排撃者――表 ◆ZqUTZ8BqI6




またも押し寄せるインベーダー。
それを小蠅を払う気軽さでダイゼンガーはなぎ払い始めた。

テニアは知る由もないが、このダイゼンガーはオリジナルを越える戦闘能力を有している。
元来、両立しえない斬艦刀モード、オリジナルダイゼンガーモードの二つの特性と武器の使用を可能とし、
さらにもともとガンダムファイターなどフィードバック型の機体の強化に適したDG細胞で機体の性能、追従性を高めてるのだ。
腕を斬り飛ばして飛ばすシーンすら正確に想像できるようになったガウルンの頭脳と持ち合わせている体技。
これだけ揃っていれば当然だろう。

ダイゼンガーを中心に竜巻が起こる。
その斬撃は、インベーダーたちをまたたく間に壊滅させていく。

一刀で百の群れを切る。
二刀で二百に増えた肉片を四百へ。
空から降り注ぐ肉片が、大地を穢す。

広域殲滅戦闘において、ダイゼンガーの斬艦刀を中心とした武装はこれ以上ないほどの高相性を発揮する。

「ガアアアアアアア!!」

インベーダーの突撃――しかし、無為。
突如として大型のナイフ――これもテニアは知らないが、見る人が見ればグルカナイフと分かる――へ形を変えた斬艦刀が、
インベーダーを瞬殺する。その後も立て続けに飛来する数体を、使い勝手のいいナイフでダイゼンガーはさばいている。
そして、僅かにダイゼンガーへの攻撃の間が空いたとき、ナイフから大刀へと姿を変えた斬艦刀が、群れをなぎ払う。

テニア達は逃げるわけにはいかなかった。
逃げれば、そこにいるインベーダーの物量に押しつぶされる形となるだろう。
結果として、最悪の悪鬼がいまや自分を守護する盾なのだ。

結局僅か五分もかからなかった。
空を覆うほどだったインベーダーの大半を意気揚揚と片づけたガウルンが、またも自分たちの前に立つ。



まずい。



テニアがガウルンを見て反射的に浮かんだこの言葉だった。
ガウルンは、知ってる。自分と統夜、両方と話したからこそ真実を。
統夜は、もう別になんであろうとかまわないと言ってくれた。
それでも、ほんの少し、失望するのではないか。
そのほんの少しが、とても恐ろしい。

統夜は、剣を失っているにもかかわらず、自分を守ろうとガウルンと自分の間に立つ。
やっぱり、統夜は優しい。そんな彼を裏切る……いや裏切ったことは知られたくなかった。

「よう、また会ったな統夜」
「いったい、何の用なんだ。 俺を騙して、駒にして……もういいだろ!?」

ああ。

そこだけは触れないで。
それを聞いてしまったら、ガウルンは答えるだろう。
―――「いやいや騙してるのはそっちの嬢ちゃんのほうだ」と。
そして、失望された自分を見て嘲り笑うのだろう。
一瞬後に起こる出来事が、この上なく幻視できてしまう。


お願い、やめて。


そう叫ぼうとする喉を、必死に押さえる。
ガウルンが、通信機越しに、下卑た笑いを深める。
そして、こう言った。


「いやあ、分かったか。お仲間同士本気で殺し合うのは楽しみにしてたんだが……ばれたらしょうがないな」


え?


その言葉の意味はなにか。今から何をするか。身構えた時。
ガウルンから飛び出したのは、さらに驚愕の一言だった。



「いや正直に嘘は認めてやるよ。
 その代わりってわけじゃないが……もう一度手が組まないか、ってな」



      ◇       ◇        ◇


ガウルンに関して以前言ったことをもう一度言おう。
このガウルンという人間、一見単純で自堕落で享楽的に見えるが、その認識は間違っている。
この男は自分自身の経験と、だれよりも狡猾で、深い戦闘および戦術の判断で冷静に戦う、歴戦の戦士……いや修羅なのだ。
故に、無策であの蒼い魔王と戦うなどという気はさらさらなかった。
いかに自分に与えられたこの大型機が強かろうとも、それでもなお正面からぶち当たって勝てるとは思えない。
そうガウルンにすら感じさせるほどの人間離れした――いや人間という壁を越え彼岸を超えてしまった力。

そんなものと、のこのこ突っ込んでいって戦う?

