お姉さんと一緒 ◆T6.9oUERyk



目覚めた場所はどうやら自分がマジンガーZを隠していたような大型ガレージの中らしい。
最もマジンガーZの倍以上ある赤い機体を楽々と収容できるなんて、唯のガレージとしてはいささか広すぎる気もするが。

「お目覚めかい?」
その声を聞き恐る恐る顔を上げると、やたら尊大な態度で見下ろしてくる一人の少女が。
「ふん、意識ははっきりしているようだな。安心しろ、殺しはしない。何せ…」
そこでいったん台詞を止め、彼女は“にやり”と唇を歪める。
「色々と聞きたいこともあるからな。」
ガロードの頭の中では物凄い音量で警戒警報が鳴り響いていた。


「とりあえず自己紹介しておこうか。私はクインシィ、クインシィ・イッサーだ。お前は?」
(逆らっちゃダメだ!)
ガロードの生存本能が警告を発する。
「オレはガロード、ガロード・ラン。ところでお姉さん…」
「なんだ?」
「話しをするのはいいんだけどさ、その前に毛布を解いてく…」
物凄い目つきで睨まれた
「やっぱりいいです、何でもないです。あはははぁ…」
乾いた笑みを浮かべながら、ガロードの脳みそはこの絶体絶命の窮地を乗り越えるべくフル回転する。
「ええと、お姉さんは何が聞きたいんでしょうか?」
「そうだな、先ずは伊佐美勇という名前に心当たりはあるか?」
首を横に振る
「では青いブレンパワードは?」
「ブレンパワードってのがどんな物かは知らないけど、ここに連れて来られてからはまだお姉さん以外の機体には遭遇していないよ。」
見下ろしてくる顔が見る見る不機嫌になっていく。
ヤバイ、と焦りを感じガロードは何とか話題をずらそうと試みる。
「そ、そうだ!!お姉さん、そのイサミユウって人はどんな人なんだ?」

この迂闊な質問のせいで、哀れガロードは2時間近く延々とクインシィの惚気話を聞かされる羽目にあった。

「~誕生日プレゼント、って花を摘んできてくれてね。勇ったら本当にやさしくて……どうした顔色が悪いぞ?」
宝石のごとく美しき思い出を語るのを中断し、クインシィは心配そうに簀巻きにしたガロードを伺う。
真っ白に燃え尽きてしまったガロードであったが、
ここで下手な対応をするとたちまちクインシィの機嫌が悪化することをこの二時間でいやと言うほど思い知らされていた。
「…ああ、実はオレ丸一日メシ食ってなくてさ…」
「そうなのか」
しゃがんでガロードの顔を覗き込んでいたいたクインシィは素直に信じると、
「そういえば私もだいぶ前に食べたきりだ。丁度いい、昼食にしよう。」
そのまま赤い巨人へと食料を取りにいく。その背中を見送りながらガロードは思わず安堵した。

話してみて判った事だが、クインシィは悪い人間ではない。
今のようにこのゲームで出会ったばかり(それも一戦交えた)の赤の他人を本気で気遣ったりするあたり、本質的には優しい女性なのだろう。
問題は彼女が恐ろしく短気で、考え方が短絡的で、その上思い込みが激しいということなのだが…
はっきり言って信管がむき出しの爆弾のようなモノである。いつ暴発するかわかったものではない。
いや、爆弾のほうがまだマシだろう。危険な爆弾は処分すれば済むが、彼女の場合は下手するとこちらが処分されかねない立場だ。
(ティファ、助けてくれ…)
今は会うことの出来ない思い人に、救いを求める少年であった。

そのうち、美味しそうな匂いが漂ってきた。
その匂いにつられ顔を上げると、両手に湯気の立つマグカップを持ち小脇にパンを挟んだクインシィが歩いてくる。
「ほら、パンとシチューだ。」
と告げ、彼女はガロードの前に床に座る。
空腹だったのは事実なので、ガロードは歓喜とともにマグカップに手を伸ばそうとし… 自分が簀巻きにされている、という事実を思い出した。
「こっちが“母さんのシチュー”でこっちが“ドンキーのパン”だそうだ。中々おいしいそうだぞ。」
「確かにうまそうだけどさ、ちょっといいかな?お姉さん。」
「何だ?」
「オレ、このままだと食えないんだけど?」
なんだそんなことか、と言わんばかりの表情で彼女は床に置いたマグカップからスプーンでシチューをすくい
「ほら」
ガロードの口元にスプーンを持っていく。

