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「リトと唯 第三話夏祭り」(2007/10/06 (土) 21:14:11) の最新版変更点
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<div class="mes">リトの部屋に甘い喘ぎ声と、汗と体液の混じった独特の匂いが満ちている<br>
唯はリトに下から突き上げられながら身をくねらせていた<br>
長いキレイな黒髪を乱し白い体を赤く火照らせ、その口からは、普段絶対聞けない様な声を出している<br>
体が動くたびにぷるぷると揺れる唯の胸を両手で揉みながら、リトはいつもとは別人の様な唯にただ見とれていた<br>
(すげえエロイ……)<br>
自らリトに合わすように腰を動かしている唯は完全に自分の世界に入っている<br>
口から垂れた涎が胸の谷間へと落ちていくのも構わず、自分のことを見つめ続ける唯にリトは興奮を隠せない<br>
「…っはァ、ンン…結城くん、結城…くん……ッあァ…」<br>
「…すげー腰使い、だな唯は」<br>
すっかり牡の顔つきをしているリトを唯は上から睨みつける<br>
「バカ!結城、くんが……動、くから…ンッでしょ!?」<br>
「へ~ホントに?オレもう動いてないのに?」<br>
その言葉に唯の動きはピタリと止まり、顔がみるみる真っ赤に染まっていく<br>
「も、もうっ!!どうしてあなたはそうやって私をからかうのよ!?⁄⁄⁄⁄⁄」<br>
「悪い、悪かったって!だからそんな怒んなよ!」<br>
頬っぺたを抓ってくる唯の手をなんとか押さえつけると、リトは聞かれないように小さな声で呟く<br>
(やっぱ唯をいじめるのって楽しい……けどもっとこう…)<br>
「なにぶつぶつ言ってるのよ?」<br>
冷たい目で見つめてくる唯にリトは愛想笑いを浮かべる<br>
<br>
朝、唯がリトの家に来てからかれこれ数時間<br>
部屋に着くなりいきなり抱きつき唇を奪いにくるリトに最初こそ嫌悪感を滲ませていた唯だったが、<br>
今は自分からリトを求めるまでに乱れていた<br>
唯の変化は本能的なモノなのか、リトがそうさせているのか<br>
リトは色々と頭の隅で考えていたが、今はただ目の前の体に意識を集中させる<br>
<br>
「ア…ふぅ、ンッ…あァ…」<br>
ぱんぱんと腰が打ち付け合う度に唯の秘所から蜜がこぼれてくる<br>
リトの肉棒が膣内を掻き回し、溢れる蜜が白濁していく<br>
ぐちゅぐちゅと卑猥な音をたてる結合部に羞恥心を煽られながらも、唯の動きは止むことはない<br>
自分が今なにをして、どう感じているのか唯はみんなわかっていた<br>
わかってはいるが止めることができない。止めようとも思わない<br>
普段人目が気になったり、自分の性格が仇となって、中々リトに触れることのできない唯にとって<br>
自分が定めた一週間に一度の日だけが、唯一素直になれる時だった<br>
なによりリトに全身を愛されることの悦びが大きい<br>
口には絶対に出さないが、今日だって色々期待して家に来たほどだ<br>
<br>
リトのモノが自分の膣内をえぐる度、愛液を絡ませながら掻き回す度<br>
唯の中で快感と共にリトへの思いが溢れ出す<br>
結城くんは私だけの……誰にも誰にも――――<br>
唯はリトの胸板に手を置きさらに身を屈め、奥へ奥へと肉棒を導いていく<br>
「ゆ、唯!?……すげー気持ち、いい」<br>
「うん!わた、私も…私も結城くんを……いっぱい感じる」<br>
「唯……」<br>
リトは唯の細い腰に手を伸ばすと勢いをつけて下から突き上げ始める<br>
<div class="mes">リトが腰を打ち付ける度に唯の中に電流の様な快感が流れていく<br>
肉棒が膣内を擦り上げ、子宮口を激しく突きまわす<br>
「アアっ…んッ!はァ…ぁ」<br>
肉壁を抉るような強烈な出し入れに、快楽が波となって子宮へ全身へと押し寄せる<br>
「ゆ、結城…くんっ、激し…すぎて私…」<br>
「おかしくなる?いいよ…唯のイき顔オレに見せてくれよ。ちゃんと見ててやるからさ」<br>
「だからどう…してそんなっ、ああッ…ンいじわるばかり……やッ」<br>
リトは顔をにやけさせると、微妙に角度を変えて唯を責めたてる<br>
「いつものお返し」<br>
「もうッ、後で覚えて…アアぁ…んッ、ン!!」<br>
今までとは違う波が体に現れると、それに唯は体を仰け反らせる<br>
何度も交えているうちに、だんだんと唯の弱点がわかってきたリトは、そこを重点的に責めたてた<br>
「…ゃあ、そこ、ダメぇ…」<br>
「なにがダメ?」<br>
リトはそう言うとそこに激しく打ち付ける<br>
「ンッ、んん…結城くんっ…ホントにそこ…あァ」<br>
唯の乱れようにますます興奮したリトの腰は、卑猥な音をたてながら何度も何度も唯を犯していく<br>
上へ下へと体を弄ばれる唯の額から汗が滴り、リトの胸へと落ちる<br>
「今のおまえすごいエロくてカワイイよ」<br>
「バ…カ言わない、で!結城くんのせいで私っ…あァ…ん」<br>
自分の全てに反応してくれる唯にリトはうれしくてしかたがなかった<br>
笑みがこぼれ、顔をにやけさせていく<br>
「あんッ…結城、くん…ハレンチは顔してる」<br>
リトは汗に濡れる唯の白くてやわらかい乳房へと指を絡ませる<br>
「ハレンチなのはおまえの方だろ?」<br>
ムニュッとした肌触りが、上下左右にリトの手の中で形を変え弾む<br>
「…ッん、やァ…ンン」<br>
「おっぱい弄られながら突かれるのおまえ好きだなァ」<br>
リトの言葉にムッとした顔になるも、胸への刺激と膣への快感が唯の理性を狂わせていく<br>
「…ゃあ…そんな、こと言わない…でよ」<br>
「なに言ってんだよ?こんなハレンチな風紀委員見たことねーよ!」<br>
リトは胸を赤くなるまで強く揉み、膣へ少し乱暴に突き入れていく<br>
すぐに気持ちよさの中に痛みが生まれ、唯の整った顔を苦痛に歪めていく<br>
「あッ!痛い…結城、く…アアっ…ん゛あっ」<br>
「なに?」<br>
唯の気持ちは手に取るようにわかるが、リトは止めようとはしない<br>
「…ちょっ、ちょっと待っ…待って!こんなの……あッ、くぅ」<br>
そんな言葉とは裏腹に唯の締め付けが、これまで以上にギュッと強くなっている様子に、<br>
リトの顔に笑みがこぼれる<br>
それは日頃怒られてばかりいることへの仕返しなのか、リトはなんだか楽しそうだ<br>
「や…やだっ、こんなコト…わた、私もっと…ンっ…ぁあ…」<br>
「もっとなに?」<br>
ろれつが回らないのかリトの言葉にも唯は、中々応えられない<br>
「私…私こんなンっ…ぁは、んん…」<br>
「……なに言ってんのかわかんねーよ」<br>
<div class="mes">リトは唯の腰を掴むと下から激しく打ち付ける<br>
ぱんぱんと肉と肉がぶつかる度に唯の顔はますます苦痛に歪んでいく<br>
けれども決してリトから逃げようとはせず、むしろ、腰の動きを合わせようとする唯<br>
その姿は、快楽と苦痛二つの波に、だんだんと虜になってきているようで……<br>
リトのモノを離そうとはしない締め付けや、硬くなっている乳首に、口から溢れる涎<br>
感度の上がった唯の体はいつも以上のいやらしさをリトに見せる<br>
「おまえってこんな風にいじめられるのが好きなんだ」<br>
「そ、そんなワケないでしょっ!こ、これは……違うの」<br>
けれども心も体もリトを求めて止まないことに唯自身も気づいていた<br>
いつもの優しさとは違うただ欲望に身を任せたリト<br>
牡の顔をして貪るように体を求めてくるリト<br>
そして快楽と苦痛の中で、そんなリトを欲している自分<br>
「ホントに?」<br>
「……ッ!?」<br>
リトの言葉に思わず言いよどんでしまう<br>
「あはは、唯はカワイイなァ」<br>
さすがにリトの態度に頭にきたのか唯の表情は厳しくなる<br>
「もうっ!いい加減に……」<br>
「そんなに怒るなって!それに……」<br>
リトは動きの止まった唯の膣に肉棒を突き刺す<br>
「ッあ!くぅ…うぅ…」<br>
ガクガクと震える唯の腰を掴むと、リトは耳元でそっと囁く<br>
「それに、オレにこんなことされるのホントは好きなんだろ?」<br>
その言葉に耳まで真っ赤に染まる唯を、リトはにやにやと見つめる<br>
「ホント、おまえってカワイイな」<br>
「ち、違うの!ホントはこんな…私はただ…」<br>
「違わねーよ」<br>
リトの腰の動きがだんだんと早くなっていく<br>
「んッ、あぁ…痛ッ…激しぃ…」<br>
「けど…それがいいんだろ?」<br>
リトの乱暴ともいえる突き上げに唯の軽い体は弄ばれる<br>
「ん!ぁあ…すご、ダメぇ…やめ…やめて結城、くん」<br>
「ふ~ん。嫌がってるわりにはさっきからオレのことギュウギュウ締め付けるおまえはなんなんだ?」<br>
「しら…知らないわよそんなことっ」<br>
唯は歯を喰いしばりながら、それでもリトから逃れようとはしない<br>
そればかりか、ますますリトを求めるかの様に締め付けていく<br>
「ゆ、結城…くん、私もう…あぅ、んッ…」<br>
「なにイきそうなの?」<br>
唯は首を振るだけで、返事をしようとはしなかった<br>
そんな余裕などなくなっていた<br>
苦痛が気持ちよさへと変わり、唯の体を支配していく<br>
ガクガクと震える腰をそれでもリトの動き合わせようと必死に動かす<br>
「じゃあイッてもいいよ。オレの前でやらしい唯を見せてくれよ」<br>
唯は紅潮する頬を歪めながら、リトの上で腰を躍らせる<br>
「おまえのイくところ全部見ててやるからさ」<br>
リトのいじわるな言葉も唯にはもう聞こえてはいなかった<br>
<div class="mes">「あッ…ん、んん…ダメホントにもうッ…」<br>
リトはたぷたぷと揺れる唯の胸の先端を指で摘む<br>
「あっくッ…や、やめ…」<br>
「なんで?おまえの体はオレのだろ?」<br>
「そ、そうだ…けど、もっとやさしくしてッ…んッ」<br>
膣内がキューッと蠢き、肉壁がざわざわと波打つ<br>
リトの胸板に置いた手を支えに、唯の腰が激しく卑猥に打ち付けられる<br>
「あ…くぅ…あぁ、んッん」<br>
「もうムリっぽい?」<br>
唯は首を縦に振ると、リトの顔を見つめる<br>
熱を帯びた唯の視線にリトのモノも膣内でさらに大きさを増していく<br>
「も…もう、ダメぇ私…私……あッくぅう、あぁあーーーッ!!」<br>
体全体で大きく息をする唯は、リトのお腹の上で一人放心状態になる<br>
「はぁ…はあ…は…ぁ…」<br>
「おまえすげーよがってたな」<br>
下でくすくす笑うリトを唯はムッとした表情で睨む<br>
「だ、だってあなたがあんなに激しいことするから私は…。って全部結城くんのせいじゃないッ!」<br>
いつもの調子で怒る唯にリトは笑みを深くさせると、いきなり上体を起こし、まだ脹れている唯に黙ってキスをする<br>
「ちょ…ちょっとどういうつもりなの?⁄⁄⁄⁄」<br>
