闇の彼方に伸ばす指先 ◆VvWRRU0SzU



太陽が西の地平線へと沈んでいく。
朱に染まった視界の中、ぼんやりとその様を見詰めていたキラ・ヤマトはふと違和感に気付く。

(……早すぎる)

計器を見れば、時刻は17時過ぎ。
そう、早すぎるのだ――陽が落ちるのが。
詳しい時間までは覚えていないが、一日目で陽が落ちた時はおよそ19時を回っていたはず。
ジョナサンと別れ、補給ポイントでJアークの制限を確認していた頃だ。
この作り物の世界のこと、太陽とて本物ではないのだろう。単に主催者が趣向を変えただけなのかもしれない。

(いや、そんなことをする意味がない。加速してるんだ……空間の崩壊が)

が、すぐにその考えを否定する。
F-1の戦闘……インベーダーの出現、真ゲッターの消失は確実に主催者の意図するところを超えたはずだ。
もはや天候の操作などに手を回していられないという可能性も十分にあり得る。

(ナデシコの人達と合流することはできた。でも……)

傍らで、言葉もなくストレーガを操作する兜甲児を見る。
彼だけでなく、傍らを歩むガナドゥール、ソシエ・ハイム。騎士凰牙のロジャー・スミスを。
今だ眠り続ける熱気バサラとラーゼフォンは、ネリー・ブレンのアイビス・ダグラスがバイタルジャンプを用い先行している。
その護衛にレオナルド・メディチ・ブンドルのサイバスターがついた。
先行する三機と違い、こちらの三機は飛行能力がないため必然、移動速度に差が生じた。
一刻も早くF-1から離れるためにひとまずの分散を選んだ形だ。
行く先は勿論、D-3のJアーク。アムロ・レイ、カミーユ・ビダンとの合流を目指して。

他人の機体に同乗している今、キラにすることはない。
甲児も、ソシエも――気絶しているシャギアは別だが――口を開かない。
キラとて同じだ。それほどまでに、先刻対峙したユーゼス・ゴッツォとその乗機の放つプレッシャーは凄まじかった。
巨人――いや、もはや魔獣という方が近い。
神話上の存在であるケンタウロスというのが最も適切な表現か。
四つの足を持ち、空を駆ける翼すらある。そして何より……大きい。
全高は100m近くあったはずだ。単純にサイズだけ考えるのなら、キラが知っているどんな兵器よりも大きい。
戦艦のように複数名で運用するならともかく、個人が操る機動兵器というには過剰すぎる。

頭の中で何度も繰り返す、戦闘シミュレーション。
数の上ではラーゼフォンを除いたとしても五対一。だが、恐ろしいまでに勝てる気がしない。
空を黒く染め上げるほどのインベーダーを事もなく駆逐したあの力。
規模が違いすぎるのだ。出力の、射程の、サイズの。全てに置いてあの機体は空前の水準にある。
撃破するならそれこそ、カミーユが持つ反応弾くらいしかないのではと思う。
Jアークのジェイクォースでは恐らく足りない。
ブラックゲッターを止めたアレはナデシコの重力波砲だろう。ジェネレイティングアーマーを突き抜けてきたあの威力。
おそらくジェイクォースと同程度の破壊力であるはずだ。
損傷を与えることはできるだろうが、決め手にはなり得ない。

(あるいは、同じサイズ、同じ出力の機体か。でも、そんな機体はもう残って……いや、あった。キングジェイダーだ!)

パッと閃くのは、トモロに教えられたJアークの戦闘形態。
人型になるという話だったが、あのサイズならおそらく100mを超える。ユーゼスの機体とも十分に渡り合えるはずだ。
搭乗者に負担がかかるなどとはもう言っていられない。その時が来たら、キラは迷わず剣を手にすることを決めた。

とは言え、ユーゼスと敵対すると確定したわけではない。
先程提案を呑んだのはもちろんその場を逃れるためという意味もあったが、半分ほどはユーゼスの提案に有用性があったからだ。
敵に回せば恐ろしいが、味方――とは言わずとも、少なくとも敵対していないだけで気がかりは減る。
カミーユはおそらく納得しないだろう。ユーゼス、そしてアキトの排除を一番に唱えていたのだから。
キラとてユーゼスを信用し切れるわけではないが、今の状況とあの機体の力を鑑み、現状で彼らと敵対するのは得策ではないと考える。

