はじめに
2017年9月、判定可視化やベクトル変更自動化など様々な機能を備えたトレーニングModパックが海外で製作・配布されました。もともとこれは海外版のスマブラでしか動作しないものですが、原案および初期の開発を国内の検証勢が進めていたこともあり、日本版スマブラでも動作するように手を加えたパックを現在二次的に配布しています(製作者の了承は得ています)。
その利便性からトレモパックを使用して練習したいというプレイヤーが一定数現れ、それまで検証勢や興味のあるごく一部のプレイヤーにしか導入されることのなかったWiiUのハックが急速に普及しつつあります。
こうした現状を踏まえ、まずはハックについてきちんとした知識をプレイヤーに持ってもらうこと、そして起こりうる問題をある程度ハック使用歴が長い人間の立場から述べることを目的にこの記事を執筆しようと思います。
基礎知識
現在最も普及しているハック方法(当wikiでも紹介している方法)の特徴をコンパクトにまとめました。
具体的な手順は
真・解析の手引きで。
以降の文章では
- ハック … WiiUのセキュリティシステムを突破すること
- Mod … ユーザーが読み込ませようとしている改造データ
という意味で使用します。
<ハック方法の特徴>
- 読み込むデータは全てSDカードに記録されている。
- WiiU起動の度にハックし直す必要がある。
- ハックにはHaxchi(後述)の起動か、オンライン環境が必要。
<ソフトの概要>
-
Haxchi
- オフライン用ハックシステム。
- DSバーチャルコンソールソフトを媒体にし、WiiU本体メモリーにインストールする。
- ゲームソフトの要領で起動できる。起動すればWiiUがハック状態になる。
- 「設定>データの管理>...」から簡単にアンインストール可能。
- 再インストールはやや面倒だが、何度でも可能。
-
HomebrewLauncher
- ランチャーソフト。ハックしたWiiU上で起動させ、SDcafiineなどのソフトを扱う。
-
SDcafiine
Modパックを利用する人が扱う範囲ではこんなところです。
特にハックのON/OFFに注目してまとめると、
-
再起動すればハック状態はリセットされる
-
WiiUメニューでHaxchiを起動しなければハックしていないWiiUと同等に使える
-
SDカードが挿入されていなければModデータは読み込めない
となります。
注意事項
オンラインについて
Modを読み込んだ状態でオンラインに繋がないようにしてください。
相手のWiiUとデータ処理が噛み合わずに同期ズレを起こし、フリーズを起こす可能性があります。
利用規約まわり
当然と言えば当然なのですが、ハック行為はおそらくWiiU利用規約の「不正に改造しないこと」に反しています。仮にそれに該当しなかったとしても、何かの際に正当な行為と認められる可能性は低いでしょう。また、ハック状態でオンラインに繋ぐことも同様の文面で禁止されています。
ちなみに検証勢がやっているデータの解析は禁止されている「リバースエンジニアリング」にあたり、より高い確率でアウトです。てへぺろ。
ただ今までWiiUの改造プレイで任天堂との間に深刻な問題が起きたというニュースは聞きませんし、セーブエディターが普通に店頭に並んでいたりもしますから、今は任天堂も目を瞑ってくれているのでしょう。ハック環境を導入したからといってすぐに裁判沙汰になるようなことは考えにくいですが、こういった事情があることを把握した上で自己責任で利用しましょう。
<追記>
利用規約はWiiUを使用する上での単純な注意事項であり、違反がすなわち違法行為となるわけではないとする見方が正しいのかもしれません。実際に訴訟の可能性があるとすれば製作物に許可を得ず手を加えているための著作権侵害の方が有力ですが、もしそうだと仮定すればファンアートへの公式の対処などと同様の問題であり、企業の裁量次第となります。(私も法律に詳しいわけではないので断定はできませんが…)ちなみに、フリーズなどのエラーで他のユーザーに迷惑をかけることは任天堂への営業妨害と捉えられうる行為と言えるでしょう。
コメントありがとうございました。
いろいろな問題
上でも触れていますが、あんなことやこんなことをしている検証勢の私は既に色々アウトです。観念している立場からの意見ということをお忘れなく。
利用可能であることの問題性