いきなりのキスに口調こそまだ怒ってはいるが、その顔は、さっきまでと違いやわらかくなっている<br>
そんな唯の顔を確かめるとリトはくすっと笑った<br>
「それじゃあ、今度はオレの番。次はおまえがオレを気持ちよくしてくれよ」<br>
「え!?あ…えっと……べ、別にそれはいいんだけど…。その……私どうしていいのかまだ…」<br>
体をもじもじさせて、困惑している唯にリトは笑いかける<br>
「心配しなくても全部オレの言うとおりにすればいいだけだからさ」<br>
「え?でも…」<br>
心配?そんな顔で見つめてくるリトから顔を背けると唯はつい強がりを言ってしまう<br>
「し、仕方ないわ…それでなにをすればいいの?」<br>
「後でいっぱい怒ってもいいから、オレの好きなようにヤらせて欲しいんだ!それだけ」<br>
じっと見つめてくるリトになにか引っかかるモノがあるものの、唯はその場の雰囲気に呑まれてしまう<br>
「……変なコトしないなら…いいわよ」<br>
<br>
「それじゃあ唯、立ってそこの壁に手をついてお尻こっちに向けて」<br>
色々と反論はあるがさっき言ったばかりなため、唯はしぶしぶリトに従う<br>
そんなギコチナイ唯の動きにリトは顔をしかめる<br>
「もっとお尻こっちに突き出して欲しいんだけど」<br>
「そ、そんなコトできるわけ……⁄⁄⁄⁄」<br>
「へ~唯って約束破るヤツだったんだ……」<br>
リトの冷たい視線に唯の顔は凍りつく<br>
「わ…わかったわよ!やればいいんでしょ?やれば……⁄⁄⁄⁄」<br>
自分でも卑猥なコトだと感じたがリトへの思いが勝ってしまう<br>
「これでいいんでしょ?これで…」<br>
唯の後ろに回ったリトは満足げにその姿を見つめる<br>
突き出された下腹部からは性器が丸見えで、恥ずかしさのため体まで赤くなっているその姿に、リトの興奮は高まる<br>
リトの指がすーっと唯の背中を滑っていく<br>
「…ゃあっ…んッ…」<br>
くすぐったさに身をよじる体に合わせて胸もぷるぷると震える<br>
「結城…くん、くす…ぐったい……」<br>
「じゃあどうして欲しいんだ?」<br>
リトの手が唯のお尻へと這わされ、やわらかい肉感を堪能していく<br>
「ん…ゃ…ンッ、そこ…違う…」<br>
「違うってなにが?胸の方がいいのか?」<br>
リトはそう言いながらもお尻を揉んでいく<br>
「どうして欲しいのかな~唯は?」<br>
唯はリトの焦らしに我慢できないのか体をピクピクと震えさせる<br>
愛液が割れ目から溢れだし太ももに滴り落ちていく<br>
リトは膝を屈めると、その流れ落ちる愛液を舌で掬い取る<br>
「ひゃッ!な、なにしてるのよっ?」<br>
後ろを振り向き様子を確認する唯に、リトは白い太ももに口を近づけ舌を這わしていく<br>
「…っあ、んッ…くすぐっ…ぁは」<br>
上下左右に動く舌に唯の下半身はピクピクと反応する<br>
「オレおまえの脚すっげー好き!」<br>
「う…うんあり…が……とう…」<br>
息も絶え絶えな唯はそれでも褒められたことがうれしくて、ついつい反応してしまう<br>
(結城くん私の脚好きなんだ……)<br>
リトの言葉に顔もほころんでくる<br>
そんな唯の下腹部に手を伸ばすと、リトはヒダを広げ膣内を覗き見る<br>
何度も掻き回された膣内は唯の本気汁で溢れ、肉壁はリトの挿入を待ちわびているかのようにヒクヒクと波をうっている<br>
「え、エロすぎ……」<br>
リトの声が聞こえたのか唯は体を強張らせる。と、同時に膣内もキュッと締まるかの様に蠢く<br>
「……あんまり見ないで欲しいんだけど⁄⁄⁄⁄」<br>
耳まで真っ赤に染まっている唯に我慢できなくなったリトは、立ち上がり肉棒を割れ目へと当てる<br>
じゅぶじゅぶと音を立てて入ってくる感触に唯の口から熱い吐息が漏れる<br>
「あッ…ん、結城くんが入って…くぅ、ぁあ…」<br>
「おまえそんなに入れて欲しかったんだ?」<br>
「だ、だってあなたさっきから違うコトばっかりして全然……」<br>
ちょっと前まで散々リトに責められていた下腹部は、すでに少し動いただけでキュッと締まり、<br>
とろりと溢れ出す白濁した愛液がリトのモノを白く染めていく<br>
「そんなに欲しかったんだオレの?」<br>
唯はなにも言わないがその顔を見れば十分だった。真っ赤になった頬に体は小刻みに痙攣し、リトの動きを待ちわびている<br>
リトは口を歪めると、いっきに根元まで挿入していく<br>
「…あんッ…も、もっとゆっ…くり…んッ」<br>
「オレも唯が欲しいよ!欲しくて欲しくてたまらない!!」<br>
リトはそう言いながら腰を打ち付けていく<br>
「ん、ぁあ…やッ…くう…ん」<br>
リトは唯の背中にキスをすると、そのまま舌を這わしていく<br>
汗に濡れた背中は少ししょっぱくて、なにより唯の味がした<br>
「……ッはぁ…ん、んッ…ゃあ…」<br>
ピクンと背中をよじると艶やかな黒髪が汗と唾液に濡れる背中へとかかる<br>
その髪の匂いを胸いっぱいに吸い込むとリトは唯の体をギュッと抱きしめた<br>
「あんッ…結城、くん?どうしたの?」<br>
自分を抱きしめ背中に顔をうずめるリトへ、唯は不思議そうな目をする<br>
「なんかおまえがすげーカワイくてさ」<br>
「…なによそれ」<br>
顔を背ける唯がますますカワイく感じられたのか、リトは唯をさらに強く抱きしめる<br>
(もう……)<br>
心の中で悪態をつきながらそれでも唯は、リトに身を委ねていく<br>
<div class="mes">(結城くん、こんなに私のことを……)<br>
リトの行動が思いが唯の中で溢れ出し、それが普段よりも唯に積極性を出させる<br>
「ねぇ、動いて…結城くん……」<br>
唯の口から熱い言葉が紡がれる<br>
「私…もう、我慢できない…から……」<br>
その声はすーっとリトの頭へと入り込み、理性をとろけさせる声だった<br>
膣内が唯の欲望を表すかのようにざわめきリトを促していく<br>
その反応に背中から体を離したリトは、唯の望む様に腰を打ち付ける<br>
それは、焦らしや緩急の変化もなにもない欲望にまかせただけの動き<br>
すぐに込み上げてくる射精感にもかまわずリトの動きは、止まらない<br>
「あ…ふぅ…あぁ……ッん、ンン」<br>
(すご…すごく激し…ッん!結城くんに私犯されてる…)<br>
唯のお尻の肉に揉みしだくように手を押し付けながら、動きを加速させていく<br>
前後へと乱暴に乱れさせられる唯の体<br>
壁に付いた手からは力が抜けていき、下半身はリトにいいように責めたてられる<br>
「ほら、しっかり手をついてろよ!姿勢くずしたらもう動くのやめるぞ?」<br>
その言葉に体がピクンと反応し、唯の手に少しずつ力がこめられていく<br>
けれどすぐに手は壁からずれ落ちてしまい、反射的になんとか腕をついて体を支える<br>
「ほら、どうするんだ唯?ちゃんと体支えてないとホントにやめるからな」<br>
「…あッく、うぅ…いゃ……嫌ぁ、やめないでお願い…」<br>
リトの方を振り向きそうお願いする唯の目は涙で濡れていて、リトの心を昂ぶらせる<br>
リトは口を歪めた<br>
今、唯を支えているのは、リトに支えられている下半身と、わずかしか力が入らない壁についた腕だけになっていた<br>
唯は残った理性をかき集めて腕に力を入れていく<br>
それは普段は滅多に見せない唯の心の内を表しているかのようで<br>
そんな必死な唯の姿が、リトはとてもうれしかった<br>
「唯…」<br>
リトのなにを感じ取ったのか、唯はわずかに見えるリトの顔を振り返る<br>
「いい…わよ、私の中に出しても。結城くんの出したい時で…いいから」<br>
リトの喉がゴクリと音を立てる。いつぶりだろう唯の膣内に出すのは……<br>
「いいのか?ホントに?」<br>
「ええ…」<br>
「だって、この前あんなに怒ったのに?なのにホントにいいの?」<br>
何度も聞き返してくるリトにいい加減唯の顔はムッとしてくる<br>
「もう、何度もこんなこと言わせないでよ!!恥ずかしいんだから……。<br>
それに…それにもし、私に赤ちゃんできても結城くんがずっと一緒にいてくれるんでしょ?////」<br>
それは一ヶ月前に交わしたリトの約束、そして、リトの純粋でいて強い思い<br>
唯は溢れ出る快楽の中でリトの返事を待っていた<br>
リトは動きを止めると唯の頭を撫でる<br>
愛しむように、自分の思いの全てを込めるように<br>
くすぐったさで身をよじる唯の背中へとリトは顔をうずめる<br>
「ああ、いるよ。どんな時もずっと、ずっとおまえのそばに……」<br>
それは不器用でいて、まだまだ未熟な背伸びをしている思い<br>
未完成のプロポーズともとれるリトの言葉<br>
それでも、だからこそ唯はうれしかった。リトの本当の気持ちが純粋な思いが、その言葉には込められていたから<br>
思わずくすぐったくなる体をほころんでくる顔をなんとか押さえ込み<br>
唯は短く返事をする<br>
「うん、私も」<br>
「…じゃあ、おまえの中に出すからな」<br>
そう言うとリトの腰が再び動かされていく。込み上げてくる欲望を吐き出させるために<br>
リトは唯の体を膣内を犯していく<br>
<div class="mes">リトが腰を打ち付ける度に胸を揉みしだく度に唯は、くずれそうになる脚に懸命に力を入れる<br>
そうしていないと立っていることすらできない<br>
壁に腕をつきなんとか姿勢を支えている唯は、耳に届くリトの荒い息を感じながら、下腹部に意識を集中させる<br>
すでにリトだけの形になっている膣内はそれでもまだまだきつくリトを締め上げる<br>
「おまえのココすげえ…最高……」<br>
「ゆ…結城くんのだから…結城くんだけの、だから好きにしても……」<br>
熱い吐息と共に唯の口から淫らな言葉が出る<br>
どんなに嫌がっても、どんなに否定しても体は心はリトを求めてやまない<br>
リトといるとどんどん変わっていく自分<br>
(違う……変わっていってるんじゃなくて私は…)<br>
「唯…出る…うッ!!」<br>
唯の思考を邪魔する様に熱いモノが体に満ちていく<br>
「あ…くぅ…ッん」<br>
子宮に注がれる熱い流れに膣内はざわめき唯に絶頂を与える<br>
それでもなお膣内は痙攣を繰り返し、リトの全てを搾り取ろうと中を蠢かす<br>
割れ目から中に収まりきれない欲望が蜜と共に溢れ、ベッドにぽたぽたと落ちていく<br>
ガクガクと震える腰をリトに支えられながら、唯はただ全身に覆う波に体をゆだねる<br>
二人の荒い息だけが部屋に満ちていた<br>
リトが肉棒を引き抜くと先端から飛び出した欲望が唯のお尻を汚す<br>
「はぁ…ぁ…熱い、んッ」<br>
崩れる様にベッドに座り込む唯の顔にリトは愛液と精液で濡れた肉棒を差し出す<br>
「ほら、ちゃんと掃除しろよ」<br>
鼻につく強烈な牡の臭いに顔をしかめるも、唯は言われたとおりに口にそれを運びこむ<br>
(こんな……ハレンチなこと私…)<br>
けれど気持ちとは裏腹に、唯は自分の中に生まれた小さな変化に顔をほころばせる<br>
