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銃爪は俺が引く ◆VvWRRU0SzU



ページをめくり、そこにある名前と顔を一人一人確認していく。
このB-2エリアに存在するただ二人だけの生存者、テンカワ・アキト、ユーゼス・ゴッツォ。お互いもう随分前から無言だ。
打ち合わせることはいくつもあるはずだが、どうにも自分から口を開く気にはなれなかった。向こうもそう思っているのかもしれない。
ふう、とため息をつきアキトは水を一口飲んだ。
モニターの半分以上を占拠する巨体、ユーゼスの駆るメディウス・ロクス――ゼストを見やる。奪取するとは決めたものの、さてどうするか。
E-3のJアークに集う敵対者達と潰し合わせるにしても、問題が一つ。アキトが今現在搭乗しているこのブラックゲッターだ。

先程別れたガウルン達はもう影も見えない。こちらも24時までにE-3に向かう予定だが、ゼストとブラックゲッターなら二時間もあれば十分。
そう判断したユーゼスは休憩だとアキトに言い捨ててコクピット内で何やら作業しているようだ。おかげでアキトは手持無沙汰なまま黙然と時を待っている。
暇潰しがてらに機体の状況をチェックしてみる。どうやら、予想以上に酷使していたようだ。
炉心の破損による補給の途絶。貯蓄されていたエネルギーはそろそろ底をつくかというところ。
全身の装甲の破損も酷い。このままだと全速を出しただけでどこかの部位が欠落しかねないほどだ。
もはや唯一の武装と言えるゲッタートマホークも、刃毀れや投信の歪みが目立ってきた。インベーダーやマスターガンダム、ヴァイクランといった敵との交戦で全力で振り回していればこうもなるかと嘆息する。

とにかく、このままではユーゼスの機体を奪うどころかJアークの者達にすら太刀打ちできるかどうか怪しい。新しい機体を手に入れたガウルンなどは言わずもがなだ。
予定していたナデシコでの炉心の修理も結局は行えなかった。
現状、このフィールドで戦力的に一番劣っているのは自分だと言っても差支えないのではないか……アキトはそう踏んでいた。
気は進まないが、ここで取れる道は一つしかない。意を決し、通信機のスイッチを入れる。

「ユーゼス、話がある」
「……なんだ、手短に頼む」
「ブラックゲッターのことだ。もうこいつは限界だ。このままでは満足に戦えん」
「ふむ……」

ガウルンと手を組んだ現状、ここでユーゼスが戦力として数えられなくなったアキトを切るという可能性を考えなかったわけではない。
が、ユーゼスとてガウルンという男がどんな輩なのかはもう知悉しているはずだ。隙を見せれば食らいつく、油断ならない獣のような男だということを。
薬という枷がある点、少なくともアキトの方が御しやすい、そう考えることを期待しての問い。
その薬も、あと一度服用すれば完全に身体機能を取り戻せる見通しが立った。ユーゼスが処方した、どう考えても何か手が加えられている薬を使う必要もない。
そしてユーゼスの機体は自己再生機能を備えている。それを応用すれば、ブラックゲッターの損傷も修復できるのではないか。
ユーゼスの対応を想定しつつ、油断なくその挙動を観察する。万一ではあるが、ここで襲われるということになれば逃げるしかない。

「そもそも、同盟の条件は薬と情報だ。薬はともかくとして、俺は貴様から有用な情報というものを受け取ってはいない。が、俺はお前の用に幾度となく付き合っている。その対価を払ってもらおう」 
「フ……私の機体を前に大した物言いだ。まあ、たしかにこのゼストは君の協力なくしては存在しない。いいだろう、君の提案を呑もう。機体の修復だな」

存外あっさりと了承され、逆に不穏なものを感じる。ユーゼスとてアキトが忠実な僕だと思っているわけではないだろう。
つまりは、いつ造反しようと力づくでねじ伏せる自信がある――それほどの力が、あの機体にはある。
同盟を組んだ間柄というのに明確な上下関係ができつつある。これはまずい……が、さりとて打破できるだけの力もない。今は服従の時、とアキトは己に言い聞かせる。
それに見方を変えれば、ガウルンと手を組んだこととて戦力に不安があったからと考えることもできる。
如何にユーゼスの機体が強力と言っても、Jアークに集まる全ての機体を相手にするのは難しいということだ。
ガウルンが信用しきれない以上、そのガウルンを狙うと公言しているアキトを楔として使う腹積もりもあるのだろう。