「お、D-3の市街地が見えてきたぜ。アイビスさん達はもう着いてんのかな」

甲児の言葉に顔を上げると、確かに市街地に到達していた。
だが……おかしいとキラは思った。
ビルは薙ぎ倒され、道路は砕き抉られている。まるで戦場跡のように。
カミーユとの交戦があったからと言って、自分達が出発するまでこの街はここまで荒廃してはいなかったはずだ。

「何かあったのかしら……」
「Jアークは……!?」
「待てよ、今索敵を――っと、通信だ。ブンドルさんからだな」
『こちらブンドルだ。甲児君、Jアークの位置を送る』

転送されてきた座標は市街地の中でも比較的広い空間のある場所だ。着陸しているらしい。
やはり戦闘があったのだと確信し、瓦礫や様々な機械のパーツが転がる街を駆け抜けていく。
やがて、Jアークを発見。背の高いビルの影にその身を横たえ、遠目に発見できないようになっていた。

「アムロさん、カミーユ! 何があったんですか!?」
『キラ、二人は今医務室だ。とにかくブリッジに来てくれ』

問いかけるキラの声に応えたのはJアークを制御するAI、トモロ。
二人が医務室にいるということは怪我をしたということだろう。
甲児が急いでストレーガを着艦させた。格納庫にはF91とVF22に加え、先行したネリー・ブレン、ラーゼフォンの姿があった。
コクピットから降りる。走りだそうとした時、ガナドゥールに同乗していたシャギアのことを思い出した。

「キラ君、甲児君。君達はブリッジに急ぎたまえ。私とソシエ嬢は彼を医務室まで運ぶ」

ロジャーに促され、甲児と二人でブリッジへと走る。
飛び込んだそこには、ブンドルがただ一人立っていた。

「何が……あったんですか?」
「俺達がナデシコに向かった後、誰かに襲われたのか!?」
「落ち着きたまえ、二人とも。私も詳しくは聞かされてはいない。トモロ、改めて説明を頼む」
『了解だ。まず、君達が出発してからだが……』

焦る少年二人を制して、ブンドルが促す。唯一人全ての事情を知るAIの声だけが響く。


     □


「……う、ん? 俺は……」
「あ、気がついた?」

覚醒したアムロ・レイを出迎えたのは、赤毛の少女の姿。アムロの記憶では、ここにいるはずのない仲間だ。
よろよろと身を起こすと、身体のあちこちに鈍い痛みが疼く。

「外傷はなかったけど、変な体勢で気絶してたから身体が固まっちゃったんじゃない?」
「ああ……機体を降りる余裕もなかったから、な。それよりアイビス、いつ戻って来たんだ?」
「ついさっき。キラや甲児も一緒だよ」

視界を巡らせれば、隣のベッドにはカミーユ、そしてその向こうには見覚えのない髪を逆立てた男もいた。
こちらはまだ目覚めないようで、浅い呼吸を繰り返している。
アイビスが水の入ったコップを差し出してきた。
受け取り、飲み干す。喉を滑り落ちる冷たい水の感触が、気だるさをいくらか拭い去ってくれた。

「私達が来たとき、アムロもカミーユも機体に乗ったまま気絶してたんだよ。戦闘があったの?」

問いかけてくるアイビスに応えようとして、ふと思い留まる。
ギンガナムと戦ったなどと言えば、せっかく安定した彼女の心をまたかき乱すことになるかもしれないと思ったからだ。
話さなくてはいけないとは思ったが、それなら他に人がいる状況の方がいい。自分より上手い慰め方ができるだろうと期待して。

「ああ……いや、後で話すよ。キラや甲児も一緒か? それに、彼は?」
「うん。それにブンドルさん、ロジャーさん、それにソシエって娘も。それと……ナデシコの人もいるよ。その人がそう」

口ごもるアイビスを見て怪訝に思う。
元々ナデシコとの和解を目指し別行動を取ったのだから、その彼らがいるということは和解したということではないのか。
どことなく沈んだ様子のアイビスに問い質そうとした時、医務室の扉が開いた。
入ってきたのは黒ずくめの男。その背に気を失っているらしい男性を担いでいた。