リトの前で素直に股を開く自分、リトの行為全てに淫らな声を出し反応をする体<br>
そしてそんな自分を求めてやまないリト<br>
『オレだけの唯』<br>
いつか体を交えた時に言われた言葉<br>
リトのぬくもりと共に伝えられたそれは唯にとって宝物にも似た大切な言葉だった<br>
不器用に竿に舌を絡める唯の髪を、リトは愛しげに撫でる<br>
唯は伏せていた目を向けるとリトを見つめた<br>
愛情に溢れ自分の姿しか映さないリトの目<br>
そんなリトを、唯はただじっと見つめ返す<br>
それは普段は奥手で純情なリトが見せる精一杯の意志表示なのかもしれない<br>
唯は口から竿を離してもじっとリトを見つめ続ける。目を離すことができないでいた<br>
口からは唾液が糸を引き、口元は欲望で白く汚れている唯の顔<br>
唯は口元との精液を指で掬うと口の中へと運ぶ<br>
いつもの生真面目な顔に今は恍惚さが交じり合い、唯を女の顔へと変えていた<br>
「唯……」<br>
リトは自分にぼーっと見とれている唯の腰に手を回すとぐいっと引き寄せる<br>
下腹部はすでに大きさを取り戻していた<br>
リトの膝の上に座った状態の唯は目をとろんとさせリトを見つめる<br>
「またおまえの中に入れさせて欲しいんだ」<br>
「……結城くんの好きにするんじゃなかったの?」<br>
くすっと笑う唯にリトはバツが悪そうに顔を赤らめると、唯の腰を浮かして自分のモノを割れ目へと当てる<br>
<div class="mes">ずぶずぶと肉がヒダを押し広げて中へと入っていく感触<br>
今日、何度目かになるその心地よさにリトの下腹部はビクビクと波打つ<br>
何度入れても、何回出しても飽きることのない唯の体<br>
自然とリトの息も熱くなる<br>
「…ッん…あ、あァ…ンくぅ」<br>
「やっぱ今日のおまえいつもと違って積極的だな」<br>
いつもなら、挿入する前どころか体を触る度にいろいろと文句を言う唯の変化に、リトも不思議そうな顔をする<br>
唯はそんなリトに少し顔を曇らせると、恐る恐る尋ねる<br>
「…こんな私……嫌?」<br>
リトは目を丸くさせるとぷっと吹き出す<br>
「ちょ、ちょっとどうして笑うのよ?私は真剣に…」<br>
「悪い、ゴメンゴメン!ただ……やっぱ唯は唯だなぁって思ってさ」<br>
唯はまだ釈然としないのか、それでもリトの首に腕を回す。その目はいつにもまして真剣だった<br>
「……結城くん、私が変ってもずっと一緒にいてくれる?」<br>
「なに言ってんだよおまえ?」<br>
リトは唯の質問の糸がわからず首を傾げる<br>
「私だけの結城くん」<br>
「え?」<br>
ぼそりと呟いた声はリトの耳には届かない。唯はその言葉を胸にしまい込むとリトにキスをする<br>
「私を離さないでね。絶対…絶対」<br>
いつもとは違う熱のこもった唯の眼差し<br>
「……そんなの当たり前だろ!おまえのいない日常なんてもう考えられねェよ」<br>
溜め息を吐きながらも話すリトの目は真剣そのものだ<br>
そんなリトの胸に顔をうずめながら唯は小さな声で精一杯応える<br>
「…うん、私も!結城くんがいないなんてもう耐えられないから⁄⁄⁄⁄」<br>
素直でいて真っ直ぐな唯の気持ちにリトの心臓がドキンと高鳴る<br>
「唯……おまえ…」<br>
自分が変わっていくことが、変わることでリトの気持ちが揺れ動くのではいかという、不安があった<br>
そして自分の『心の奥にある本当の気持ち』を知った時、いつかリトにとってそれが重く迷惑になるのではないかという不安<br>
そんな自分の気持ちをリトに知られたくないのか、唯は黙って胸の中で顔をうずめていた<br>
リトは小さくなっている唯の肩を掴むと顔を上げさせる<br>
「バカだなおまえは……そんなくだらねー心配するなよ!オレがおまえを嫌いになるわけないだろ!!」<br>
唯はその言葉になにも言わずにただ首を縦にふる<br>
「おまえは相変わらずいろいろと考えすぎるヤツだなァ」<br>
少しあきれ気味のリトにも唯はなにも応えられずにいた<br>
リトとのありとあらゆる初めての経験が、唯に様々な壁を作っていく<br>
それに悩み苦しむ日々<br>
<br>
本当のことが言えない…自分の本当の気持ちも伝えることもできない<br>
きっと結城くんにもいろんな愚痴をこぼさせてる……<br>
それでも結城くんはそんな私のことを好きだと、大切だと言ってくれる<br>
結城くんからもらったモノはたくさんあって、そのどれもが大切で大事なモノ…<br>
<br>
唯はそんなリトのやさしさや気持ちになんとか応えたいと思っていた<br>
思ってはいるのだがどうしていいのか、なにをしてあげればいいのかわからないでいた<br>
不器用でいて真っ直ぐな気持ち故の唯の悩み<br>
そんな自分に内心あきれつつも唯は、今自分にできることを一生懸命しようと思った<br>
俯かせていた顔を上げるとリトに懇願する<br>
自分の気持ち、今リトにしてもらいたいことを伝えるために<br>
「…結城くん…きて……」<br>
唯はもう待ちきれないのかリトに顔を近づけさせていく<br>
「オレも唯がもっと欲しい」<br>
二人は貪るように互いの唇に吸い付く<br>
<div class="mes">ぐちゅぐちゅといやらしい音が鳴るのも構わずに唯はリトに合わせて腰を動かしていく<br>
そこには風紀委員でも真面目な優等生でもない、古手川唯という一人の女の子がいるだけだった<br>
肌を密着させ汗や唾液で汚れることにも遠慮せず舌を指を絡ませ合う<br>
「んッ、ちゅ…ぅはあ…ちゅぱ、んッく」<br>
互いの唇に吸い付き、舌で口内を蹂躙し唾液を交換しあう<br>
「…ふぁ…むぅ、ンン…うぅ」<br>
背中に回した手に力を込め肌が赤くなるほどに互いを抱き寄せる<br>
(結城くん…結城くん、私だけの結城くん……)<br>
心に宿る強い気持ちを体で表すかのように唯は乱れていく<br>
自分の体でリトに触られていない部分も見られていないところももうないだろう<br>
体中隅々まで舌を這わされ、吸い付かれ愛撫される。今まで嫌悪の対象でしかなかった唾液の交換も、今では心地いいぐらいだ<br>
唯の中でどんどんリトへの思いが強くなっていく<br>
愛おしくて好きでたまらない気持ち<br>
糸を引かせながら口を離した後も唯はじっとリトの顔を見つめ続ける<br>
「…ッん、はァ…ん…イイ!すごく…気持ちよくて……結城くんが奥まで、きて…ン」<br>
腰が上下に動く度、子宮口に当たるリトのモノはさらに中へ中へと膣内を押し広げる<br>
「あ…ン…んんッ、ァハ…あァ」<br>
お互い抱き寄せていた体を離すと、額から流れ落ちる汗が二人の間に落ちていく<br>
「結城…くん、もっと欲しい…もっと…」<br>
リトは唯のお尻を掴むと叩きつけるように腰を動かす<br>
小柄な唯の体はそれに合わせてリトの膝の上で跳ねる<br>
「…んッく…ぅ、あァすご…イッ」<br>
上下に動く体に合わせ、唯の乳首がリトの胸板を擦っていく<br>
「唯、唯、唯……」<br>
自分の名を呼ぶ声が、熱い息と共に耳元に運ばれてくる<br>
心地よくて何度も呼んでもらいたくなる呟きが唯の体をざわつかせる<br>
「結城くん…私、もう…ダメ…」<br>
「オレも……限界」<br>
リトはすぐにでも吐き出しそうになる射精感を歯をくいしばって押さえ込む<br>
「うん…一緒にきて…結城くんと一緒が…いいの…」<br>
リトは唯の首に腕を回し体を抱き寄せる<br>
「じゃあ出すな…おまえの中にいっぱい」<br>
「いいわよ!出して…結城くんのいっぱい出して!!結城くんので私をいっぱいにして」<br>
リトの突き上げが激しさを増していき、膣内を責めたてる<br>
「あ…くぅ…はあ…ん、ンン…ッんア…ダメぇ私もうっ!」<br>
キューっと締め付けが強くなる唯の中で、リトはこの日二度目になる欲望を吐き出した<br>
<br>
荒い息を吐きながらベッドに横たわるリトを尻目に、唯は身なりを整えていく<br>
さっきまでの気持ちはどこへ行ったのか<br>
いつまでもハレンチな格好はできないと、唯は気持ちを切り替え下着を着けていく<br>
ベッドの上ではまだ余韻にひたっているのかリトは寝転がったままだ<br>
「まったくあなたは……どうしてすぐにだらしなくなっちゃうの?」<br>
唯の少しきつめの言葉にもリトは知らん振りを決めこむ<br>
「もうっ!結城くん少しは話を……」<br>
ムッとした顔でリトに詰め寄ろうとした唯の目に、四時を告げる時計が飛び込んでくる<br>
「今、四時なんだ……」<br>
朝からずっとリトとハレンチなことに夢中になっていた唯は時間の存在を忘れていた<br>
そして、そんな自分に顔を赤くさせる<br>
(と、とにかくまだ四時ということは……)<br>
まずシャワーを浴びて、服に着替え少し休憩しても五時前には……<br>
頭の中でこれからの計画を考え終えた唯はリトに向き直る。緊張が体を駆け巡るが、ちゃんと伝えようと思った。<br>
自分の気持ちを素直に<br>
キュッと握り締めた手を胸に当てて深呼吸<br>
「ね、ねえ結城くん、も…もしよかったらこれから私と外に出かけない?<br>
ほら、私達って今までデート……みたいなことしたことないじゃない?だから…」<br>
「……」<br>
無反応なリトに怪訝な顔をすると唯はベッドに近づく<br>
<div class="mes">「だ、だって私達ずっとこんな感じだし、そ…そうよそれにこんなこと高校生らしい付き合い方じゃないと思うわ!<br>
だ、だからと言って別に結城くんとハレンチなことしたくないって言ってるわけじゃなくて……。<br>
えっと私ただその…結城くんともっと色んなところに行ったり、色んなコトしてみたいなァって⁄⁄⁄」<br>
「……」<br>
リトはまた無反応だ<br>
「結城…くん?私なにおかしなこと言った?結城くん?……ちょっと聞いてるのっ?」<br>
自分なりに精一杯の気持ちを言ったのに、それをことごとく無視するリトに唯は口調をきつくする<br>
「あなたいい加減になんとか言ったらどう…」<br>
リトに詰め寄ろうとした唯の動きは止まる<br>
ベッドの上ではリトが心地いい寝息を立てていた。その気持ちよさそうな顔を見ている内に唯の体から力が抜けていく<br>
「……もぅ…」<br>
唯は溜め息を吐きながらもリトに布団をかぶせてあげた<br>
<br>
結局いつもの様に夜まで家にいた唯は、美柑お手製の夕食を食べた後、リトに送られながら家路についていた<br>
「なあ、なに怒ってんだよ?」<br>
「……別に」<br>
隣を歩く唯の冷たい一言にリトは顔をしかめる<br>
(なんだ?オレなんかやったのか?)<br>
リトが悩んでいたその時、二人の横を同い年ぐらいのカップルがすれ違っていく<br>
その二人をじっと見つめる唯にピンときたのか、リトは唯の手をギュッと握り締める<br>
「ほら、オレ達だって付き合ってるんだし負けてないと思うけどな」<br>
リトと手を繋ぐのはうれしいし、こうやって並んで歩くのもうれしい<br>
だけど唯はリトとは別のことを考えていた<br>
