ブレンとグラン ◆OBzaXJXIWo



「アイビスならやれるよ」
そうだ。やれるはずだったんだ。
「大丈夫、アイビスならやれるわ」
急加速のG、反転する視界、空が、離れる。
「この、負け犬が!」
私は、飛べる?飛んでいられるの?
違う、飛んでるんじゃない?───落ちている!
視界が、海を捉える。
どうして?どうしたの?アステリオン!?
脱出装置のレバーを探る、どこに!?
見付からない、解らない、墜ちる─────


「ッは!?」
「…やっと起きたか。──さっきはすまなかったな、叩き落とすしかなかったんだ」
……………毛布?
目の前に居たのは、毛布を被せられていた自分。そして───
「暴れるなよ──あんたは疲弊している。どうやらあんたはアンチボディとやらには適性が無いみたいだな」
マグカップを持った、ツリ目の青年だった。
「あ、アンタは───」
「ジュシュア・ラドクリフ、流れ者の傭兵さ。君は?」
「あ………アイビス・ダグラス」
ペースを狂わされてしまった。
「やれやれ、腹減ってないか?」
何を言い出すの、コイツ?この、こんな殺し合いゲームのさなかに───そうだ、確かポケットに───
「そういえば、拳銃とかそういうのは没収されちまったらしいな」
「……………」
無かった、確かに。
「────ほら。レトルトだが、無いよりマシだろ?」
「あ………ありがとう」
マグカップに入ってたのは、レトルト食品「母さんのシチュー」だ。
「………匙」
「ほら」
差し出されたスプーンで、アイビスはシチューをがっつきはじめた。


「っぷはぁ!」
「よく食べるもんだな……」
「……ごちそうさま」
赤毛の少女──アイビスは、まだジョシュアを警戒していた。攻撃してきた相手に、食糧を別ける………そんな道理はないのだ。
「ところで……一つ聞きたいことがある」
「?」

「あの機体に乗ってて、普段と違ってた所?」
「あぁ、今のアンタは、さっきまでのアンタとは違い過ぎる。
(……普段のアイビスが今のアイビスだとしたら、あの機体に何かあるはずだ)」
「………特には、何も」
「本当に?」
「……ちょっと頭痛がしたくらい」
「………」
ジョシュアは思う。
アンチボディ………半機半生のこの機体の特性。それは何だ………………?
(乗ってみないと解らないな………)
「アイビス」
「な、何よ?」


「アタシがその機体に?」
「俺がその赤いヤツに乗る」
「………何でさ」
「さっきみたいに、また俺にヒステリックに攻撃されたら困るからな。……大丈夫、ブレンは優しいよ」
「………」
「……嫌ならここに縛って放置していく。自分が捕虜だということは理解出来るな?」
「………解った」
こうして、アイビスが薄桃色のブレンパワード…ヒメ・ブレンに、ジョシュアが紅いグランチャー…クインシィ・グランチャーに乗ることになった。

「これは………くっ………」
グランチャーに乗ったジョシュアに、容赦の無い頭痛が襲う。
(この頭痛……お前か、お前なのか、グラン………)
グランチャーのコックピットに、冷たい風が吹き込む。
(………)
(何だ…………抗体?…………オルファン………守る?)
(…………)
(……オルファンを守りたい?……だがそのオルファンとやら、どこにあるんだ?)
(……………)
(………ブレンパワードはオルファンに仇為す?………違う、ブレンは優しいんだぞ!グラン!)
(……………)
(………このゲームのフィールド上に……そのオルファンとやらはあるのか?)
(…………)
(………ない………んだな?だから………どうするんだ?このゲームから抜け出したいんだろ?)
(………)
(……じゃあ……ブレンとも協力するんだッ!)
(……)
(こんなところで………喧嘩はここでするんじゃない!戻ったら存分にやればいい!だから今は…………俺の頼みを聞いてくれ………)
(…)
「………解ってくれ、グラン。俺には守りたい人がいるんだ!」

「だ………大丈夫?」
「アイビス………か」
通信機ごしに、憔悴しきった声が聞こえた為、アイビスは少し驚いた。
「大丈夫………だ」
「ほ、ほんとに大丈夫なの?」
「あぁ」
(グランチャー………すまない。お前の力が必要なんだ)
ジョシュアはグランチャーを説得し、何とか動かした。
(…………)
(………?……解った、ありがとう。グラン)
「……ど、どうするのよ?」
「…西の水辺……A-3の方に行く。アンチボディは水圧に耐えれる作りらしいからな。水中を潜行して北のA-1へ向かう………出来るだけ戦わないようにな」
「わ、解った……」
そして………紅いグランチャーと、優しいブレンは、水辺の方へ移動を開始した。




【ジョシュア・ラドクリフ 搭乗機体:クインシィ・グランチャー (ブレンパワード)
 パイロット状況:少々の頭痛
 機体状況:ジョシュアに説得されて、協力している。無傷。
 現在位置:B-3からA-3へ移動中
 第一行動方針:とりあえず西へ
 第二行動方針:水中潜行し、北へ向かう
 第三行動方針:ラキを探す
 最終行動方針:ゲームから脱出】


【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ヒメ・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:戸惑い
 機体状況:ブレンバー等武装未所持。手ぶら。機体は無傷。
 現在位置:B-3からA-3へと移動中
 第一行動方針:ジョシュアについていく
 最終行動方針:……どうしよう】

【時刻:14:00】




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……ぶっちゃけ、すっげー恥ずかしかった 時系列順 そして騎士は走り出す

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アンチボディ、二体 ジュシュア アンチボディー ―半機半生の機体―
アンチボディ、二体 アイビス アンチボディー ―半機半生の機体―



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