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終礼の鐘が鳴り響く。 もう小笠原も夏が終わろうとしていた。 ~The secound tour in ogasawara~ 本日の予定はすべて終わり、ここにいるのは裕王と、トラナ、そして私―風杜神奈である。 元気に荷物をまとめるトラナを横目に見つつ速やかに片付けをすませた。 「トラナ、一緒に帰ろ」 私は席を立ち、トラナの所へ向かう。トラナはその言葉ににこにこしながら何度もうなづくと元気よく歩き出した。 その横に並んで歩いていると裕王が追いついてきた。 裕王は私の王だ。そして、私は裕王の剣でもある。 こうして3人で一緒に歩いていると昔を思い出す。 それは裕王……まだ王ではなかったが……が私を置いてこの地を去る前のことだ。 まだ幼かった私は、裕王と並んでというか、ついてまわっていたというか、まだ田舎だった暁の地を歩いたことがある。昔から何かと裕王には懐いていたらしい。らしいというのはあまり記憶にないからだ。微かな記憶は色褪せず、むしろ美化されていく。だからこそ、色々と期待していたのかもしれない。  そして私はひとりこの地で剣を修練し、いつか裕王の役に立とうと思っていた。 「神奈?」 トラナがぼーっとしている私をのぞき込んでいる。いつの間にかもう下駄箱の前だった。 「ん、ちょっと昔のこと思い出してた」 「こーやってよく歩いたなって」 ……多分、裕王にとっては妹みたいなものだったのだろうけど。 靴を履き替え校門まで来ると秋津さんが迎えに来ているようだった。 秋津さんは若いけどトラナからはパパだって聞いている。 横にいたトラナがスピードを上げる。羽のような体はまさに風のように速さが乗り、秋津さんに半ばタックルに近い形で抱きついた。 もちろん、トラナのあの軽さなら倒れたりはしないだろう。 私はその行動に微笑みを浮かべながら鞄を前に抱えて挨拶をする。 「秋津さん、こんにちは~」 「あ、ああ。こんにちは」 秋津さんは挨拶慣れしていないたどたどしい挨拶のあとに、頭を下げてこういった。 「いつも、妹が世話に」 その瞬間、抱きついていたトラナが目を細める。そして同時に力が加わっている。 「ええ、トラナのパパでしたよね」 私はにこやかにそのトラナの行動を支援した。 にっこりと。 ごまかしちゃダメですよ、と言うメッセージをこめて。 秋津さんは遠くに目をやっていたけど、解っているもんね。 さらに追撃。 「そういえば、秋津さんは今何をされているんですか?」 秋津さんはさらに遠くをみる。いったい何があるんだろうね。 「あー」 「ニート」 秋津さんがごまかそうとしたところにトラナの一撃が加わる。 秋津さんはトラナを抱きかかえたまま遠くに逃げた。向こうで何を話しているんだろう。 一方そんなやりとりをしている二人を尻目に裕王が必死だ。 呼んだはずのほむらさんがみえていないみたいだった。 そのほむらさんは学校の傍で一人で鞠つきをしていた。 ……なんて古風な。 あ、走っていった。 そうこうしているうちに秋津さんとトラナが戻ってくる。 トラナが膨れている。何を言ったのか知らないけど、私は秋津さんをじと目でみる。 目をそらすところが余計に怪しい。 「怪しい……」 私のその言葉に 「ああ、うん。トラナによくしてやってくれ。仕事思い出した」 と言い残し秋津さんは逃げていった。……ニートって言われてなかったっけ? 入れ違いでほむらさんと裕王がこっちにくる。 なにかトラナと睨み合ってる。ん、どうしいたんだろう? 私はトラナに声を掛けてみた。 「トラナ、どうしたの?」 「別に」 あんまりべつにって感じじゃないけど。 「苗床か……」 ほむらさんのその発言に気分を害したらしく、トラナの反撃が始まった。 「……む。おばあちゃん、霊が見えすぎてるよ」 あわてて私は話題をそらしにかかる。この二人を一緒にしておくのは……まずい。 「ん、トラナ、帰り道にお店あるらしいけど、行かない?」 「ん」 トラナに抱きつかれながら、私はトラナをほむらさんと離そうとする。 きっと、あんまりいいことにはならない。 それに、裕王ならきっとうまくやってくれるだろう。 「では裕王、ほむらさん、私たち帰りますので」 「お、おい!わざわざ分かれなくても」 裕王が焦った感じで声を掛けてくるけど、それくらいはわかってほしいな。 わたしはにっこりと笑みを作ってわざと抑揚をつけずこう返した。 「いいえ、ちょっと寄りたいところがあるだけですよ」 背を向けて歩き出したところで後ろからこんな声が聞こえてきた。 「……まぁ子供の言うことだから。紹介しそびれましたがあのちんまいのが風杜神奈と言います。俺の剣であり、まぁ妹みたいなもんです」 道を歩きながら空を見上げながら嘆息を一つ。 不思議そうに私を見上げるトラナのに微笑みかける。 そう。昔の憧れの人は……今じゃ手間のかかるお兄ちゃんです。