通り過ぎた男の子の手にはどこかで買い物をしたのだろう、デパートの紙袋やケーキの入った箱が握られていた<br>
きっと二人で服や小物を見たり、何を食べるのかウインドの前でケーキを選んだりしたのだろう<br>
「いいなァ……うらやましい…」<br>
素直な気持ちが口からこぼれる<br>
そんなぼーっとしている唯を立ち止まらせると、リトは家に着いたことを教える<br>
「おまえホントにどうしたんだよ?大丈夫か?」<br>
「う…うん!大丈夫だから!!今日はありがとう……じゃあまたね」<br>
名残惜しげに手を離すリトに別れを告げると唯は玄関のドアを開けた<br>
<br>
リトと別れた唯は自分の部屋に戻ると、ぼんやりと窓の外を眺めていた<br>
「はぁ~今日も一日結城くんとハレンチなことばかり……」<br>
自分からリトを求め、リトに身を任せているのだから文句はないのだが<br>
それでも唯の口から溜息がこぼれる<br>
窓の外を歩く同じ年ほどのカップルに唯の羨望の視線がそそがれる<br>
仲良く腕を組んでいる二人。自分にはそんなマネはできないが手ぐらいは繋いで街を歩いてみたい<br>
リトとデートらしいデートなどしたことのない唯にとって、待ち行くカップルはみな憧れの対象になる<br>
唯はまた深い溜息を吐くと、窓を閉めお風呂に入ろうと着替えの支度をする<br>
その時、ふとカレンダーに目が留まった唯は何気なく日にちを目で追っていった<br>
来週の日曜日<br>
(そういえばこの日は確か……)<br>
そのコトを確認すると唯は明日どうやってリトにその話を持ちかけようかと考え出した<br>
そして一週間後の日曜日<br>
今日は地元の神社で行われる夏祭りの日<br>
花火大会もあるということで、今、駅の中は人で溢れかえっている<br>
そんな中、唯は駅構内にある鏡の前で自分の服装のチェックをしていた<br>
自分のセンスに自信があるわけじゃない。服のコーディネイトだって雑誌を見ながらだ<br>
それでも今日という特別な日のために、唯は自分なりに一生懸命がんばってみた<br>
白い生地に、夏らしく涼しげな青の花や赤い花をあしらった浴衣<br>
髪を後ろでアップにし、いつもとは少し違う印象を出してみたりもしてみた<br>
唯は鏡の前で深呼吸をする<br>
頭に浮かぶのはリトの顔<br>
「結城くん…あなた今日のことどう思ってるの……?」<br>
<br>
『へ、祭り?いいぜ!特に用事もないし』<br>
あの日、なんとかがんばってリトへデートの誘いを申し込んだ唯は、リトのあまりの簡単な返事にきょとんとなった<br>
<br>
もっと驚いたり、焦ってくれたり、喜んでくれたりしてくれると思っていただけに、唯の中で複雑な気持ちが生まれていた<br>
これまでデートらしいデートなどしてこなかった二人にとっては、これが初デートだというのに、リトの気軽さが少し唯の心に影を落とす<br>
「結城くん……」<br>
ぽつりと呟いた言葉に唯の胸は締め付けられる<br>
最近リトのことばかり考えている自分。リトを中心に考えている自分<br>
頭の中にずっと居続ける最愛の相手<br>
好きで好きで、どうしよもなく好きでたまらなくなっている<br>
それは唯自身でもわかるほどに強く、重い感情。決して表には出すことのない自分だけの思い<br>
それは、言葉では中々言えない素直な気持ち。ひょっとしたらこの先も口にだすことはないのかもしれない<br>
この日への思いも、その思いの深さも<br>
それでも唯は大丈夫だと信じていた<br>
口に出さなくても、気持ちを確かめ合わなくてもきっと大丈夫だと――――<br>
そこには確証もないし、絶対なモノもない<br>
あるのは信じているという気持ちだけ<br>
口に出さなくても伝わっている、確かめなくてもわかるお互いの気持ち<br>
だから、だからきっと今日だって……<br>
それはエゴかもしれない、自分勝手な思いかもしれない<br>
それでも……それでも――――<br>
「結城となら私は…」<br>
小さなか細い声がこぼれた<br>
唯は鏡の中の自分の姿をじっと見つめる<br>
鏡に映る自分の姿は、普段の自分とは掛け離れていた<br>
そんな自分の弱さに唯はキュッと手を握り締める<br>
「そうよ…そうよ!きっと…きっと結城くんだって今日のこと大切に思ってくれているわ」<br>
鏡に向かって言い聞かせるようにそう呟く<br>
心の中はまだざわめいたまま<br>
それでも最後にまた髪のチェックを済ますと唯は、リトとの待ち合わせ場所に向かう<br>
リトの顔を見るために、その手を繋ぎ合わせるために<br>
その胸に、一つの悩みを残して<br>
夕方を少しまわった駅前広場、時間にうるさい唯のためとはいえ待ち合わせ時間より<br>
30分も早く来ていたリトは、どこか落ちつかなげに人の流れを目で追っていた<br>
今日は自分にとって、二人にとって特別な日<br>
こうして待っている間もドキドキと心臓の音は早くなっていく<br>
リトがそうやって一人落ちつかなげにそわそわしていると後ろから見知った声がかかる<br>
「結城くん?」<br>
振り向くとそこには浴衣姿の春菜が立っている<br>
「さ、西連寺!?」<br>
「結城くんもこれからお祭り?」<br>
「ああ…」<br>
(そういやララのヤツが春菜ちゃんとどうこう言ってたな……)<br>
今日は夏祭りということもあり駅前広場はいつも以上の人で溢れていた<br>
そして、そんな中でも一際目立つ雰囲気を醸し出している目の前のクラスメイト<br>
黒髪と薄紫の生地に花模様の浴衣が、絶妙のバランス具合となって、春菜からいつもはあまりない大人びた色気を出させていた<br>
中学の頃ずっと思いを寄せていた相手だけにリトの心臓はドキンと高鳴る<br>
(春菜ちゃん今日はなんだかすげーキレイだなァ……)<br>
「結城くんはここでなにしてるの?誰かと待ち合わせ?」<br>
「え!?ああ…うん、そうなんだ。友達と待ち合わせ」<br>
別に付き合っていることは秘密でもなんでもないのだが、つい唯との関係を友達だと言ってしまうリト<br>
「そっか…私もララさん達と待ち合わせ。同じだね」<br>
にっこりと笑顔を向けてくる春菜にリトの顔も赤くなる<br>
(やっぱ春菜ちゃんカワイイ)<br>
リトは思い切って心に浮かんだコトを口に出す<br>
「あ、あのさ西連寺…きょ、今日はいつもよりなんつーかその…浴衣すげえ似合ってるよ」<br>
思ったことの半分も口に出せないリトだったが、春菜はそれがうれしかったのか耳まで真っ赤になった顔でもごもごと口を動かす<br>
「あ、ありがとう…⁄⁄⁄⁄」<br>
「う、うん⁄⁄⁄⁄」<br>
「……」<br>
「……」<br>
(やべ!気まずい!!なんか…なんか言わねーと!!)<br>
微妙な雰囲気に二人は飲み込まれていく<br>
「あ、あの結城くん!」<br>
春菜は顔を俯かせながら少し上ずった声を出す。その顔はまだ赤いままだ<br>
「な、なに?」<br>
「も、もしよかったら結城くんも……わた、私と……私達といっしょにお祭りに……」<br>
言いたいことを最後まで言うことなく、その時、春菜の巾着からケータイの着信音が鳴る<br>
「ご、ゴメンね…ちょっと待ってて」<br>
春菜がケータイを取り出しなにやら話し込んでいる間、リトは時計を見る<br>
時刻は六時五分前、中々姿を見せない唯にリトは少し不安になる<br>
(あいつなにやってんだ?いつもならとっくに来ててもおかしくないのに…)<br>
リトが一人考え込んでいると話し終えた春菜がリトに向き直る<br>
「ゴメンね結城くん、ララさんから電話あって私そろそろ行かないと…」<br>
「ああいいよ、オレこそ引き止めてゴメンな!」<br>
春菜はリトの顔を見るともごもごと口を動かす。それはさっき言いかけたコトを、言いたかったコトを言おうとしているみたいで<br>
その様子にリトは不思議そうな目を向ける<br>
「西連寺?」<br>
「……ううん、なんでもない」<br>
「そっか…じゃあ気をつけてな」<br>
「うん、結城くんも」<br>
去り際、春菜はもう一度リトの顔を見つめると、なにも言わずに歩き出した<br>
「なんだったんだ春菜ちゃん?オレになんか用事だったのかな……」<br>
「ずいぶん仲が良いみたいね西連寺さんと」<br>
後ろから聞こえたその声にリトの背中はビクンとなる<br>
「唯!?」<br>
唯は遠くに見える春菜の姿に目を細めると、リトに向き直る<br>
「……結構前に着いていたんだけど、なんだかお邪魔みたいだったから黙ってたの」<br>
ふいっと顔を背ける唯にリトは溜め息を吐く<br>
「おまえなに言って……まあ、ちゃんと来たからよかったけど。それじゃあ行こっか唯」<br>
歩き出したリトの背中を見ながら唯は不満そうな顔になる<br>
(なによ!結城くんったらあんなにデレデレしちゃって……)<br>
リトの隣に並びしばらく歩いても、その気持ちは治まるどころか大きくなっていく<br>
(しかも結城くん私にはなにも言ってくれないし……)<br>
この日のために初めて買った浴衣<br>
袖を通す時、リトの顔が浮かんではどんなコトを言われるか期待に胸を躍らした<br>
店で買う時もリトの好きそうな色合いを思い浮かべ悩みながら選んだ<br>
下駄も巾着もみんなこの日のために、リトのために―――――<br>
『あ、あのさ西連寺…きょ、今日はいつもよりなんつーかその…浴衣すげえ似合ってるよ』<br>
そう言った時のリトの顔が、声が頭の中で甦る<br>
手を繋ごうと伸ばしたリトの手を無視すると、唯は黙って隣を歩く<br>
その目は少し悲しげに揺らめいていた<br>
<br>
祭りのある神社は予想以上の人でごった返していた<br>
おいしそうな匂いがする露店の数々。子供たちの楽しそうな声。それがリトの心を躍らせる<br>
そして、それは隣にいる唯も一緒なようで、リトと同じように目を輝かせていた<br>
「へ~おまえもやっぱ、こういうとこ好きなんだな。俺も好きなんだ、祭りって!」<br>
楽しそうな顔で笑うリト<br>
「べ、別に私はそういうんじゃ……。そ、それに勘違いしないでね!私が今日ここに来たのはお祭り目当てじゃなく…」<br>
「風紀活動の一環なんだろ?彩西高の風紀を乱すヤツを取り締まるとかそんな感じの」<br>
「え、ええ…。あなたにしたらよくわかってるじゃない。そうよ!私達が今日ここに来たのは、<br>
あなたの様な生徒が問題を起こさないように見張りに来ただけなんだから」<br>
妙に声を強めて力説する唯<br>
「だ、だから変な勘違いしないで」<br>
「ああ、んなコト今さら言われなくっても、ちゃんとわかってるって」<br>
リトはそう言うと唯に手を差し伸べる<br>
「けど、風紀活動も大事だけど、今日はせっかく祭りに来てるんだから楽しまないと損だぜ?それに、オレ達にとってこの祭りは特別なものだろ?」<br>
唯の胸がドキンと高鳴る<br>
なにが特別なのか、喉まで出かけたその言葉をムリヤリ呑み込むと、照れ隠しの様にリトから顔を背けてしまう<br>
「唯?」<br>
「きょ…今日はそんなんじゃないんだから、結城くんも真面目にしてっ////」<br>