「あなたは……Mr.ネゴシエイター?」

そう、始まりの場所で主催者と向き合っていた交渉人。この舞台で一番顔と名が知られていると言って差し支えない男。
その後ろからこちらは見覚えのない少女が顔を出す。

「いかにも私はロジャー・スミス。自己紹介を……といきたいが、まずは彼の手当をさせてほしい」

背負った男を示すロジャー。空いているベッドへと男を寝かせ、てきぱきと処置をする。
Jアークに備え付けてあった栄養剤を打ち、呼吸が安定したところでようやく交渉人はアムロへと向き直った。

「改めて名乗ろう。私はロジャー・スミス。この艦に以前身を寄せていて、今はキラ君の依頼を受けて動いていた」
「俺はアムロ・レイ。そこの青い髪の少年はカミーユ・ビダン。俺達も、あなたやキラと志を同じくする者だ」

しっかりと手を握り合う。主催者に反抗すると誰の目にも明らかに宣言していたロジャーと合流できたのはアムロにとっても喜ばしいことだった。

「ちょっとロジャー。あなた達だけで盛り上がってないで、私の紹介もしなさいよ」
「む、申し訳ない。アムロ……と、呼ばせてもらうよ。彼女はソシエ・ハイム。彼女もまた、私やキラ君の同志だ」

よろしく、と手を差し出してくるソシエの手を握り返す。艦の平均年齢が一気に下がった気がするな、とアムロはぼんやりと思った。

「アムロ、カミーユも起きたみたい」

アイビスの声に振り向くと、今まさにカミーユも気がついたようだ。
今度はアムロが彼に水を手渡す。
落ち着いたカミーユに、ロジャーとソシエが自己紹介をする。

「さて。ではここで何があったかの説明と、我々がナデシコと接触した経緯を話したいところだが……キラ君や甲児君がブリッジに向かった。
 二度手間にならないよう我々もできれば移動したいが、動けるか?」
「ああ、俺は問題ない」
「俺も……大丈夫です。行きましょう」
「よし。ではソシエ嬢かアイビスさん。どちらかが残って、彼ら――シャギア・フロストと熱気バサラの面倒を見てほしいのだが」
「む、なんでそういうことを女に押し付けるのよ。私達だって作戦会議に出席する権利はあるでしょう」
「そう言う訳ではない……誰かが残っていないと、彼らが目覚めたとき困るだろう」
「まあ待て。この医務室からでも、端末を使えば……」

言い合う二人を見かねて、アムロが備え付けの端末を操作する。
ブリッジと回線が繋がり、モニターにキラ、甲児、そしてブンドルの姿が映し出される。

「ブンドル、俺だ。聞こえるか?」
『アムロ、気がついたか。今トモロから事情を聞いている。動けるなら君も来て欲しいのだが』
「すぐに行く……ではソシエ、ここから会議に参加してくれ。そのシャギアとバサラに変化があったら教えてくれると助かる」
「むー……まあいいわ。二人のことは任せておいて」

ソシエを置いて、四人でブリッジへと向かう。
道すがらそれまであったことの情報を交換しつつ、やがてブリッジへ着いた。

「アムロさん、カミーユ! 大丈夫なんですか?」
「ああ、俺達はもう心配ない。キラ、君も無事に帰ってきてくれて何よりだ」
「さて……全員、とはいかないがとりあえず面子は揃った。改めて状況の整理を始めよう」

ブンドルの声を契機に、各々が語りだす。
F-1、ナデシコをめぐる乱戦を。
D-3、突如出現したインベーダー、甦った戦闘神との戦いを。


     □


「……ガウルン、ユーゼス、そしてインベーダー。俺達が知らないところで、状況は大きな変化を見せたということか」
「それはこちらのセリフだ。ギンガナム……まさか死者すらも眠りから呼び覚ますことができるとはな」

一通りの経緯をお互いが語り終えた。
ブリッジを重苦しい沈黙が支配する。その原因は、やはり……

「そうか……ガロードが、な。死んだ訳ではないというのが救いと言えば救いか」
「私にも彼が何をしたのか、詳しくは分からない。だがおそらく、彼らは我々を助けるためにあの選択をしたのだろう。それだけは間違いないはずだ」
「……そうだな。ガロードの分まで、俺達が戦わねばならない。今は彼らを悼むよりも、前に進むことが必要……だな」

