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*告白~confession~ 走っていた。永遠とも思える時間の中を。こんな季節の祭りだというのにこの小笠原は暑い。いや、暑いのは自分の顔が赤いせいだろうか。みんなの声援は気恥ずかしくもあるが、ありがたいものだ。そして、機転を利かせてくれたポー教授に  思い返してみれば、それは先ほど呼び止めた時のことだった。突然「応援してる」の言葉と共に逃げるように走り去ったのこさん。その声は、震えていたようにも思える。  ずーっと心のどこかに引っかかっていた月子さんが指摘した言葉。いつしか疑念は確信へと変わっていた。間違いない、のこさんは自分のことを好いているに違いない。  そしてその確信は自分の背を押してくれた。あのとき確かに見たのだ、自分の事を好いてくれてるという、灰色の髪の少女の涙を。ここで行かなければ男じゃない!   『あー。やっぱりのこちゃん、星青玉くんのことが好きなんだ』  あの言葉が脳裏に繰り返される。逸る気持ちを抑えながら、本部を捜している。そして走りながらふと視線をずらすと一瞬人垣の向こうにのこさんの姿が見えた。 (見つけた!)  鼓動の高鳴りと共にペースアップ。最初はぶつかって、言葉だけの謝罪を口にしてばかりいた身のこなしが、洗練化されていく。狭いスペースを潜り抜けて人の壁をくぐり抜けた先には、跡も残っていなかった。見つけただけに入れ違いに心が軋む。  迷いは振り切ったはずだ。徒に過ぎゆく時間がとても歯がゆい。迷っている間も走り続ける。足を止めれば不安が増大するだけだった。  ピンポンパンポーン  迷いを切り裂くように、緊急連絡放送が流れた。迷子のお知らせらしい。 「天領からお越しの鋸山信児様、天領からお越しの鋸山信児様、お連れ様がお待ちですので、運営本部テント前までお越し下さい」 そう、これは教授の助けだ。感謝し尽くしてもしきれない気持ちと、一刻も早く会いたい気持ちが綯い交ぜになって、胸に渦巻く。もう、後は本部テントに行けばいい。  手近な案内板から本部の方向を割り出し、足を進める。これ以上は出せない、そんな速度で駆け抜ける。実は短期予測でも出来るんじゃないかと思えるぐらいのシンクロぶりだ。 /*/  放送席に近づいたときばったりと会った。涙の後は綺麗に拭き取られ笑顔で綿飴を食べる少女。その目の赤さがなければ、何事もなかったようにしか思えない、そんな笑顔。  のこさんは出会った時に一瞬だけびっくりしたような表情を見せたが、すぐに笑顔を作る。 「どうしたの?」  平静を装うその姿はサポートするために来たといういつもののこさんのままだ。 「さっきからずっと探してたんだ」  僕は言葉を吟味しながらそう切り出した。 「この間の事、聞きたくて」  さっきまでの平静が嘘のようにのこさんの目が泳ぎだす。決心したその心を揺るがさないように我慢していた所を、正面から揺るがす一言だったのかもしれない。 「何のこと?」  のこさんは綿菓子で顔を隠しながらそういうのが精一杯だった。白い霞のようなそれは人の顔を隠すには心もとない。 「月子さんがいってたこと……その、のこさんが、僕の事、好きなんじゃないか?って」 「う、嘘、嘘だから、そんなことないから!」  まるで茹でたかのように一瞬でのこさんの顔が真っ赤になる。綿菓子に隠していた顔がちょこっとだけ僕の方を見ている。それは怯えたような目。自分のアイデンティティーと、気持ちの狭間で揺らぐ気持ちが見て取れるようだ。 「うそ……なの?」  僕は嘘だというのこさんの言葉にちょっと悲しそうな顔をして見せた。この変化にのこさんはより一層動揺する。 「う、嘘じゃないけど、じょ、冗談」  のこさんは実は嘘が下手なのかもしれない。僕の心にちょっと余裕が出来た。のこさんだってこうなんだ、僕ができることは伝えることだけだ。 「あああ、あ。忘れて、忘れて」  あわあわと手をばたつかせるのこさん。まるでそれは何か助けを求めるかのようにも見えるが、ここまで来たら僕も引けない。次の一言を投げた。まるで言葉のキャッチボールだ。しかもお互い見当違いの方向に飛んでいく。もしかしたら人から見たら滑稽なのかもしれないが,本人からすればいたって真面目だ。 「あのとき、のこさんが逃げちゃって、僕追いかけたんだよ? あのとき走っていったのも冗談?」 「なにやってんのよ。バカ、月子ちゃんは?」  