二人は一通り祭り会場を一周すると、神社の境内に来ていた<br>
ここは露店などがない代わりに、カップル達の溜り場となっている場所<br>
腕を組んで歩く男女に、ベンチに座ってキスをし合う者、木の影に隠れてイチャつく様子に唯の顔も自然と赤くなっていく<br>
(な、なんてハレンチなっ!!あんなコト人前でよくも……⁄⁄⁄⁄)<br>
「ココすげー……」<br>
舌を絡め合う男女を隣でまじまじと見続けているリトに唯の厳しい視線が飛ぶ<br>
「結城くん!あなたなに真剣に見てるのよ?」<br>
「いや、だって…」<br>
顔を赤くさせながら言い訳をしても説得力があるはずもなく、唯の目はますます厳しくなっていく<br>
「まったく!あなたってどこでも…」<br>
普段と同じ様に振舞っている唯だったが、実は心の中はたいへんだった。<br>
周りのカップル達の大胆な行為に、さっきから心臓の音がドキドキと鳴りっぱなしだ<br>
どんどん早くなっていく鼓動に自然と顔も赤くなっていく<br>
唯はそっとリトの横顔を見つめた。その顔は複雑な表情を浮かべている<br>
さっき意地を張ってリトの手を拒んだことが悔やまれた<br>
せっかくのデートを風紀活動だなどと言ってしまった自分に不甲斐なさを感じた<br>
(私が言い出したことなのに……)<br>
からっぽの手が寂しく感じられる。リトのぬくもりが恋しい<br>
リトを見つめる唯の目に熱が帯びていく<br>
そんな唯の複雑な思いがこもった視線にリトはようやく気付く<br>
「ん?どうしたんだよ?」<br>
「な、なんでもないわよ!早く行くわよ…」<br>
境内に背を向けると唯は再び祭りの喧騒の中に入っていく<br>
人を掻き分けながら進む唯の背にリトの手がかかる<br>
「ちょっと待てって!こんな人がいっぱいだと迷子になるぞ」<br>
「なるわけないでしょ!だいたいあなたが逸れなければ私は…」<br>
そう言いながら進もうとする唯の手にリトの手が重ねられる<br>
「ちょ…ちょっとなにするのよ!?」<br>
手を握り締めるリトに唯はびっくりして思わず声を大きくする<br>
「風紀活動だろうと、なんだろうとおまえを一人にはできねーよ!」<br>
「え…?」<br>
リトの手に力が込められる<br>
「それに……それに変なヤツが来てもおまえを守れないだろ」<br>
リトの力強さといつものやさしいぬくもりが手に伝わってくる<br>
その目は真剣だった<br>
「う、うん……////」<br>
唯は短く応えると、キュッと手を握り返した<br>
<br>
「そう言えばおまえ腹減ったりしてないのか?」<br>
「……少し」<br>
ぼそっと話す唯の手を引きながらリトが進みだす<br>
「それじゃあ、なにか食いにいくか。おまえなにが食べたい?」<br>
唯は少し目を彷徨わせると、すっと一軒の露店へと指差す<br>
「え?これって……おまえこんなのが好きなの?」<br>
意外な唯の選択にリトの目も丸くなる<br>
「わ、悪かったわね⁄⁄⁄⁄」<br>
恥ずかしさで顔を俯かせる唯の手を取ると、リトは露店のおじさんに声をかける<br>
「すみません、リンゴ飴二つください」<br>
<br>
リトは飴を受け取るとお腹が空いていたのか早速口を近づける<br>
「ダメよ!立ちながら食べるなんて。それに歩きながらなんてもっとダメ!!」<br>
「おまえなァ……こんな時ぐらいいいじゃねーか」<br>
「こんな時だからこそよ!とにかく風紀の乱れに繋がることは私が許しません!」<br>
頑として言い放つ唯に溜め息を吐くと、再びリトは唯の手を取って歩き出す<br>
「ったくしょうがねえな……どっか座れる場所は……」<br>
「しょうがなくなんてないわ!だいたいあなたは日頃から…あっ」<br>
メンドクサそうに顔をしかめるリトに注意をしようとしたその時、目に映ったあるモノの姿に唯の足は止まった<br>
<div class="mes">「ん?どうしたんだよ?」<br>
ぼーっとしている唯に怪訝な目を向けると、リトはそのままその視線を追ってみる<br>
向かいに並ぶ露店の一つ、射的屋<br>
そして、唯の見つめる視線の先には、茶色い毛並みをした子犬のぬいぐるみがあった<br>
「なんだよおまえ、あんなのが欲しいのか?」<br>
リトの言葉にぼーっとしていた顔をハッとさせると、唯は慌てて否定する<br>
「ち…違うわよ!私はただ……」<br>
「……」<br>
リトは手に持っていたリンゴ飴を唯に渡すと、射的屋の親父に声をかける<br>
「おっちゃん一回!」<br>
おもちゃの銃に玉を込めるとリトは他の景品には目もくれず、目当ての物に狙いを定めて撃つ<br>
(結城くん…?)<br>
少し大きめなソレは一回や二回当てた程度ではグラつくだけだったが、三回四回と当てる度に揺れは大きくなり、五回目でようやく下へと落ちた<br>
リトは射的屋の親父から景品を受け取ると、少し照れくさそうに唯に渡す<br>
「ほら、これが欲しかったんだろおまえ」<br>
「ぁ……あ…」<br>
リトから渡された物を受け取っても唯の口からは小さな呟きしか出てこず、もじもじと体をくねらせるだけだ<br>
「なんだよこれが欲しかったんじゃなかったのかよ?」<br>
「ち、違うの…そうじゃなくて……」<br>
歯切れの悪い唯を怪訝な顔で見つめるリトに、射的屋の親父が声をかける<br>
「そこのお二人さん!!祭りの日にケンカたァいただけねーな」<br>
「え!?いやオレ達別にケンカしてるわけじゃ…な、なあ唯?」<br>
リトの言葉にも唯は顔を背けて応えようとはしない<br>
(な…なんなんだよコイツ!?)<br>
リトは眉間に皺を寄せムッとした顔になっていく<br>
そんな二人の様子を見ていた親父の目が輝く<br>
「ふ~んなるほどね…。俺の経験から言わせてもらえば彼女、きっとあんたからのプレゼントがうれしくて、どうしていいのかわかんねーのさ」<br>
「えっ!?」<br>
目を丸くするリトは慌てて唯の方を振り向く<br>
「いや~カワイイ子じゃねーか!」<br>
「唯……」<br>
真っ赤になった顔を俯かせていた唯は二人のやり取りに顔を上げる<br>
「ち…違います!!私は別に…だいたいコレは彼が勝手にやったことなんです⁄⁄⁄⁄」<br>
全力で否定する唯に射的屋の親父は笑い出す<br>
「そんなにテレなくてもいいじゃねーか!青春ってのは大事なモンだぜ」<br>
話のまったく噛み合わない相手に唯の顔はムッとなっていく<br>
「あ、あなたちょっとは人の話を……」<br>
「お…おいこんなところでそんなコトやめろよな」<br>
妙に冷静なリトに唯はつい怒りの矛先を向けてしまう<br>
「だ、だいたいあなたが私の話を聞かずに勝手にするからこんなことに……」<br>
「はぁ?なんでオレのせいになるんだよ?おまえが欲しそうな顔してたからオレは…」<br>
そんな二人のやりとりを見ていた親父は交互に二人の顔を見つめて頷く<br>
「ケンカするほど仲が良いって昔から言うしな。あんたら見てるとこっちまで微笑ましくなってくるよ。あんたらお似合いのカップルだぜ!」<br>
「なっ!?」<br>
「お似合いの……」<br>
その言葉に耳まで真っ赤になった二人は、さっきまでの言い合いも忘れて、お互いの顔を見つめる<br>
そんな二人の様子をにやにやと見ていた親父は、ついにぷっと噴出し豪快に笑い出した<br>
<br>
そして、そんな様子を少し遠くから見ている者がいた<br>
「…あれって結城くんと古手川さんよね」<br>
<div class="mes">それからリト達は再び人の波の中を歩いていた。リトの隣には唯と、そして、春菜がいた<br>
「…にしてもララ達なにやってんだよ……。西連寺を置いて勝手にどっかに行くなんて」<br>
「そんなことないよ。私がぼーっとしてたからはぐれちゃったんだし…」<br>
小さな声で春菜が応える<br>
「西連寺はなにも悪くないよ!悪いのはララ達なんだしさ。だいたい美柑のヤツはなにやってんだよ……なあ、唯?」<br>
「……そうね」<br>
怒ってるわけでも、楽しそうでもない唯の声にリトは一瞬眉を寄せる<br>
「と、とにかく二人が見つかるまでオレ達と一緒にいるといいよ」<br>
「う…うん。それはうれしいんだけど…。私、迷惑になってない?その…結城くん達の……」<br>
リトは顔を赤くさせると、手で全力で否定しながら必死な声をだす<br>
「そ!そんな事ねーよ!!オレ達はただおもしろそーだなァって感じでココに来てるだけだし!それに、こーゆートコは大勢の方が楽しいしさ!!」<br>
その言葉に唯の目がピクリと反応する<br>
「……ホントに?」<br>
春菜の声はリトではなく、その隣を歩く唯に向けられている様だった<br>
唯は黙ったまま地面を見つめていたが、やがてぽつりと言葉をこぼす<br>
「心配しなくてもいいわよ。私もそう思うし……。二人より三人の方が楽しいじゃない」<br>
数秒の間を置いて応えたそれは、感情のあまりこもって無い淡々としたモノだった<br>
春菜はそんな唯に違和感を覚えるも、安心したかの様に笑顔を浮かべる<br>
「…うん、ありがとう古手川さん」<br>
「別にいいわよ、こんなこと…」<br>
そんな二人のやりとりに、リトは、気付かれないように唯を横目で見つめる<br>
黙ったまま地面を見続ける唯は、さっきまでの雰囲気はどこにもなく、どこか寂しそうだった<br>
(なんだよ…。どうしたんだこいつ……?)<br>
リトは聞かれない様に心の中だけで唯に呟いた<br>
<br>
それから3人はララ達を見つけるついでに、様々な露店巡りをした<br>
ヨーヨー釣りに焼きそばを食べたりカキ氷で喉を潤したり、そして、金魚すくい<br>
(オレはこーゆーの得意なんだ!カッコイイとこ見せてやる!!)<br>
美柑からは散々ムダな才能だとからかわれてきたリトだったが、二人にカッコイイところ見せようと張り切って挑んだ<br>
が、中々うまく掬うことができず、結果0匹に終わってしまう<br>
「気にしないで結城くん。ほら、金魚すくいって難しいと思うし…」<br>
「……ゴメン、面目ない……」<br>
春菜の励ましにもリトは力なくうな垂れたままだ<br>
そんな二人の様子を唯は少し後ろから黙って見ていた<br>
「にーちゃん彼女をあんまり困らせたらダメじゃねーか。彼氏ならもっとドンと構えてなきゃな。<br>
ほら、オレからあんた達カップルにサービスだ!受け取りな」<br>
そう言って1匹の金魚を差し出す露店の親父に、リトと春菜は耳まで真っ赤にさせる<br>
「カカ…カ、カップル~!?」<br>
「お…おじさん待って、私たちそんなんじゃ……////」<br>
二人の反応に唯の表情はムッとしたものに変わっていく<br>
「なによ、もっとちゃんと否定しなさいよ……」<br>
唯の言葉はリトに届くことなく祭りの雑踏の中に消えていった<br>
<div class="mes">
「げ、元気出して結城くん!ホラ、おじさんがサービスで1匹くれたじゃない。…それよりゴメンね、カップルだなんて言われちゃって…」<br>
「え!?いや…オレは別に気にしてないっていうか…その……」<br>