ブンドルに声を返すアムロも、やはり落胆を抑えきることはできない。
ニュータイプを幻想と切って捨てる少年には未来への希望を感じさせる何かがあった。
こんなところで失われていいものではない――なかったはずだ。
カミーユも、彼と出会っていればまた違う物の見方ができるようになったはずだ。
自分がその場にいられなかったことが堪らなく悔しい。力になれたかどうかは分からないが、見届けることすらできない自分の無力が。

「――我々が今考えるべき案件は、おおよそ三つ。
 まず一つ、今まで通りの殺戮者の排除だ。現在、我々は生き残った者の中で最大の勢力と言っていいだろう。
 余程のことがない限り危険は少ないはずだが……油断しないに越したことはない。
 現状確認されている危険人物は、と言うか我々以外の生存者と括ってももはや問題はないか。
 まずはガウルン。これは言うまでもなく敵だな。あの戦闘でどうなったかは分からないが、確証がない以上生きているとして扱うべきだろう」
「ああ。生き残ることに掛けては、あの男は俺達の誰よりも優れている。正直なところ、二度と戦いたくない相手だ」

ブンドルが進行役を買って出た。各自、自分の意見を口々に表明する。

「次にテンカワ・アキト。私としては彼が戦いに乗った理由もわからなくはない。できれば説得したいところだが……」
「ユーゼスと組んでいる。排除する理由はそれだけで十分です」

ロジャーに厳しい声を返したのはカミーユだ。

「それにあの人は明確に優勝を目指して戦っています。説得に応じるようなことはないでしょう」
「……その時は私が止めるさ。それがユリカ嬢を守れなかった私の責任でもある」
「ではテンカワ・アキトのことは、ネゴシエイター、あなたに任せる。だが説得に応じなければ、排除。
 我々の安全と天秤に掛けられるものではないということだけは忘れないでくれ」

了解、とロジャーが苦い声で返す。続いて声を上げたのはアイビスだ。

「次はテニアだね。それと、統夜だっけ? テニアを助けて一緒に逃げた男の子って」
「バサラさんはそう言ってたね。何でも、テニアの元々の知り合いだとか」
「テニア……畜生。なんで俺達を騙したりなんかしたんだ。みんな力を合わせれば、主催者にだって勝てるのに」

キラ、甲児が付け加える。
ブンドルは数秒思案した後、キラに向かって問い掛けた。

「彼女とその統夜少年はそう考えなかったということだろう。が、気になるのは彼らの今の方針だな。
 彼らが恋人関係だとするのなら、優勝するにはどちらかが死ななければならない。
 果たしてどう動くのか……キラ、君はどう思う? 人を集めるとした君の意見が聞きたい」
「そう、ですね……もし、彼らが殺し合いを放棄して生還のための協力を求めてきたら、受け入れるつもりです」
「ほう。彼らは少なくともカティアという少女、巴武蔵、ジョナサン・グレーン、そして間接的にオルバ・フロストを殺害している。その彼らとでも手を取り合えると?」
「殺し合いに乗った理由が生きて帰るためだったのなら、僕に責めることはできません。
 容認するという訳でもありませんが、今の彼らの声も聞かずに切り捨てることは違うと思います。
 パートナーと再会して、殺すこと以外に道を見つけたのなら協力することはできるはずです」
「誘いに応じなかったら?」
「……討ちます。ロジャーさんがアキトさんを止めると言うなら、僕も同じようにテニアを。
 疑いはあったんです――最初に会ったときから。それを行動に移せなかった僕のミスでもありますから」

ブンドルが見たところ、そう宣言するキラの目には苦味こそあれど揺れてはいない。
これなら任せることもできるか、と声に出さずに称賛する。

「では、彼らに対してはアキトと同じく一度は対話を呼びかける。応じなければ排除、ということでよろしいかな」
「……賛成だ。キラ、お前だけにはやらせねえ。もしもの時は、俺も手伝うからよ」

