The 5th Vanguard ◆VvWRRU0SzU



『……ラ、おき……、キラ』
「う、うう……」

震動と、トモロの声で目が覚めた。
ゼストと、反応弾を自爆させて僕は死んだんじゃないのか――と朧な意識で考えた。

『キラ、早く起きるんだ。戦いはまだ終わっていない』
「……え?」

段々とはっきりしてきた意識。視界いっぱいに広がる、星のない緋色の宇宙。
キラは身体を起こす。とたん全身に激痛が走り、息が詰まる。
メガフュージョンの代償。今やキラの身体はまるで戦場を生身で潜り抜けたかのように傷だらけだ。
意志の力で痛みを押し隠し、トモロへと状況を尋ねる。

『済まんが治療している時間はない。見ろ、主催者の本拠地だ』

トモロが示す先、モニターに映ったのは白く巨大な機械の星だ。
逆方向には木星のようなもの。トモロはあれこそが先程までいた殺し合いの舞台だと言った。
そして視界に映ったのはそれだけではない。

「トモロ、あれは……!?」

キラの目前で繰り広げられていたもの。
先程までの巨獣のような形態から、中枢であったAI1が巨大化した脳の塊のような物体。
ところどころにゼストのパーツが混じっているがその形は定かではない。
その周りを護衛するように取り囲む、機動兵器が多数。
カミーユから聞いたメディウス・ロクスという機体の外見と一致する。
塊の表面から、次々と生み出され飛び立っていく。
ユーゼス本人が言っていた、真空中では無限の力を生み出す相転移エンジンとラズムナニウムの成せる業だ。

『ユーゼスだ。黒い機体はゼストが生み出したもの。パイロットは乗っていないらしいが、無限に生み出されている』
「じゃあ、ユーゼスが戦ってる相手は?」

ゼストが、そしてメディウスが攻撃を仕掛けている相手。
キラにも見覚えがある顔の形――そう、ガンダムだ。
ただしただのガンダムではない。
肥大した下半身からいくつものガンダムの頭がついた蛇のようなもの――ガンダムヘッド――を蠢かせる、悪魔のようなガンダム。
白の機星に直接接続されているガンダムは、おそらくエネルギーを供給されているのだろう。
ゼストと同じく次々とガンダムヘッドを生み出し、ゼストへとけしかけている。
ガンダムヘッドと、メディウス・ロクス。
お互いが無尽蔵に生み出せる手駒が、お互いの身を喰らい合っている。
観測できるだけでも、その総数は軽く万単位だ。
規模の違い過ぎる戦いに、キラの腕が震える。

『主催者の少女――アルフィミィ、と言うらしい。我々は自爆した後ここに辿り着いたのだが、あの星から奴が出てきた。
 どうやら私達が脱出したのはイレギュラーだったらしく、直接排除に来たそうだ』
「そう……え、じゃあなんで僕達は攻撃されていないの? 僕が気絶してたんなら、キングジェイダーは無防備だったんでしょ?」
『……攻撃を受けなかった訳ではない。あれを見ろ』

モニターが移動し、熾烈な領土争いを続けるゼストとデビルガンダムから視点を外す。
映し出されたのは――

「シャギアさん!?」

ボロボロになった、ガンダムF91だ。
右足が根元から消失し、左右の腕も半ばで食い千切られたような痕跡がある。
そのフェイスにもう光はない。乗っているシャギアもおそらく――

「勝手に、殺すな。生きては……いる」
「シャギアさん!」

生きていた。急いで回収してとトモロに言う。だが、

「無駄だ、キラ・ヤマト。私はもう助からん……」

シャギア本人がそれを拒んだ。

『シャギア・フロストはキングジェイダーがゲートを破壊した瞬間、一緒について来たのだ。
 彼が先程までこちらに向かってくる敵機を迎撃していた』
「僕を守るために……?」
『そうだ。だが、奴らの無尽蔵の数に対抗できる訳もない。つい数分前に、撃破された』
「そんな……!」

ユーゼスとアルフィミィがキラを見逃した理由は、無力の相手に割く力はないというところだろう。
一進一退の攻防を続ける両者は、虎視眈々と隙を狙い合っている。キングジェイダーを始末する瞬間を撃たれてはたまらないのだろう。
F91へとキングジェイダーを寄せた。
キングジェイダー自身、反応弾のダメージか両腕が欠落している。掴む事ができず、胴体を接触させて呼びかける。

