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「8スレ437」(2008/10/12 (日) 15:28:46) の最新版変更点
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<p>ある休日の昼下がり<br />
秋ともなるとそろそろ肌寒くなってくる季節だが、この日は朝から暖かく、午後になると心地良い陽気が眠気を誘う<br />
結城家にも、ソファーにもたれ掛かりすやすやと眠る少女の姿があった<br /><br />
「ん……りとー……」<br /><br />
額の上の辺りがくるりと跳ねているのが特徴的な、桃色の長い髪<br />
綺麗に通った鼻筋に寝息が漏れる形の良い唇と、整った顔立ち<br />
そして、呼吸に合わせてパタパタと動く尻尾は、まさにララ・サタリン・デビルーク本人のものだ<br />
美柑と一緒に作った昼ごはんを食べ、気持ち良さそうに眠るララが見ているのは、もちろん大好きなリトの夢<br />
数分前、手紙を出しに行くと出掛けたリトはまだ帰ってこない<br />
一緒に行くと言ったララだったが、すぐそこだからと置いていかれてしまった<br />
美柑は友達と外出中<br />
テレビもこの時間帯は特に目を引くものはやっていない<br />
洗濯物も全て乾いてしまっているし、部屋の掃除も昨日したばかりだ<br />
つまり、やることがない<br />
やっぱりリトについて行けば良かったと思うものの、過ぎてしまったことはどうしようもない<br />
そこで仕方なくララが取った行動はというと……<br /><br />
「……ぅぅん……♪」<br /><br />
そう、お昼寝だ<br />
もともと昨夜は遅くまでリトと頑張っていて眠かったのだから、ちょうどいい<br />
寝ると決めたらものの数秒で熟睡……もとい爆睡できてしまうのがララのすごい所だ<br />
隣で犬が吠えようが家の風呂が爆発しようが近くに宇宙船が墜落しようが、大好きなリトの声を聞くまで起きることはない<br />
規則正しい寝息だけが、静かな部屋の中にある<br />
ララにとってお昼寝は、リトと一緒にいるのと並ぶほどの至福の時だった</p>
<p> </p>
<p> </p>
<p><br /><br /><br />
「ただいまー」<br /><br />
用事を済ませ帰宅したリトが、玄関のドアを開ける<br />
少々の期待を込めて大きめの声で帰宅を告げたリトだったが、妙にひっそりとしている<br />
「おかえりリトーっ!」<br />
そんなララの迎えがあると思っていたリトは、返事すら無い静まり返った家の様子に首を傾げる<br />
「……? 出掛けたのかな」<br />
でも鍵は開いてたし……<br />
怪訝そうに家の中へと入るリト<br />
リビングへ進むと、ソファーに座るララの後ろ姿を見つける<br />
ふっと、リトの顔に安堵の色が戻る<br />
なんだ、いるなら返事くらい……<br />
そう声をかけようとしたところで、リトは小さな寝息に気付く<br />
「……寝てるのか? ララ」<br />
今度は後ろからではなく、正面に回りララの姿を見る<br />
「すー……」<br />
案の定ララは、天使のような寝顔を浮かべ気持ち良さそうに眠っていた<br />
「……かわいいよな」<br />
毎朝見慣れているのにも関わらず、見惚れてしまう<br />
ずっと見ていたい寝顔だが、そういうわけにもいかないのですぐに思考を戻す<br />
「にしても寝てるのか……これから一緒に買い物でも行こうと……いや、待てよ」<br />
残念に思う反面、何か悪戯心のようなものが芽生えた様子のリトが、楽しそうにニヤリと笑みを浮かべる<br />
ソファーにもたれ掛かるララの隣に腰を下ろすと、そっと桃色の髪に触れる<br />
恐ろしい程にさらさらと指通りの良いララの髪に、すぐにリトは虜になる<br />
その身を優しく引き寄せ、ララの頭に顔を埋める<br />
「……いい匂い……」<br />
いつも自分の隣にある、あたたかくやわらかな香り<br />
リトの大好きな匂いだ<br />
それをいつもよりさらに近くで感じると、リトの中に更なる欲求が生まれる<br /><br /><br />
「抱きしめてもいいかな……」<br />
もちろんそんなことをすればララは起きてしまうだろう<br />
ぐっすり眠っているララを起こすのはさすがに可哀相かもしれない<br />