甲児もまた、覚悟を決めることはできたようだ。
反対する者がいないことを確認し、次を促す。

「続いてはキョウスケ・ナンブだ。これについてはカミーユ、君が話を進めてくれ」
「わかりました。キョウスケ中尉は俺の仲間だったんだが、今は主催者、アインストに取り込まれている。
 詳細はさっき説明したから省くが、俺もあの人は排除するしかないと考えている」
「ちょ、ちょっと待ってよ。そのキョウスケって人、カミーユの仲間なんでしょ? 助けてあげられないの?」
「俺もできればそうしたいさ。でも、オルバって人……テニアと一緒に戦った人は、かなりの腕だったんだろ?
 いくら俺達が数で勝ってるとは言え、そんな甘い気持ちで戦えば殺されるのはこっちだ。
 あの人は俺に自分を討てと言った。だから――俺も、中尉の気持ちを無駄にしたくない」
「……俺はそのキョウスケと言う男を知らないが、アインストであるのなら説得や交渉は通じないと考えるべきだ。
 また、主催者の力を削ぐ、あるいはその正体に一歩でも近づくためには、撃破もやむなしというところだろう」

アイビスの疑問をカミーユ、そしてアムロが封じる。
ブンドルが思うに、キョウスケと言う男は望んでアインストに身体を委ねたのかもしれない。
カミーユが、まだ見ぬその仲間が必ず己を撃ち貫き主催者を打破してくれると信じて。
そうであるなら、悪を自認するブンドルとて感じ入らずにはいられない。
我が身を捨ててでも敵を倒す――本物の戦士の姿ではないか。生きている内に会えなかったことが悔やまれる。

「キョウスケ・ナンブはガウルンと同じく見敵必殺、発見次第排除。油断すればこちらがやられる、ゆめゆめそのことを忘れるな。
 では、最後……ユーゼス・ゴッツォについてだ。彼は二つ目の案件、空間の排除にも関わっている。
 先程説明した通り、我々はユーゼスと手を組むことになっている。次の放送までにここで合流する予定だ」
「それです。俺はどうしても納得できません。キョウスケ中尉がアインストに取り込まれたのも、そもそもの原因はユーゼスです。
 あいつが俺達と協力するはずなんてない。きっと裏で何か考えてるに決まってます」
「そうだとしても……だ、カミーユ。お前も奴の機体は見ただろう」

コンソールを示すアムロ。そこには対峙した時に記録された、100mを超えるユーゼスの機体が映し出されている。

「このサイズだ、おそらく機体性能は俺達のものとは比べ物にならんだろう。まともにぶつかり合う前に、少しでも手の内は知っておきたい」
「戦力だけの問題ではない。首輪の解除においても奴は我々の一歩先を行っている」
『そして何より、空間を突破する力の一つに成り得る、ということです』

アムロ、ロジャーに続いたキラは声ではなくタイピングで意見を示す。これはさすがに主催者側に聞かれるとまずい。
それを見た面々も同様にタイプで応える。

『現時点で我々が所有する、空間の綻びを打開できる可能性のある兵器を挙げていこう。まずはサイバスターのコスモノヴァだ』
『俺のVF22の反応弾も、ですね。戦いに使うのならともかく、こういうことなら核も有用なものです』
『騎士凰牙のことも忘れないでいただきたい。先刻契約したデータウェポン、あれなら十分条件に合致するはずだ。電池次第で連発もできる』
『Jアークのジェイクォースも、でしょうか。これは少し、先に挙げられたものに比べると見劣りするかもしれませんが』
『キングジェイダーならその懸念も解消されるのだがな』
『トモロ、それも後で検討しよう。ユーゼスの機体に対抗できるのはキングジェイダーを置いて他にないからね』
『それに俺のF91もだ。エネルギーの残量にもよるが、おそらく候補の一つにはなる』

Jアークに記録されていた戦闘映像から、アムロが見せたMSの枠を超える非常識な技のことは誰もが知っている。
特にカミーユ、キラのガンダムパイロット二名が理解し難いと苦笑いしていたものの、あれなら確かに十二分の威力。
残るストレーガ、ガナドゥール、ネリー・ブレンは残念ながらそこまで高威力の兵器はない。
あるいはアイビスの最初の乗機、ヒメ・ブレンがあれば話は別だったのだが……それはもはや終わった可能性。
そしてリ・テクノロジストの天才科学者、クリフォード・ガイギャクスが建造した二体の巨人。
ストレーガとガナドゥールには本来合体機構が備わっている。フォルテギガス、『強き巨人』の名を冠した力。
度重なる激戦の末分離し、今や満足に動く機体はストレーガのみとなったが。