「幸いまだ時間はある。そうだな……」

カタカタ、とパネルを叩く音がする。アキトとしては炉心の修復ができれば御の字だというところだが。

「……よし、これだな。テンカワ、データを送る。目を通しておけ」

データが転送されてきた。光子力エンジン――マジンガーZ、アキトが撃破した機体に積んであった動力炉だ。

「これが、何だ。ゲッターとは規格が違うだろう?」
「君の機体を動かすには並大抵の動力炉では力不足だ。私の手持ちの中ではそれがもっともブラックゲッターに適応しているということだ。もちろんゲッター線を扱うことはできないが」
「機体を動かすだけということか」
「まあ待て。ゲッター線自体は先の交戦で十分すぎるほどに貯蔵できている。これを炉心に供給すれば当面は大丈夫だ。装甲についても、ラズムナニウムを応用すれば修復は可能だろう」
「……少なくともガウルンの機体と渡り合えるくらいにはしてもらいたい。できるか?」
「無論だ。私にしても奴は信用しきれん。君が抑えてくれると言うなら喜んで力を貸そう」

よく言うものだ。ガウルンの次は俺なんだろう――そう思ったが、別に構いはしない。俺も奴も、お互いにお互いを信用などしていないのだから。
ゼストが腕を伸ばす。掌の一部が盛り上がり、動力炉と思しきブロック体が姿を現す。
もう片方の腕がブラックゲッターを掴む。黒い流体が伝わってきて、ブラックゲッターを呑み込んでいく。
破損個所を埋めていく流体。ゲッター線炉心の横にスペースが開けられ、光子力エンジンとやらが積み込まれた。

「装甲の固着や回路の接続などにしばらく時間がかかる。24時まではまだ時間もあることだ、ここで君の機体を万全にしていこう」
「……礼は言わんぞ」
「構わんよ。これで我らの関係もイーブンということにしておこう」

それきり、ユーゼスからの通信は途切れた。あとは時間の経過に任せるということだろう。
さて、機体の問題はこれで解決した。何か細工をされるかとも思ったが、そこまで考えていても仕方のないことだ。いざとなれば奴がそれを使う前に殺すしかない。
残るはアキト自身の問題。おそらくあと一度薬を服用すれば完全に復調するが、副作用もまた一度は経験することになる。
以前のような重い症状は出ないだろうが、それでも戦闘中に発症するようならそこで終わりだ。ユーゼスやガウルンのみならずとも、見逃してくれようはずもない。
意を決し、薬を呑み込んだ。
30分、休憩に充てる時間としてはもったいないと思わなくもないが、これで以降は全力で戦える――ユーゼスに気付かれることなく。
ユーゼスに通信を繋げ、少し眠ると言い捨て反応を待たずに回線を切断する。激戦続きだったのだ、怪しまれることもないだろう。
ブラックゲッターが不意に動き出さないように、完全に炉心の火を落とす。聞こえてくるのは装甲が修復されゆく音だけだ。
これで次に目が覚めた時には自身の身体を100%自由に行使することができる。
バッドトリップも、アキトが眠っているとしていれば感知されないはずだ。
ユーゼスの裏をかけるのはおそらく一度きりだろう。その一瞬――乾坤一擲の機会に奴を殺す。
30分以内にJアークを排除し、薬の効果が切れたと思わせたところで、討つ。
ガウルンやキョウスケといった、警戒すべき敵は多い。だが何よりもまず、アキトを鎖に縛り付けられた犬だと勘違いしているこの道化からだ。
もちろん戦闘中にどさくさに紛れてガウルンを排除できればそれがベストではあるが、そう上手くいくものでもないだろう。
Jアークを排除しつつユーゼスを殺し、尚且つガウルンに横槍を入れられることなくゼストを確保する――考えるだに無謀なプランだが、アキトが優勝を達成するにはそれしかない。
この一時の同盟はブラフ。右手で握手し、左手に刃を忍び持つ。
早く来い――全てを決する時。殺意を凝縮し、押し固め、熟成させる。この一時間は休憩などではない。そう、言うなれば戦はもう始まっている。
昂る神経を自覚しつつ、アキトは努めて身を休める。
立ち止まるのはこれが最後。あとはただ、この身が壊れるまで走り抜くのみだ。

     □


変わりゆくブラックゲッターを見据え、ユーゼスはアキトの真意を考える。
アキトの提案を承諾したのはもちろん善意からなどではない。
Jアークと言う戦艦、そしてサイバスター。未知の機体である前者はともかく、後者がその力を完全に発揮できるのならゼストとて盤石とは言い切れない。
そのための方策として、ブラックゲッターだ。
ゼストを構成する物質、ラズムナニウム。それにより再生されたブラックゲッターは、いざという時の切り札。
万が一自己再生が不可能なほどにゼストが損傷した時、礎を同じくするブラックゲッターの躯体は言ってみればパーツ取りの予備となる。
切り離した部分の遠隔操作ができれば文句はなかったのだが、ブラックゲッターに固着した時点で支配権はあちらに映ったようだ。
まあそれはラズムナニウムがインベーダーとの融合物質となった以上、ゲッター線を有するブラックゲッターに支配されるのは致し方ないことと言える。
とにかく戦力として使え、加えて自機の保全にも繋がる。ユーゼスに取ってもアキトの提案は渡りに船だった。
そしてアキト自身、あと一度でも薬を服用すればナノマシンのキャリアとして完成を見るだろう。優勝を狙う奴が本気で従っているはずもないので、切り時はそこかもしれない。
統夜とテニアはどうにでもなるだろう。Jアークはともかくとして、警戒すべきはガウルンとキョウスケ。
常軌を逸した力を行使するキョウスケはともかくとして、ガウルンほど食えない男もいない。
協力を約束したとはいえ、あの男なら後ろから撃つことを躊躇いはしないという感触があった。
パワーで見るなら奴の機体はゲッターにも匹敵するだろう。ゼストには及ばないだろうが、それでも一撃が痛いことに変わりはない。
Jアークという餌があるうちはこちらに矛先が向く事もないだろうが、勝敗が決したとなれば話は別だ。首輪の解除など何のカードにもならないだろう。
アキトをぶつければ解決――する訳でもない。優勝狙いのアキトにとって、今のユーゼスは障害以外の何物でもないからだ。
Jアークを排除した後、おそらく二者とはぶつかることになる。どちらか一方が脱落していてくれれば楽にはなるのだが。

