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「one cold day」(2008/10/12 (日) 15:31:39) の最新版変更点
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<p>――夜の公園に街灯がともる。<br />
小さい子達はおろか、いつもはいる何組かのカップルも姿を消していた。<br /><br />
それもそのはず、今日はかなり肌寒い。<br /><br />
俺はコートを身に纏い、近くにあった自販（自動販売機）で缶コーヒーのボタンを押した。<br />
計２４０円。<br />
俺にとっては結構痛い出費だった。<br />
重くて温かい缶コーヒーを両手で持ちながら、小走りで彼女のいるベンチに向かう。<br /><br />
…彼女はいつも通り、本を熟読していた。<br />
そして俺の存在に気づいたのか、彼女は本を閉じた。<br /><br />
「…早かったですね。結城リト…」<br /><br />
俺は彼女…コードネーム金色の闇…通称ヤミの隣に座った。<br />
そしてまだ温かさを保っている缶コーヒーを手渡す。<br />
ヤミは「ありがとうございます」と言いながら、缶コーヒーを両手で持ち、口元につけた。<br /><br />
「コクッ、コクッ…ハァ…。やはり、このこーひーと言う飲み物は慣れません…。でもすごく温まります」<br /><br />
そう言うと、ヤミは俺の肩に寄りかかってきた。<br />
ヤミは俺が選んだ冬服を着ている。<br />
中々暖房設備は整った服装だと思うのだが、ヤミの体は冷たかった。<br />
低血圧というものだろうか…。<br /><br />
「―――――...え？」<br /><br />
俺は彼女をコートで包み込んだ。<br />
その際に、彼女の肩を掴み、強く抱きしめるような形でヤミを寄せる。<br />
ヤミの体は殺し屋とは思えないくらいの柔らかさで、俺の腕の中にすっぽりと納まる。<br />
ヤミの顔は見る見るうちに赤く染まっていき、やがては恥ずかしさのあまり、コートの中に顔をうずめてしまった。<br /><br />
率直な感想を言うと…――可愛い。<br /><br />
「…あったかい…ですね…」<br /><br />
ヤミの体温は上昇している。<br />
それは俺も同じ。<br />
なにせ、あの金色の闇を抱いていると思うと…尚更。<br /><br />
「こうしていると、貴方に全身が抱擁されている感じがして…とても心地よいです…。ずっと、こうしていたくなります…」<br /><br />
ヤミの素直な意見。<br />
俺は歓喜のあまり、ヤミの頬に口をあてた。<br />
…先程とは違い、すごく熱い。<br />
こうしてキスしている間にも、熱さは上がっていった。<br />
そして、頬からの去り際に、ヤミの耳元で「…愛してるよ」と囁く。<br />
ヤミは体全体で反応し、「…バカですか…」と消え去りそうなくらいの音量で返答した。<br /><br /><br /><br />
―それから暫く二人で身を寄せ合いながら、他の誰もいない公園のベンチでキスを交わした。<br />
ヤミの味は缶コーヒーの所為か、若干ほろ苦い。<br />
でもそれが逆に俺の気分を酔わせた。<br />
彼女も俺を離したくないと、コートの内面部分を掴んで身を一生懸命寄せていた。<br />
そんなコトされたら、それもこんなにも可愛い娘なのだから、もっと愛したくなる。<br />
もっと束縛したい…もっと独占したい…。<br />
そんな気持ちが一杯だった。俺は独占欲無いのに…。<br /><br />
「――――………………ふ…ぅ……っ。…」<br /><br />
キスが終わり、ヤミは少しだけ身を引き自分の胸に手を当てる。<br />
そして瑠璃色に染まっている目を閉じた。<br /><br />
「…貴方とこのようにしていると…何もかもが忘れられます。<br />
…いえ、正確に言うと、貴方の事だけが頭の中にあるような…そんな感じ…。<br />
貴方を好きになる前は…ここが何も無いような…空白だらけの心でした。でも…もう…。<br />
決して埋まる事はないと思っていた…私に足りないなにか…。本を読んでも…変わらない…事」<br /><br />
ゆっくりと目を開け始めたヤミ。<br />
真っ直ぐと俺を見つめ、少しだけヤミの瞼は潤った。<br /><br />
「………リト…」<br /><br />
その声から、その表情から…俺はヤミの真意を受け取った。<br />
再び俺とヤミの距離は、吐く白い息がかかる程度の位置になる。<br />
そして俺はヤミの頬を両手で擦った。<br />
ヤミは甘えるように、顔の重心を俺の両手にまかせる。<br />
脱力しきっているようにも見えた…。<br /><br />
「…本に書いてありました」<br /><br />
俺は一瞬キョトンとした。…唐突に言われたから…、それもあったが…。<br />
…ヤミは俺の手を解くと、徐々に体を傾けるように、ゆっくりと近づいてきた。<br /><br />
「“人が人を好きになりすぎてはいけないのでしょうか？”“甘えすぎは駄目なのでしょうか？”と」<br /><br />
言いながらも、俺を瞳に写したまま。<br />
――俺は正直驚いていた。<br /><br />
「…その質問。その答えは、いずれも……―――――――――」 「…ん…」<br /><br />
もう一度交わすキス。<br />
そのキスには、ヤミの気持ち全てが伝わってくる。<br />
…こんな積極的なヤミに、俺は俺自身は確信した。<br />
ただ、ただ単純に…このまだ幼い、普通の女の娘を…守ろうと…。ずっとずっと傍にいて愛そうと…。<br /><br />
共に歩んで行こう…と<br /><br />
――空から雪が降り始める。<br />
そんなある寒い日、…二人だけの温かい夜…</p>