「ストレーガとガナドゥールについてだが……合体機構を使うのは現状難しいと言わざるを得ないだろう。
 修復次第で可能かもしれないが、あるいは分離したまま二つの機体として扱う方が合理的かもしれん」

と言ったのはアムロ。唯一両方に乗った経験から来る言葉だ。

「修復するにしろ、部品がない。ある程度はJアークの機材で補えるが、消失した部位まではさすがにな」
『いや、そうでもない』

が、その言葉にトモロが待ったをかける。
モニターに周辺の映像が映し出された。ところどころに機械と瓦礫が散見された。

『これを見ろ。先程襲来したインベーダーの残骸だ』
「これがどうした……いや、そういうことかトモロ」

アムロの声が一段高くなる。宝物を見つけたというように。

『インベーダーは機械と融合しメタルビーストとなる、と言っていたな。確かに奴らは機械と融合する性質をもつ。
 先の交戦でアムロ、お前がインベーダーを全て消滅させた後に残ったのが融合されたパーツと言う訳だ』

折れたブレンバー。
拳、肩、そして胸部を粉砕されたシャイニングガンダム。
自爆し、だが腕や頭部と言った細かな部分が残っているラーズアングリフ。
頭部を砕かれ埋められていたヒメ・ブレンの姿はなかった。生体メカたるアンチボディまではさすがに取り込めなかったのだろうか。

「探してみれば使えるパーツがあるかもしれませんね」
「よし、探しに行こうぜ!」
「……それは後で行うとして、話を戻そう。とりあえず五つ候補があるが、不安も多い。
 まず私のサイバスターだ。正直なところ、私ではサイバスターの力を完全に引き出すことはできん。
 諸君の内誰か相応しいものに委ねたいと思っている。まあ、これもまた後で改めて話すが」
「それを言うなら、Jアークもです。キングジェイダーは確かに強力らしいんですが、僕が使えるかどうかは……わからないんだよね、トモロ?」
『ああ。本来J……身体を機械で強化し、Jジュエルに選ばれた者が操縦する機体だ。
 生身の人間が使えば死は免れんが、Jアークが制限下にある今ならあるいは可能かもしれん。操縦者に負荷がかかることは間違いないがな』
「死は免れんって……駄目だよ、そんな危ないこと!」
「だが、逆に言えばそれほどの力がいま必要だということでもある……」

押し黙る一同に、トモロが感情を感じさせない声で告げる。

『もし使うということになれば、の話だが。その場合、操縦するのはキラでなければ承認はしない』
「え……僕じゃなければ駄目なの?」
『理由は二つ。一つ、勇気を持つ者。ジョナサン・グレーンにはその資質はなかったが、キラ、君にはある。
 もっとも、この条件だけで言うなら他にも該当者はいる。そこで二つ目の理由だ。これこそキラしか持ち得ない条件でもある』
「僕にしかない理由……あ、コーディネイターってこと?」
『そうだ。肉体的な頑強さと言う点で、キラはここにいる誰よりも優れている。
 もちろんJやガオガイガーを駆る獅子王凱とは比べるべくもないが、少なくとも普通の人間が乗るよりは負担を抑えられる』
「……わかった。キングジェイダーは僕が乗るよ」
「少年に押し付けるのは大人として忍びないが……頼む、キラ君」
「よし、キングジェイダーについてはキラ、そしてトモロに一任する。
 とにかくだ、ユーゼスと組むのは奴がそれだけの力を確実に有しているというからでもある。
 いずれ戦うことは大いにあり得る……というか、奴は確実に仕掛けてくるだろう。その時までに準備は万全にしておきたい」