「Modの利用という不当な方法での練習が
可能であり
、それが対戦の勝敗に影響することが問題である」という論点について。
このロジックを通してしまうと、「解析関連で得られたデータを閲覧・利用し、対戦に役立てることが問題である」という所まで話が進む可能性があります。判定可視化画像は当然ダメで、
KuroganeHammer
のようなサイトも利用できなくなってしまいます。
ダメージくらい自分で調べられるよ!と思うかもしれませんが、
ドクターマリオ横スマ下シフト根元=19.6112%
なんてどうしようもないですよね。もちろんどうでもいいんですけど。また今になっていうのもアレですが、アップデートパッチの解明も大半は解析のお手柄です。他にも解析から得られたデータは有用なものが数多くあり、それらを全て避けつつ残らず刈り取ろうとするのは困難を極めます。もっとも、素人目には実機検証と解析の区別などつかないでしょう。
利用することの問題性
利用可能な状態自体を批判するのは難しいので、結局は「自分から内部データに手を出したか?」という点に議論を移さなければなりません。これを批評するには
- ハック行為が
ユーザー内で
悪とみなされるかどうか
- 「ドーピングは身体を蝕む」のように、そのものに害が認められるか
- 企業が絡むなら別だが現状は黙認されているので一旦置いておく
- ハック行為を見破ることができるか
- 個人の行動を問題にする以上、取り締まり可否の見極めが必須
を議論しておく必要があります。
前者に関しては、他人に迷惑をかけない範囲ならば非難の余地がないでしょう。周囲に害が及ばなければ、どのようにゲームを楽しむのも自由です。そして今のハック行為には特にこれといった害があるわけでもありません。
それでなお反論するならば「黙認されていようが、規約違反なのだから悪である」という論理になります。これについては筋が通っているので否定はできませんが、そうなると内部データ解析も同様に批判されるべきです。どのみち他人に危害が及ばない以上、最後には自己責任の話に行きつくように思いますが…
後者に関しては次に述べますが、やはりこちらも難しいですね。
ハック使用歴のあるWiiU
先述のように、WiiUは本体起動後に
毎回所定の作業をすることで初めてハック状態になります
。再起動すれば解除され、次回起動時は普通のWiiUとして何事もなく動作します。Mod使用中にフリーズなどの不具合を起こしたとしても、一度電源を落とせば本体が壊れてしまうことはありません。
「一度でもハックしたら、それ以降常時ハック状態になるのではないか?」
「ハックを失敗したらWiiUが壊れるのではないか?」
といった類の疑問・思い違いがよくありそうですが、そのようなことはありません。
私はWiiUハックを使用し続け、フリーズを数十回経験し、オンライン対戦(当然Modなし)も数千戦していますが、今のところ問題は起きていません。ハック履歴のあるWiiUとオンライン対戦したら自分のWiiUも破壊されるかもしれない…という不安はほとんど杞憂です。
ましてやHaxchiを削除してしまえば痕跡は残らず、履歴の有無すらも確かめられません。要するに、ハックしたことがあるかどうかを判定するのは非常に難しいのです。
とはいえ、この手の話に非常に敏感な人がいるのもまた事実。正確な知識を持っていてなお「ハックを一度でもしたことのあるWiiUとは対戦したくない」という方針の人がいれば、対戦を蹴られても仕方ないと覚悟しています。
オフ大会
WiiUハックに最も敏感になっているのはオフ大会に関係する方々だと思います。将来的に公認イベントを目指すのであれば公式の利用規約に触れるようなゲーム機の使用方法を認めるべきではないでしょうし、それに厳しい対処を下すのも妥当です。以前私はSHI-G加入のお誘いを受けたことがあるのですが、解析データを公開することがポリシーに反すると聞き、話し合いの末に辞退しました。残念ではありましたが、一方で運営方針がきちんと定まっていることにほっとしたのを覚えています。
しかし一人一人精査するわけにもいかない大きなイベント、果たしてどのような規則を設ければよいのか。とりあえずここでは、大会運営のためのWiiUを提供するいわゆる「持参枠」についてのみ考えます。