キョウスケがどういった思考の下動いているのかは分からないが、奴がJアークとの会談の場に現れればまたややこしいことにもなる。テニアの話では無差別に参加者を襲うとのことだが、この目立つゼストを放置して他を狙うとも考えにくい。
幸いあの機体はユーゼスが最初に搭乗したアルトアイゼンとさほど武装に違いはないらしい。せいぜい空を飛ぶようになったことくらいだ。
手の内を知っているという意味では、他の参加者より一歩先んじていると考えられなくもない。アキトにしてもそれは同様。

とにかく、24時だ。そのときに全てが決するといっても過言ではない。
首尾よくJアークを撃滅しその技術を取り込んだとして、首輪がある限り主催者の下に辿り着くことはできない。
既に理論はほぼ完成している。あとはアキトと言うナノマシンのサンプルを得て、統夜かテニアあたりで実験をすれば首輪を解除することも不可能ではないだろう。
アキトの役割はいざとなれば熱気バサラで代替することもできる。
奴とラーゼフォンが見せた空間の破壊をJアークが成し、アキトを確保できれば一番手間もないのだが。

ブラックゲッターの装甲が一時成形を終えたようだ。
ユーゼスがプログラムしたのは、もう一つのゲッターロボ、真ゲッターの姿。
あの時消え去ったオリジナルの真ゲッターと形を似せていれば、あの戦いを生き残った者達に一瞬の動揺くらいは期待できるかもしれない。ユーゼスの趣味という理由も幾分混じっていたが。
光子力エンジンも理論としては面白いが、ゲッター線や相転移エンジンほどの価値は感じられなかった。多少機体の出力は下がったが、さほどの問題でもない。

あと数時間。
ユーゼスは首輪解除の理論を再確認しつつ、静かにその時を待つ。
傍らの男の殺意を感じつつ、だがユーゼスはそれすらも小気味よいと感じる。

そう、全てはこの掌の上――。

【二日目 19:00】

【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(バンプレストオリジナル)
 パイロット状態:疲労(小) ハイ
 機体状態:EN残量100%  データウェポンを4体吸収したため四肢が再生しました。
      第三段階へ移行しました。
      デザインの細部、能力(相転移砲などが使用可)が一部違いますが、基本MXのそれと変わりありません。
 現在位置:B-2
 第一行動方針:E-3に先んじて向かい、準備を整える
 第二行動方針:AI1のデータ解析を基に首輪を解除
 第三行動方針:サイバスターのラプラス・コンピューターの回収
 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 第五行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
 備考1:アインストに関する情報を手に入れました
 備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
 備考3:DG細胞のサンプルを所持 】


【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
 パイロット状態:五感が明瞭 意識の覚醒 薬の効果時間残り30分
 機体状態:機体の形状が変化(黒い真ゲッター。性能に変化なし、変形不能) 装甲修復済み
       光子力エンジン搭載 ゲッター線炉心破損(補給不可) ゲッタートマホークを所持 ゲッター線チャージ量100%
 現在位置:B-2
 第一行動方針:ユーゼスと共に行動し、優勝を狙う
 第二行動方針:ガウルン、ユーゼスの首を取る。ゼストを手に入れる。
 第三行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
 最終行動方針:ユリカを生き返らせる
 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
 備考2:ユーゼスが処方した薬を1錠所持】
















     □


ゲッター線。進化を促進させるエネルギー。
マジンガー。機械に宿りし神にも悪魔にもなり得る魂の形。

とある世界の話。
その世界では本来交わるはずのない二者が出会い、新たな可能性として魔神皇帝を生み出した。
しかしそこには運命的な要素だけではなく、人の意志が介在した。
魔神を駆ることを運命づけられ、正義の炎を胸に灯す少年がいたからこそ起こるべくして起こった奇跡と言える。

さて、この世界では奇跡は起こるのだろうか。
ただ愛する者を取り戻すことだけを願う男の叫びは、因果の海を越えられるのか。
その結果は誰も知らない。
監視者だけがその答えを待ち続けている――。







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