リトはチラリと唯の方を見る。唯はそっぽを向いていた<br>
(唯…)<br>
<br>
一週間前のあの日、珍しくお説教以外で唯の呼び出しを受けたリトは、少しビクビクしながら唯との約束の場所まで行った<br>
『今日はあなたに大事な話があって呼んだの。一週間後の日曜日に近所の神社でお祭りがあるんだけど。その…結城くんその日って空いてる?』<br>
ぼーっとしているリトへ、唯はなぜか大慌てで付け加える<br>
『も、もちろんデートってわけじゃなくて…そう!これは風紀活動の一環として私はね…』<br>
どんどんと一人焦りだす唯へ、リトは短くいいよと応えた<br>
唯のほっとした様な表情と、どこか寂しげな顔に少し引っかかるモノがあるものの<br>
リトは心の中で喜びを爆発させた<br>
唯からの誘い<br>
それはリトにとっては意外なことであり、そして、すごくうれしいことだった<br>
きっと何度も何度も頭の中でなにを言おう、どう言おうと、繰り返し練習したのだろう<br>
唯らしいギコチない言葉の中に、唯のその日への思いがいっぱい詰まっていると感じた<br>
<br>
なのに自分は……<br>
あいまいな言葉で濁す自分を見つめる春菜へ、リトは、思い切ってホントのことを言おうと口を開く<br>
「あ、あのさ、西連寺っ!」<br>
「どうしたの?」<br>
思いのほか大きな声を出してしまったことに、リトは躊躇ってしまったのか少し間を空けてしまう<br>
そして、その声にこちらを見つめる唯の姿が目に映る<br>
変な緊張が喉を締め付けていく<br>
「えっと…あのさ…」<br>
「うん」<br>
続く言葉が出てこない。心臓がドクンドクンと早くなっていき、手に汗が浮かんでくる<br>
ただ本当のコトを言うだけなのに<br>
「さ、西連寺その…オレ……オレは…そうだ!!腹減らない?タコ焼きでも食おうぜ」<br>
「うん!」<br>
ハハハと力なく笑うリトに唯は溜め息をこぼすと、その横を黙って通り過ぎていく<br>
「ゴメン、唯……」<br>
横を通り過ぎる時、その声が聞こえているのかいないのか、唯はリトの顔を一度も見ようとはしなかった<br>
<br>
結局、再び祭りの中を歩く3人の中で唯の表情は晴れないばかりか、今はその顔に複雑なものを浮かべていた<br>
唯はリトの性格をよく知っている。普段は頼りないしデリカシーもない。だけど、やる時はちゃんとしてくれる<br>
そして、なによりどんな時でもやさしさがあった<br>
だから今にしても、春菜をこんなところで一人っきりにはさせられないという思いが、あることもわかっていた<br>
(だからって……)<br>
隣で仲良く話す二人に唯の中で、もやもやとしたモノが生まれる<br>
リトと春菜は今、高1の時の思い出話に夢中になっていた<br>
臨海学校の水着盗難の時のこと、文化祭の話、クリスマスパーティの話にララが宇宙人だとバレた時のこと<br>
そのどれもが唯の知らない話だったし、そして、唯の知らないリトだった<br>
リトの隣を並んで歩く唯の表情は優れない<br>
リト達の話に相づちをうったり、頷いたりはするが、とても楽しめる気分ではなかった<br>
自分の知らないリトを知る春菜<br>
どういう理由でも春菜を思うリトのやさしさに複雑な感情が芽生える<br>
なによりリトのやさしさが自分以外に向けられていることに、春菜への嫉妬が生まれる<br>
もちろんそれはただの我がままだと思うし、いけないことだとわかってはいた<br>
わかってはいるのだが……<br>
隣で自分の知らない話をしている二人に唯は顔をムッとしかめる<br>
<div class="mes">隣で黙って歩く唯にいつもとは違うなにかを感じたのか、リトは小さな声で話しかける<br>
「唯?」<br>
「……」<br>
「さっきは悪かったよ。その、オレちゃんとするから、だから…」<br>
「……」<br>
唯はなにも答えない<br>
心配になったリトは唯の肩に手を置こうと手を伸ばす<br>
その手から逃れるようにリトから距離を置くと、唯は一人黙って歩き出した<br>
「お、おい…」<br>
「ほっといて!一人になりたいのっ」<br>
こちらを振り返りもせずそう言い放つ唯の口調は、いつにもまして強く、そして、どこか悲しそうだった<br>
「あいつなに考えて…。ゴメン、オレちょっと追いかけてくる」<br>
「あっ!結城くんちょっと待って私が……」<br>
なにか言いかけた春菜を後ろに残し、リトは唯の後を追う<br>
「どうしたんだよ唯のヤツ……」<br>
悪態を吐きながらも、リトは、自分の不甲斐ない態度で唯を怒らせていることをわかっていた<br>
わかってはいるがどうすることもできない<br>
思いが空回りをしてしまい春菜に本当のコトを言えないでいた<br>
「クソっ!なにやってんだよオレは…」<br>
人ごみを掻き分けながら進んでいくと唯の後ろ姿が映る<br>
「あっ!唯ッ」<br>
リトは唯の前に回りこむと肩を掴んで捕まえる<br>
「…なによ?」<br>
「なによっておまえな…。なに考えてんだよ?」<br>
その言葉に唯は顔をムッとさせる<br>
「それは私のセリフでしょ!あなたこそなに考えてるのよ?だいたい今日は私たちの……」<br>
「私たちのなんだよ?」<br>
「それは……」<br>
唯は黙って俯いてしまい、そのまま黙り込んでしまう<br>
「とにかく一度戻ろうぜ。西連寺も心配してるだろうしさ」<br>
「……なによそれ?」<br>
「え?」<br>
ぽつりと呟いた唯の声にリトは間の抜けた返事を返す<br>
唯は俯いていた顔を上げると、そんなリトを睨み付ける<br>
「どうして…どうして西連寺さんの心配ばかりするのよ?どうして西連寺さんばかりなの?私のことはどうでもいいの?<br>
私だって一緒にいるのに、私はあなたのなんなの?ねえ、答えてっ!?」<br>
唯の大きく強い口調は周囲の人たちの視線を集めるが、そんなことは気にも止まらないのか、唯はますます声を荒げる<br>
「だいたいあなた今日がなんの日かわかってるの?すごく大切な日なのよ!それなのに…それなのに……」<br>
リトが春菜を気にかけてるのはわかる。わかってはいるがそれが必要以上に唯の目には映っていた<br>
自分の知らない話、目の前で春菜にデレデレしているリト<br>
三人でいるはずなのに自分一人だけ取り残されている感覚<br>
なによりリトが自分以外の女の子と仲良くしているのが嫌だった<br>
<br>
だって、だって結城くんは私だけの――――<br>
<br>
再び俯いてしまった唯にリトは溜め息を吐く<br>
「とにかくさ、こんなところじゃなんだからどっか違うところで話そーぜ、な?」<br>
心配そうな顔で近づけてくるリトの手を、唯は、思わず払いのけてしまう<br>
「もうほっといてっ!!」<br>
少し赤くなった手とリトのきょとんとした顔に、唯は苦い表情になる<br>
「ゴメン…なさい……」<br>
「いや、別にいいけど…それより唯…」<br>
いつも以上に暗く落ち込んでしまった唯に、リトもそれ以上声をかけられないでいた<br>
祭りの賑やかでいて楽しそうな人々のざわめきの中で、二人の周囲だけポッカリと寂しい空間ができていた<br>
なにもしゃべらなくなった唯へ必死に言葉を探すリト<br>
だが、焦る気持ちがリトから冷静さを奪っていく<br>
目の前で一人あたふたとしているリトへ、唯はすっと持っていたぬいぐるみを差し出した<br>
「これちょっと持ってて」<br>
なにも言わず反射的に受け取ったリトの胸に、嫌な不安が広がっていく<br>
「えっ…あのさ唯、これって…その……」<br>
唯はリトに背を向けるとそのまま歩き出す<br>
「もしかしてオレ…嫌われた……?」<br>
ぼーっとその背中を見続けていたリトは、ハッと我に返ると慌てて唯を呼び止める<br>
その声に立ち止まった唯は、リトに振り返るとごにょごにょと何かをしゃべった<br>
その顔はなぜか赤くなっていて、聞き取れない声と唯の表情にリトは怪訝な顔をする<br>
リトは唯に駆け寄る<br>
「どうしたんだよ?なに言ってんだかわかんねー」<br>
唯は長い睫毛を伏せるかの様に真っ赤になっている顔を俯かせる<br>
「もう…わかって……」<br>
「え?」<br>
ぼそりと小さな声で呟くだけの唯にリトは顔を近づけさせる<br>
「唯?」<br>
「……も、もういい加減わかって!トイレに行きたいだけなのっ////」<br>
「あっ…」<br>
ようやく納得したのかリトは一人顔を明るくさせる<br>
「なんだ。そんなことならそうと言ってくれればいいのに」<br>
「女の子にそんなこと聞くほうがどうかしてるわよ////」<br>
唯は少し怒ったような目をするとくるりと背中を向けて歩き出した<br>
<br>
リトは唯が終えるのを簡易トイレのある広場前で待っていた。待ってる間、腕の中の景品に目を落とす<br>
茶色の毛並みをした子犬のぬいぐるみ<br>
少し大きめなソレは両手で抱きしめるにはちょうどいいサイズで、今はリトの腕の中で将来の主になる人をリトと一緒に待つ<br>
「オレなにやってんだよ……」<br>
今日の自分の不甲斐なさに、リトに思わずぬいぐるみに話しかけてしまう<br>
けれど、ぬいぐるみに話しかけても応えが返ってくるはずもなく、リトが溜め息を吐いていると後ろから声がかかる<br>
「結城くん」<br>
後ろにはいつの間にか春菜が立っていた<br>
<br>
唯は鏡を見ていた。その口から溜め息がこぼれる<br>
「はァ~私なにしてるんだろ……」<br>
今日は色々と楽しみにして来た分、中々期待通りにいかないことに気持ちも沈む<br>
(こんなに思ってるのに、こんなに楽しみにしてるのにどうしてうまくいかないの?)<br>
唯の口からまた溜め息が漏れ、鏡に映る浴衣姿の自分を白く曇らせる<br>
今日のために、リトが喜ぶと思って一生懸命選んできた浴衣<br>
「結城くん私より西連寺さんといる方がいいの?私よりも……」<br>
溜め息がこぼれ、唯の顔を寂しさが覆う<br>
<br>
「ゴメン…西連寺のことほっといたままで」<br>
申し訳なさそうに頭を掻くリトに、春菜はくすっと笑いかける<br>
「ううん。私は別にいいの。それより結城くん、古手川さんは大丈夫なの?」<br>
<div class="mes">「あいつは…」<br>
ぬいぐるみに視線を落とし言いよどむリトに、春菜が明るい声で話しかける<br>
「それカワイイ子だね。どうしたの?古手川さんの持ってた物だよね?」<br>
「え?ああ…これは」<br>
リトは一瞬目をさ迷わせた後、再びぬいぐるみへと視線を戻す<br>
「うん、これ古手川のなんだ」<br>
「……」<br>
「あいつコレが欲しかったみたいでさ、オレが射的で取ったんだ」<br>
<br>
唯はトイレを出ると、暗く沈んでしまった自分の気持ちをなんとか押さえ込み、リトの下に急いだ<br>
やせ我慢だとわかってはいたが、これ以上自分の気持ちで二人の雰囲気を壊したくないと思った<br>
なによりこれ以上リトと気持ちが離れるのは嫌だと思った<br>
そんな唯の周りを何組ものカップルが行き来する<br>