「しっかりしてください、シャギアさん! すぐ医務室に運びます!」
「無用だ、と言った。自分の身体の事は、自分が一番わかる……。それより、奴らだ」
「でも、僕を助けるためにあなたは……!」
「聞け……! お前が今何を成すべきか考えろ! 奴らの内どちらが勝とうと、我々にとって利はない。
 ユーゼスが勝てば奴は更なる進化を行い、主催者のみならずネゴシエイター達までも呑み込むだろう。
 主催者が勝っても同様だ。私達に止めを刺し、そしてあの箱庭で殺し合いを続けるはず。
 仲間を助けたいのなら、今、ここで! 私とお前が、奴らを叩くしかない!」
「叩くって……どうやってですか!? ユーゼスの機体は無限の動力を持ってるし、主催者だってあの星からエネルギーを汲み上げてるんですよ。
 いくらキングジェイダーでも、あんな力に対抗するなんて……」
「フン……あんな無謀な自爆を仕掛けた割に、弱腰な奴だ」
「あ、あれは勝算があったからで。でも、この状態じゃどうしようも」
「勝算なら、あるさ」

力強く言い切るシャギアに、キラの言葉が封じられる。
満身創痍のF91とキングジェイダーに、一体どんな逆転の手が打てるというのか。

「お前がやった事と、同じだ。足りない力は他で補えばいい。
 幸いここには触媒となる力が二つ、おあつらえ向きにあるだろう?」
「僕がやった事……二つ?」

あの時の状況は、キングジェイダー、ゼスト、反応弾の三つ。
今はキングジェイダー、ゼスト、そしてデビルガンダム。
置き換えると、

「反応弾の役割を、キングジェイダーで……?」
「そう、だ。キングジェイダーを引き金として、無限の力を行使するゼストとあのガンダムを対消滅させる。
 我らが勝利するには……それしか道はない」
「で、でもシャギアさん! そんな事をしたらあなたまで!」
「言っただろう。私はもう助からんと」

F91のコクピット内部が映し出された。
一面の血の海――シャギアの身体を飾る、無数の鋭い刃。

「どうせ死ぬなら、奴らも道連れにする……。私とオルバの運命を弄んだ奴らを残して死ぬ事など、我慢ならん」
「シャギアさん……」
「お前はどうなのだ、キラ・ヤマト。このまま指をくわえて、奴らに蹂躙される運命を由とするか?」
「……いいえ。あなたが行くのなら、僕も行きます。それが、みんなを守る事になるのなら」
「フッ……よく言った。では、行くか」

キングジェイダーの肩へ、F91が降り立つ。
最初に会った時は訳も分からず戦ったのに、こうして背中を預け合う事になるなんて不思議なものだと思った。
でも、悪くない――こうして、人は手を取り合う事が出来る。
疑い、憎み、殺し合ったとしても、同じ目的のために共に戦う事が出来る。
それだけが、この殺し合いで見つけたただ一つ尊いものなのかも知れないと思う。

移動する短い時間の間、木星の中にいる仲間達は大丈夫だとトモロが言った。
キラとカミーユが作り出した首輪解除の方法。欠けていた最後のピース。
必要だったのはアインスト細胞の力を弱める事。
キラが気付いた。自分の首にもう首輪がない。
バサラの歌が、アインストの干渉を跳ね除けたのだとシャギアが言った。
アルフィミィは最初首輪を爆破してキラ達を排除しようとしたそうだが、失敗したため直接攻撃に切り替えたのだそうだ。
ユーゼスも何らかの方法で首輪を解除したのだろう。とにかく、これで首輪の爆破による戦いの強制はもうない。
あとはこの場を収め、仲間達を無事にあの星へと到達させる事だけを考えればいい。
ふと思いついて、白の星に向けてアルトアイゼン・リーゼを射出した。
どうせ持っていても使えない。
だったら誰か、仲間達が使えるようにあの場へ先に置いておいた方がいいと思ったから。