「…」
「どうした、食べないのか?」
「いや、そういうわけじゃなくて…」
何とも言い難い表情のガロードをいぶかしそうに見るクインシィだが
「ああ、そうか!」
何か納得がいったらしく、スプーンを自分の口元に持っていき口で吹いてシチューを冷ます。
冷ましたシチューを改めてガロードの口元へと持っていき、一言。
「お前、猫舌なんだな」
(ごめんよ、ティファ…)
その一言で諦めのついたガロードは、口の中だけで思い人に謝罪し…
「ほら、あ~んして」
顔を真っ赤にしながら口を開いた。

年上の美少女に手ずから食べさせてもらうという、ある意味では非常に羨ましい・・・
しかし、純情な少年にとっては拷問に等しい一時を終え、ガロードとクインシィは本格的な情報交換を行う。
「ふうん、宇宙革命軍にコロニー落しね。どうやら私たちは並行世界から連れて来られた様だな。」
「だろうね。オレもオルファンとかリクレイマーなんて聞いたことないし。」
まともな教育というものを受けたことのないガロードとって歴史とは15年前のコロニー落しから始まるものだ。
それでも大人たちから15年前以前の出来事を聞きかじったことはある。
クインシィの言うオルファンなどと言う代物が存在していたなら、必ず耳にしたことがあるはずだ。
「ええと、そのヘイコン世界だっけ?」
「並行世界だ、異なる可能性を選んだ似て非なる世界。」
「その並行世界だけど、オレたちを集めたあの化け物はさ、そんな色々な世界に干渉できる力を持っているんだよな・・・?」
話のスケールが大きすぎ、いまいち実感のわかない様子のガロードに対しクインシィは重々しくうなずく。
「恐らく・・・あいつは神にも等しい力を持っているのだろう。」
「やれやれ戦争の次は神様か・・・」
ため息をつく。
しかし、とガロードは思う。諦めるわけにはいかない、彼には帰りを待つ人がいるのだから。
「ニュータイプだろうが神様だろうが、オレは諦めない。オレは必ずティファのとこに帰ってみせる!」
確かな決意を言葉に表すガロード。そんな彼をクインシィはやさしく見つめる。
生まれた世界は違えど、同じように“家族”を失い孤独に生きてきた少年に密かな共感を抱く。
「そうだな、私も早く勇を見つけてあげなくちゃ・・・」
うつむき、悲しげにつぶやく。

   にぃ

と陰惨に唇を歪めながら。
簀巻きにされたままの少年はその表情に気づけまま、励ますように言う
「そうだよ、お姉さんも早く弟さんを見つけなくちゃな。弟さんだってきっとお姉さんのこと探してるぜ。」
失われる前に探せ、と促す。彼女はまだ自分が失った大切なものを持っているのだと思い込んで。
少女もまたうなずき返す。失われた“理想の”家族を取り戻す為に。




【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ!)ゲッターロボ~地球最後の日)
パイロット状態:良好、ガロードと話をして精神的にやや安定
機体状態:ダメージ蓄積、ドリルテンペスト一発分EN消費
現在位置:B-1 市街地のビルの超大型ガレージの中
第一行動方針:捕虜(ガロード)と話をする
第二行動方針:勇の撃破(ネリー・ブレンに勇が乗っていると思い込んでいる)
最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】

【ガロード・ラン 搭乗機体:マジンガーZ(マジンガーZ)
パイロット状態:全身鞭打ち・簀巻き、クインシィにやや興味を持っている
機体状態:装甲にダメージ蓄積・片腕喪失(近くに落ちている)・ドリルミサイル10数ほど消費・ルストハリケーン一発分EN消費
現在位置:B-1 市街地のビルの超大型ガレージの中
第一行動方針:お姉さんと話をする
第二行動方針:何とかして毛布を解いてもらう
最終行動方針:ティファの元に生還】
備考:クインシィは気絶したガロードをマジンガーごとゲッターで持ち運びました。

【初日 15:30】




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黄色い幻影 投下順 貫く、意地
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マジンガーZvsゲッターロボ! ガロード 混乱



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