必死で欲求を抑えながら、リトはララの頬に手を触れる<br />
「ララ……」<br />
「むー」<br />
透き通るようなララのきめ細かい肌は、信じられないほどやわらかく触り心地が良い<br />
閉じられた瞼の端から生える睫毛はスラッと長く、自らが女であることを強調している<br />
ツヤのある魅力的な唇からこぼれる寝息は蜜よりも甘い<br />
「やば……」<br />
そんなララの姿に、リトを繋ぎ止めていたものはいとも簡単に崩れ去ってしまう<br />
堪らずララの頬に口付けをする<br />
「ん……」<br />
不意に零れるララの吐息に、リトは自分を抑えるのも忘れララの唇に自分の唇を重ねる<br />
やわらかいララの唇の感触がリトの思考を麻痺させる<br />
「ん……ちゅ……」<br />
「んん……り、とぉ……?」<br />
唇を離すと、それに続くようにララが目を開ける<br />
寝ぼけたままのララの瞳はリトの姿を捉えた途端にパッと輝き、腕は彼の首に回される<br />
「リト♪」<br />
「ごめんな、起こしちゃったな」<br />
「ううん、おかえりなさいリトっ」<br />
笑顔のままララは目を閉じて顔を突き出し「もう一回」とねだってくる<br />
それに応えるように、リトは軽くララの唇に重なる<br />
ただ触れ合うだけの浅いキスだが、それだけで十分幸せをかみ締め微笑みあう<br />
「ララ、眠いのか?」<br />
「うーん……ふぁ、少し……」<br />
欠伸混じりでララがそう答えると、リトはふっと笑ってララの身体を引き寄せる<br />
「……じゃあ、一緒に寝る?」<br />
「いいの? うんっ♪」<br />
リトと一緒にお昼寝……<br />
考えただけでもララは嬉しくてたまらない<br />
そんな様子がリトにも伝わったようで、意味もなく嬉しくなる<br />
だが、リトにもララに聞いてほしい頼みがあった<br /><br /><br />
「あのさララ……起きたらさ、昨日の続きしよ?」<br />
「……!」<br />
今さら言葉の意味がわからないわけではない、嫌なわけでもない<br />
だがやはり恥ずかしさからか、かぁっと顔が赤くなってしまう<br />
昨晩のことを思い出してしまったのだ<br />
昨日したばかりなのに、それでもまだ足りないのだろうか?<br />
リトが、自分を求めている……<br />
求めてくれてる……<br />
「イヤか……?」<br />
「……ううん、そんなことないよ、ただ……」<br />
「ただ?」<br />
「嬉しくて……リトが私のこと、欲しいって思ってくれてるんだなって……♪」<br />
ララが少し艶を含んだ笑みを見せる<br />
狙っているわけではなく、自然に見せているのだから余計にリトは反応してしまう<br />
「あ、あんまやらしい言い方するなよ……」<br />
「えへへ……やらしいのはリトだもん♪ 当たってるよ……?」<br />
「こここれは、仕方ないだろ! こんな風にくっついてれば、男なら誰だって……! 誰だって……」<br />
そこで黙り込んでしまうリト<br />
確かに健全な男からしてみれば、ララ完璧なスタイルや愛らしい表情は堪らないものがある<br /><br />
でも、それだけ……?<br /><br />
「……違う、それだけじゃなくて……ララが、好きだから……興奮する」<br />
やっと絞り出した言葉<br />
いくら距離が近くなっても、面と向かって好きだというのはやはり気恥ずかしいものがある<br />
それでも、顔を赤くし目を逸らしながらでも、リトのその言葉がララにとっては何より大切だった<br />
「……嬉しい、リト! 私も大好きだよ♪」<br />
「ララ」<br />
「……だ・け・どー♪」<br />
「えっ」<br />
突然人差し指をリトの口に当て、ウインクしてみせるララ<br />
リトのドキドキはさらに増してゆく<br />
「まだだーめ……ちゃんとお昼寝してからだよ?」<br />
「あ、ああ……そうだな……」<br />
ここのところのララは、大人っぽい表情を見せることが多い<br />
というより、リトとより親密になっていくにつれて、ララの中の女の部分が徐々に目覚めて始めているように思えた<br />
いつの間にか主導権を握られ少々納得のいかないリトだが、今はそう答えることしかできなかった<br /><br /><br />
大きめのソファーに、二人して横になる<br />