ゆっくりと近づくキングジェイダーとF91に、ゼストとデビルガンダムが同時に気付く。
その軍勢が一斉にこちらを照準する。
連合とザフトの戦争でもまずここまでの戦力の激突はないだろうという数。
でも、キラは自分でも驚くほどに恐怖を感じていない。
たった二機で、宇宙を埋め尽くすほどの敵と対峙していても。
万の軍勢よりも心強い戦友と相棒が、共にいる。
命のない人形をいくら生み出そうが、この繋がりを断ち切る事なんて絶対にできない。その想いがキラの中で最後の勇気を燃え上がらせる。

「あら、まだ生きてらしたんですの」
「横槍を入れに来たのか? 残念ながら、今の君達では観客にしかならんのだがな」

微塵も己の負けを疑っていないという声が二つ。
それはそうだろう。戦力差は比べる事すら馬鹿馬鹿しい。

「だが、今はその観客ですら邪魔なのだ。退場していただこうか!」

殺到する無数のメディウス・ロクス。

「デートの邪魔をするのは無粋ですの。だから……消えてくださいな」

同じくガンダムヘッドも。

圧倒的な数の兵隊が迫って来る中、キラとトモロ、そしてシャギアは――

「行くぞ、キラ・ヤマト! 今が駆け抜ける時だッ!」
「はいッ!」

逃げる事など考えない。正面から、雲霞のごとき敵軍の群れへと突っ込んでいく。
策はある。そう言ったシャギアを信じ、最短距離でゼストとデビルガンダムの中間へと向かう。

メディウス・ロクスが、あらゆる包囲から放つライフルの光がキングジェイダーを貫く。
ガンダムヘッドが噛み付く。纏わりつく無数の敵に、キングジェイダーが外側から見えなくなった。

「フン、他愛もない」
「ですの。じゃあ続きをしましょう、おじ様」
「言われるまでも……むっ!?」

倒したと思ったユーゼスの顔に走る驚愕。
キングジェイダーを包んだ黒い繭から、輝く何かが飛び出した。
その何かは進路を遮るメディウスやガンダムヘッドを弾き飛ばし、キングジェイダーの頭上100mというところで停止。
何か――ガンダム。
シャギア・フロストの駆る、ニュータイプ専用モビルスーツ・ガンダムF91。

何かと思えば、と失望したユーゼスの前で、F91はその輝き一気に強める。
全身から黄金の閃光を放つ。その光に触れたメディウスとガンダムヘッドが消し飛び、キングジェイダーを捉える繭が瓦解した。
そのF91、命を燃やし力へと変えるシャギアの最期の咆哮が轟く。


「刮目せよ! これが我らのッ!」


ゲッターシャイン――見る者が見ればそう言ったかも知れないその輝きを身にまとい――


「乾坤一擲の合体だぁぁぁぁッッ!」


――キングジェイダーの頭部へと、激突する!


「パイルダァァァァァァァァァァァアアアアアアアアッ! オォォォォォォオオオオオオォォォォォォォォォンッッ!」


もはや光そのものとなったF91と、キングジェイダーの頭部・ジェイダー。
光の中で、二つは一つになる。
キングジェイダーの持つJジュエルの力を、保管されていたレース・アルカーナが増幅する。
F91のサイコフレームがその発生した莫大な力を変換し、力場へと変える。

やがて光が収まり、キングジェイダーの頭部に新たに生まれたもの、それはガンダム。
ジェイダーとF91が融合し生まれた巨大なガンダムフェイスが、金色の煌めきと共に顕現する。

「こ、これは……!?」
「一体なんですの……!?」

「聞かれたなら答えよう。これが我らの新たな力――ガンダムキングジェイダーであるッ!」
「これが僕達の……いいやッ! 僕達が、ガンダムだッ!」


キングジェイダー、いやガンダムキングジェイダーが、虹色の翼を広げる。

「プラズマウイングッ! 」

ガンダムフェイスが開く。そこから漏れる黄金――ではない、虹色の輝きが、機体を包み込んだ。
キラのいる――もう、コクピットと呼ぶ事もおかしい――輝きに満ちた空間。
後ろにはシャギアが、隣にはトモロがいる。
心の中に浮かび上がる、ガンダムという言葉。

General Unilateral Neuro - link Dispersive Autonomic Maneuver ___Synthesis System 、と言うのがストライクの起動時に浮かび上がったガンダムの由来。

ふと思いついて入力する。

Getter United Newtype Destiny Alter Machina. 訳するなら、『絆を得て新生せし運命を変える機械神』……とでもいったところか。