自然と目は彷徨い、足は立ち止まってしまう<br>
(私達だってちゃんとしたカップル…なのに…)<br>
互いに肩を寄せ合って歩く姿に楽しそうにしゃべる様子に軽い嫉妬を覚える<br>
頭になぜか春菜と楽しそうに話すリトの姿が浮かんだ<br>
唯の足は自然と早足になる<br>
(我がままだってわかってる!だけど、だけどやっぱり私は…)<br>
リトの姿が目に入ると自然と笑みがこぼれる。唯はそんな自分を落ち着かせる様にゆっくりと歩き出した<br>
「お待たせ。結城…え!?……また西連寺さんと一緒なんだ…」<br>
春菜と話すリトの姿が唯の胸に重く圧し掛かる<br>
「さっきまでは私と一緒だったのに、私を追って来てくれてたのに…」<br>
唯は二人に気づかれないように近くにあった木の影に隠れてじっと二人の様子を見つめる<br>
「なにしてるのよ私は…」<br>
言葉とは裏腹に唯の心は二人を捉えて離さない。リトと春菜の二人を<br>
「結城くん…」<br>
唯は胸で手を握り締めてただ二人を見つめる<br>
<br>
「オレ…さ、駅前で西連寺に今日は友達を待ってるって言ったじゃん?あれ…ホントはウソなんだ」<br>
「……うん」<br>
<br>
(それって私の…こと?)<br>
木の影からかろうじて二人の会話が聞こえていた唯は、思わずリトの言葉に耳を疑う<br>
<br>
「ホントは違うのに…ホントは一番大事なヤツなのにオレ……誰かにホントのこと言うのが恥ずかしくってさ」<br>
「…うん」<br>
言葉を探すようにゆっくりと話すリトに春菜はじっと耳を傾ける。そしてそれは唯も同じだった<br>
「オレ古手川と付き合ってるんだ!二ヶ月前からさ…」<br>
「うん」<br>
「うんって……あれ?驚いたりしないの?」<br>
春菜への思いは吹っ切れていたとはいえ、それでもかつて好きだった相手に告白するのは、それなりの勇気がいったことだった<br>
それなのに、それをあっさりと受け取った春菜にリトは呆気に取られてしまう<br>
「うん!だってわかってたし…と言っても、わかったのはほんのちょっと前なんだけどね」<br>
少しはにかむ春菜にリトは慌ててワケを尋ねる<br>
「えっと、それって……どういう…」<br>
「うん実は……」<br>
春菜はあの後、唯とリトを追って偶然話し合っている二人の姿を見つけたこと<br>
そして、その話の内容を聞いて、二人の関係を知ってしまったことをリトに告げた<br>
<div class="mes">「ご、ゴメンなさい!悪いことだってわかっていたんだけど…どうしても気になって…」<br>
「いいって!気にすることないよそんなこと。それより知ってたんだ…」<br>
リトはほっとした様な少し複雑な表情を浮かべる<br>
「うん…それに結城くんを見ていたらわかるしね」<br>
「え!?どういう……」<br>
春菜は悪いと思いつつもくすくすと笑う<br>
「西連寺!?」<br>
「ゴメンなさい……結城くんはね、私を見る時と古手川さんを見る時とじゃ全然違うから」<br>
首をかしげるリト<br>
「それはね…すごくやさしくて、愛情に満ちた感じ。そんな風に古手川さんのことを見ているんだよ」<br>
「……なっ!違…そ、そんなことねーって!!オレは別に普通なワケでっ!」<br>
真っ赤になって慌てて訂正しようとするリトへ春菜は笑いかける<br>
「フフ、それを自然にできるところが結城くんの素敵なところなんだよ」<br>
「オ…オレは別にそんなつもりであいつを見てるわけじゃ……⁄⁄⁄」<br>
「だけど大切なんでしょ古手川さんのことが?」<br>
さらに顔を赤くさせるリトを春菜は少し切なげに見つめる<br>
「古手川さんがうらやましい……」<br>
「え?」<br>
思わずこぼれた自分の気持ちを誤魔化すように、春菜は慌ててリトが抱えるぬいぐるみを指差す<br>
「だ、だからねきっと古手川さんも結城くんと同じ気持ちだから、もっと大事にしないと!」<br>
「そ、そうかな~」<br>
少し否定的なリトの態度に唯の顔がムッとなる<br>
「うん!だってそれ…ぬいぐるみを見たらわかるから」<br>
「え?これが?……オレは全然わかんねーけど」<br>
春菜はリトからぬいぐるみを受け取るとその顔をじっと見つめる<br>
「西連寺?」<br>
「……フフ、やっぱり。このぬいぐるみ結城くんに似てるの」<br>
「へ?」<br>
リトは素っ頓狂な声を上げてもう一度ぬいぐるみの顔を見つめる<br>
確かに髪の色とかは似てはいるのだが……<br>
「そっかなー?」<br>
「うん、顔とかそっくりだよ。結城くんが笑ったところに」<br>
春菜にそう言われればリトも頷くしかない。リトはぬいぐるみを抱きかかえると改めて春菜に向き直る<br>
「オレあいつを大事にするよ。今日みたいにウソなんてもうつきたくないからさ<br>
あいつは……唯はオレの自慢の彼女だからさ!みんなに自慢できるオレの一番大切なヤツだから」<br>
リトの真っ直ぐな言葉。それはいつか自分が聞きたかった言葉だったのかもしれない……<br>
春菜はそんな自分の気持ちを心の奥に封じ込めると、リトの顔をもう一度見つめる<br>
「うん!結城くんと古手川さんならきっとこの先も大丈夫だと思うから……。それじゃあ私もう行くね」<br>
「え!?行くってでも一人じゃ……」<br>
(やさしいな、結城くん……。だけどこれ以上一緒にいたらきっと古手川さんに悪いから)<br>
心配そうに顔を見つめるリトに春菜は微笑む<br>
「さっき結城くん達を探してる時に、偶然ララさん達も見つけたの。だから、心配しなくても大丈夫だよ。」<br>
「そっか、じゃあもう安心だな。…それじゃあ気をつけてな西連寺」<br>
リトはそう言うと春菜を見送った<br>
<br>
(結城くん…)<br>
二人の会話を一部始終聞いていた唯は、出るに出れない状況に頭を抱えていた<br>
(あんなこと言われたらどんな顔をして結城くんに会えばいいのよ……)<br>
『唯はオレの自慢の彼女だからさ!みんなに自慢できるオレの一番大切なヤツだから』<br>
思い出すだけでも顔が熱くなる。何度でも聞きたい言葉<br>
それでも唯は立ち上がると、少し勇気を出して茂みから一歩出る<br>
<div class="mes">「結城くん」<br>
後ろから聞こえた声に慌てて振り向くと、少し顔を赤くした唯が立っていた<br>
「あれ?おまえトイレに行ってたんじゃ……」<br>
バツが悪そうに言いよどんでいる唯の様子に、リトはピンときた<br>
「ああそっか…おまえさっきの聞いてたんだ」<br>
「ゴメンなさい!悪いとは思ったんだけど…」<br>
「うん…」<br>
「……」<br>
「……」<br>
二人の間に微妙な空気が流れる<br>
お互い言いたいこと、伝えたいこと、たくさんあるはずなのにそれをうまく言えないでいた<br>
その時、祭り会場にアナウンスが流れる<br>
『ただいまより恒例の花火大会を行ないますので、ご来場の皆様は……』<br>
時刻は八時十分前、花火大会を告げるアナウンスに人々は色めき立つ<br>
「やばっ…もうこんな時間かよ…」<br>
一人焦りだすリトを唯は不思議そうな眼差しで見つめる<br>
「結城くん?どうしたの?」<br>
ぼーっとしている唯の手を掴むと、リトは、急に小走りで駆け出す<br>
「ちょ…ちょっとどうしたのよ急に?」<br>
「いいから!急がないと始まっちまう…」<br>
<br>
「はぁ…はぁもうちょっとだから、がんばれよな唯」<br>
「それはもうわかったから、どこに行くのよ?」<br>
息も絶え絶えな二人は今、神社の境内の更に奥、どこに続くかもわからない山道に来ていた<br>
周囲に明かりもなく、虫の鳴き声や得体の知れない物音にビクビクしながらも歩き続けていた<br>
本当なら今すぐにでも帰りたい衝動をグッと我慢できるのも、ずっと手を繋いでくれているリトのおかげだ<br>
けれどそれも限界に来ていた。さすがに目的もどこに行くのかも知らされていないのは辛い<br>
そんな弱気になっている唯の手をギュッと握り返すと、リトは再び歩き出す<br>
「結城くん、私もう足が……」<br>
「もうすぐそこだからがんばって…」<br>
その時、真っ暗だった山道に赤や青といった明かりが灯る<br>
リトが振り返ると、花火大会の開始を告げる盛大な打ち上げ花火がどんどんと上がっていた<br>
「うわぁ!始まっちまった」<br>
リトは足を速めると、草木を掻き分けながらも森の中へと進んでいく<br>
どんどん先へ進んでいくリトの背中を追うように、唯もその後を歩いて行く<br>
「結城くん、いい加減にして!いったいどこに行くのか行ってくれないと私…」<br>
自分の声を無視するかの様に先へ先へと進むリトに、唯のいらだちは募っていく<br>
「結城くん聞いてるの?ちゃんと説明してくれないと…」<br>
その時、前を行くリトがふいに止まる<br>
「あった!ここだ」<br>
「え?」<br>
リトが身の丈ほどの草を払いのけるとその先は、小さな広場ができていた<br>
「ホラ、唯お疲れ。到着したぜ」<br>
リトの差し出す手を握り返すと、唯は森から一歩外に出た<br>
雲一つない月明かりが、広場を明るく照らす<br>
「ここって……」<br>
「オレ子供のころよくこの神社で遊んでてさ。その時見つけたのがこの広場。<br>
結構見晴らしがいいだろ?」<br>
山の中腹にあるそこは、ちょうど境内の真上にあって、下に大勢の人達が見える<br>
「すごい…こんなところがあっただなんて」<br>
「ここだと人もこないし、周りに大きな建物とかもないからさ。絶好の穴場だろ?<br>
花火もよく見えるし」<br>
どこか得意げに笑うリトの顔を花火の色が染める<br>
「いつか誰かと、って思ってずっと秘密にしてたオレだけのとっておきの場所なんだここ…」<br>
「え?」<br>
真っすぐ前を見つめるリトの横顔は、花火のせいなのかどこか赤くなっていた<br>
「その…今日は初デートだろ?だからどうしてもお前とここに来たかったっていうか…////」<br>
どんどん小さくなっていくリトの言葉に唯は、ただぼーっとその横顔を見つめる<br>
「結城くん、今日がなんの日なのかわかってたんだ…」<br>
「当たり前だろそんなことっ!」<br>
照れくさいのか顔を背けるリトの横顔を、唯はまじまじと見つめる<br>
赤くなっている顔に花火の青や黄色が重なっていくと、リトはその顔を真剣なモノへと変えていく<br>
「さっきは悪かったな。いろいろと…」<br>
「え…」<br>
黙ってしまった唯にリトは頭を下げる<br>
「オレ今日、おまえに言いたいこととかいっぱいあったんだけどさ、中々言えないどころか、おまえに色々変な誤解とか与えてたみたいでさ。その…ゴメンな唯」<br>
「結城くん?」<br>
「今日は初めてのデートの日だっていうのにオレなにやってんだよ……」<br>
初じめてのデート――――<br>
気付いていないと思っていた。なにも考えてくれていないと思っていた<br>
誘った時、今日の態度<br>
普段となにも変わらないどころか、目の前で仲良く話す二人に嫉妬すら抱いた<br>