少し狭い感じもするが、その分ベッドよりも密着度が高い<br />
「痛くない?」<br />
「うん、ありがと」<br />
リトがララの背中から腕を腰に回し、後ろから抱き締める形になる<br />
狭いから足は絡み合った状態だ<br />
スカートを履いているララの足は何も纏っていない<br />
ズボン越しとはいえ、やわらかいララの足の感触が伝わってくるのを感じ、鼓動が速くなる<br />
「リト……なんかすっごくドキドキしてるよ……?」<br />
「わ、わかってるけど、こればっかりはどうしようもないし……ララは平気なのか?」<br />
「ううん、私もドキドキするよ……心臓が飛びはねそう……でもね」<br />
回されたリトの手に、ララの小さな手が重ねられる<br />
冷たく気持ちいい手だ<br />
「でも、それ以上に安心するの。リトに抱き締められるとね、リトの温かさを感じて、胸の奥が幸せな気持ちになるの」<br />
「ララ……」<br />
「きっと、リトがあったかい心をたくさん私にくれるからだね♪」<br />
ララの言葉が胸に染み渡る<br />
自分が抱き締めるだけで安心すると言ってくれる、幸せだと言ってくれる<br />
これ以上に嬉しいことなどあるだろうか<br />
真っ昼間、ただソファーで一緒に寝ているだけ<br />
それだけのことなのに、ララからは溢れるほどに愛が伝わってくる<br />
言葉だけじゃない、ララの見せる表情が、声が、自分への想いに満ちている<br />
それを感じた時、リトの奥底から込み上げるものが溢れそうになる<br />
「っ……」<br />
「リト……? どうしたの?」<br />
「っ、なんでもない……ララ、やっぱり正面向いて寝よ!」<br />
「え? きゃっ」<br />
そう言うとリトはララを抱え上げ、自分の方を向かせて寝かせる<br />
向かい合い抱き締め合う格好になる<br />
「り、リト?」<br />
「このほうがいい」<br />
「で、でも、今ちょっと恥ずかしいから……こんなにくっついたら寝られないかも……!」<br />
「いいの。このほうが、もっと……ララを感じるから……」<br />
「え、な、なに?」<br />
「なんでもない。寝るぞっ!」<br /><br />
オレも……もっとララを喜ばせることが言えるようになりたいな……<br /><br />
優しく強く抱き締めながら思う<br />
たくさんの愛を表現してくれるララに、もっと応えられるようになりたいと<br />
今はまだ照れが抜けきらなくて言葉に出来なくても、いつか自分の気持ちを全て余すことなくララに伝えられるようになりたい……そう思っていた<br /><br />
二人の鼓動は激しさを増しながらも、徐々に穏やかなものへと変わっていく<br />
数分後、結城家のリビングには二つの寝息だけが聞こえていた<br />
幸せそうなそれは、まるで呼応するかのように交互に立てられる<br />
二人の寝顔が最高の笑顔だったのは言うまでもない</p>
<p> </p>
<p><br /><br /><br />
「まったく…イチャつくのはせめて自分の部屋だけにしてよね」<br />
夕方帰宅した美柑は、その光景にため息を漏らす<br />
兄が最高級の美少女と寄り添い眠る姿など、数年前に予想できただろうか<br />
正確には寄り添うどころか、ララがリトの腕にすっぽりと収まり抱き合っているのだが<br />
「ニヤけちゃって……ホントにララさんが好きなんだね。ララさんも……なんかうらやましーなぁ」<br />
こんなリトの表情を見たことがあっただろうか<br />
安心しきったように、だらしなく口元が緩んでいる<br />
自分といる時は……兄として自分に心配をかけまいとするリトが、決して見せたことのない表情だった<br />
「ふぅ……」<br />
もう一度大きなため息をついたあと、幸せそうに眠る兄とその恋人――ララの寝顔を交互に眺め、ふっと笑って向かいのソファーに腰掛ける<br /><br />
「まあ起こすのも可哀相だし……勝手に起きるまでテレビでも見てよっかな♪ 起きた時の反応が楽しみだしね」<br />
こんな姿を妹にずっと見られていたと知ったら、リトは一体どんな表情を見せるのか<br />
悪戯好きな美柑の好奇心に火が点く<br />
「……そーだ! 今のうちに写メ撮っちゃお!」<br />
携帯携帯~♪とその場を離れる美柑<br />
そんな妹の陰謀を知る由も無く、リトとララは幸せそうに眠り続ける<br /><br />
そんな、ある日の出来事</p>