とブンドルが締め括った。
代わりに進み出たのはロジャーだ。

「当面の行動だが、ユーゼスとの合流まで体勢を整えるということでいいだろうか?
 私としては凰牙の腕の修理をしたい。キラ君やカミーユ君、アムロ。君達の力を借りたいのだが」
『ちょっとロジャー! ガナドゥールもよ!』
「……凰牙とガナドゥールの修理、だ。見たところ、ほとんどの機体が修理と補給を必要としているように見える。
 もはやこの会場に単独で残っている非戦闘者もいないだろう。ここは腰を据えて足元を固める時期だと思うが」
「そういや、ストレーガも結構無茶したしなぁ。俺も賛成だぜ」
「ふむ……ではこうしよう。
 トモロ、君はこのまま空間の観測を。私は念のためサイバスターで周辺を警戒する。
 ソシエ君は医務室で二人の看病を。
 甲児君とアイビス君は完全に日が沈むまでに周辺の残骸から使えるパーツを集める。
 残るアムロ、カミーユ、キラ、ロジャー氏は機体の修復と、……ということで、異論はないかな?」

最後、アムロ達にだけは首輪をトントンと叩きつつ言うブンドル。
了解したと声に出さず頷く彼らを見て、満足げに微笑む。

「ああ、言うまでもないが最初に補給を行ってからだ。幸いここからすぐの場所に補給ポイントがある。順番に行ってくれ」


     □


やがて、Jアークから次々に発進していく機体達。
赤く染まった世界はやがて暗闇へとその身を沈めていく。
そして散らばる命のなれの果て、様々な機械の中に一つ。

彼らが求め、確保せんとするもの――フェステニア・ミューズが機体、ベルゲルミルの腕があった。
かつてD-7にてガウルンに持ち去られ、ここD-3にてブンドルと対峙した時放り出されていったもの。
インベーダーが取り込んだそれも、今はシャイニングガンダムやラーズアングリフの欠片と同じく打ち捨てられている。
腕だけとはいえ、ナノマシン・マシンセルの塊とも言えるそれを手にしたとき、彼らの反逆はまた一歩先へと進むだろう。

そして今だ眠り続ける熱気バサラ。
彼の身体を侵食したDG細胞は、しかしその侵攻をある一線以上に進めることができないでいた。
かつて希代の武術家である東方不敗がそうしたように、熱気バサラの意志の力はDG細胞を完全に抑え込んだのである。
これがテンカワ・アキトのように身体に重大な欠陥があり、また定期的にDG細胞の塊を摂取していればこうはならなかったであろう。
希釈されたDG細胞ではバサラの歌への熱を冷ますことができなかったという訳だ。


吸い寄せられるように、一つの場所へと力が集まっていく。
生き残った者達はこれ以上の暴虐を許さないと誓い、その想いと力を一つに束ねて暗闇へと――その先の希望へと指を伸ばす。
宴の終焉は、近い。



【二日目18:00】


【共通の行動方針
 1:24時にユーゼスと合流。現状敵対する意思はない
 2:ガウルン・キョウスケの排除
 3:統夜・テニア・アキトは説得を試みる。応じなければ排除
 4:ユーゼスとの合流までに機体の修理、首輪の解析を行い力を蓄える】


【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
 パイロット状況:健康、疲労(中)
 機体状態:ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ  ビームサーベル一本破損
       頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾100% ビームライフル消失 ガンポッドを所持 
 現在位置:D-3
 第一行動方針:機体の修復 首輪の解析
 第二行動方針:D-4地区の空間観測
 第三行動方針:協力者を集める
 第四行動方針:マシンセルの確保
 第五行動方針:基地の確保
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考1:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している
 備考2:ガウルン、ユーゼス、テニアを危険人物として認識
 備考3:首輪(エイジ)を一個所持
 備考4:空間の綻びを認識】
 備考5:ゴッドフィンガーを習得しました。
    残存エネルギーのほぼすべてを発動すると使用します。
    また、冷却などの必要があるため、長時間維持は不可能です。
    発動、維持には気力(精神力)や集中力を必要とし、大幅に疲労します。
    ほぼ完全な質量をもった分身の精製、F-91を覆うバリアフィールドの精製、
    および四肢に収束させての攻撃への転嫁が可能です(これが俗にいうゴッドフィンガー)。


