「なにやってんだろオレは。」そう考えながらリトはみそ汁を啜っていた。啜りながら目線を上げるとそこには髪を結い上げ、ちょうどポニーテールの髪型になっている宇宙人が居た。チラチラと、みそ汁を啜るたびに目を上げ盗み見ていると、実に多彩な表情を見せるララ。好物を見つけたのか目をキラキラにして箸をつけ、手を頬にやりオーバーじゃないかって位味わって食べている。そうかとおもったら予想していなかった味なのか、何とも不思議な表情を浮かべている。 見る度にころころ変わる表情にこっちとしては飽きない。「ん?」「っ!」ちょうど目が合っちまった。首を少し傾げくりくりした目を向けてきた。別に二次元になんて興味はないが萌え絵っていうのだろうか、その絵を切り取ってきたような見事な萌えがそこにあった。「どうしたの?なんか付いてる?私の顔。」ん~ん~言いながら自分の顔をさすっているララに「いっいや、ベ別に…何て言うかその」うまく呂律が回らない、いつもどおりしゃべれないオレ「あ、おかわり?それならそうと言ってよね~♪どれぐらい食べる?これくらい?」そう早合点したララは、持っていたオレの茶碗を分取り、ご飯をよそおうとしていた。別におかわりもなにも、腹が一杯だったからそんなにも盛らなくてもって感じだったけど、自分の事を頼りにしてくれたのがそんなに嬉しいのかルンルンしながらご飯をよそっているララを、くじく訳にはいかないのでそのままにした。 くじいたらくじいたでまた見れないような表情が見れて楽しいのだろうけど、まぁいいかそのおかげでオレの前にはこんもりと盛られた見事な茶碗が鎮座していた。「はぁ~」いくらなんでもこの量は…。見ていても減ることのないこの茶碗を見つめてもしょうがない。オレは目線を外して外の景色を眺めていた。そこにはもう家族に近い域に達し、なにを食ったらそこまで成長するのか一度問い詰めてみたい、宇宙植物セリーヌが居なかったかわりに窓の外には海が広がっていた。ここは5階、旅館の一室。つまり、オレはララと二人っきりで旅館に来ているのだ。
話は昨日に遡る。「リトっ♪」デレビを一階のリビングで寝そべりながら見ていたら一度聞いたら忘れない声が聞こえた。視線を向けると見事にたわわに実った巨乳が顔面に飛び込んで来た。避けることも出来ず、飛び付いて来た巨乳をもろに抱き留めることになった。このままでは呼吸困難に陥る。男としては最高の死に方だか、テレビを見ていていきなり死にたくない。死因、圧死。言葉だけじゃなんとも恐ろしい。どうにか巨乳から脱出し、なんとか言葉を発した「何すんだいきなり!お前は!」まるで聞く耳を持っていないのか、自分の意見を言い切るまで聞く耳は機能しないのか、とにかく都合のいい耳を持ったララは臆する事なく言った「オンセンリョコー行こうよ~リト♪」は?うまく聞き取れませんでしたけど「また、お前はなに言ってんだ?」言ったところで気がついた。「っ!!てゆーか離れろっ!」気がつくとちょうど抱き合う恰好になっており、目の前の至近距離にはララの顔がドアップでいた。ララの吐息が鼻をくすぐる。理性が安全圏を突破しかねないので、可及的速やかにララを遠ざけ安全を確保した。顔もそうだけど一度離れた豊満な胸を押し付け、吐息をかけるなんてのは男としていろんな想いが巡るためキツイ。ある一カ所に血液が集中するからだ。「あんっ♪」押しのけたララは勘違いされるような、声をあげた。そんないやらしい声をあげるんじゃない。その♪はなんの意味なんだオレに押しのけられたララは床にちょこんとペタンコ座りをしながら、言ってきた「オンセンリョコーだよ、温泉りょこー」なんとか聞き取ることが出来るようになって来た「りょこー行こうよぉリト。りょ・こ・う♪」ペタンコ座りから前屈みになり床に手をついたララは、オレはソファーにいるから自然と上目使いになりそのくりくりした目でオレを見つめてきた本人はその気は無いのだろうけど、前屈みで手を前にやれば胸が強調されるんだよっ!