を! 人間は戦うために進化した! その進化の先端を行くニュータイプが戦闘の力以外のわきゃねぇぇだろぉぉぉ!!」

F-91の分身が減っていく。システムのオーバーロード、積載エネルギーの限界……その両者を受けて。

「そうとしか考えられない人間が、その力を戦いに使うんだ! だから戦いの環が広がるのを知るんだよ!」

荒野に立つ、2つの金色の柱。
両者、同時に最終リミッターを解除――フェイス・オープン機能による冷却が、限界を超える。

「なら勝ったほうが正しいということでどうだ!」
「どこまでも闘争にこだわる男め……!」
「それの何が悪い!? 拳で決めることに異存はないだろう! シャイニングフィンガーのぶつけ合い、受けて見せるんだよ!」

シャニングガンダムが腕を引く。突き出す一瞬を求め、力を溜める。
F-91が残った力を拳に送る。争いを断つ刃へ変わる。マスターガンダムとの戦いの経験が、ここで生きる。

「いくぞぉ! 小生の! 闘争心が真っ赤に燃えるぅぅぅ! お前を倒せと輝き叫ぶ!」
「お前のような男につきあってられるか!」
「これぞ真説っ! シャアアアアアアイィンング! フィンガァァァアアアアッ!」

両者の叫びとともに突き出された拳が、中空で激突した。
紫電を周囲に放ち、大地を蒸発させながら爆音轟かせ衝突、炸裂。
だが……膠着は、一瞬。









「馬鹿なぁぁああああ! 小生のシャイニングフィンガーが破れると言うのかあ!!?」
「これで終わりだ! お前の望む争った未来は来ない!」

拳を砕かれ、肩まで跡形もなく粉々にされるシャイニングガンダム。
それだけでなく、続けざまにシャイニングガンダムの胸へF-91は抜き手を放つ。
金色のシャイニングガンダムの装甲を貫通し、深く深くガンダムF-91のさらに強く輝く金色の拳が差し込まれる。
それは内部に巣食うインベーダーの肉もまとめて掘り進む。
シャイングガンダムの胸の中心へ差し込んだ腕を振り上げる。空高くシャイニングガンダムを掲げ、ガンダムF-91に乗るアムロは叫ぶ。
勝鬨を上げるのは、ただひとり。

「ヒィィィィトォッ! エンドォッ!!」

F-91の放つニュータイプとしての輝きがシャイニングガンダムの内部から漏れる。
飽和しきったアムロの意思を持つ生命エネルギーが、インベーターを膨脹させた。
先ほどからギンガナムの気迫と根性でどうにか保っていたインベーダーも、直接その力を体内から叩きこまれればジ・エンドだ。
蒸発するインベーダーという筋肉。砕け散るガンダリウム合金スーパーセラミック複合材の装甲。

「シャイニングフィンガーを超えるフィンガー……
  ゴ ッ ド フ ィ ン ガ ー ! ?  これが『ガンダム・ザ・ガンダム』と言うものかあぁぁぁぁっ!!?」

燃え盛る焔のごとき魂が、黄泉帰った屍人に終末を与えた。
これすなわち、文字通り――ヒート・エンド。
次の瞬間、金色の爆炎が世界を包み込んだ。その輝きは、柱となり地平に、天に駆け抜け、周囲にいるインベーダーすらも貫いた。

戦いは、ここに終わったのだ。

      ◇       ◇        ◇


「く……さすがに、無理をしすぎたか……」

酷い頭痛にこめかみをもみながらF-91のシートにアムロはもたれかかる。
あまりにも多大な消耗と引き換えに可能にした、限界突破の力。その反動で、アムロは静かに目を伏せた。

「しかし……ゴッドフィンガー、か……」

神の掌という意を持つ一撃。その威力は、確かに強力無比。
無論、自分が神のような力を持っているとは思わない。思いたくもない。
だが、この力なら、ブンドルの言っていた必要な力にも匹敵する。
殺し合いは現実起こり、数々の人が倒れ、マシンが朽ちてきた。
その中、超極大の力を複数集めるのは至難の業であることは理解している。
この力をもっと完璧に扱えるようになり、ほぼエネルギー最大の状態で発動させられれば、求めらる力の一つになることは可能かもしれない。

いや、かならずなってみせる。ガンダムには、それだけの可能性を秘めているのだ。

キラも、ガロードも、俺たちの世界のガンダムも……そうやって切り開くため戦ってきた。
確かに、ギンガナムの言う通り、人類は戦いの歴史を歩んでいるのかもしれない。
だが、ならばガンダムの歴史はそれへの反逆の歴史だ。兵器として生まれ、兵器の枠を超え、無限の想いをガンダムは背負って歩んできた。
このF-91もまた、終わらない戦いの歴史を止めるため作られた、νガンダムの未来――自分の未来――に生まれたガンダム。

必ず、世界をいつの日か変える日がくる。
そして、この偽りの箱庭も―――


最後に、こちらに接近するJアークが視界に入る。
そのまま、アムロは意識を失った。













ゴッドフィンガーをアムロは習得しました!



【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
 パイロット状況:健康、疲労(大) 気絶
 機体状態:EN1,2% ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ  ビームサーベル一本破損
       頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾60% ビームライフル消失 ガンポッドを所持 
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:インベーダーへの対処
 第二行動方針:首輪の解析とD-4地区の空間観測
 第三行動方針:協力者を集める
 第四行動方針:マシンセルの確保
 第五行動方針:基地の確保
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考1:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している
 備考2:ガウルン、ユーゼス、テニアを危険人物として認識
 備考3:首輪(エイジ)を一個所持
 備考4:空間の綻びを認識】
 備考5:ゴッドフィンガーを習得しました。
    残存エネルギーのほぼすべてを発動すると使用します。
    また、冷却などの必要があるため、長時間維持は不可能です。
    発動、維持には気力(精神力)や集中力を必要とし、大幅に疲労します。
    ほぼ完全な質量をもった分身の精製、F-91を覆うバリアフィールドの精製、
    および四肢に収束させての攻撃への転嫁が可能です(これが俗にいうゴッドフィンガー)。

【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・Sボーゲル(マクロス7)
 パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(大) 気絶
 機体状況:オクスタン・ライフル所持 反応弾所持 EN10%   左肩の装甲破損 全体的に装甲表面に傷。
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:インベーダーへの対処
 第二行動方針:首輪の解析を行ないつつしばらくJアークに同行
 第三行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
 第四行動方針:遭遇すればテニアを討つ(マシンセルを確保)
 最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
 備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
 備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
 備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】

【Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 機体状態:ジェイダーへの変形は可能? 各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%  
 現在位置:D-3南部
 備考1:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復
 備考2:D-4の空間観測を実行中。またその為一時的に現在地を固定
 備考3:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】


D-3を中心としてその周辺のインベーダーはすべて消失しました。


【二日目16:00】




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