文法はデタラメだし、意味が通るでもない。
でも別にいい。大事なのは気持ちだ。
ゲッター、ニュータイプといった言葉。
仲間達との繋がり。
そして運命を変えていく事。

この機体に込めた思いはそんなものだからだ。

「さあ、キラ・ヤマト。終わらせるぞ!」
「はい!」

シャギアが、右腕を伸ばす。
ガンダムキングジェイダーの存在しない右腕に、真紅の輝きが溢れ腕の形を成す。

キラが、左腕を伸ばす。
ガンダムキングジェイダーの存在しない左腕に、蒼天の煌めきが生まれやはり腕の形に。

光が構成する腕を、重ね合わせる。

『ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォー……』

トモロが唱える呪文のような言葉・その意味は、『二つの力を一つに』。


赤い宇宙を満たす虹色の輝きがゼストを、デビルガンダムを包み込み、引き寄せる。

「なんですの……機体が!」
「動けゼスト! なぜ動かん!?」

引き寄せ、密着する二機の周囲をそれぞれが生み出した眷族が蟻のように囲む。
創造主を守ろうとするその蟻達をは、しかし虹に触れた瞬間に消し飛んで行く。

ガンダムキングジェイダーが、組み合わせた両腕を突き出す。
その身体から光がレールのようにゼストとデビルガンダムへと伸びて、『狙いを定める』。

「受けてみろ……この一撃を!」
「僕達の想いと力――自由と正義を!」
『絶対無限の、勇気の力を!』

言葉はなくとも心で通じる。
キラと、シャギアと、トモロの全てが同化し、駆け抜ける!



「……ば、馬鹿な……この私が……全能なる調停者たる……このユーゼス・ゴッツォが……!」
「嘘……こんな事が……!」


神になろうとした仮面の男、
意志を奪われ創られたかつて人を理解したアインスト、
一切の区別なく、彼らは叫ぶ。
未来を拓く、そのために。
これで全てが終わるのだとしても、後悔はない。
生きた証、この炎はきっと消える事無く、受け継がれているから。
だから、






「「『ウィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイタァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」 」』







全てを浄化し、消滅させる光が、赤い宇宙を純白の閃光で塗り潰し――


     □



「キラ……!」
「空が……割れる……!?」

アイビスとロジャーが見上げる空に、一際大きな閃光が奔る。
キングジェイダーがゼストを引き連れ突破していったゲート。
F91をもまた、ロジャー達に何も言わずにそこへ飛び込んでいった。
先程まで荒れ狂う力が噴き出していたその穴も、閃光を境に凪のように静まった。
しかし同時に凄まじい規模の地震が二人を襲う。接地していたブレンが堪らず空中へ飛び難を逃れた。
凰牙もそれに倣う。
だが宙にいても震動が感じられる。揺れているのは地面ではない――この世界そのものだ。

「このままではこの世界が崩壊する! 危険だが……あのゲートへ飛び込むぞ!」
「で、でもサイバスターとラーゼフォンはどうするの! キラ達だって帰って来てないのに!」
「サイバスターは私が背負っていく。君はソシエ嬢とバサラ君をコクピットに乗せるんだ!」
「ロジャー!」
「キラ君達の事はどうしようもない! 今は我々が生き残る事を考えろ!」

ロジャーの怒声に、渋々ながらアイビスは折れた。
ここで待っていれば自分達もこの世界の崩壊に巻き込まれる。
であるならばゲートの向こう、主催者達のいるところにキラ達が辿り着いている事を願うしかない。

ブレンが飛ぶ――いや、飛ぼうとした。しかしその身は荒れ狂う風に押され、自由に動くことがままならない。
体勢を崩したブレンを引っ張り上げ、凰牙は再度着地する。

「くっ、これでは身動きが取れん!」
「ロジャー、カミーユが!」

アイビスの声に目を向けると、大地にぽっかり空いた奈落――暗い深淵の穴に、サイバスターが今にも落ちようとしている。
ゼストをこの世界から放逐した際、カミーユの疲労はついに限界を突破したのだ。
声を掛けたくらいでは気付かない――