正気の沙汰ではない。
人間としてのモラルなど欠片も持ち合わせてない狂人が、正気を語るのもいささかおかしいが、
ここ一点、戦闘においてガウルンの判断に間違いはなかった。
元の世界でも、この箱庭でも、ここまで戦闘を繰り返し生きてきたことがその証明となる。
戦闘狂で死をも恐れないことと、無為無策で命を投げ出すことでは、超えられない壁があるのだ。

そのため、手を組む相手としてガウルンが選んだのは、統夜とテニアだった。
二人とも、殺しに乗り、けして倫理なんて言うものを振りかざすことなく、そして十分な力を持ちえる存在。
さらに言うなら、統夜にはまだまだ伸びしろがあるし、遊びがいがある。
若干失望した部分もあるが、そんなものはカシムと同じだ。

本質的には、カシムも統夜も、そしてアキトもガウルン側の人間。
かなめやテニアのような存在で向こう側にいる気分に浸っているが、そんなものは薄い膜のようなものだ。
簡単に――そう、本当に簡単な、『かなめやテニアを殺す』というシンプルな方法できちんと戻すことができる。
むしろ、こうなったらテニアの真実を話すのはよくない。統夜にとって、テニアは綺麗な綺麗な宝石でなければいけないのだ。
そうでなければ、汚したときに生まれるお楽しみも薄くなる。統夜はアキトよりも、もっともっと輝くかもしれないほどの原石だ。
まだまだ光る卵を放置するのも気まぐれではあるが癪に障る。

(と、言ってもテニアを殺すのはまーだ少し先だがな。最低でも基地のあれを殺すまでは、な)

テニアをこの場、統夜の前でぐっちゃぐちゃにするのも悪くないが、それをやってしまえば統夜と手を組むことは不可能だ。

気持ちの問題としては、優先順位として統夜を起こすのを第一にしたいところだが、
現実自分がカシムのいるあの世界に戻ってさらに楽しむためには、生き残らねばならない。
ということは、あの魔王を倒さねばならないということだ。
誰かが倒してくれるだろうなどと、夢想ができるほどリアリストのガウルンは楽観的にはなれなかった。

「……どういうこと、だよ? しかも……よくも……よくもぬけぬけと……!」

相手を探るような、それでいて怒りをこらえ切れていない声で統夜がガウルンに問う。
まあ、そうだよな、しかし若いねえ、と内心考えながらガウルンは薄く笑う。手を組もうという問いかけは100%ガウルンの勝手な都合なのだ。
統夜たちからすればわけがわからないに決まっている。

「まあ、その前に見てほしいものがあるんだが……そっちに送る。この殺し合いのマスターからの一杯だよ」

そう言って、ベルゲルミルとヴァイサーガにビデオメールを送信する。
少し不審がる様子を見せたものの、見てみなければ始まらないとでも思ったのか、両者ともその映像を開いた。

「なんだよ……これ……?」

愕然とした統夜の声。
まあ、そうだろう。自分が感じたあのプレッシャーを、統夜も経験しているのだから。
二人に送ったのは、自分が見てきた魔王が基地でインベーダーを蹂躙する映像だ。
ぐちゃぐちゃ語るのは、こういうときは逆効果だ。余計に胡散臭くなる。だから、分かりやすく映像で示す。

「これ……あたしが戦ったあの化け物……?」

テニアのお嬢ちゃんは、どうやらこれと戦ったことがあるらしい。
余計好都合だ。この映像のリアリティが増すってものだ。
さてさてと、一拍時間を置き、話をガウルンは切り出した。

「さーて、テニアのほうは戦ったことがあるらしいんだが……これが今暴れ回ってるわけだ。
 当然、空飛ぶ化け物に加えてこんなモンがあったらずいぶん面倒だが……そこで、だ。
 手を組まないかってことだな。もちろん、条件はさっきまでと同じで、好きな時に後ろから撃っていい。
 この空飛ぶ化け物と、その蒼い化け物の両方を殺るまでの限定だ。今度こそ嘘は抜きだぜ」

自衛のために手を組めという説明。
無論、先ほどこの二人がずいぶん空の化け物にも苦戦していたのを見越しての提案だ。
得物を失ったヴァイサーガと、まだまだ本調子じゃないベルゲルミルでは、
インベーダーどもに、たかられ続ければそう遠くない未来、落ちるのは向こうも理解している筈だ。

「もっとも、俺一人でもやれるんだが……ちょっと今回ばかりは骨が折れるんでね。こうやって話に来たってわけだ」

自分一人ではまず無理などとは言わない。そんなことを言えば相手は間違いなく断るだろう。
弱みは見せず、相手の弱みに付け込む。それこそが、交渉の基本。
正直言えば、ガウルンも連戦の大きな疲労がたまってつらいのだ。
無言でいる二人を観察する。お互い、無言で目を合わせては、眉をしかめている。
強がりともいえる言葉だが、どうやら気付かれた様子はない。
今まで、自分がやってきた戦いが、結果として大きく効いているのだろう。
どうやらずいぶんと自分は恐怖の魔人の如く思われているらしい。