厳しめの措置としては、「ハック履歴が一度でもあるWiiUを持ち込み禁止にする」というようなものが考えられるでしょう。しかしここまで読んできた方ならお判りですね。これに関しては検証する方法が存在しません。私のように常日頃からModを用いた検証動画を公開していれば話は違いますが、他言せずに一人で使っている人を判別することは容易ではないのです。それに、まだまだユーザー主体で運営していかなければいけない大会において、持参できるWiiUの数を減らすのは得策ではないように思われます。
私が考える具体的な対策は以下の2つです。
A案:
SDカードが挿さっていないのを確認する。
B案:
HaxchiがインストールされていないWiiUに限定する。
ほとんどのケースではA案で事足りるでしょう。
確認は簡単ですし、うっかり挿してあったとしても、その場で外せばよいので大した手間になりません。やむを得ず挿す必要があれば、カードの中身にModデータがないこと、またはHaxchiがインストールされていないことのどちらかを証明しなければなりません。
B案は念を押す時の処置になります。闘会議のような公式大会ではこっちですね。
設定から本体内蔵メモリーを確認することになり少々面倒ですが、幸いアンインストール自体はすぐ済みます。
実はB案は、テザリングでネットに繋いでハック、という方法を潰し切れていません。
効用重視のA案、形式重視のB案といったところです。
トレモパックを使おうと考えるプレイヤーは概して真面目で、スマブラを真剣にプレイしている人が多いのではないでしょうか。そのようなプレイヤーならば「大会でのWiiUハック禁止」と呼びかけるだけで十分な気もします。持参枠についてはいくらでも手の打ちようがありますが、優良なプレイヤーが界隈から迫害されるようなことにだけはなってほしくないものですね。
筆者のつぶやき
なんかこう、今更だなあという気がするわけですよ。そりゃ普及し始めてから話題になるのは自然ですけど、ずっと悪事に手を染めてきたので「あ~そうなるのね~」と歯牙にもかけない態度を取ってしまいます。感覚が間違ってるのは私なんですが。
私自身、ゲームの改造そのものが好きなわけではありません(改造という単語も極力この記事では使わないようにしています)。数値をいじるのは検証データを取ってゲームの正規の仕様を解明したいからで、改造そのものを楽しむテクスチャハックやミュージックハックには個人的には全く興味がありません。
ただそれ以上に「バレなきゃOK」精神が強いので、他人を不快にさせない範囲なら大抵のことは許せてしまいます。所詮ゲームですし、楽しみ方は人それぞれですから。
ところで、実は今までもオフ大会に危ないWiiUをセットすることはできたんですよね。技のリアクション値や後隙など気付かれにくいパラメータを変更したModデータをSDカードに入れておき、設営中にこっそりHaxchiを起動すればよいのです。"0.9"が可愛く見えるヤバイ対戦台の出来上がり。ちなみにオンライン大会ではWiiU間の同期ズレが起きるので不可能です。
X時代のハック情勢および大会運営にはあまり詳しくないのですが、導入は今よりも簡単だったと聞きます。普及率が高くても大会はなんとかなっていた…のでしょうか。比較すれば何か学べるかもしれませんね。まあそもそも今はだいぶ状況が違っていて、
- イベント規模が大きくなり、公式が近い存在になりつつある
- SNSで色々な人が簡単に意見できる
ので、運営サイドの皆さんに頭を捻っていただき、上手いルールの作成をお願いするしかないかもしれませんね。…なんか私たちのせいですみません。
この流れで懺悔を少々。
利用は自己責任と繰り返してこそいますが、パックを配布したり解説記事を書いたりしている以上、「規約に反する行為を助長している」と批判の矛先が私に向かってくるのも致し方ないと思います。もし否定的な意見が多数寄せられた場合は配布中止・記事削除なども厭いません。運の良いことに、風向きはまだ怪しくありませんが。
最後に。
オフ大会にも全然行かないしやるところまでやっちゃってる私はハックしまくった末に出禁になろうがなんだろうが知ったこっちゃないんですが、正しくスマブラを楽しんでいる皆さんは自分の身をくれぐれも大切にしてください。トレモパックが揉め事の原因にならないことを心から祈っております。
文:DRAFIX
コメント
- (+_+) -- tt (2018-02-11 20:34:12)
- すごいですね -- も (2020-10-11 15:30:51)
最終更新:2020年10月11日 15:30