「ホントにゴメンな唯」<br>
申し訳なさそうなリトの顔に胸が締め付けられる<br>
唯はそんな自分の気持ちを隠すようにそっぽを向く<br>
「……別にいいわよそんなこと!よ、よくはないんだけど…それより」<br>
「それより?」<br>
「わ…私の方こそさっきはあんな態度とって悪かったわ。その…あなたがなにも考えていないと思ってたから…」<br>
その顔は相変わらずそっぽを向いたままだったが、唯の純粋なまでの気持ちがそこには込められていた<br>
リトはそんな唯に笑いかけると、そっと手を唯の頬に這わせる<br>
「じゃあ今日はお互い様ってことだな?」<br>
「ま、まあ今日はね」<br>
どこかまだギコチない唯の気持ちをほぐす様に、その手を頬から頭へと動かす<br>
「ホントは後もう一個あるんだ、言いたいこと…」<br>
「なんなの?」<br>
リトは唯に顔を近づけていく。二人の距離は数センチほどしか離れていない<br>
「今日のおまえすげーキレイだよ。他の誰よりも…」<br>
「な、なにを言って!だ、だいたい言うのが遅いのよ。そんなことフツー会った時に言うものでしょっ////」<br>
「ゴメン…」<br>
リトはそう言うと唯の唇に自分のを重ねる<br>
最初は驚きと恥ずかしさで体を硬くさせていた唯だったが、次第にリトに合わせるよう口を動かしていく<br>
<div class="mes">「んッ…」<br>
リトは一旦唯から口を離すと、その顔を覗き見る<br>
うれしさと恥ずかしさで唯はギュッと目をつむったままだった<br>
「どうしたんだよ?やっぱまだ怒ってるとか?」<br>
唯はリトの胸に顔をうずめながら、首を振る<br>
「違うわ。違う…そうじゃないのそうじゃ…」<br>
必死に首を振る唯の様子にリトは笑いかける<br>
まだまだギコチない唯の表情だったが、その思いにリトはその手をギュッと握り締める<br>
「やっぱ、おまえはおまえのままだな」<br>
「なによそれ?」<br>
手を握りしめ合いながら見つめる二人の空に特大の花火が上がった<br>
あたりを色とりどりの色に染めながら何度も空に上がっていく花火の下で、二人はこの日初めて笑いあう<br>
胸からいろんな思いが消えたせいか、その顔はいつも以上に明るい<br>
赤や青、黄色といった一瞬の光が唯の顔を美しく染める<br>
それはリトでなくても誰もが見とれる美しさだった<br>
ぼーっと見とれるリトに、唯は怪訝な顔をする<br>
「どうしたの?」<br>
「カワイイ…」<br>
リトはそう呟くと唯をギュッと抱きしめた。満点の星空の下抱き合う二人を花火が赤く染める<br>
「ちょ…ちょっと!こんなところでなにを⁄⁄⁄⁄」<br>
リトは腕に力を込めると唯の細い腰に手を回す<br>
「今日うちに来ない?オレ、おまえとこのままずっと一緒にいたいんだ」<br>
つまりそれは自分とハレンチなことをしようと言っているのと同じこと<br>
あまりのストレートなリトに唯は耳まで真っ赤にして顔をうっとりさせるが<br>
慌てて頭を振ると、気を引き締める<br>
「な、なに考えてるのよあなたは!?一週間に一度って決めたでしょ?」<br>
そう言いながらも唯は自分が妙に昂ぶっていることに戸惑う<br>
リトはそんな唯の体から離れると両肩に手を置く<br>
「いいじゃん!今日ぐらいはさ」<br>
思わず首を縦に振りそうになる自分をなんとか踏みとどまらせると、唯はふいっとリトから顔を背ける<br>
「だ…ダメよそんなこと!約束したでしょ?だいたいなによ今日ぐらいはって?」<br>
「えっ!?だって今日は祭りだしさ、おまえとずっと一緒にいたいって思うのは普通だろ?」<br>
「ふ…普通のこと……なの?」<br>
そういえば浴衣を買う際、店員から彼氏がどうとか祭りは特別な日だからなんだと色々言われたことを思い出す<br>
「当たり前だろ!年に何回もない特別な日なんだから、やっぱ特別なヤツと過ごしたいだろ?」<br>
唯の胸がトクンと高鳴る<br>
「特別……なんだ⁄⁄⁄⁄」<br>
「なに言ってんだよ?おまえ以外に誰がいるんだよ?」<br>
自分よりも少し背の高いリトの目を上目遣いで見るように、唯はリトを見つめる<br>
黒い瞳を潤ませ顔を赤くさせる唯の顔を、花火が幾重にも彩る<br>
リトの喉がゴクリと音をたてる<br>
「唯……」<br>
「…ぁ……」<br>
肩に置かれた手に少し力を入れるだけ簡単に引き寄せられた唯は、そのまま導かれる様にリトの唇に自分のを重ねる<br>
「…ッん、ン…うん」<br>
短くて長い、触れ合うだけのキスは、唯から理性を奪っていく<br>
「きょ…今日だけだからね!こんなこと……⁄⁄⁄⁄」<br>
目を逸らし体をそわそわさせる唯を、リトは再び抱きしめた<br>
背中に回された手がもぞもぞと動き、腰周りやお尻のあたりを撫でていく<br>
「も、もうっ!ちょ…結城くん、ダメっ。花火が終わってから!」<br>
腕の中で必死に抵抗をする唯を名残惜しげに離すと、リトは唯の手を取る<br>
「悪い、ちょっとガマンできなくてさ」<br>
いたずらっ子の様に笑うリトをムッとした表情で睨みつけるもどこかうれしそうな唯<br>
その時、今日何度目かの連続打ち上げ花火が舞った<br>
「うわぁ……すげーな」<br>
幾重にも重なる花火が色とりどりに空に舞う様に、リトの口から感嘆の溜め息が漏れる<br>
「ホント…キレイね」<br>
そう横で呟いた唯の横顔をリトはじっと見つめる<br>
明るく微笑む唯の横顔は誰よりもキレイだと感じた<br>
<div class="mes">隣通し肩を寄り添いながら座っている二人の空に、何度も花火が上がっていく<br>
満点の星空を赤や青の光の花が幾重にも染める<br>
「すげー……」<br>
感慨深げに呟くリトに唯は心の中だけで笑みを浮かべる<br>
この光景を見るために、この時を一緒に過ごすために今日を選んだのだから<br>
「よかった…」<br>
ぽつりとこぼれた唯の本音は、花火の音にかき消される<br>
花火が終わると静寂が訪れ、今度は真っ暗闇に浮かぶたくさんの星の光が二人を包んだ<br>
夜空に散りばめられた星座の数々<br>
雲ひとつない澄み切った夜空が、星の絵により一層美しさと壮大さを与える<br>
「すげー!!キレイでおっきいなぁ……。きっと神様がいたらもっと大きいんだろうな…」<br>
いきなりそんなことを呟くリトの横顔を唯はまじまじと見つめる<br>
屈託なく笑うリトは純粋な子供の様な顔をしている。それに唯はクスっと笑った<br>
(西連寺さんは知ってるのかしら?こんな結城くんを…。私だけの秘密にしたいな)<br>
「ん?どうしたんだよ?」<br>
一人楽しそうな唯にリトは怪訝な顔をする<br>
「なんでもないわよ」<br>
そっぽを向く唯に、リトの顔はますます眉をひそめる<br>
「ったく、なんなんだよおまえは……」<br>
少しトゲのあるリトに唯は黙って手を重ねる<br>
キュッと握り締めたリトの手は、いつもと同じ様にあったかくて、そして、いつも以上に愛おしく思えた<br>
今日何度も触れ合っていたはずなのに、なんだか久しぶりに繋いだ様な感触に、唯の顔は自然とやわらかくなる<br>
「ホント、今日のおまえどうしたんだよ?」<br>
わけがわからないリトは溜め息を吐きながらも、それでも唯の手を握り返す<br>
唯と同じ強さで、唯と同じ気持ちで<br>
夏の夜の涼しい風が二人を包む<br>
「花火、終わったわね…」<br>
ぽつりと呟いた唯の横顔はいつもと同じ様でいて、どこか悲しそうだった<br>
「また、来年も来たらいいじゃねーか」<br>
リトの言葉に今度は唯がリトの横顔を見つめる<br>
「来年も再来年も次もその次の年も、ずっと、ずっと…オレはおまえとここに来たい!」<br>
「結城くん…」<br>
リトの言葉が思いがすーっと唯の胸に染み込んでいく<br>
「私…私も、私も結城くんとまたここに来たい!ずっと一緒に…ずっとだって…だって…」<br>
言葉がうまく出てこず、思いだけが宙に浮いてしまう<br>
自分の不甲斐なさに唇をギュッと噛み締める唯の頭を、リトはやさしく撫でる<br>
「心配しなくてもおまえの気持ちみんな届いてるよ」<br>
「ホント……?」<br>
思わず俯きかけた顔をリトに向けると、リトと目が合う<br>
じっと見つめてくるだけのリトに、唯の顔はどんどんと曇っていく<br>
<div class="mes">「あの……結城…」<br>
「なあ唯、膝枕してくれない?してくれたことないだろ?」<br>
思っても見なかった言葉に、唯はただあっけにとられる<br>
「なあ、頼むよ唯!」<br>
妙に真剣なリトに、唯は慌てて首を横に振る<br>
「そ、そんな恥ずかしいこと嫌よ!それより結城くん、さっきの私の質問に…」<br>
「膝枕してくれたら答えてやるよ!」<br>
唯はしばらく考え込むと、少し乱れていた浴衣を直し自分の膝を手でぽんぽんと叩く<br>
「仕方ないわね…ほら、いいわよ」<br>
少し怒った感じの唯にリトは見えないように笑うと、唯の膝に頭をのせる<br>
浴衣越しに伝わる唯のやわらかい太ももの感触、至近距離から伝わる唯の匂い<br>
にやけた顔を隠そうともせず、リトは唯の膝を頬で撫でるように擦り付ける<br>
「最高…」<br>
思わず出たリトの本音に、唯の顔が険しくなっていく<br>
「結城くんいい加減にして!私ちゃんと膝枕したんだから、今度はあなたが私の約束守りなさい!」<br>
少し顔を赤くしながらも本気ともとれる唯の厳しい口調に、リトもにやけた顔をちゃんと正し、唯に向き直る<br>
「まったく!あなたはいつも…」<br>
「届いてるよ、おまえの気持ち」<br>
ぽつりとこぼれたリトの声に唯は一瞬きょとんとしてしまう<br>
唯はリトの顔を見つめる。その顔は真剣だった。いつもと同じ、それ以上に<br>
知らず知らずのうちに唯はリトの瞳に引き込まれていく<br>
「ちゃ…ちゃんとわかってくれてるの?私のこと…」<br>
「当たり前だろそんなこと!オレ以外におまえのコト、こんなにわかってるヤツいると思うか?」<br>
唯は全力で首を横に振る<br>
そんな人いないと思うし、いてほしくないとも思った<br>
リトの屈託なく笑っている顔が、今はとても頼もしく思える<br>
唯の手がリトの顔へと伸び、頬をやさしく包んでいく<br>
「結城くん…」<br>
手の感触よりも唯の声の響きにリトはくすぐったさを覚える<br>
リトはその声を、言葉を、そして今日の出来事をみんな胸の中に刻み込もうと思った<br>
唯の思いもぬくもりも全て<br>
子供時代の秘密の場所はもう自分だけの場所ではなくなっていた<br>
ここは唯と二人だけの特別な場所<br>
リトの手が唯の手に重ねられる<br>
「また来ような」<br>
「うん」<br>
唯は短く応えると、リトに顔を近づける<br>
一瞬見つめあった二人は、互いの唇を重ね合わせる<br>
二人の甘く熱い吐息だけが、夏の夜の涼しい風の中に満ちていった<br>
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