「ねぇ統夜。……ガウルンの提案、飲もうよ。統夜を『だましてた』ことを正直いってくれたし、このままじゃ危ないよ。
 それに……あの蒼い角突きは、本当に危ないんだ。もし、不意を突かれたあっという間にやられちゃうかもしれない」
「テニア!?」

少し目くばせし、先に切り出してくれたのはテニアだった。
実際戦った分だけあの脅威は理解してるということだろうか。それにしても、話し方の妙なイントネーションのあった場所。
暗に、『手を組んでやるから真実は絶対に言うな』ということなのだろうか。
まったく、欲が深いというかちゃっかりしてると思いながらも、ガウルンは統夜に視線を戻す。

テニアと、ガウルン両方に見られては、さすがに同意するしかないと思ったのだろう。
相変わらず猜疑にまみれた声ではあったが統夜も再度の同盟を認めた。

「分かったよ。またあんたと組む。けど、俺たちは、『二人』で生き残るんだ。
 以前言われた通り、何かあったら後ろから討つし、いざって時あんたを見捨てると思う。……いいんだな?」
「あぁ、もちろん。むしろそれで大変結構。こっちも、『一人』で生き残るつもりなわけだ。
 しばらくは頼むぜ、統夜、テニア。これでどこぞの誰かと違ってネゴシエーションは成功ってわけだな」

なんにせよ、しばらく機体慣らしもしたいし、まだもう少し戦力もほしい。
基地にいるのは伏せて、しばらく話したあとなにか理由をつけて基地に向かわせればいいだろう。

「それで、とりあえずこっちは満足なわけだが……そっちは何か都合はあるか?」
「次の放送までは、A-1にいなきゃいけない」
「ほぉー、どうしてだ?」
「それは、ここに、ユーゼスが……っと!?」

流石にしびれを切らしたのか、再び周囲から集まり攻撃を始めるインベーダーの群れ。

「ユーゼス、ねぇ……何かしらないが、これを潰したらまた話は聞かせてもらおうか」
「こいつら……! 剣があれば……!」
「ああ、それならくれてやるよ」

ガウルンは、ダイゼンガーの腰に備えつけられていたもう一刀を、缶ジュースでも放るような気軽さで投げ渡す。
ヴァイサーガが、なんとか掴んだその刀の名は――ガーディアン・ソード。
身長がほとんど変わらないダイゼンガーの刀は、ヴァイサーガも扱うに適したサイズだ。
いや、むしろ鎧兜に似たダイゼンガーに比べて、騎士甲冑のヴァイサーガのほうがその日本刀離れしたフォルムの剣は似合っていた。
剣さえ手に入れれば、ヴァイサーガならインベーダー如き敵ではないはずだ。

「じゃ、こいつらで慣らしたあと……休んどくか」

鎧武者と西洋騎士が並び立つ。手に握られるは断てぬものなき刃。
その後ろを護るは、勝利の女神。
眼前に立ち塞がる醜悪なる怪物はその供物。


虐殺同然の戦いが始まった。


【ガウルン 搭乗機体:ダイゼンガー(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:疲労(大)、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
 機体状況:万全
 現在位置:A-1 市街地
 第一行動方針:存分に楽しむ。
 第二行動方針:テニアはとりあえず適当なところで殺す。
 第三行動方針:アキト、ブンドルを殺す
 第四行動方針:禁止エリアのインベーダー、基地のキョウスケの撃破
 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
 備考1:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました
 備考2:ダイゼンガーは内蔵された装備を全て使用できる状態です
 備考3:謎の薬を一錠所持。飲めば禁止エリアに入っても首輪が爆発しなくなる(飲んだ時のペナルティは未定)】


【紫雲統夜    登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状態:精神的に疲労 怒り
 機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN70% 五大剣紛失 ガーディアンソード所持
 現在位置:A-1
 第一行動方針:インベーダー、キョウスケに対処
 第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。でも信用はしない 
 最終行動方針:テニアと生き残る】


【フェステニア・ミューズ   搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:焦り
 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) EN50%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
 現在位置:A-1
 第一行動方針:インベーダー、キョウスケに対処
 第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。隙があれば潰す。
 最終行動方針:統夜と生き残る
 備考1:首輪を所持しています】





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