僕の一言に鋭い言葉で一撃をくれる。このときばかりはいつもののこさんだ。だが、その真っ赤になった顔はなによりも雄弁に語っている。  月子さんとの関係を心配してくれるその一言は、むしろ本当に自分の事を抑えてまでサポートしてくれていたことがよくわかり、僕にはそれが嬉しくて仕方なかった。 「月子さんに、のこさんが僕の好きなんじゃないかって言われて、正直かなり動揺した」  のこさんに100%の本音を放つ。直球ど真ん中ストライク。 「私、貴方を手伝うつもりだった!」 「知ってる……」  そんなこと、わかってる。だけど気付いてしまったから。  自分の気持ちにも、のこさんの気持ちにも。  ふっと、さっきの祭りのときのことが頭によぎった。 「そうえいば、さっき英吏さんと歩いてたとき髪、黒かったよね?」  のこさんは息に詰まると、真っ赤になってよろめく。どうやら何か心当たりがあるらしい。 「そ、それ違うひと……のこちがい……」  真っ赤な表情から少しずつ涙目に変わっている。信じてと、どこか懇願する瞳で僕の方を見ている。不意にその瞳に僕は少々加虐心を覚えてしまった。 「双子の妹でもいうつもりw?」 「同タイプ……」  ちょっといつもと違うのこさんに意地悪な言葉を向ける。のこさんはその一言で限界を迎えたらしいかった。馴れた足運びで振り返って逃げようとする、のこさん。  ダメだ! ここで逃げられたら……もうダメだ。もう迷いはない。ここまで随分と迷ってきたと思う。みんなの後押しもあった。それがこの神速とも言うべき追撃に繋がったのだろう。数歩で追いついてその手を掴む。 「ごめん!言うことが遠回りすぎた!」  のこさん、泣いてる。どうやらいじめすぎたらしい。でも、ここは全部伝えないと!  謝りそうになる自分を押しとどめ、もう、何も隠さない素のままの自分を伝える。 「アレから悩んだ! 月子さんの言ってることが本当だったらどうするか? って」  鼓動が煩い。落ち着け、落ち着くんだ。今、この瞬間にも喉から心臓が飛び出しそうだ。 「月子さんとのこさん、どちらの隣に居たいか考えた!」  もはやそれは叫びに近かった。周りなんて関係ない。もしかしたらマイクに拾われてるかもしれない。そんなことは少しも頭になかった。 「僕は! のこさんの隣に居たい!」  思いの丈を全てこめて叫んだ。誰に聞かれたって構うまい、今ここで伝えられないなら、意味がない。それはありったけの思いを込めた叫びだった。  堰き止めていた思いが流れ出す。 「だ、ダメだよ」  もうこれ以上ないぐらいさらに真っ赤になったのこさんは上目遣いで僕の方を見ている。 「僕のこと……好きじゃない?」 「私、サポートキャラだもん。星青玉くんはずるい・・・」 「ずるい……のかな? サポートキャラを好きになってはいけないと誰が決めた?   いや、誰が決めてても従わないけど」  もう押しとどめるものは何もない。ここで押し切らないと、ダメだ。  じっと目を見つめる。今にも零れ落ちそうな涙をこらえるその顔も愛おしい。 「失業する……」 「君の面倒くらい僕がみる! 仕事が続けたいなら僕が上に掛け合う!」  そんなこと理由にならない。開き直った僕にはもう怖いものはない、はず。 「性格きつい」 「そーゆーとこも好きだよ」  その性格だから好きになったんだと、今なら言える。のこさんはのこさんであって欲しい。 「りょ、りょうさんがただし、顔同じだし」 「僕は君と出合った、顔の同じ人なら最近よく見かける、僕は君を好きになったんだから関係ない」  のこさんは下を向いた。目を瞑って何かを考えているかのように見える。また、何かをかみ締めているかのようにも見える。 「僕の気持ちは変わらない、のこさんが好きだよ……」  どんなに理由をつけたって代えられない、偽らざる気持ちを僕は放つ。これは決意表明であり、一世一代の大舞台だった。  その一言を言い切り、静かに沙汰を待つ。  永遠にも似た沈黙が苦しい。でも達成感だけは胸に満ちていた。 「よ、嫁入りしてもいいですか」  俯いていたのこさんの顔が上がった。また、上目遣いで僕の方を見ている。心配しなくてもいいよと声をかけてあげたいと思ったが、僕はもっといい言葉を思いついた。  こんなときにじゃないと言えないだろう。万感の思いを込めて、みんなの後押しを受けたこの絆をありがとうの一言に込める。答えは聞くまでもないだろう。 「うん……ありがとう。僕の、のこさん」