*after school ~kanna's sight~ 終礼の鐘が鳴り響く。 もう小笠原も夏が終わろうとしていた。 ~The secound tour in ogasawara~ 本日の予定はすべて終わり、ここにいるのは裕王と、トラナ、そして私―風杜神奈である。 元気に荷物をまとめるトラナを横目に見つつ速やかに片付けをすませた。 「トラナ、一緒に帰ろ」 私は席を立ち、トラナの所へ向かう。トラナはその言葉ににこにこしながら何度もうなづくと元気よく歩き出した。 その横に並んで歩いていると裕王が追いついてきた。 裕王は私の王だ。そして、私は裕王の剣でもある。 こうして3人で一緒に歩いていると昔を思い出す。 それは裕王……まだ王ではなかったが……が私を置いてこの地を去る前のことだ。 まだ幼かった私は、裕王と並んでというか、ついてまわっていたというか、まだ田舎だった暁の地を歩いたことがある。昔から何かと裕王には懐いていたらしい。らしいというのはあまり記憶にないからだ。微かな記憶は色褪せず、むしろ美化されていく。だからこそ、色々と期待していたのかもしれない。  そして私はひとりこの地で剣を修練し、いつか裕王の役に立とうと思っていた。 「神奈?」 トラナがぼーっとしている私をのぞき込んでいる。いつの間にかもう下駄箱の前だった。 「ん、ちょっと昔のこと思い出してた」 「こーやってよく歩いたなって」 ……多分、裕王にとっては妹みたいなものだったのだろうけど。 靴を履き替え校門まで来ると秋津さんが迎えに来ているようだった。 秋津さんは若いけどトラナからはパパだって聞いている。 横にいたトラナがスピードを上げる。羽のような体はまさに風のように速さが乗り、秋津さんに半ばタックルに近い形で抱きついた。 もちろん、トラナのあの軽さなら倒れたりはしないだろう。 私はその行動に微笑みを浮かべながら鞄を前に抱えて挨拶をする。 「秋津さん、こんにちは~」 「あ、ああ。こんにちは」 秋津さんは挨拶慣れしていないたどたどしい挨拶のあとに、頭を下げてこういった。 「いつも、妹が世話に」 その瞬間、抱きついていたトラナが目を細める。そして同時に力が加わっている。 「ええ、トラナのパパでしたよね」 私はにこやかにそのトラナの行動を支援した。 にっこりと。 ごまかしちゃダメですよ、と言うメッセージをこめて。 秋津さんは遠くに目をやっていたけど、解っているもんね。 さらに追撃。 「そういえば、秋津さんは今何をされているんですか?」 秋津さんはさらに遠くをみる。いったい何があるんだろうね。 「あー」 「ニート」 秋津さんがごまかそうとしたところにトラナの一撃が加わる。 秋津さんはトラナを抱きかかえたまま遠くに逃げた。向こうで何を話しているんだろう。 一方そんなやりとりをしている二人を尻目に裕王が必死だ。 呼んだはずのほむらさんがみえていないみたいだった。 そのほむらさんは学校の傍で一人で鞠つきをしていた。 ……なんて古風な。 あ、走っていった。 そうこうしているうちに秋津さんとトラナが戻ってくる。 トラナが膨れている。何を言ったのか知らないけど、私は秋津さんをじと目でみる。 目をそらすところが余計に怪しい。 「怪しい……」 私のその言葉に 「ああ、うん。トラナによくしてやってくれ。仕事思い出した」 と言い残し秋津さんは逃げていった。……ニートって言われてなかったっけ? 入れ違いでほむらさんと裕王がこっちにくる。 なにかトラナと睨み合ってる。ん、どうしいたんだろう? 私はトラナに声を掛けてみた。 「トラナ、どうしたの?」 「別に」 あんまりべつにって感じじゃないけど。 「苗床か……」 ほむらさんのその発言に気分を害したらしく、トラナの反撃が始まった。 「……む。おばあちゃん、霊が見えすぎてるよ」 あわてて私は話題をそらしにかかる。この二人を一緒にしておくのは……まずい。 「ん、トラナ、帰り道にお店あるらしいけど、行かない?」 「ん」 トラナに抱きつかれながら、私はトラナをほむらさんと離そうとする。 きっと、あんまりいいことにはならない。 それに、裕王ならきっとうまくやってくれるだろう。 「では裕王、ほむらさん、私たち帰りますので」 「お、おい!わざわざ分かれなくても」 裕王が焦った感じで声を掛けてくるけど、それくらいはわかってほしいな。 わたしはにっこりと笑みを作ってわざと抑揚をつけずこう返した。 「いいえ、ちょっと寄りたいところがあるだけですよ」 背を向けて歩き出したところで後ろからこんな声が聞こえてきた。 「……まぁ子供の言うことだから。紹介しそびれましたがあのちんまいのが風杜神奈と言います。俺の剣であり、まぁ妹みたいなもんです」 道を歩きながら空を見上げながら嘆息を一つ。 不思議そうに私を見上げるトラナのに微笑みかける。 そう。昔の憧れの人は……今じゃ手間のかかるお兄ちゃんです。

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