【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・Sボーゲル(マクロス7)
 パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(中)
 機体状況:オクスタン・ライフル所持 反応弾所持 EN100%   左肩の装甲破損 全体的に装甲表面に傷。
 現在位置:D-3
 第一行動方針:機体の修復 首輪の解析
 第二行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
 第三行動方針:遭遇すればテニアを討つ(マシンセルを確保)
 最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
 備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
 備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
 備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】


【キラ・ヤマト 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 パイロット状態:健康、疲労(中) 全身に打撲
 機体状態:ジェイダーへの変形は可能? 各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%  
 現在位置:D-3
 第一行動方針:殺し合いを止める
 第二行動方針:機体の修復 首輪の解析
 第三行動方針:マシンセルの確保
 第四行動方針:生存者たちを集め、基地へ攻め入る
 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出
 備考1:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復
 備考2:D-4の空間観測を実行中。またその為一時的に現在地を固定
 備考3:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】


【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)
 機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN100%  無数の微細な傷、装甲を損耗
 現在位置:D-3
 第一行動方針:使える部品を集めて機体を修理する
 第二行動方針:協力者を集める
 第二行動方針:基地の確保
 最終行動方針:精一杯生き抜く
 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】


【兜甲児 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
 パイロット状態:疲労
 機体状態:機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し) EN100%
 現在位置:D-3
 第一行動方針:使える部品を集めて機体を修理する
 第二行動方針:誤解は氷解したため、Jアークに協力する
 第三行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
 最終行動方針:アインストたちを倒す 】


【ソシエ・ハイム 搭乗機体:ガナドゥール
 パイロット状況:右足を骨折
 機体状態:頭部全壊、全体に多大な損傷 駆動系に障害 機体出力の低下  EN100%
 現在位置:D-3
 第一行動方針:殺し合いを止める。バサラ・シャギアの看病
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第四行動方針:この機械人形を修理したい
 最終行動方針:主催者を倒す
 備考1:右足は応急手当済み
 備考2:ギアコマンダー(白)を所持
 備考3:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)、騎士凰牙の左腕を携帯
 備考4:ガトリングボアと契約しました 】


【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
 パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数 
 機体状態:左腕喪失、右の角喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)
       側面モニターにヒビ、EN100%
 現在位置:D-3
 第一行動方針:殺し合いを止める。機体の修復 首輪の解析
 第二行動方針:首輪解除に対して動き始める
 第三行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
 備考1:ワイヤーフック内臓の腕時計型通信機所持
 備考2:ギアコマンダー(黒)と(青)を所持
 備考3:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
 備考4:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)携帯
 備考5:バイパーウィップと契約しました】


【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)
 パイロット状態:良好(主催者に対する怒りは沈静、精神面の疲労も持ち直している)
 機体状態:サイバスター状態、各部に損傷、左拳損壊 ビームナイフ所持
 現在位置:D-3
 第一行動方針:殺し合いを止める。周辺の警戒
 第二行動方針:マシンセルの確保
 第四行動方針:サイバスターが認め、かつ主催者に抗う者にサイバスターを譲り渡す
 第五行動方針:閉鎖空間の綻びを破壊
 最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ
 備考1:ハイ・ファミリア、精霊憑依使用不可能
 備考2:空間の綻びを認識
 備考3:ガウルン、ユーゼスを危険人物として認識
 備考4:操者候補の一人としてカミーユ、甲児、キラに興味
 備考5:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】


【熱気バサラ 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン)
 パイロット状況:DG細胞感染。喉の神経圧迫は完治。気絶
 機体状態:右腰から首の付け根にかけて欠落 胴体ほぼ全面の装甲損傷 EN残量20% 
 現在位置:D-3
 第一行動方針:???
 最終行動方針:自分の歌で殺し合いをやめさせる
 備考1:真理の目が開いています】


【シャギア・フロスト 搭乗機体:なし
 パイロット状態:疲労 戸惑い 気絶
 機体状態:なし
 現在位置:D-3
 第一行動方針:??? (とりあえずキラたちについて行くつもりのようだが、内心何を考えているか不明)
 第二行動方針:ガウルン、テニアの殺害
 第三行動方針:首輪の解析を試みる
 第四行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
 第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除
 最終行動方針:???
 備考1:首輪を所持】


D-3を中心としてその周辺のインベーダーはすべて消失しました。



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