*告白~confession~ 走っていた。永遠とも思える時間の中を。こんな季節の祭りだというのにこの小笠原は暑い。いや、暑いのは自分の顔が赤いせいだろうか。みんなの声援は気恥ずかしくもあるが、ありがたいものだ。そして、機転を利かせてくれたポー教授に感謝したい。  思い返してみれば、それは先ほど呼び止めた時のことだった。突然「応援してる」の言葉と共に逃げるように走り去ったのこさん。その声は、震えていたようにも思える。  ずーっと心のどこかに引っかかっていた月子さんが指摘した言葉。いつしか疑念は確信へと変わっていた。間違いない、のこさんは自分のことを好いているに違いない。  そしてその確信は自分の背を押してくれた。あのとき確かに見たのだ、自分の事を好いてくれてるという、灰色の髪の少女の涙を。ここで行かなければ男じゃない!   『あー。やっぱりのこちゃん、星青玉くんのことが好きなんだ』  あの言葉が脳裏に繰り返される。逸る気持ちを抑えながら、本部を捜している。そして走りながらふと視線をずらすと一瞬人垣の向こうにのこさんの姿が見えた。 (見つけた!)  鼓動の高鳴りと共にペースアップ。最初はぶつかって、言葉だけの謝罪を口にしてばかりいた身のこなしが、洗練化されていく。狭いスペースを潜り抜けて人の壁をくぐり抜けた先には、跡も残っていなかった。見つけただけに入れ違いに心が軋む。  迷いは振り切ったはずだ。徒に過ぎゆく時間がとても歯がゆい。迷っている間も走り続ける。足を止めれば不安が増大するだけだった。  ピンポンパンポーン  迷いを切り裂くように、緊急連絡放送が流れた。迷子のお知らせらしい。 「天領からお越しの鋸山信児様、天領からお越しの鋸山信児様、お連れ様がお待ちですので、運営本部テント前までお越し下さい」 そう、これは教授の助けだ。感謝し尽くしてもしきれない気持ちと、一刻も早く会いたい気持ちが綯い交ぜになって、胸に渦巻く。もう、後は本部テントに行けばいい。  手近な案内板から本部の方向を割り出し、足を進める。これ以上は出せない、そんな速度で駆け抜ける。実は短期予測でも出来るんじゃないかと思えるぐらいのシンクロぶりだ。 /*/  放送席に近づいたときばったりと会った。涙の後は綺麗に拭き取られ笑顔で綿飴を食べる少女。その目の赤さがなければ、何事もなかったようにしか思えない、そんな笑顔。  のこさんは出会った時に一瞬だけびっくりしたような表情を見せたが、すぐに笑顔を作る。 「どうしたの?」  平静を装うその姿はサポートするために来たといういつもののこさんのままだ。 「さっきからずっと探してたんだ」  僕は言葉を吟味しながらそう切り出した。 「この間の事、聞きたくて」  さっきまでの平静が嘘のようにのこさんの目が泳ぎだす。決心したその心を揺るがさないように我慢していた所を、正面から揺るがす一言だったのかもしれない。 「何のこと?」  のこさんは綿菓子で顔を隠しながらそういうのが精一杯だった。白い霞のようなそれは人の顔を隠すには心もとない。 「月子さんがいってたこと……その、のこさんが、僕の事、好きなんじゃないか?って」 「う、嘘、嘘だから、そんなことないから!」  まるで茹でたかのように一瞬でのこさんの顔が真っ赤になる。綿菓子に隠していた顔がちょこっとだけ僕の方を見ている。それは怯えたような目。自分のアイデンティティーと、気持ちの狭間で揺らぐ気持ちが見て取れるようだ。 「うそ……なの?」  僕は嘘だというのこさんの言葉にちょっと悲しそうな顔をして見せた。この変化にのこさんはより一層動揺する。 「う、嘘じゃないけど、じょ、冗談」  のこさんは実は嘘が下手なのかもしれない。僕の心にちょっと余裕が出来た。のこさんだってこうなんだ、僕ができることは伝えることだけだ。 「あああ、あ。忘れて、忘れて」  あわあわと手をばたつかせるのこさん。まるでそれは何か助けを求めるかのようにも見えるが、ここまで来たら僕も引けない。次の一言を投げた。まるで言葉のキャッチボールだ。しかもお互い見当違いの方向に飛んでいく。もしかしたら人から見たら滑稽なのかもしれないが,本人からすればいたって真面目だ。 「あのとき、のこさんが逃げちゃって、僕追いかけたんだよ? あのとき走っていったのも冗談?」 「なにやってんのよ。バカ、月子ちゃんは?」  僕の一言に鋭い言葉で一撃をくれる。このときばかりはいつもののこさんだ。