「いかん、カミーユ!」
「ダメ、起きて! カミーユ!」

そうとは知りつつ、必死に叫ぶ二人。願いも虚しく落下していくサイバスター。
後を追ってブレンが飛び出そうとして、その手をやはり凰牙が掴み押し留める。

「離してロジャー! カミーユが!」
「君まで死ぬつもりか!?」
「だって、他にどうしようも……!」

落ちていくサイバスターへと必死に手を伸ばすアイビスとブレン。
届くはずのないその手に、ロジャーが無力を痛感し歯を食い縛る。

「済まん……!」

ブレンを抱えゲートへ向かおうとしたその時、

「ロジャーッ! 勝手に諦めてるんじゃないわよ!」

ロジャーの耳に飛び込んできた、少女の声が。
少女の声と共に聞こえてきたバサラの歌が。

絶望に支配されかけた心を乱暴に掬い上げる。
それだけではなく、凰牙とブレンが光の膜で包まれた。
そして黙然と奈落に落ちて行ったサイバスターまでもがその膜に包まれ、浮かび上がって来た。

「いい、ロジャー? 今からあなた達をあのゲートの向こう側まで飛ばすわ。衝撃がすごいらしいから、舌を噛まないように気をつけて」
「向こうに飛ばすって……何言ってるのソシエ! 早くあなたもこっちに!」
「聞いて! バサラが、ラーゼフォンならそれができるって言ってる。ゲートの向こうで戦ってた三つの力が消えたらしいわ。
 今なら干渉されずに主催者の所へ行けるはずだって。ただ場所の指定とかはできないから、向こうに着いたら急いで合流するのよ!
 まだあのガウルンと統夜ってのが生きてるかも知れないら気をつけて!」
「待て、何を言ってるか理解できない。我らを移動させるのはいいが、気をつけろとはどういう事だ?」
「ラーゼフォンはここにいる全ての生命を転移させる……とか言ってたのよ! だから、もしあいつらが生きてたら一緒に飛んでっちゃうの!」
「選別できないという事か……! とにかく詳しい事は後で聞く! 君もこっちに移れ!
 ラーゼフォンの状態では生身の人間がゲートに飛び込むのと大して変わらん!」

だが、その答えが返ってくる前に凰牙とブレン、サイバスターは浮上していく。
見る間に地上――そしてラーゼフォンが離れていく。
歌い続けるラーゼフォンの足元はもう崩れ始めている。

「ごめん……ラーゼフォンがここに残らないと、あなた達を転移させられないの。もう間に合わないわ」
「何を言っているんだソシエ・ハイム! 君とバサラ君だけでも連れて行く!」
「わかってるでしょ? ラーゼフォンはバサラの歌がないともう動けない。ここを動くわけにはいかないの……」
「ちょっと、ソシエ!」
「ロジャー、ブタ……じゃないや、ボアをお願いね。私の代わりに契約してあげて」

ぞくりとするほど平静なソシエの声。
その瞬間ロジャーはわかってしまった。これは――運命を受け入れた者の声だ。
ラーゼフォンから緑色の猪――データウェポンが飛んで来た。契約を、解除したのだ。

「だったら! だったら君だけでも……!」
「ロジャー、それ以上は言わないで。あなたは人の命に順列をつける人じゃないでしょ? あまり、カッコ悪いとこ見せないでよ。
 気持ちは嬉しいけど、私を助けに来たらあなたまで助からない。だから、いいの」
「ソシエ……!」
「アイビス、ロジャーとカミーユをお願いね。男っていつも自分達だけで突っ走って行っちゃうんだから、あなたがしっかり手綱を握るのよ?」
「認めん、認めんぞ! 君達が犠牲になるなど――!」

抗えない力で天へと昇る機体達。
必死に叫ぶ。決して届かないと、心のどこかでわかっているけど。
ついにゲートへと到達。飲み込まれる一瞬――

「さよなら……ロジャー、アイビス、そしてカミーユ。負けないで……生きて。私達の分まで……」

それが、ロジャー・スミスが聞いたソシエ・ハイムの最後の声だった。


     □


「行ったわね……これで良かった? 寝ぼすけさん」

ゲートの向こうに消えた仲間達を見送り、ソシエはその男の横に腰を下ろした。
気掛かりはやはりもう一つ昇って行った光だ。統夜かガウルンか、それはわからないがどちらにしろ敵である事に違いはない。