ララ!!なんでそんなに薄着なんだ!オレの数十センチ先にクラビア撮影会が開かれている気分だ。てゆーか開かれている。盛り上がってきたけど、グラビアはそこまでにして本題に取り掛からねば、「旅行っていつ行くんだよ」とりあえず日程を確認する。こっちも予定ってものがある。「明日っ!」即答ときた。まぁ、今更こんな事で驚かない、明日は休みだし予定ないし。「予約とかしてあるのか?」ただの思いつきかもしれない。現実は厳しいのだ「今さっきしたよっ!」また即答。答えを用意してやがるなこいつ。さっき珍しく家の固定電話の周りでごたごたやっていたのはその為か。本当いまさっき1時間もたってないけど…オレに断られたらどうするつもりだったんだか。承諾もしてないけど。あまり聞きたくないけど、聞かねばならぬ質問をしなければならない。ララはこちらを見つめている。グラビアポーズで「誰と…行くつもりなんだ?…」ポッ…ん?今なんか灯った音がしたような柄に合わずモジモジしたララの頬が薄く赤みがかっていくさっきまでの即答の明るい声は何処へやら、なんとか聞き取れるような声で絞り出すように言った。囁いたのほうがいいかもしれない。「リトと二人っきりで……」「…………」普通にフリーズしたオレの脳内のPCは完全に機能を停止した。せざるをえない。「……?リト?」小首を傾げ覗いてくる手を目の前で振ったり、呼びかけたりしても完全に停止してしまっている愛おしい人をどうにかしようとしたララは、はむっ♪「んのっわぁぁぁァァァァァァ~~~~~~!!!!!!」「起きたっ♪」オレの耳たぶを甘噛みしやがったそのせいでソファーから転げ落ち、台所のすぐ前まで這い下がることになった。その間数秒。「もう、リトったらそこまで驚かなくていいのに~顔赤くしちゃってさ、ウブなんだから~」いつの間にか立ち上がった、実行犯はオレをいやらしい目線で見つめながら近付いてきた。さっきまでのくりくりした可愛いらしい目はどこに行ったんだ。蛇に睨まれた蛙状態になりながら、なんとか言葉を絞り返した「なっ!ななななっ何すんだいきなり!お前は!!!」本日2度目の発言。顔がものすごく熱い。のぼせた気分だ。「何ってそりゃあ~…」話しかけたララのいやらしい目線がオレから離れオレの上に上がっていく。だんだんさっきのくりくりした目に戻っていくのがわかる。「一緒に行ってあげなよリト」いつの間に現れたのか、エプロンで手を拭いている美柑がいた。そのままリビングに入りエプロンを外しソファーにかけると、テレビのリモコンを弄りながら言った「どうして一緒に行ってあげないのよ。ただ温泉入って泊まるだけじゃん。」当たり前の事言ってきやがる。ララもうんうんって頷いてる。んな事分かってるつーの!「何~まさかいやらしい事考えてるんじゃないでしょうね~」テレビから目線を外し、オレに目線を移しながら嫌な声で言ってきやがる。最近母さんに似てきたなこいつ。「んなわけねぇ~だろっ!!」全力で否定する。まだ顔は茹でタコのように熱い。「やったねララさん♪一緒に行くってさ」綺麗な笑顔でララに話し掛ける我が妹。ララはもう最高の笑顔で溢れている。「ちょっ!待っ!んな事言ってなっ…」「何っ?」美柑に遮られ、間髪入れずに言葉を重ねてくる「何?いやらしい事考えてるからララさんとは二人っきりでは行けませんって?」「え?そうなの?リト?」「っ!……」そんなくりくりした純粋無垢な目で見つめるなさっきのいやらしい目線はどこ行った。「さぁ言うの?言わないの~?」美柑の容赦ない追い討ち。妹の容赦ない目線と、ララの純粋無垢な目線がオレに集中する。目が泳ぐオレ。「もう好きにしてくれ…」完璧にオレの完敗だった。情けない…。オレは美柑には勝てそうにないな…そこには力尽きた屍が一つと、喜び溢れる宇宙人が一人と、一緒に笑いなが屍にほくそ笑む悪魔が一匹いた。
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