だが、その真っ赤になった顔はなによりも雄弁に語っている。  月子さんとの関係を心配してくれるその一言は、むしろ本当に自分の事を抑えてまでサポートしてくれていたことがよくわかり、僕にはそれが嬉しくて仕方なかった。 「月子さんに、のこさんが僕の好きなんじゃないかって言われて、正直かなり動揺した」  のこさんに100%の本音を放つ。直球ど真ん中ストライク。 「私、貴方を手伝うつもりだった!」 「知ってる……」  そんなこと、わかってる。だけど気付いてしまったから。  自分の気持ちにも、のこさんの気持ちにも。  ふっと、さっきの祭りのときのことが頭によぎった。 「そうえいば、さっき英吏さんと歩いてたとき髪、黒かったよね?」  のこさんは息に詰まると、真っ赤になってよろめく。どうやら何か心当たりがあるらしい。 「そ、それ違うひと……のこちがい……」  真っ赤な表情から少しずつ涙目に変わっている。信じてと、どこか懇願する瞳で僕の方を見ている。不意にその瞳に僕は少々加虐心を覚えてしまった。 「双子の妹でもいうつもりw?」 「同タイプ……」  ちょっといつもと違うのこさんに意地悪な言葉を向ける。のこさんはその一言で限界を迎えたらしいかった。馴れた足運びで振り返って逃げようとする、のこさん。  ダメだ! ここで逃げられたら……もうダメだ。もう迷いはない。ここまで随分と迷ってきたと思う。みんなの後押しもあった。それがこの神速とも言うべき追撃に繋がったのだろう。数歩で追いついてその手を掴む。 「ごめん!言うことが遠回りすぎた!」  のこさん、泣いてる。どうやらいじめすぎたらしい。でも、ここは全部伝えないと!  謝りそうになる自分を押しとどめ、もう、何も隠さない素のままの自分を伝える。 「アレから悩んだ! 月子さんの言ってることが本当だったらどうするか? って」  鼓動が煩い。落ち着け、落ち着くんだ。今、この瞬間にも喉から心臓が飛び出しそうだ。 「月子さんとのこさん、どちらの隣に居たいか考えた!」  もはやそれは叫びに近かった。周りなんて関係ない。もしかしたらマイクに拾われてるかもしれない。そんなことは少しも頭になかった。 「僕は! のこさんの隣に居たい!」  思いの丈を全てこめて叫んだ。誰に聞かれたって構うまい、今ここで伝えられないなら、意味がない。それはありったけの思いを込めた叫びだった。  堰き止めていた思いが流れ出す。 「だ、ダメだよ」  もうこれ以上ないぐらいさらに真っ赤になったのこさんは上目遣いで僕の方を見ている。 「僕のこと……好きじゃない?」 「私、サポートキャラだもん。星青玉くんはずるい・・・」 「ずるい……のかな? サポートキャラを好きになってはいけないと誰が決めた?   いや、誰が決めてても従わないけど」  もう押しとどめるものは何もない。ここで押し切らないと、ダメだ。  じっと目を見つめる。今にも零れ落ちそうな涙をこらえるその顔も愛おしい。 「失業する……」 「君の面倒くらい僕がみる! 仕事が続けたいなら僕が上に掛け合う!」  そんなこと理由にならない。開き直った僕にはもう怖いものはない、はず。 「性格きつい」 「そーゆーとこも好きだよ」  その性格だから好きになったんだと、今なら言える。のこさんはのこさんであって欲しい。 「りょ、りょうさんがただし、顔同じだし」 「僕は君と出合った、顔の同じ人なら最近よく見かける、僕は君を好きになったんだから関係ない」  のこさんは下を向いた。目を瞑って何かを考えているかのように見える。また、何かをかみ締めているかのようにも見える。 「僕の気持ちは変わらない、のこさんが好きだよ……」  どんなに理由をつけたって代えられない、偽らざる気持ちを僕は放つ。これは決意表明であり、一世一代の大舞台だった。  その一言を言い切り、静かに沙汰を待つ。  永遠にも似た沈黙が苦しい。でも達成感だけは胸に満ちていた。 「よ、嫁入りしてもいいですか」  俯いていたのこさんの顔が上がった。また、上目遣いで僕の方を見ている。心配しなくてもいいよと声をかけてあげたいと思ったが、僕はもっといい言葉を思いついた。  こんなときにじゃないと言えないだろう。万感の思いを込めて、みんなの後押しを受けたこの絆をありがとうの一言に込める。答えは聞くまでもないだろう。 「うん……ありがとう。僕の、のこさん」

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