「まあ……気にしても仕方ないか。もう私達にはどうしようもないものね」

返答はない。
理由もわかっている。男の呼吸は、随分前から止まっていたのだから。
それでもラーゼフォンは歌い続けている。まるで主の命をもらったかのように。
バサラはその命が尽きてなお、ギターを演奏する事を止めなかった。
指だけが勝手に動いている――歌に命を掛けるのも、ここまでくれば本物だ。
やがて、ギターの音色が途切れる。つられるように、ラーゼフォンの歌も。
結局最期までよくわからない男だったが、歌いたいだけ歌ったのなら、きっと満足して逝ったのだろう。
バサラの安らかな、とても死んでいるとは思えない笑顔を見てそう思った。

「あーあ……キラの奴。一発ぶん殴ってやろうと思ってたのに……ええ、わかってるわよ。多分、キラももう……」

キラとシャギアが消えてまだ五分も経っていない。
でもわかる――あの向こうで、きっと彼らは戦っていたのだ。自分の命と引き換えに、仲間の道を開くために。
独り言なんてした事はあまりないが、言わずにはいられない。
バサラが聞いてくれるだけでいい。それだけで、一人じゃないというだけでなんだか救われる気がする。

「みんな、死んじゃったのね。私ももうすぐ……でも、不思議。あんまり怖くないの。何でかしらね?」


言って、多分それは全力で生きたからだろうと思った。
生きている熱を感じる事が出来た。その熱があったから、ここまで来れた。
そして、炎はまだ絶えてはいない。
あの空の向こうに、同じ炎を灯した仲間達がたしかに存在する。

だから、後悔はない。悲しくはあるけど……それでも、笑って今という時を迎えられる。
ふと思いついて、バサラの頭を膝の上に載せた。
幼い頃、姉がよく歌ってくれた子守唄。あれはどう歌うんだったかと、古い記憶を掘り起こす。

やがて溢れ出すメロディが、ラーゼフォンを満たす。
よく眠れるでしょう、と微笑み、空を見上げたその頬を一筋の涙が切り裂いた。
ソシエの見ている世界が歪み、溶けて消えていく。
その向こうから覗く紅い宇宙が、なんだかとても哀しく思えた。


「ロラン……もう一度、会いたかったな」



その願いは、もう、誰にも届かない――


     □



目覚めたらそこは別世界だった。

これが冗談抜きではなく、アキトの瞳に映るのは、どこまでも広がる赤い宇宙。
ガラス越しの宇宙、そして崩れゆく木星のような星を感情のない眼で見つめる。
あの星こそが、先程まで放り込まれていた殺し合いのフィールドなのだろうと思った。

座り込んでいた身を起こす。
薬を飲んだときからではあったが、思うとおりに身体は動く。
だがそれだけではない違和感――右腕を見てわかった。
ナデシコの乗員、いや火星出身者なら誰もが持つナノマシンの存在を示す痕がない。
おそらく薬の影響もきれいに消え去っているだろう。

「あの時……俺はやはり、一度死んだのだろうな」

ゼストへと取り込まれ、意識を失った後。
あの時点でアキトの身体はもう失われていたのだろう。

「だが、ユーゼスが滅びたのなら何故俺はここにいる……? それに、あの夢は……」

ゼストの中で見た、不思議な夢。
幾多の世界で繰り広げられる戦い、その中にはアキト自身もいた。
アキトだけではない。
ナデシコが、ゲッターが、マジンガーが、ガンダムが、ラーゼフォンが、騎士凰牙が。
カミーユ・ビダンが、神名綾人が、兜甲児が。
今より若い時分の――コックをしていた頃のアキトが、あのキョウスケ・ナンブと共に戦ってすらいた。

何より、彼女がいた。
たとえ誰かを殺してでも取り戻したいと願った、最愛の人――

「……ユリカ」

夢の中で、確かに彼女が隣にいた。話した、のだと思う。
しかし何を話したか情けない事に覚えていない。
胸の内に引っ掛かる、棘のような痛み。
何か、とても大切なことを言われた気がする。

でも、パズルのピースが抜け落ちたように、その部分だけがどうしても思い出せない。
溜息を吐いてアキトは振り返った。

そこに鎮座する、一機の機動兵器。
名を、アルトアイゼン・リーゼ。
鋼鉄のベーオウルフの異名を取る、キョウスケ・ナンブの愛機。
気がついた時、何故かこの機体がこの機械の星に打ち捨てられていたのだ。

