―――ホーホケキョッ朝目覚めると、鶯(うぐいす)の鳴き声が聞こえた。重いまぶたを手で擦り、ゆっくりと窓の方に顔を向ける。外はまだ小鳥のさえずりしか聞こえず、人はたまに自転車か車で通り抜けるだけ。時折欠伸をしながら、窓越しから来る春の風を体一身に受けた。とても清清しく心地よかった。そんな静寂の景色と良い気分にしばらく浸っていたら、シーツに包まっていた少女がモゾモゾと動き出した。「…ん…んっ~……ふぁ?リト…」寝起きの彼女はとても新鮮で、とても可愛かった。何より、自我がない時に俺の名前を呼んでくれたコトが嬉しい。そしてすごく…愛おしい…。「ん~~っ!おはよ♪リト」いつもの元気な声。朝は大抵気分が乗らない俺なんかには到底できない。でも、彼女の声や顔、彼女の存在があると不思議と笑みがこぼれる。今日は最初から気分が良かったから尚更笑顔になれた。「ん?リト、何か良いコトあった?」彼女も気づいてくれたようだ。というより「彼女はまた気づいてくれたようだ」に訂正した方が良いかもしれない。彼女…もとい、ララは決まって俺の微に気づく。他人には気づかれないと思ったのに、風邪を引いているコトがばれたり。些細な悩みで心配は掛けたくないと平然としていたら、やっぱり気づかれたり。ララはとにかく俺に敏感だった。「あは♪リトが元気だと…甘えたくなるなぁ~」そう言うとララは俺に抱きついてきた。いつもの抱きつきとは違い、俺に乗っかかる程度。それは決まってララの甘えでもあり、求愛でもある仕草。俺も抵抗はしない。「…ん。…リトぉ…」耳元で優しく囁かれ、尚且つ、甘美のこもった吐息が俺をくすぐる。普段はそんなにされない事だから、意表を突かれ、少しだけ悔しさを感じた。でもそれが返って俺を奮起させた――。「ふぇ?…何?」俺はララの名前を呼んだ。そして見つめた。ララの目はとても綺麗で瞳は汚れなき宝石のように輝いていた。と言うのは言い過ぎかもしれないが(レンみたいだし)、でもそれでも、俺は見惚れていた。―――その後、俺とララは自然と抱き合っていた。「…えへへ。リト、大好き…」ララは俺にそんな愛の捨て台詞を言う時、必ず顔を下に向けるか、うずめるか、そうする。告白された時は真っ直ぐに俺を見て言ってくれたが、今となっては上記のようになる。当時は今までのララとはギャップがあり、少しばかり戸惑っていたが、最近はそんな事にはならず、逆に可愛いと思うようになっていた。…正直ララは「美」が五つぐらいつく程の可愛さを持ってる。クラスの皆や結婚願望のある宇宙人がララを慕うのも、理解できる。付き合うちょっと前までは意識しなかったが、こんなに可愛くて、優しくて、俺を一途に思ってくれている。そう思うと、俺は世界一…否、宇宙一、幸せなんだなぁとこれほどない良感賞に酔っていた。「だ~いすき。リト。ずーっと…」その言葉が、ちょっと前の俺の奮起を思い出させてくれた。俺は酔いから冷め、ララに顔を近づける。徐々に近づける内に、ララは瞼を閉じてその行為を受諾した。そしてララの豊潤かつ繊細な唇を――奪った。「ん………ん―――」キス。それをするといつも感覚が麻痺して、変な空間に行ってるような感じがする。宙に浮いてる感じもする。でもその感覚が良くて、ずっと離したくなくなる。それに追い討ちをかけるように、風が流れ込んできて、ララの髪を揺さ振る。当然俺にその髪の香りは漂ってきた。レモンのような、けれども、すっぱさは差ほど感じない。それとラベンダーの香りが合い混じってとても癒される。女性らしい、甘くて優しくて心地よい上品な香りだった―――――。「―――――――…っん。………リト…」長い至福の時間は自然と終わり、互いに酔いしれた顔を見つめ合う行為に移った。…やっぱりララは可愛い。可愛すぎて、もっとララを愛したくなる。…でも今は朝。それに昨日体を何回も重ねたワケで、ララには相当な負担が掛かっている。ララは優しいから、俺が頼めば喜んで「うんっ」と言うだろう。…俺は我慢して、ララの髪を撫でた。「…ぁ。えへへ。……ありがと……リト…」ララは目を閉じた。そして俺の胸の中にうずくまり、やがて寝息を立てていた。俺は傍で甘える愛しい彼女の名前を呼んだ。彼女はそれに無意識で反応する。それを見ただけで、俺は十二分に満足した。 ―――そんな何でも無い毎日が…俺にとっての最高の幸せ――――
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