まさか、一度乗り捨てた機体が巡り巡ってまた自分の所に戻ってくるとは。
これもあの無愛想な男の意趣返しか、と皮肉気に笑う。

体調は万全。
機体のコンディションも問題はない。
いつでも動ける――戦える。

だが、アキトの足は棒になったかのように動かない。
何故なら、それまでのアキトを突き動かしていた胸を焦がすような想いが、どこかに行ってしまったから。

ユリカを取り戻したいという気持ちに変わりはない。
しかしどうにも、燃え上がるような感情が湧いて来ない――これは一度死んだからだろうか、それともあんな夢を見たからなのか。
わからない。どうしたいのか、どうしたかったのかを。

ふと、思い付く。ガウルンはどうなっただろう。
生きているならば――どうするのか。
倒す、その気持ちに偽りはないが、以前と同じ気持ちで奴の前に立てるのか。
しかしこれまた何故か、おそらく奴は生きていないだろうという気がした。
理由はない。強いて言うなら勘、だろうか。
奴はあの星にいる。いや、いた、というべきか。
奴の輝きが消えた。アキトの第六感が――ゲッター線に触れたアキトの感覚が、そうではないかと告げている。

奴を討ったのは、多分あの統夜という少年だ。
テニアという少女も生きていないだろうと、これまた勘で予測した結果残るのはその少年のみ。
なんとなく推測できる。
あの少年と少女は、要するにアキトとユリカなのだ。
ガウルンは二人の関係をアキト達のそれに見立て、同じ事を繰り返したのだろう。
そして望み通りガウルンは統夜に撃破され、アキトの手の届かない所へと行ってしまった――という事だ。

「……あの少年を探すか」

思い立ち、アルトへと乗り込む。
どうせ、生き残った者はここへ攻め込んで来るだろう。
できればそいつらより先に統夜に会いたい。
会って、自分がどうするのか、自分と同じ存在となった少年に何を思うのか確かめたい。
ユリカを失ったアキト、テニアを失った統夜。
選ぶ道は同じものなのだろうか。それを、知りたい。

そして男は動きだす。
自分と同じ魂の形、欠けた月のような心を求めて。











【バトルロワイアル会場 崩壊】



【三日目 2:00】

【フェステニア・ミューズ 死亡】
【ガウルン 死亡】
【シャギア・フロスト 死亡】
【ユーゼス・ゴッツォ 死亡】
【キラ・ヤマト 死亡】
【ソシエ・ハイム 死亡】
【熱気バサラ 死亡】

【アルフィミィ 死亡】


【残り 5人】



【カミーユ・ビダン 搭乗機体: サイバスター
 パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(極大) 気絶 首輪解除
 機体状況:オクスタン・ライフル所持 EN30%  
 現在位置:ネビーイーム内部
 第一行動方針:???
 最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
 備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
 備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
 備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能
 備考4:サイバスターと完全に同調できるようになりました
 備考5:ファミリアA.R・C.A・K.Nを創造(喋れない・自意識はない)】

【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況: 疲労(大) 首輪解除
 機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN20%  無数の微細な傷、装甲を損耗
 第一行動方針:仲間と合流する
 最終行動方針:精一杯生き抜く。自分も、他のみんなのように力になりたい
 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】


【紫雲統夜 登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状態:疲労(極大) 絶望 気絶
 機体状態:左腕使用不可 シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN20% ガーディアンソード所持
 現在位置:ネビーイーム内部
 現在位置: ネビーイーム内部
 第一行動方針:優勝するため、全ての参加者を殺害する
 最終行動方針:テニアを生き返らせる】


【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
 パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数  首輪解除
 機体状態:右の角喪失、 側面モニターにヒビ、EN90%  斬艦刀を所持
 現在位置:ネビーイーム内部
 第一行動方針:仲間と合流する
 第二行動方針:アキト、統夜と交渉する
 第三行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
 備考1:ワイヤーフック内臓の腕時計型通信機所持
 備考2:ギアコマンダー(黒)と(青)を所持
 備考3:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
 備考4:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)携帯
 備考5:バイパーウィップ、ガトリングボアと契約しました】


【テンカワ・アキト 搭乗機体:アルトアイゼン・リーゼ
 パイロット状態:健康 首輪解除
 機体状態:良好
 現在位置:ネビーイーム内部
 第一行動方針:統夜を探す。それ以外は……?
 最終行動方針:???】






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